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2010年12月

2010年12月25日 (土)

お前こそ「危機感」を持て!

 12月22日付の日経新聞の朝刊に面白い記事があった。
 「展望なき欧州産業の焦り」という見出しで、自動車輸出などに支えられてマクロ経済指標が好調なドイツで、国民の消費が伸びていないこと、その原因は中間層の所得が伸びず生活防衛意識が強まっていることがレポートされている。また、ドイツ国内の大手化学メーカーが、新興国との人件費競争に押されて生産拠点を東南アジアに移転するなど雇用の場が失われているとのこと、主力の自動車産業もEV化の流れによりエンジン部品が不要になるため、将来的に大幅なリストラが避けられないと雇用の維持に悲観的な見通しであることも記されていた。
 記事では、これらドイツが抱える悩みは欧州全体に共通するもので、スマートフォンでアップルに押されるノキアなどを例に挙げ、欧州企業の技術革新やマーケティングの遅れを指摘している。また、国家レベルでITインフラなどの成長戦略を描こうにも、財政問題がネックになり先に進めず行き詰まり感が漂っており、「今のままでは失われた10年を招く」というバローゾ欧州委員長のコメントが添えられている。
 同じように、一部の企業(輸出にしか目がない自称グローバル企業)にのみ収益が蓄積し、他の下請け企業や従業員に資金が還流しないために内需が停滞する事例は他の国にも広がっている。成長著しいお隣の韓国も似たような状況で、グローバル競争への対応を盾に、資金を貯めこみ国内に還流させようとしないサムソンに対して、李大統領やその側近が厳しく批判したという記事もある。(“笑うサムスン泣く国民、韓国経済に落とし穴儲け過ぎの財閥企業に大統領が苦言呈す”http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/4146)
 新自由主義が蔓延する現代では、上記のように“日本病”への罹患が世界的に広まりつつある。バブル崩壊→輸出型大企業のわがままを放置→国内への資金還流不全→実体経済の低迷→デフレ到来→財政政策への忌避(金融政策のみ)→金融市場の異様なにぎわい→不動産や商品市場等の局地的なバブル発生→給与減・一部の商品価格増→消費力低下→内需への絶望感・外需への期待という誤ったループを、日本と同じように多くの国が辿っている。
 収益を上げた企業がカネを出さず、財政支出もしたくないという状況を強いられると、内需に依存せざるを得ない多くの企業や国民の収入は減り、当然内需は低迷する。そこで、“もう内需拡大はありえない、外需を開拓すべし”、“TPPへ積極的に参加すべき、平成の開国だ”といった声が大きくなる。こういった意見は、(マクロな視点は欠落しているが)社会的に立場の強い人間が好んで使うため、世の中に広まりやすい。
 だが、上記の欧州や韓国はおろかアメリカも含めて世界各国が、輸出振興に注力している事実を冷静に眺めれば、輸出の爆発的な拡大や外需頼みの国家経済運営など夢物語であることに気付くべきだ。新自由主義に洗脳された多くの国々(日本を含む)では、国内の実体経済に資金が還流する仕組みになっていない。当然国内の購買力が上がらず(購買力は所得の内数)、内需は低迷・縮小を余儀なくされる。重要なのは、それが日本だけでなく、世界各国で起こりつつあるという点だ。
 各国とも互いが互いの懐を狙っているような状態で外需を拡大させ続けるのは至難の業と言えよう。モノを必死に売り込もうとする相手にモノを売ろうというのだから、押し売りにモノを買わせようとするのと同じことだ。外需とは、まさに、中小企業診断士の言う“レッドオーシャン(競争が厳しく収益が期待できない市場)”で、叩き合いによるダンピングを余儀なくされるか、アメリカにおけるプリウスのようにイチャモンを付けられるのがオチだろう。
 このように呑気に外需への憧れを語るのは、いいモノを作れば売れるはずという単純なイノベーション信奉と技術革新が新たな需要を創出するという考えが根底にあるからだろう。こういった考えは、明治時代~戦後の日本などモノがない時代には通用しても、生産力が極度に発展した現代では通用しない。七輪や大八車がガスコンロやオート三輪車に変わったような時代の遺物と言えよう。いいモノなど、いまでも市場に溢れ返っている。問題は、それを購入する資金が国内に十分還流しないことにある。
 サンマと大根を交換し合うような呑気な時代と違い、あらゆる分野で飛躍的に商品アイテムが増大した現代では、それらの交換手段としてのマネー(現預金)の価値が益々高まっている。商品、それも魅力的な商品が次々と市場に供給されれば、それらを欲しがる国民の消費欲求も拡大する。その欲求を満たすために最も重要視されるのが“マネー”であり、消費アイテムが増えれば増えるほどマネーへの選好が強くなる。マネーは、交換ツールとして唯一無二に近い存在なのだから当然だろう。市場には、あらゆる企業から“いいモノ”が次々と投入され溢れ返る。一方で、それらを購買するためのマネーが実体経済に十分に供給されないと、強烈なデフレ圧力となり経済が低迷する。いいモノを作れば売れると信じて懸命にモノを作り続ける企業の欲求を満たすためにも、消費に使えるマネーが存在しなければならない。つまり、政府→企業→国民→政府・企業…といった実体経済の資金循環を円滑に回していくことが極めて重要なのだ。グローバル競争が厳しいから…、これ以上借金を増やすから財政支出はイヤだ…などというワガママを放置することが許されるようなノンビリした状況ではない。
 このまま内需拡大策を放棄し続ければ、間違いなく内需主体(GDPの9割以上)の国内経済は崩壊する。そうなれば、企業の開発投資も低迷し、新自由主義者の大好きなイノベーションの創出など望むべくもない最悪の状態に陥るだろう。技術立国、モノづくり、イノベーション創出を本気で願うなら、内需という国内基盤をしっかり充実させることが重要だ。まずは、下請け企業や従業員に正当な対価や賃金を支払うこと、国内の雇用、とりわけ新規雇用の拡充を図ることが重要だ。
 経団連や経済同友会の連中は、マスメディアを通じて、“もはや国内市場に伸びる余地はない、外需を取り込め”、“国内に安住するな、新興国との競争は厳しい、危機感を持て”などと偉そうに説教を垂れているが、従業員の努力に報いるつもりなどさらさらない。無駄に競争や危機感を煽るより、自らが襟を正して国内の購買力を高める方がよほど効果的だろう。彼らの言っていることは単なる精神論に過ぎない。十分な報酬の裏付けもなく強制される努力や工夫は、社内の人間関係を悪化させるだけ、もしくは下請け企業が割を喰うだけで、その多くは実を結ばない。
 いまの経営者(日本病を患っている世界中の経営者)は、グローバル競争を盾にして給料を上げなくても(下げても)そこそこ働いてくれる従業員への甘えに支えられ、デフレに心地よさを感じている、まさに“茹で蛙”状態にあると言えよう。彼らは、いいモノを作れば売れていたひと昔もふた昔も前の時代で思考が停止しているため、モノづくりを支える需要(所得)の創出という大切な視点が欠如している。需要と供給が両輪の関係にあることに気付いていないのだ。
 いい加減に、“いいモノを作れば、世界のどこかにいる誰かがきっと買ってくれる”といった間抜けな幻想は捨てなければならない。そんな幻想に囚われた経営者が、今日もあちこちで“新興諸国の追い上げは凄い、右肩上がりの成長など二度とできない、危機感を持て”などと社員の向けて偉そうに訓示を垂れていることだろう。彼らにこそ「危機感」を持てと言いたい。

2010年12月12日 (日)

ランチの代金はお金だけじゃない

 他のブログで多々引用されているが、12月1日に麻生元総理が神戸市内の自民党県連主催のセミナーで講演し、次のように述べたとのこと。(12/2神戸新聞より、全国紙はあいかわらずスルーしたようだ)
 ・マスコミが世論を誘導し、公共工事は悪というイメージを作り上げた
 ・デフレ経済下での景気対策として、「今こそ公共事業をどんどんやるべきだ。国会議員は必要性を堂々と語ればいい」との持論を展開した
 ・民主党の経済政策について、「財政再建を重視しているが、デフレ経済下でのやり方を分かっていない」と指摘
 ・約800兆円に上る国の借金について「金を借りているのは国民ではなく国。満期になったら、政府の権限で金を刷って返せばいい。企業と国の借金は性質が違う」と指摘した
 ・神戸港の大水深化や電柱の地下化、耐用年数が迫る橋の改修工事を挙げ、「必要性があり、雇用など経済波及効果の大きい公共工事は多い。金はあるのだから、いかに使うかを考えるべきだ」と指摘した
 この正論をなんで在任中に言えなかったのかいな…と思いつつ、こういうまともな意見がマスコミに取り上げられて、反論を含めて議論の俎上に上ることが、デフレ脱却への一歩になると思う。
 上記の麻生氏の意見のうち、800兆の国債返済財源としての政府紙幣活用という見解に対して、早速、800兆円もの紙幣がが増刷されると大変なインフレを招くなどという勘違いした反論もある。当たり前だが、国債は全額が一度に償還されるわけではなく、大抵は数十兆円ずつ償還を迎えるもので、800兆円分の政府紙幣(政府が発行権を日銀に売却して日銀券として流通させるという前提)が一度に世の中に出て行くわけじゃない。麻生氏が述べているのは、国債の償還期限が到来した分から順に、国債の借り換えではなく、政府紙幣を財源として償還するというやり方で、償還額分のベースマネーを実体経済に注入して内需拡大による景気回復を図ろうとするものだろう。
 どうしても心配なら、国債残高(地方債分を含む)と同額の政府紙幣を償還財源基金として積み立てておき、デフレギャップの発生状況に応じて、国債の償還財源として使えばよいだろう。デフレギャップが存在する場合は、実体経済が高位なインフレ率とならぬ範囲で基金から償還財源を支出し、そうでない場合はこれまでと同様に借換債を発行して実体経済から資金を吸収すればよい。
 政府紙幣発行益による財政政策を訴えると、必ずのように受ける批判が3つある。
 一つ目は過度なインフレを招くというものだが、日本や世界の生産力はひと昔前では考えられないほどに莫大なものになっており、数十兆円程度の経済対策で高位なインフレ率を招くとはとても思えない。現に、お隣の中国(日本と同規模の経済規模)では54兆円もの経済対策を行い、さんざん不動産バブルを煽ってきたが、インフレ率は5%程度にすぎない。いまやハイパーインフレはおろか、10%のインフレを起こすことでさえ至難の業なのだ。
 二つ目は日銀券と政府紙幣の2種類の紙幣は流通して混乱を招くというもので、これは丹羽春喜教授が述べているように、政府が紙幣発行権を日銀に渡して日銀券として流通させればよいだけで、大騒ぎする問題ではない。我々は、現実に政府紙幣(貨幣)である硬貨を当たり前に使用しており、いまさら日銀券とは違う云々といった話をすることすらおかしいのではないか。ちなみに、財務省の資料によると平成22年度には1円から500円まで総額2,200億円もの硬貨が製造され世の中に流通している。しかも、財務省の通貨の製造計画によれば、「必要とされる貨幣の円滑な供給を図る観点から、市中の流通状況や造幣局の製造能力等を勘案の上」で発行枚数を定めているということで、何も具体的な数値基準に基づくものではない。また、UFJ総合研究所のリポートを参考に、それぞれの硬貨の発行益から計算すると、約360億円の発行益があり政府の財源となっている。(1円と10円硬貨は大幅な発行損が発生) こういった発行益をより増大させ、喫緊の経済対策に活かすべきだろう。
 そして三つ目はいわゆるフリーランチ論に基づく批判である。経済にフリーランチはない、あるいは打ち出の小槌はないといった類の倫理観に基づく批判である。これは納税を原資とする財政支出論に固執した極めて原始的な考えで、納税+外需の範囲でしか経済運営ができないようなら経済が頭打ちになることは目に見えており、内需の拡大が望めないから投資意欲が減退し、融資増加による信用創造が機能しない状態を招く。こんな狭小な思考で経済運営していたら、たちまち日本経済は鎌倉時代に逆戻りしてしまうだろう。この手の主張をする人には、貨幣という流通手段をうまく活用して経済を拡大させ国民生活を豊かにするというまともな発想が欠けている。貨幣に対して貴金属と同じような財産的な見方しかできないのは、金本位制度的な古い発想といえ、まさに思考が停止しているとしかいいようがない。
 内閣府から、2010年7‐9月のGDP速報値(前期比、あくまで年率換算)は実質値4.5%、名目値2.6%と発表されたが、エコカー補助金の駆け込み、家電・住宅エコポイントによる大きな需要があった割に大した伸びにはなっていない。給与総額が縮小する中で、今回の駆け込み需要も、自動車などへの代替消費に止まったことが要因だろう。現にGDPデフレーターが△0.5%、雇用者報酬(名目値)が△0.1%、この間の消費者物価指数(前年同月比、総務省)は7‐9月で△0.9%、△0.9%、△0.6%と相変わらずのデフレ状態で、ちょっとした資金循環程度では低レベルのインフレを起こすことすら難しいことが見てとれる。
 経済対策(財政支出や金融緩和)というランチへの代償として、すぐに増税といった金銭的な負担しか思い浮かべられないのは短絡的な発想だ。日本人がこれまで当たり前にやってきた勤労、信頼性の維持、技術革新、生産力・サービス提供力の維持向上に対する努力こそが、まさに代償であり、国民にはその代償の支払い能力が十分に備わっている。つまり、大規模な財政支出や金融緩和を行っても過度なインフレを招かずに、その資金を吸収・循環させることができる生産力を備えているということだ。
 国民は、これまでにも、勤労と仕事に対する努力や創意によりランチの代金を余計に払ってきた。それもかなり多めに支払ってきたと言えよう。問題は、国民の側にあるのではなく、国民の努力に対する報酬を十分に支払えないような経済状態とそれを放置しようとする輩にある。

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