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2014年9月

2014年9月29日 (月)

技術力は国を支える柱

先日、とあるテレ部番組で戦国時代を彩る合戦として有名な「長篠の戦い」の特集番組をやっていた。

織田信長とか坂本龍馬が大嫌いな筆者は、この手の“信長ヨイショ番組”をまともに観る気にはならず、パソコンをいじくりながら横目で眺めていた。

長篠の戦いといえば、1575年に当時の三河国長篠城を巡り、織田信長が、押し寄せる武田勝頼軍を有名な鉄砲の三段撃ち戦法を用いて撃退したことで知られる。(三段撃ちに関しては史実ではないとの指摘もある)

戦国時代に急速に普及した鉄砲(火縄銃)が日本に伝来したのは1543年で、台風の直撃を受けて難破した中国戦に乗船していたポルトガル人のフランシスコ・ゼイモトが、種子島に漂着したことが契機であることは有名なエピソードだろう。

漂着した彼らを見つけた種子島の住民は、生まれて初めて目にする外国人を前にしても臆することなく、砂浜に画を描いて筆談し意思の疎通に努めたそうだ。

そして、彼らが持っていた鉄砲に興味を持った時の領主の種子島時堯は、金2,000両を投じてこれを譲り受け(決して強奪するのではなく、漂着民にきちんと対価を払うところがいかにも日本人らしい)、島内の鍛冶屋に命じて鉄砲を複製させた。

命を受けた鍛冶屋たちは、当初こそネジの切り方に悩んだり、暴発事故に遭遇したりしながらも、驚くことに、翌年には早くも実戦(屋久島奪還作戦)で使用されるまでに仕上げている。

その後、鉄砲の制作技術は瞬く間に全国に伝播し、滋賀県の国友や大阪府の堺などで大量生産されるようになり、鉄砲伝来からわずか32年後に、前述のとおり戦国時代でも指折りの合戦の雌雄を決する新兵器として使われるまでになった。

また、一説には、戦国末期には国内に50万丁も普及し、世界最大の銃保有国になっていたと言われている。

ひとことで鉄砲の複製と言ってしまえば単純に聞こえるが、そこには、精密な鋳鍛造技術や切削加工など高度な技術力を必要とするほか、火薬の取扱いや射法の開発、戦術の改良などソフト面の充実も欠かせない。

当時の鉄砲の威力は、『口径9mm、火薬量3グラムの火縄銃は距離50mで厚さ48mmの檜の合板に約36mm食い込み背面に亀裂を生じしめ厚さ1mmの鉄板を貫通した。鉄板を2枚重ねにして2mmにしたものについては貫通こそしなかったものの内部に鉄板がめくれ返っており、足軽の胴丸に命中した時には深刻な被害を与えたのではないかとしている。なお、距離30mではいずれの標的も貫通(ウィキペディアより)』したとされ、十分に実戦使用に耐え得るレベルにまで仕上がっていたようだ。

こういった歴史上のエピソードは、ものづくりや技術開発力、供給力の大切さを改めて認識させてくれる。

我々は、普段から、日本が資源に恵まれない国だと信じ込んでいる。

事実、日本の食糧自給率は39%(H25/生産額ベースでは65%)、エネルギー自給率は6%(H24)に過ぎず、日本は資源のない国だと聞いて不思議がる者は殆どいないだろう。

そして、「資源のない国」という常識は、「外貨を稼ぐことの必然性」を生み出し、やがて「輸出振興宿命論」へと昇華していく。

輸出信仰に帰依した信者たちは、内需よりも外需を尊び、同じ車を売るのなら、日本人に売るよりも欧米人に売る方が一段上であるかのような幻想に囚われている。

日本人にレクサスを売っても、“成り金の土建屋が高い車を買いやがって”と蔑まれるだけだが、同じ車をビル・ゲイツやオイルダラーが買えば、“トヨタのハイクオリティを世界が認めた”と称賛するおのぼりさんがウヨウヨいるのが現実だ。

こうした輸出バカの連中は、とにかく外需の獲得にしか興味がなく、大手製造業者やその下請け企業が製造拠点を海外に移転させることをグローバル展開だと称して放任する。

その結果、国内の産業が空洞化しようが、失業者が溢れようが、技術が海外企業に流出しようが、何の痛痒も感じない。

彼らは、「グローバル化は不可逆な世界の潮流」とか「国際的な大競争時代が到来した」とほざきながら、国民の同意を得ずに勝手に国境を取り払い、資本や資金をどんどん海外に流出させてきた。

そして、不勉強な国民は、改革とかグローバル化という言葉を魔法の呪文のようにすんなり受け入れ、ワガママなグローバリストのゴネ得を放任してきたのだ。

昨今の円安基調でも輸出大国ニッポンの業績は思ったほど回復せず、有識者からは、既に多くの企業が海外に生産拠点を移したため為替レートの影響を昔ほど受けなくなったと尤もらしい解説がなされている。

しかし、今年4月に内閣府が発表したマンスリーレポート(海外現地生産の動向と輸出への影響)によると、為替レートの影響を考慮すると海外生産比率は2012年度以降大きく上昇しているとは言えない、との指摘もあり真意のほどは定かではない。

だが、ここで問題なのは、海外生産比率と輸出の関係ではなく、多くの識者やバカマスコミの連中が、日本の製造業者が海外に生産拠点を移したことを、さも当たり前のようにのほほんと語っていることである。

彼らは、それに危機感を覚えるどころか、むしろ喜ばしいことのように語り、円安効果の期待を裏切られて落胆する国民を、競争が足りない、改革が足りないと叱り飛ばす始末だ。

しかし、国民に向かって居丈高にグローバル信仰を説く彼らこそ、忍び寄る危機を察知できない愚かな茹で蛙なのだ。

この手の幼稚なグローバルバカは、競争だ改革だと企業を脅しつけてさえいれば国内の製造業者の技術力は維持向上できると信じて疑わないが、製造や生産に関わるあらゆる技術やノウハウは現場に宿るものなのだ。

いくら本社がグリップしても、現場レベルの精緻なノウハウは、まさにものづくりの現場でしか体得できない。

これからはグローバル化の時代だから工場が海外に移っても仕方ないよね、と鼻をほじっているうちに、国内のベテラン技術者は海外企業に買収され、日本の強みである技術開発力や供給力がどんどん削がれているのだが、幼稚なグローバル化宿命論者は、そういった都合の悪いことから目を背けてしまう。

グローバル化競争の御旗の下に、このまま生産拠点の海外流出を放任してしまえば、日本の供給力は先細りを避けられない。

アメリカとのTPP協議みたいなくだらぬことにうつつを抜かしている暇があれば、資本や資金の海外移転に重税を課すなど、国境を超える資本移動に厳重なペナルティーを科すべきだ。

供給力というものは、最先端の機械設備を持ってくればポンッと出てくるような単純なものではない。

長いスパンをかけてモノづくりの現場に人々が直に携わり、技術力や供給力の養成に努めなければ容易に失われてしまうような極めて繊細な存在でもある。

政治や政策は、一部のこざかしいグローバリストのためにやるものではない。

マクロ的な視野から日本の国力を養成し、国全体を前進させることこそが政治に求められる役割だろう。

今から500年近くも昔の末法の世に生きた先人は、当時の最先端技術が結集した鉄砲を瞬く間に複製したばかりか大量生産に成功し、その卓越した技術力を世界に示して欧州の列強を驚愕させた。

一方、いまや世界最先端の技術力を誇る我々は、自らそれを放棄し、蔑ろにするような愚行を犯そうとしている。

我々は、戦国時代の先人より退化しつつあるのではないか。

(※)今回からコメント欄を開設します。こちらからの返信はできませんが、ご自由にご利用ください。(ただし、公序良俗に反する書き込みは削除させていただきます。)

2014年9月15日 (月)

根拠のない過信が身を亡ぼす

イギリスで沸き起こっているスコットランド独立騒動も、今月18日に予定されている住民投票の結果をもって一定の決着を得ることになる。

スコットランドはグレートブリテン島の北部三分の一を占め、元々、スコット人の王朝として独立していたが、南接するイングランドとの抗争を経て1707年にイングランドと合併(実態は吸収)した背景もあり、独立の機運は300年もの間燻ぶってきてはいた。

独立の賛否は3:5くらいの割合で反対派が長らく優勢を保ってきたこともあり、独立問題は一種のイベント的(恒例行事の一つ)なノリで扱われ、近年まで現実的な問題として認識されることはなかった。

だが、今年に入り、急速に賛否の割合が接近し、ついに前回の世論調査では賛成派が51%と反対派を上回り(その後の最新の調査では反対派が52%と再逆転)、予断を許さない状況になっている。

独立問題が急速に現実味を帯びる中で、キャメロン首相をはじめ与野党の党首が現地入りして独立反対を強く訴えたほか、オズボーン財務相も急遽G20を欠席して対応に追われ、財界でもスコットランドに拠点を置く100社以上の首脳が、石油大手のロイヤル・ ダッチ・シェル 、郵便事業のロイヤル・メール 、石油探査企業ケアン・エナジーに独立反対への賛同を呼びかけるなど、まさに政財界を揚げて大騒ぎの様相だ。

また、ミック・ジャガー、デヴィッド・ギルモア、ブライアン・フェリー、スティング、J・Kローリング、スティーブン・ホーキングらの著名人が独立反対の立場からメッセージを発している。

こういった強力な独立反対運動を経てもなお賛否が拮抗しているあたりに、独立賛成派の強烈な勢いやエネルギーを感じることができる。

スコットランドは、イギリス国土の約30%、GDPの約8%を占め、人口規模は530万人。 日本でいえば、面積や人口は北海道、GDPは九州あたりと似たイメージだろう。

独立後は、北海油田からの収益が主要な収入源になると見込まれているが、イギリスからどの程度の権益を分捕ることができるのかは不透明だ。

当面、通貨はポンドを使用し、イギリス王室を共通の元首とする方針だが、国家の大権たる通貨をイギリスに依存せざるを得ない(イギリス中央銀行はポンドの使用に否定的だが…)ようでは、独立後の歩みは相当厳しいものになると思われる。

スコットランド自体は親EU派とも言われており、独立後のEU加盟やユーロ使用も視野に入れているようだが、スペインのカタルーニャ独立運動への飛び火を懸念するもあり、EUのバローゾ欧州委員長はスコットランドのEU加盟に否定的な態度を取っている。

筆者も個人的には、スコットランドの独立は、イギリスにもスコットランド自身にも悪い結果しかもたらさないと思う。

経済的な伸びしろの少ない両国が分裂しても規模の優位性を失うだけで何ら得るものはない。将来的に北極海航路が開通した際の地理的優位性を巡って両国間に火種を抱える要因にもなりうる。

また、スコットランド独立という結果は、常任理事国の一角を占めるイギリスの国力低下を間違いなくもたらすだろうし、ひいてはそれが欧州全体の結束に楔を打ち込みかねない事態を招来し、欧露のパワーバランスに深刻な影響を及ぼしかねない。

18日の住民投票の結果は予断を許さないが、独立賛成派が僅差で勝利するのではないかと予測する。

こういった問題は、周囲の反対運動が苛烈になるほど関係者は冷静な判断力を失いがちになり、簡単な損得勘定すらできなくなるものだ。

スコットランド地方を含むイギリス国民も、他の先進国と同様に、新自由主義的な政策がもたらすどんよりと停滞した空気にうんざりしていることだろう。

こうした、重苦しさに辟易とした国民や住民は、得てして、現実よりもまだ見ぬイベントに興味を惹かれがちになる。たとえそれが高いリスクを孕んでいたとしても、退屈な日常を続けるより、危険なゲームに身を投じたくなるものだ。

史上初の女性大統領や黒人初の大統領の誕生を期待する気持と同じように、結果の是非よりも歴史的なイベントが起きる瞬間を体験したいという欲求が勝ってしまえば、意外にあっさりと独立が承認されることになるだろう。

このスコットランドの独立問題を受けて、日本国内でも、いかがわしい評論家の3バカトリオ(大前研一、日下公人、榊原英資)が偉そうに九州独立論や北海道独立論を語り始めるであろうことは想像に難くない。

タチの悪い評論家の連中は、「アジアの金融センター」、「アジアとの地理的条件」、「日本の食糧庫」、「アジア・オセアニアを魅了する観光資源」とか何とか持ち上げて、これからは世界に目を向けろとばかりに無責任な地域独立論を展開するだろう。

しかし、こういった無責任な地域独立論は、一見、地域のポテンシャルを持ち上げているようで、その根底には、中央のお荷物になる僻地を切り離したいという強い願望が隠されている。

海外で特定地域の独立運動が起きる要因として、民族や宗教的な対立に加え、こうした中央対地域の経済格差が挙げられる。

疲弊した地域への経済的援助を重荷に感じる都市部(中央)の住民からの不満が高まり、それが新自由主義的な構造改革や緊縮的思考と呼応して地域への経済配分を縮小させ、今度は地方が不満を募らせて地域対立が勃発するという構図をもたらすのだ。

だが、これからは、地方が中央に反発する形での独立というお馴染みのパターンではなく、中央が地方というお荷物を切り離すという形での独立もあり得るのではないか。

机上の空論しか言えない評論家が、無責任に地域の独立を促すのではなく、強力な経済基盤を持つ中央(首都)が地方というお荷物を切り離して自ら独立することがあってもよい。

九州や北海道のような僻地ではなく、日本からの東京独立論である。

ニューヨーク大都市圏の1.4倍もの経済規模を誇る大東京圏は、世界第2位のムンバイ都市圏に1,000万人以上の差をつける人口集積を誇り、そのGDPは日本全体の20%近くに達し、国単位で換算しても世界で14位前後とメキシコや韓国を上回りオーストラリア並みの経済規模を有している。

そんな東京に寄生する政財官や知識層の連中は、常に地方を中央にたかるお荷物扱いし、地方に税や富を配分するのは怠け者に小遣いを与えるのに等しいくらいの感覚でモノを語ってきた。

東京は、江戸幕府開府以降400年以上の長きに亘り日本の首都として、官民問わず莫大な量の投資が行われてきた。

そのおかげもあって、いまでは東京都だけで1,300万人、大東京圏という括りなら3,400~3,700万人もの人口規模を抱え、国の行政・立法機能のほぼすべてを保有するほか、国内の上場企業の50%近く(関東地域でカウントすると60%近く、2位の大阪は12%前後)が集中している。

これなら、鼻をほじりながら欠伸をしていても、富や人が向こうから勝手に入ってこようというもので、何の苦労もない。 

そんな場所で日がな過ごしておれば、デフレだ不況だと愚痴をこぼす地方の連中がだらしなく映ってしまうのだろう。

関東圏が日本のすべてだと勘違いしている都民の大半は、“公共事業だ?俺たちが稼いだ金(税金)であいつらを養ってやってるのに、まだ足りないのかっ、この怠け者がっ!!”くらいのことは思っているだろう。

なら、東京こそ独立すればよい。

カネ喰い虫でお荷物なだけの地方を切り捨てれば、さぞや身軽になれるだろうし、私たちの税金とやらも自分たちのために使えるようになる。

新幹線も空港も高速道路網もあり(ディズニーランドは海外になってしまうが…)基本的なインフラに不足はあるまい。

東京都の製造業の出荷額は約8兆円と全国シェアの3%を占めているが、意外なことに、ピーク時の1990年と比べて40%未満の水準に落ち込んでいる。特に23区内は30%未満にまで急激な落ち込みを見せている。

バブル崩壊後の強烈なデフレ不況に見舞われた中小規模の企業が、国内他所と比較した人件費や地価の高さから地方や海外への流出を余儀なくされたものと推察されるが、製造業出荷額の業種別割合でも、ネット化や電子化との競合で付加価値の低下が課題になっている印刷業がトップ(約16%)を占めているなど産業構造の足許は意外に脆い。

この他にも、他の道府県からの人口流入によって人口増加を維持してきたものの、出生率は1.0~1.1と全国最下位を独走し、近い将来には少子高齢化待ったなしの状態にある。

だが、土地の狭さや地価の高さにより都内に特養施設が立てられず、杉並区ではやむなく伊豆半島に特養ホームを立てざるを得なくなるなどという問題も発生している。

大した生産力もなく消費するだけしか能がない東京は、食糧やエネルギー、工業製品の原材料などほぼすべての品目を他所からの輸入に頼らざるを得ないため、いざ独立となれば大幅な輸入超過を余儀なくされ、多額の貿易赤字を抱えることになるだろう。

己の富の源泉が何処にあるのかを理解しようとしない愚か者は、根拠のない自信の上に胡坐をかき、過剰な自己肯定の末に身を亡ぼすことになる。

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