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2014年3月

2014年3月18日 (火)

縮小思考に染まった新自由主義者たち

先日、新聞各社から、経済財政諮問会議のWG(ワーキング・グループ)で、毎年20万人規模の移民受け入れを検討しているとの報道がなされ、ネットを中心に批判する意見が相次いだ。

 

現在、経済財政諮問会議の下に「選択する未来委員会」が設置され、さらにその下に「成長・発展(件の移民騒動の発端)」、「人の活躍」、「地域の未来」の三つのWGがぶら下がり、委員となった新自由主義者や構造改革主義者の連中が羽を伸ばし、好き勝手なことをほざいている。

今回は、この三つのWGの中から、「人の活躍WG(ネーミングのセンスも最悪…)」の議論を採り上げたい。

 

WGの上部に位置する「選択する未来委員会」では、“人口減少・高齢化は、経済の縮小、国力の低下をもたらすという見方に対し、「未来は政策努力や人々の意志によって変えられる」という認識に立って、常識にとらわれず大胆な選択肢を検討する”という方針の下、日本の中長期的な経済成長と発展・人の活躍・地域の未来の三点にブレークダウンして、それぞれのWGで詳細を検討する形を取っている。

 

まず、WG共通の課題として、「人口減少と高齢化」、「世界経済の構造変化」、「未来のための攻めと守りの戦略」、「目指すべき日本の未来の選択」が掲げられているが、その内容を総括し、一言でまとめると、「現状の追認と将来への悲観」である。

「人口減少と高齢化」の項では、“今後少なくとも 50 年は人口減少と高齢化が続くことを前提としたシステムに日本の経済社会を変える必要がある”と国内の人口増加の可能性を端から放棄したような書きぶりだ。成長よりも身の丈に合った社会構造で我慢しろ、と言いたいのだろう。

 

この後にも、“グローバル化に対応しろ、新興国の成長に期待すべし、地方経済や社会保障制度は縮小・撤退を見据えて大胆に改革すべし”といった意味のない議論が続き、“目指すべき日本の未来は、日本流の公共心、「おもてなしの心」等日本のソーシャル・キャピタルをどう活かすかに掛かっている”というピントのズレた結論で結ばれている。

この後のWGの議論でも、“人口減少の問題点は何か、出生率を上げるために国や地方自治体、企業、社会は何をすべきか”という問いに対して、“女性の社会進出と男女の働き方を変えればOK”という極めて軽薄かつ杜撰な認識を示している。

 

委員会やWGの議論は、現状を正しく分析できないままダラダラと追認し続け局所的な対応に終始するばかりで、成長への意志がまったく感じられない悲観的な内容で溢れかえっている。

船の老朽化を嘆くばかりで、新たに建造しようとする意気込みはなく、積み荷を捨てて何とか生き延びようとする愚かな発想は、この委員会だけでなく三つのWGに共通する歪んだ理念であり、これまでの骨太の改革路線をそのまま踏襲し、15年デフレをもたらした構造改悪の愚を繰り返そうとしている。

国家百年の大計を論じるべき貴重な議論の場で、出席した有識者の口から出てくる言葉が、“女性や高齢者の活用、雇用の流動化、外国人の活用、地方分権、おもてなし”程度のレベルなら、高校生にでも議論させた方がましだ。

 

さて、件の「人の活躍WG」では、「1.今後の構造変化を見据えた発展メカニズムの構築」、「2.健康長寿を実現し、男女ともに生涯にわたって農力を発揮できる環境づくり」、「3.集積の効果の発揮と個性を活かした地域づくり」の三項目が議論されている。

 

まず、「1.今後の構造変化を見据えた発展メカニズムの構築」の項では、“生産年齢人口は年率0.9%程度減少し、2030 年以降は年率1.4%程度減少と加速。成長を続けるためには、1980 年代(2%弱)を上回るTFP(全要素生産性)の伸びを実現する発展メカニズムが必要”と言いつつ、“これまでの人口増加を前提とした制度、システムを全面的に見直し、制度・財政の持続可能性を確保する必要”だとすぐに弱音を吐き、縮小均衡社会へ逃げ込もうとする。

 

その縮小均衡社会を実現するための方策として、なぜか「外国人人材の受入れ、科学技術中心とした研究開発(省エネ・新エネ・環境、ライフ・バイオ・ヘルスケア)等、GNIの拡大(省エネ・省資源等による交易損失の縮小、積極的海外展開等)、生産性の上昇(産業構造調整・転換、人材の質的向上、制度・システムの変革、IT の活用等)、日本の長所・強みを伸ばす(勤勉さ、長期投資、人や地域のつながり、おもてなしの心、等)」といった事例が挙げられている。

 

そもそも、日本人の長所や強みの源泉は、外国人との摩擦の少ない社会環境や安定した雇用、漸増する所得に裏打ちされた強化な社会基盤にあり、経済財政諮問会議やその下っ端の連中が夢想するように、不安定社会や競争社会から生み出されるものではない。彼らは、青臭い受験生みたいに、競争さえすれば人間は強くなると信じ込んでいるようだが、まったく社会勉強が足りない。

また、「おもてなしの心」という文句と日本の発展メカニズムの構築との間に、何の関連性があるのか全く理解不能である。流行り言葉を政策に盛り込ませれば格好いいだろうというレベルの下種な発想を見るにつけ、つくづく、政府諮問機関やそこに提供されるペーパーを作る官僚の質も落ちたものだと感じる。

 

次に、「2.健康長寿を実現し、男女ともに生涯にわたって農力を発揮できる環境づくり」の項では、我が国の人口減少と高齢化は止めることのできない大きな流れだと断定し、女性・若者・高齢者・外国人の活用を訴えている。

だが、それは、失業に苦しむ若者や女性に、安定した雇用の場を与えようとするものではない。彼らに与えるべきは、“ジョブ型労働市場(いわゆる限定正社員)の構築、多様な就業形態(=非正規雇用)”であり、そこでの厳しい競争を勝ち抜いた“グローバルプレイヤー”の出現を期待しているようで、まことに身勝手かつ冷酷な提案である。

 

近年、非正規雇用比は上昇(1524歳層の男性で50%近い)し、2534歳層でのフリーターやニートの高止まり(両方合わせて260万人以上)が指摘されているにも関わらず、経済政策をフル稼働させて雇用の場を作ろうとはせずに、女性や高齢者、外国人を安易に労働市場へ招き入れ、彼らとの雇用やポストの奪い合いを激化させようとしている。

勝者のいないイス取りゲームの行く末は、非正規雇用やフリーター、ニートの増加という経路を経て、生活保護受給者を増やすだけの結果に終わるだろう。

“老若男女がいきいきと能力を発揮できる環境づくり”という建前の裏で、まともな雇用を得ることのできない若者を捉まえて、“これからはグローバル人材だ、職がなければ海外へ行け”とばかりに外国に雇用機会の創出を丸投げする始末だ。世界中で若者の失業率が高まっているというのに、世界有数の経済大国から雇用創出を丸投げされる諸外国にとってもいい迷惑だろう。

 

最後の「3.集積の効果の発揮と個性を活かした地域づくり」の項では、都市部の高齢化と地方の過疎化を嘆き、市街地中心部への都市機能の集約や地方分権、地方財政の見直し(=緊縮的財政運営のススメ)、地方の経済的自立、NPOやソーシャルビジネス(=単なる社会のお荷物)の活用などと役にも立たない提言が続いていく。

 

地方の過疎化を心配するなら、首都移転など首都圏から地方への人口移動を促す大規模な政策を検討すべきだし、地方への財政的支援を更に強化すべきだ。

構造改革主義者は「選択」とか「集中」が大好きなようだが、国土の隅々まであまねく人が居住し、そこから生み出される多様な文化や重層的な産業構造を基盤とする社会が成立してこそ、“勤勉さ、長期投資、人や地域のつながり”という日本や日本人が持つ強みが育まれるのではないか。

首都機能や本社機能があるおかげで、あくびをするだけで富や税収、人口が増えていくような苦労知らずの首都圏目線で、地方経済に自立を促すなど笑止千万である。

 

今回採り上げた「選択する未来委員会」や「人の活躍WG」での検討項目は、我が国の人口減少を起点として議論(=撤退論)が進められている。

だが、古くは1780年代に日本を襲った天明の大飢饉(江戸四大飢饉のひとつ)では、全国で100万人近い餓死者を出したといわれ、先の太平洋戦争でも約300万人の戦死者が出ている。江戸時代の人口は3,000万人程度、また、太平洋戦争時の日本の人口は7,400万人程度であったことから、いまの人口比に換算すると、およそ400万人~480万人近くにも達するような信じ難いほどの大規模な人口減少に見舞われている。医療技術や物資の生産・運搬能力はおろか、生活を支える社会保障基盤そのものが、いまとは比べ物にならないほど脆弱であった当時の日本国民は、大厄災がもたらした巨大なインパクトに身の竦む思いがしたことだろう。

我が国は過去に幾度となく、国家の根幹を揺るがすような事態に直面してきたが、当時の日本国民は決して怯むことなく、国内にある資源を総動員して、想像を絶する苦難を乗り越えてきた。

 

飢饉に直面した江戸時代の役人は、海外から移民を受入れようなどと考えただろうか、敗戦で焼け野原になった時代の日本政府は、雇用を流動化させてグローバル人材を育成しようなどと考えただろうか。

幾多の厄災に直面した過去の日本人に、「人口が減るから外国人を入れましょう」なんてバカげたアドバイスをすれば、きっと軽蔑されて鼻で笑われるか、無礼打ちにでも合うのではないか。

2014年3月 3日 (月)

問題の核心から逃げ回る輩たち

少し前のことになるが、筆者が仕方なく購読している地元の新聞に気になる記事が二つあった。

 

一つ目は、自民党が来年4月の統一地方選挙に向けて、所属の国会議員に党員獲得ノルマを課したという記事だ。

 

同党の党員数は、平成3年のピーク時に約547万人あったものが徐々に減少を続け、現在約70万人にまで減っているそうで、衆参両院の議員に千人ずつの新規党員獲得ノルマを課すことを決めたそうだ。ノルマを達成できなかった場合は、不足人数一人当たり2,000円の罰金を科すもので、仮に500人しか獲得できなかった場合は100万円の罰金が科せられることになる。

さっそく、自民党の総務会では、「そんなことで組織強化に唾がるのか」、「ペナルティーがお金でいいのか」などと反発が相次いだようで、総務会長の野田氏がその後の記者会見で、「罰則ありきではない。どうしたら党員を集めやすいか、みんなで知恵を出して党員を集め、組織をきちっとしたものにするのが本来の目的だ」と釈明に追われる事態になった。

アベノミクスによる(ほんの少々の)景気回復を背景に高い支持率を維持する安倍政権と自民党だが、党員がピーク時の8分の1ほどに落ち込んでいることには少なからず驚かされた。共産党員でさえ25~40万人近くいるとされており、自民党員の激減ぶりは異常だ。これが企業の社員数や売り上げなら確実に倒産している。

 

党員数がここまで減った要因は、参院選比例代表に非拘束名簿式が導入されたことなど選挙制度改革によるものと言われているが、やはり、政官業のトライアングルを支える旧来の利権構造が破壊されたことが大きいだろう。(代わりにパソナや楽天などの新たなシロアリがたかっているようだが…)

一連の政治改革を通じて、政治の権限で自由にカネを配分する機会やルートが途絶されただけでなく、自民党が自ら率先して構造改革や新自由主義的な色彩の強い政治路線に舵を切り、財政政策を通じた利権とカネの配分から身を引いてしまった。

 

こういった改革路線を持ち上げるマスコミをはじめとするバカどもに煽てられ、すっかり気を良くした自民党の自称改革派議員の連中は、口を開けば「改革、改革」しか言えない万年野党議員と同レベルの無責任体質が身についてしまったようだ。

彼らは、軽いノリで始めた無責任政治(=構造改革)がデフレを長期化させたことを認めようとせず、国民生活や中小企業の経営基盤が大きく破壊されても、バカの一つ覚えのように「改革が足りない」と唱える狂信者と化してしまった。

 

戦後脈々と自民党を支えてきた業界は、そんな彼らの迷走ぶりを呆れて傍観している。

野田総務会長に今回の新規党員獲得運動の秘策を尋ねても、恐らく「有権者や業界を丁寧に回れ」くらいの答えしか返ってこないだろう。

 

かつての自民党が誇った積極的な財政金融政策のような経済的王道を歩むことこそが、党員獲得の第一歩だろうが、相変わらず構造改革臭の強い現政権に、それができるかどうかはなはだ疑問である。ノルマを丸投げされた秘書や業界関係者がとばっちりを喰らうだけで終わることになるだろう。

 

さて、二つ目の記事は、原発停止による電気料金の大幅値上げを受けて、小樽市の電炉メーカーが廃業を余儀なくされたというニュースだ。

 

このメーカーは、市況の低迷により売上高がピークの130億円から50億円ほどに落ち込む中で、製造コストの2~3割を占める電気料金が大幅値上げされ、年間9,000万円ものコストアップになるため事業継続を断念したという内容だ。

北海道電力は、泊原発停止に伴う発電コスト増加の影響から、昨年9月に電気料金を大幅に値上げしたのに続き、その後の円安や燃料価格高騰なども重なり、近々再値上げを予定している。

 

こうした燃料コスト増加の影響は、電炉メーカーのみならず、あらゆる産業に広く及んでいる。各社とも、アベノミクスの恩恵を十分には享受しきれない中で、コストアップが先行し、それらを需要家に転嫁できずに厳しい経営を強いられている。

 

今回の電気料金再値上げや電炉メーカーの廃業のニュースを受けて、北海道知事は、「まずは(北海道電力の)経営の合理化、効率化へ努力してほしい」と他人事感まる出しのコメントを発したが、原発停止による発電コストの増加は、北電の経営合理化程度で賄えるレベルを遥かに超えている。北電がちょこまかと社内を合理化したとして、電力料金値上げを避けることなど不可能だ。

マスコミからの攻撃を恐れて、泊原発の再稼働を促す発言を控えているようだが、そんな弱腰では、電気料金値上げによる犠牲者を防ぐことなどできないだろう。

 

先の自民党員獲得の記事を同じことだが、問題の核心から目を逸らし、その周囲を徘徊しているだけでは、決して事態は解決しない。

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