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2012年9月 2日 (日)

夢の世界の住人たちに蝕まれる現実社会

 震災復興や経済、外交、社会保障問題など我が国には喫緊の課題が満載だ。
 特に、国家運営や社会基盤の血液とも言える経済問題の解決やそれに伴う震災復興が最優先の課題であることは論を待たないが、これらの問題に真剣に取り組もうとする者は限られる。
 マスコミの連中にとって何よりホットな話題は、脱原発と大阪維新の会の動きだろう。
 脱原発運動は、一時よりも下火になった感のあるCO2削減運動の代替品として格好のネタであり、原発事故をやり玉に挙げてしゃにむにゴリ押している。
 毎週金曜日に首相官邸前で行われている反原発デモは、プロ活動家に先導された頭のおかしな市民を巻き込んで盛り上がっているようだ。マスコミも、反原発デモを新しいうねりだなどと持ち上げるものだから、参加している連中も随分調子に乗っているようだが、筆者から見れば、単に被災地に対する風評被害を撒き散らしているようにしか見えない。
 そもそも、デモに参加している輩は“原発の再稼働反対”、“原発止めろ”などと一心不乱に叫んでいるが、原発に代わる新たなエネルギーの代替策を持ち合わせている訳ではない。2010年時点で発電電力量の26%を占める原発を強引に止めて、いったい、代わりに何を動力源とするつもりなのか。

 この問題に関する脱原発運動家の解答には二つの流れがある。
 一つ目は、再生可能エネルギーの発電比率を大幅に引き上げようとするものだ。
 二つ目は、再生可能エネルギーの拡大には技術的あるいは経済的に無理があることを自覚した上で、発電量の縮小に社会の仕組みを合わせようと提唱し、現状の文明生活を贅沢すぎるものとして、地球環境に負荷を与えぬようより質素な生活に耐えるべきと説く考えだ。
 いずれも、現実を顧みない愚論で、いまどき小学生の作文ですらもう少しレベルの高い提案が出てきそうなものだ。

 先に内閣府が各地で実施した「エネルギー・環境の選択肢に関する意見聴取会」では、出席者の殆どを脱原発派が占める中で開催され、原発ゼロシナリオ、15%シナリオ、20-25%シナリオの是非が議論された。(というより、いかに原発ゼロシナリオが正しいものか、という点のみが議論されたというべきか…) これを受けて毎日新聞の世論調査では、原発ゼロシナリオを支持する割合が46.7%に達した(15%シナリオは15.4%、20-25%シナリオは13.0%、いつものとおり態度保留や無回答のバカが残りの25%を占める)
 

 だが、既に一部の良識的なメディアが指摘しているとおり、議論の基になった“エネルギー・環境に関する選択肢”なる資料は、その前提条件に大きな誤りがあることをマスコミは一切報道していない。
 おかしな前提条件の最たるものが、再生可能エネルギーの発電比率である。
 資料では、2010年時点の発電比率を原子力26%、再生可能エネルギー10%、化石燃料(石油・天然ガス・石炭)63%と規定する。そして、20年後の2030年を目途に再生可能エネルギーの比率を“原発ゼロシナリオで35%、15%シナリオで30%、20-25%シナリオで25-30%に引き上げる”といとも簡単に書いている。
 まず、再生可能エネルギーの内訳だが、資料では「水力・太陽光・風力・地熱・バイオマス」がこれに当たると記載されている。因みに、資源エネルギー庁による2010年時点の電源構成比率は、資料とは若干の差異はあるが、原子力28.6%、石炭25.0%、天然ガス29.3%、石油等7.5%、水力8.5%、新エネ等1.1%であり、これらを資料に合わせて集計すると、原子力28.6%、再生可能エネルギー9.6%、化石燃料61.8%となり、先の資料とほぼ近い数値になる。
 
 だが、ちょっと冷静に考えれば、2030年を目途に再生可能エネルギーの比率を原発ゼロシナリオで35%に引き上げるという前提条件が、いかに夢物語の類に過ぎないかがよく判る。
 現状の再生可能エネルギーが9.6%といっても、その9割近くは水力発電(=ダム)によるものだ。さんざん脱ダム宣言をしてきた連中が、いまさらダム建設を推進するわけがない。よって、35%という数値は、あくまでも、1.1%に過ぎない新エネ(太陽光・風力・地熱ほか)のみで達成しようというものだろうが、この論で行くと、20年後までに新エネの発電能力を現状の約32倍にまで向上させる必要があり、まさに気の遠くなるような話である。
 例えば、2011年時点で国内には1870基の風力発電機があるが、これを約60000基に増やすとなると、日本の海岸線は風力発電機で埋め尽くされても足りないだろうし、バードストライクや低周波による健康被害の増加による新たな反風力発電運動を巻き起こすことになろう。
 また、太陽光発電を例にとっても、一説には、国内の全電力を賄うのに、24時間日照が100%あるというあり得ない条件を基に計算しても1466平方㎞の面積が必要(通常の条件設定ならこの程度では済まない)とされ、目標の35%の半分を太陽光発電で賄うと仮定すると約250平方㎞という途方もない膨大な土地(香川県の13%くらい)が必要となる。
 筆者が先日参加した新エネルギー関係のセミナーでは、出席者の一部から、太陽光パネルの設置が野鳥の採餌や営巣に悪影響を与えるのではないかといったくだらない指摘があったが、新エネの旗手として持ち上げられている太陽光発電も、本格的に普及すれば、風力発電と同様に“何でも反対派のゴロツキ”に絡まれるリスクが十分にある。
 また、風力や太陽光発電の寿命は、15-20年と言われており、大目標の2030年に達する頃には、新エネブームに乗せられて慌てて設置した風力発電機や太陽光パネルが次々と更新時期を迎えることになる。その際には、途方もない量のゴミ処理問題が新聞紙上を賑わすことになろう。太陽光パネルはリサイクルができず、劣悪な中国製のパネルの中には重金属類が使用されているとも言われており、いずれ厄介な環境問題を引き起こすことだろう。
 加えて資料では、再生可能エネルギー導入コストとして、2030年までに太陽光で13.8兆円、風力で19.1兆円、合わせて32.9兆円の投資が必要と試算する。
 これらの財源を国債の日銀引き受け等で捻出してデフレ脱却の起爆剤とする、という成長戦略があるのなら筆者も諸手を挙げて賛成する。
 だが、実際には、財源は民間の投資(実態は外国資本による投資)に期待するといった腰の引けたもので、まことに心もとない。ましてや、財源の調達をエネルギー固定価格買取制度のようなくだらない制度に頼ることになれば、国民経済に増税と同様のマイナス効果をもたらすことになる。
 
 いま、エネルギー政策に関して日本が取り組むべきことは、反原発ゴロの挑発に振り回されることなく、十分にバランスの取れたこれまでのエネルギー政策の維持である。その上で、海洋資源の開発に十分な国費を投じて国産エネルギーの比率を向上させるとともに、エネルギー投資をデフレ脱却の起爆剤の一つの柱と位置付けることが重要である。
 
 マスコミがバカ騒ぎするもう一つの問題「大阪維新の会の維新八策」について、今回は特に詳しく言及しない。過日発表された内容も以前のエントリーで批判した時のものから大きな進歩はないようだ。
 維新八策などと大上段に構えているが、小泉構造改革路線への先祖返りそのもので、何の新鮮味もない。その中身は、他人に競争を強いることと公務員への妬みしかない典型的な新自由主義経典である。こんなものを振りかざして日本経済が回復するはずがなく、失われた〇年の記録が更新されるだけだろう。この程度の中学生レベルの作文に誌面を大きく割けるのだから、新聞や雑誌の記者もよほど暇なのだろう。
 彼らの口ぐせは、“国のかたちを変える”だが、その中身は国民が期待しているものとは違う。維新の会の連中は、機構とか組織といった“かたち”をいじくることには異様な執念を燃やすが、それらの内容や中身をよりよいものにすることには関心がない。特に、経済政策のベクトルが、デフレ脱却ではなく、新自由主義的な競争マターの思考に陥っている点は致命的だ。
 この幼稚で有害な政治サークルの連中でも、既成政党に見切りを付けるなどと意気込むマスコミに持ち上げられて、次期選挙では一定数の国民から支持を受け見通しだ。
 競争と無縁の位置にいる者にとって、他人に競争させて叱咤さえしていればいいような政策は、たまらなく魅力的だろう。また、“希望は戦争”世代の人々の中にも、世の中をガラガラポンしてくれそうな政策に期待する者もいると思う。
 だが、競争ごっこや改革ごっこにうつつを抜かしていると、早晩、国民経済の疲弊という多大な代償を払わされることは、既に小泉バカ改革以降の政権で十分実証済みであり、もう一度顔を洗ってよく考えるようにと忠告したい。

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