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2014年10月

2014年10月22日 (水)

昭和の価値観

消費税8%への増税による春先からの景気悪化に加えて、第二次安倍政権の女性閣僚辞任問題が重なり、消費税再増税に対するバカマスコミの論調も慎重な姿勢に変わってきた。
マスコミ各社の世論調査でも、10%への再引き上げには6~7割が反対している。

政権与党内にも再引き上げに慎重な意見 (その本気度はかなり疑わしいが…) が噴出しているそうで、安倍首相の判断に何らかの影響を与える可能性はある。

政府機関から発せられる「景気は底堅い」とか「景気は緩やかに回復基調にある」という大本営発表も、『スーパーの売上高6ヵ月連続減少(日本チェーンストア協会)』、『白物家電出荷額4~9月6.3%減(日本電機工業会)』といった厳しい現実の前には空しく聞こえる。

両会とも、足元の不調を天候不順のせいだと言い訳しているようだが、百歩譲って天候不順が業績に何らかの悪影響を与えたとしても、所詮は天候に左右される程度のパワーしかない見せ掛けだけの景気回復だったということだろう。

エネルギーや食糧価格の高騰に加えて、アベノミクスの恩恵が一部にしか波及していない現状から、国民の多くは10%への再引き上げに慎重な見方をしており、この点ではおおよそのコンセンサスが共有されるだろう。

しかし、経済環境の悪化への対応策として、新たな経済対策(財政出動)を求める段になると、皆の意見がガラッと変わる。

アベノミクスの恩恵を享受できていない地方への経済対策、雇用の不安定な若年層への就職支援にまで話が及んだ途端に、あちらこちらから反対意見が噴出するから不思議なものだ。

「怠け者だらけの地方、原発利権にタカって甘い汁を吸った地方に、またカネをバラまくのか」、「仕事なんて探せばいくらでもある、仕事を選り好みするな」、「若いうちは給料が安くても我慢すべきだ」、「仕事が見つからないなら起業すればいいじゃないか」という、もはやお約束の域に達した罵詈雑言が浴びせられる。

この手の妄言を気軽に吐く世間知らずのバカ者は、極めて近視眼的かつ前時代的な思考力しか持っておらず、若者やサラリーマンの努力不足論や自己責任論をタレ流すしか能がない。

彼らの思考は、バブル崩壊以前で停止したままだから、「佐川急便のドライバーでもやれば月70万円くらいは簡単に稼げる」、「不況を言い訳にするのは怠け者だ、俺の周りにいる起業家はみんな儲かってるよ」なんて甘っちょろいことを平気で言う。

だが、実際の佐川急便のドライバーの求人条件を確認すると、月収70万円なんて夢のような給料を貰っている者はいない。

同社の東京・神奈川・千葉・埼玉地区の求人条件を確認すると、勤務時間7:30~16:30(残業あり)、月給16~21万円(+残業・深夜手当)、賞与なし、休日は月9日という非正規雇用並みの待遇でしかない。

一応、正社員のモデル給与が月収36万円になっているが、これとて月給20万円に諸手当と残業代9万円余りを加算しないと到達しない。

首都圏でさえこの程度なのだから、他の地方の給与水準など推して知るべしといったところか。

現実はこんなものだが、昭和の夢の時代を忘れられないポンコツには理解できないだろう。

さて、この後は、『仕事が見つからなければ起業しろ』という効果のない妄言を検証してみる。

中小企業白書のデータによると、わが国では、年間平均で約6万社(個人事業者含む)が新規開業する一方で、約26万社が廃業する。

70年代後半には5.9%に達した開業率は、ここ数年は2%を割り込み1.4%にまで低下している。

一方、廃業率は70年代後半の3.5%から最近は6.1%と、開業率とは逆に増加している。

何かと華やかなイメージのあるバブル期でさえ開業率は3.5%、廃業率は4.0%と開廃業率が逆転していたのだから、15年以上のデフレ不況を経た現在の数値が冴えないのも無理はない。

因みに、1986年以降、企業数は一貫して減少しており、最近では年間3%程度の割合で減っている。

起業後の企業の生存率について、ネット上に流布するデータでは、1年目40%→5年目15~20%→10年目5~6%とかなり厳しい値だが、中小企業白書(2011年)のデータでは、1年目97%→5年目82%→10年目70%と大きく異なっている。

筆者の実感では、1年目70%→5年目50%→10年目35%といったところだが、これらは、あくまで企業が存続しているというだけのデータで、その中味にまで踏み込んだものではない。

企業として存続はしているが、赤字続きで毎年のようにリストラしたり、社長の個人資産で補てんしたりして何とか持ちこたえているような企業が殆どだ。

筆者の取引先にも、小規模な企業なら社長の年収が300万円以下、つまり、生活保護を受けた方がマシな企業がザラにある。(おまけに年中無休の状態)

日本政策金融公庫総合研究所の調査結果によると、起業者の年代は30歳代が40.2%と最も多く、次いで40歳代29.8%、50歳代15.5%、起業直前の職業は会社役員や正社員などが85%近くを占め、何らかの社会経験や業務経験を積んだ者が多い。

ズブの素人ではなく、経験や知見・人脈を相応に有した状態で起業する者が多いにもかかわらず、起業後の売り上げ状況に関する問いには、「増加傾向」との回答が26.7%しかなく、「横ばい」が54%、「減少傾向」が19.3%と売上を伸ばすという事業の初期段階で躓いているのが判る。

東京商工リサーチのデータによると、企業倒産の要因として最も多いのは「販売不振」で、全体の70%近くを占めており、ドラマの題材になりそうな「放漫経営」や「連鎖倒産」みたいな派手な倒産は、せいぜい5%程度に過ぎない。

売上の低迷という血液不足が、企業経営には最も堪えるという当たり前の結果が出ている。

売上を上げることこそが、事業の基本であるとともに事業の根幹を成すものなのだが、日本の名目GDPは2007年をピークに低下、あるいは、横這い状態で経過してきた以上、マクロ経済の一構成員に過ぎない企業、とりわけ事業基盤の脆弱な新規企業が売上を伸ばすことは極めて困難だっただろうことは想像に難くない。

「俺は寝る間も惜しんで働いたぞ、仕事が無いなんて言うやつは甘えてる」、「デフレ、デフレって言い訳する奴は怠け者、デフレでも成功している経営者はいくらでもいる」と嘯く経営者は多い。

だが、俺は成功できたんだから、他の奴も努力すれば成功できるはず、というのは自分勝手な妄想でしかない。

名目GDPが増えていないということは、日本という国全体の経済のパイが増えていないということだ。

経済のパイが頭打ちの状態で、新たな成功者が出現すれば、その分だけ自分のパイが奪われるだけだ。船の定員は決まっているのだから、新たな乗客を乗せようとすれば、誰かが下船しなければなるまい。

その“誰か”が自分になるかもしれないことに気付けない間抜けな経営者に限って、新たな乗客を招き入れようとするから、まさに失笑ものである。

ユニクロとかニトリを例に挙げて、デフレでも工夫次第で業績を伸ばせると強弁する者もいるが、そんなことは当たり前だ。

最下位のプロ野球チームにも3割バッターがいるし、ホームラン王だっているだろう。

個々人や個々の企業と全体の成績とは必ずしも連動しないくらい子供でも判る。

日本には1億2千万人もの国民がおり、400万社以上の企業がある。これだけあれば、業績の良い企業が10~20万社あっても何の不思議もない。

そんなごく一部の特殊な成功例を持ち出して、経済全体を語るなど全く無意味な行為で、何の説得力もない。

デフレ下でも成長している企業の多くは、他の国内企業のパイを奪って成長しているだけの寄生虫型企業が多い。

そんな例を真似しても、互いに傷つけ合うだけの不毛な争いに終始し、経済全体のパイは拡大しない。

“努力すれば成功できる”、“理に適ったマーケティングをすれば売上を伸ばせる”みたいな単純な成長思考は、昭和の時代には当てはまっても、マクロ経済の成長が止まった現代では通用しない。

自らが『時代遅れの昭和の価値観』に染まり切っていることに気付かない愚か者ほど、マクロ経済の成長が当たり前だった昭和時代を否定しようとするものだ。




(※)コメントをくださった皆様、ありがとうございます。

リフレ派の連中が、米FRB量的緩和終了に関してコメントを発しようとしないのを微笑ましく思っています。

2014年10月17日 (金)

「消費税は安定財源」という妄想

相変わらず国内経済の動きは冴えない。

9月の首都圏マンション販売戸数は、3,336戸に止まり前年同期比44.1%と大幅に減少している。

消費税増税前の駆け込み需要の反動減がいまだに尾を引いており、これで前年比減少は8ヵ月連続となり、さらに2ヵ月連続で前年比40%以上の減少となったそうだ。

アベノミクス初期段階の恩恵を蒙った筈の首都圏の住民ですらこのていたらくなのだから、リフレ派のバカが強弁していたトリクルダウンやタイムラグとやらは、一体何時になったら具現化するのかと気が遠くなる。

 

ここ数日は、頼みの綱の株価も欧米市場の暴落につられて15,000円を割り込むなど、世界経済の見通しに不透明感が漂っている。

株価は、あくまで経済活動の状態を観る指標の一つに過ぎないが、その動きからユーロ圏やアメリカの景況感悪化懸念が広まっている兆候を読み取ることができる。こういった状態が長く続けば、やがては、欧米市場を主要マーケットとする新興諸国にも悪影響を及ぼすだろう。しかも、欧州では、頭の固いドイツが、頑迷に財政政策の実施を拒んでおり、事態を打開する糸口は見えない。

幼稚な新自由主義者の連中は、海外マーケットの開拓にしか眼が行かないようだが、低迷するマーケットの状況を見てどんな言い訳をするのか訊いてみたいものだ。

 

さて、安倍首相は消費税の10%への再増税を12月にも判断すると伝えられているが、増税の言い訳になりそうな指標はほとんど見当たらない。(そもそも、恒久的な増税判断を四半期の経済状況を基に判断すること自体が大間違いなのだが…)

「民主党時代に比べれば株価は上がっている」というお約束のセリフも、もはや負け犬の遠吠えにしか聞こえない。

安倍ファンの連中も、さぞやフォローに頭を痛めていることだろう。

 

だが、首相をはじめ与党や官僚機構サイドに再増税見送りの動きは見えない。

現時点では、このまま12月に再増税宣言を強行するものと予想する。

何と言っても、残り2ヵ月を切る段階に至っても、増税法案廃案の準備作業の兆しすら窺えないし、“赤いストール・うちわ・歌舞伎座”という攻撃アイテムを手に入れた野党側も、それを武器に再増税見送りを迫るような迫力はない。あくまで、個々の大臣への攻撃に止まり、局所的な戦功狙いに終始している。

これでは、首相がさっさと問題のある大臣の首を挿げ替えてしまえば、致命傷を負わせることはできないだろう。

 

確かに、4月の増税後の経済指標は冴えない。最後の砦であった株価も落城寸前だ。

第一・第二の矢の効果が切れかかっているところに、消費に対するペナルティーを科したのだから、それも当然のことだ。

だが、この程度では、首相が再増税を延期することにはならないだろう。

「日本は財政危機」、「消費税は社会保障を支える重要な財源」、「消費税は安定財源」という伝家の宝刀が温存されている限り、そう簡単に再増税の旗を降ろすことはない。

 

元来、国民や世論は、国の借金とか財政赤字という言葉にめっぽう弱いから、口では文句を言いながらも、増税への反発は予想以上に低いものと思われる。

反原発運動、集団的自衛権、特定秘密保護法みたいな左翼の闘争意欲を擽るビッグイシューに比べれば、増税に対する怒りの度合いなどたいして大きくはない。

増税してしばらくは、生活が大変だ、弱者切り捨てだなどと愚痴をタレるだろうが、社会保障費や国の借金という印籠を突き付けられた途端、渋々と生活防衛に舵を切り始め、その矛先は官僚の無駄遣いや公共事業叩きに向けられるだろう。

 

今回は、消費税増税の言い訳ワードのうちでも、頭の悪い経営者層がよく用いる「消費税は安定財源」という妄言について検証する。

消費税は平成元年に導入されて以来、510兆円の水準を保ってきた。おおむね平成2年~8年の間は5~6兆円、平成9年~25年の間は910兆円をキープしており(今年は15兆円余りの税収を見込む)、これが安定財源と呼ばれる所以だろう。

だが、これを『安定』と呼ぶべきだろうか。

 

上記のように、消費税収は3%5%8%という税率引上げのタイミングでこそ増えているが、税率変更後はほとんどイーブンペースに近い動きをしている。視点を変えると、税収は階段状の軌跡を辿る動きしかできず、それを増やそうとすれば税率引上げしか手がないというまことに厄介な税金だとも言える。

本来なら、経済の成長に伴い民間の消費活動が拡大し、同時に消費税収も漸増するはずだが、現実はそうなっていない。税率引上げ後の税収グラフは平行線を描き右肩上がりになることはない。

 

消費税は、くどくど説明するまでもなく非常に逆進性の高い税金であり、景気低迷期の税率引上げは、低中所得層の購買力を削ぎ、経済のデフレ化に強く作用する毒薬である。

毒薬ゆえに、経済成長にマイナスの負荷を掛け、経済の拡大を阻害する。

それは、平成元年の消費税導入以降、名目GDPの成長率が鈍化し、平成9年の税率引上げ以降、成長すら止まってしまったことからも明らかだ。

消費税が経済活動の足を引っ張り、それが原因で消費税収が頭打ちになるという悪循環に陥っている。

 

日本以外の国々では、経済成長やそれに伴う税収増加が当たり前の世界で、アベノミクス効果で平成26年度の税収が50兆円に増えそうだ(これでもピーク時より10兆円も少ない)と大喜びするなど、海外から見れば失笑もののレベルだろう。

安定財源と持ち上げられてきた消費税収も、15年もの間910兆円辺りをウロウロするだけで、これでは安定財源どころか単なる「固定財源」、あるいは、一向に増えない「不良財源」に過ぎない。

 

経済の世界では、変化のないことを「安定」とは呼べない。

拡大や成長が当然の世界において、「一定」とか「増えも減りもしない」ことを安定と呼ぶことはできない。成長する他国との相対比較において、変化しないことは「後退」や「敗北」の部類に分類される。

本当の安定財源とは、昭和55年から平成元年までの10年間に大幅に伸びた所得税(10.8兆円→21.4兆円までほぼ倍増)や法人税(8.9兆円→19兆円まで110%以上の伸び)みたいなものを指すのであり、税率を上げなければ増えないような税源は安定財源でも何でもない。

 

そもそも、肝心の経済政策をほったらかしにしておいて、安定的な税収に頼ろうとすること自体が間違っている。

税率を弄って税収を増やそうとするのではなく、税の源であるGDPを増やすことにこそ精力を傾けるべきだ。。

 

妙なヒロイズムに酔って国民に痛みを押し付け、(偽りの)安定財源を確保できたと仲間内で得意顔をするバカな政治家が後を絶たない。

だが、そんな逆噴射政策に昏倒して政治生命を掛けるなど愚の骨頂だ。

大規模かつ長期的な財政金融政策という当たり前の経済政策を実行し、経済を巡航速度に乗せて拡大させ、消費税のみならず全ての租税が、居眠りをしていても着実に増えるような環境づくりこそが重要だろう。

2014年10月10日 (金)

身を切る改革が経済を蝕む

6日に開かれた衆議院予算委員会で、「維新の党の松野国会議員団会長は(安倍首相に対して)“消費税の引き上げの前に、やはり、われわれはまず、身を切る改革というのが必要なのではないでしょうか。国会議員定数の大幅の削減を約束されたのではないでしょうか”とただした。」(FNNより)

 

「“経営努力はどうなっているのですか”6月中旬、経済産業省幹部は、再値上げ申請の相談に訪れた北海道電力の担当者に追加的な経営合理化策を示すように迫った。景気への影響を懸念する経産省にとって、合理化策の積み増しで値上げ幅を圧縮するのは当然のこと。だが、北電担当者は明確に答えることなく退去し、経産省幹部は“宿題に全く手をつけていないのに、申請したいなんて何なんだ”とあきれ顔で語った。」(北海道新聞記事より)

 

消費税再増税や原発停止の影響による電力料金値上げ騒ぎを契機に、またもや『身を切る改革の嵐』が吹き荒れようとしている。

 

「身を切る改革」とは、言うまでもなく、給与や経費の削減・待遇の切り下げなどを指すのだが、日本人は、市井の人々から国会議員まで(上から下まで)、この身を切る改革が大好きで、都合の悪い政策を押し付けられると、反射的にこのセリフを吐く者が多い。

 

まさに、バカのひとつ覚えのようなもので、「消費税率引き上げに国民の理解を得るために、国会自らが身を切る改革を…」とか、「各電力会社も、電気料金値上げの前に身を切る改革を、民間企業ならそれが普通だ(電力会社は民間企業なのだが…???)」といった具合に、頭の悪い連中(ほとんどがバカマスコミとそれに釣られる暇人)が、身を切る改革の大合唱を始める。

だが、それも一時のことで、一旦、増税が断行されてしまえば、文句を言う者はグッと少なくなる。

 

頭の悪い連中にとって重要なのは、増税とか電力料金引き上げを阻止することではない。それを口実に、政治家や官僚、電力会社などといった気に喰わない連中に身を切らすことこそが大切なのだ。

身を切る改革とやらを政治家に求めるのは、増税を阻止するための牽制球ではない。

むしろ、くだらぬ改革ごっこを強要することこそが本丸なのだ。

身を切る改革という言葉が口をついて出てくる時点で、内心では増税にGOサインを出しているようなもので、自分が満足できるコストカットの実行という付帯条件さえクリアされれば、あとは好きにしてください、といったところだろう。

 

元々、増税阻止よりも歳出の縮減や削減に快感を覚えるような変わり者は、身を切る改革を求める声に政治家が屈して(というより、構造改革教に染まった筋の悪い政治家は、これ幸いとばかりに、喜々として)、歳費の削減や公務員給与の削減、無駄な歳出のカットに取り組む姿勢を見せると、パタリと批判を止めてしまうものだ。

 

彼らにとっては、政官業に身を切らしたという事実や実績こそが大切だから、政府が要求を呑んでコストカットをしさえすれば、どんな悪政や苛政であってもそれを免罪符にしてしまう。

中東あたりの卑しいテロリストと同じで、口先では大義だ正義だと叫びながら、いざ身代金さえ手に入れてしまえば、後はそそくさとトンズラするのみだ。

 

改革バカどもが、なぜ、身を切る改革の押し付けに奔走し狂騒するのかは、筆者には到底理解できない。

改革がもたらすコストカットは、巡り巡って、自らの収入減や待遇の切り下げをもたらすはずだが、なにせ世の中の仕組みを理解できない短視眼な連中ゆえ、その行動や思考回路は常識では推し量れない。(端的に言えば、単純な損得勘定もできないバカだということだ)

 

彼らは、ときに愛国者を装うこともある。財政危機の淵にある国家財政を救うには、身を切る改革は避けて通れないと強弁する。

 

だが、歳費や公務員給与の引下げや財政支出の削減は、実体経済や地方経済への血流を止める行為に等しく、景気の停滞やスタグフレーションを招来するだろう。

また、まず隗より始めよとばかりに、くだらぬ行政改革や構造改革騒ぎに狂騒すれば、それが民間にも伝播し民需を大きく後退させる。

同様に、増税や電気料金の値上げの断行も日本経済の足を強く引っ張ることは自明のことだ。

そして、こうした悪手の影響を最も大きく受けるのは、決まって国民や国内産業なのだ。

 

「増税か、身を切る改革か」という罰ゲームしかない二者択一を政治家に迫るのは、完全なる思考停止である。

選択肢として相応しい政治や政策オプションは、他にいくらでもあるのだから、国民はバカマスコミの戯言を鵜呑みにせず、常識を踏まえて、少しは自分の頭を使って考える努力をすべきだ。

(※)拙ブログをご覧いただいた皆様、コメントいただいた皆様、いつもありがとうございます。

コメントを拝見すると、やはり、三橋貴明さんのブログ経由でお越しいただいた方が多いようですね。

とてもありがたいことです。

毎日、鋭い視点から問題提起してクオリティーの高い記事を投稿しておられる三橋さんには到底及びませんが、今後ともよろしくお願いいたします。

また、いただいたコメントが、ブログを書いた本人以上に記事の内容をよく把握しておられて驚いています。

2014年10月 3日 (金)

危機感のない国民たち

今年4月の消費税増税後の経済指標は、相変わらず冴えない状況が続いている。

・8月の毎月勤労統計調査による現金給与総額平均値274,744円(前年同月比▲2.6%/実質値、14カ月連続のマイナス)
・8月の1世帯当たりの消費支出282,124円(前年同月比▲4.7%/実質値、5カ月連続のマイナス)
・8月の鉱工業生産指数95.5(前月比▲1.5%、2か月ぶりに前月を下回る)
・8月の新設住宅着工戸数73,771戸(前年同月比▲12.5%、6カ月連続のマイナス)
・2014年度上期(4~9月)国内新車販売台数247万台(前年同期比▲2.8%)
・9月の大手百貨店販売実績で5社のうち3社が販売減少(増収の2社も増税に伴う価格アップ分を除くと実質増収は1社のみ)

本格的な景気回復には程遠い状態で、税率や原材料等のコストアップが先行したのだから当然の結果とも言えるだろう。 少しだけ熱が下がった重篤患者に無理なトレーニングを課すようなもので、このままでは哀れな患者の集中治療室への逆戻りは避けられまい。

指標の中には、名目賃金の上昇を示すものもあり、アベノミクスの二本の矢(無論、第三の矢は除外)の成果の残滓を感じ取ることもできる。
だが、せっかくの景気回復の芽も、先の消費増税という悪手により掻き消されようとしている。リフレ派の連中の愚痴ではないが、まさに『消費税増税さえなければ…』といったところか。

だが、これだけの悪材料が表面化しても、与党や政権サイドの認識はボヤけたままだ。
景気悪化の言い訳こそ、「想定の範囲内」から「天候不順や猛暑の影響」へと変化したが、10%への再増税断行への決意に揺るぎはないようだ。

ここで、安倍政権が強弁する「天候不順や猛暑の影響」について簡単に確認してみたい。
まず、降雨の影響について、気象庁のデータから全国7都市(札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡)の降雨日数を昨年と比較してみた。(今年と昨年の6~8月の合計値/7都市分)
・0ミリ以上の降雨日数合計 今年454日(昨年比+58日)
・1ミリ以上の降雨日数合計 今年253日(〃+61日)
・10ミリ以上の降雨日数合計 今年107日(〃+13日)
という結果で、確かに今年は雨の日が多かったようだ。
ただし、10ミリ以上降った日数は大した違いはなく、せいぜい1都市あたり1.8日くらい増えた程度にすぎない。

続いて、アメダスによる短時間豪雨発生回数を比較する。
気象庁には、全国の1時間降水量50ミリ(非常に激しい雨)、80ミリ以上(猛烈な雨)の発生回数のデータがある。
それによると、今年1~8月の発生回数は164回/50ミリ以上、10回/80ミリ以上あるそうだが、昨年1年間の発生回数(237回/50ミリ以上、25回/80ミリ以上)であり、経過した月数換算で比較すると、50ミリ以上で+6回、80ミリ以上で▲6回とさほど変わらない。

また、全国の台風接近数では、今年6~9月の9回に対して、昨年同期も9回と同数である。

ついでに、気温を比較してみると、さきほどと同様に全国7都市の合計値は次のようになる。
・30℃以上(真夏日)の合計 今年268日(昨年比▲56日)
・35℃以上(酷暑日)の合計 今年23日(〃▲83日)
という結果で、夏の初め頃には、バカマスコミが「今年は異常な暑さだ」と散々連呼していたが、ふたを開けてみると、気象庁の長期予報どおり今年は冷夏だったようだ。
総じて、今年の夏は弱めの雨の日が多かった(特に西日本で)ものの、比較的過ごしやすい気温で経過したと言えるだろう。

天候と消費の関係については、経産省の研究資料が発表されており、 (http://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/bunseki/pdf/h19/h4a0803j3.pdf)
“降水による消費減少の影響は被服及び履物で大”としているものの、これは、あくまで休日限定での話であり、平日では有為な差は現れていないと分析している。
また、気象要因の消費減少への寄与は最大でも月2,000円ほどに過ぎず、約3,000円にもなる理論値との差異を説明するに当たり、全ての原因を気象に帰するのは無理があるという趣旨の記載もある。
端的に言うと、天候不順が消費に与える影響はたかが知れている、ということだ。

仮に、景気が本格的に回復し、人々の消費マインドが好調な状態ならば、リフレ派のバカが大好きな「個別価格と相対価格の話」のように、多くの人は、雨で外食を取り止めても浮いたお金で宅配ピザを頼むだろう。
つまり、外で使わなかったお金を、別の何かに使うような行動が一般化するはずだ。
現時点でそういった動きが顕在化していないということは、天候云々ではなく、単に国民の所得が減っている、あるいは、期待したほど増えていないというだけのことだろう。

先日、国税庁から発表された平成25年分民間給与実態統計調査では、給与所得者数が4,645万人(前年比+2.0%)、平均給与は414万円(同+1.4%)と回復傾向が覗える。
しかし、これはあくまで、アベノミクスの第一と第二の矢の効果が発揮された昨年の実績であり、消費税が増税され、第三の矢が大手を振って歩き始めた今年の数字ではない。
調査内容を検証すると、正規雇用の平均給与は473万円と前年比で1.2%増えたが、一刻も早い待遇改善が求められる非正規雇用の平均給与は168万円(正規雇用の1/3くらいしかない!)と逆に0.1%減少している。
しかも、正規雇用の給与所得者数が3,056万人と前年比で1.5%増えたのに比べ、非正規雇用は1,040万人と5.3%も増えているにもかかわらず、一向に待遇改善が図られていない。
これでは、単に不安定な労働条件を強いられる層が増えただけで、何の解決にも至っていない。

また、給与階層別の人数を調べてみると、給与所得者全体の4%未満に過ぎない1,000万円超の高所得者層の数は昨年から13万人余り増えており、これは、給与所得者全体の増加数89万人の15%にも達する。
つまり、アベノミクス効果の初動段階では、メリットを享受できる層は一部の高所得者層に限定されており、待遇改善を急ぐべき層にまで浸透していないということだ。
にもかかわらず、消費税増税や原材料・食料・エネルギー価格の高騰による無差別の攻撃に曝され、多くの国民は財布の紐をきつく縛らざるを得なかったのだろう。

だが、こうした惨状に対する政府の危機感はゼロに等しい。
4-6期のみならず7-9期の経済指標も悪化の症状を示しており、駆け込み消費の反動減からのV字回復を夢想していた安倍政権は、まさに煮え湯を飲まされた気分だろう。

しかし、10月1日の経済財政諮問会議で、来年度の予算編成にあたり、公共投資の絞り込みや社会保障の効率化を改めて確認するなど財政健全化色の強い方向性を打ち出すなど、煮え湯どころか、ここ最近の経済指標の悪化などどこ吹く風かと、何の痛痒も感じていないようだ。

いくら景気にブレーキが掛かっても、いまのところ安倍政権は10%への再増税を諦める気配はない。
今回の臨時国会で来年度の政策の目玉として打ち出そうとしている「地方創生交付金」(5年間で1兆円といわれている)で、厳しい現状を変えられると踏んでいるようだ。
たかが年間2,000億円程度の追加予算、しかも、その原資は他の既存予算からの振り替えで賄おうとしているようなチンケな施策で、再増税による巨大な負のインパクトを打ち消そうというのだから片腹痛い。
恐らく、各省庁は、事業効果が出ずに苦労している既存予算の延命のために、何とか屁理屈を付けて地方再生枠に叩きこもうと必死になるだろうが、霞が関界隈の小さなコップの中の縄張り争いなどどうでもよいことだ。

安倍首相は、先の衆院本会議での所信表明演説で、『「ふるさと名物」を、全国区の人気商品へと押し上げる支援を、さらに強化いたします。地域ならではの資源を生かした、新たな「ふるさと名物」の商品化、販路開拓の努力を後押ししてまいります。』と地域振興への配慮をのぞかせた。
地方創生プランの目玉事業の一つでもある「ふるさと名物応援事業(経産省)」は、“中小企業、小規模事業者が行う「ふるさと名物」等の開発、地域ブランド力を高める取組、着地型観光の取組、海外展開等を支援”する事業だそうだが、こんなものは何の新鮮味もなく、10年以上前から繰り返してきた既存事業(新連携事業・農商工連携事業・地域資源活用事業ほか)の看板の付け替えに過ぎない。
経産官僚のアイディアなどこの程度のものなのか、と呆れるばかりだ。

どうせ、事業の中味も、地域の資源や余りもの(食物残渣や廃棄物)を使って、誰も買わないようなくだらない商品開発を後押しするようなあくびが止まらぬ内容だろう。
得てして、この手の補助金は、営業経費や生産設備の購入費は補助対象と認められないが、省庁に提出する書類は膨大な量になるなど、中小企業や小規模事業者にとって非常に使い勝手の良くないもので、人的ゆとりに乏しい地方の中小企業には極めて荷が重く、初年度から予算枠を大幅に余すことになるだろう。

くだらぬ構造改革騒ぎに端を発する長い停滞から、再び歩を前に進め始めた日本丸は、第三の矢や消費税増税という嵐によりエンジンに大きな損傷を負ったようだ。
しかし、艦橋にいる間抜けな司令部の連中は、修理代を惜しんで故障を認めようとせず、実際に船を動かす機関士や操舵手、甲板員をリストラしながら、猛烈な嵐が待ち受ける海峡に突っ込もうとしている。

このままでは、日本丸の難破は避けられまいが、肝心の乗客は実にのんびりしたもので、いまだに司令部や艦長の手腕に期待しているバカ者が多いようだ。

彼らが現実に目覚めるのは、恐らく、冷たい海の中に放り出された時だろう。



(※)コメントをいただいた皆様、ありがとうございます。今後とも、ご愛読のほど、よろしくお願いいたします。

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