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2014年11月

2014年11月26日 (水)

成長戦略は衰退戦略

中小企業の団体としては商工会議所や商工会が知られているが、これらとは別に中小企業家同友会(中同協)という組織がある。
通称「同友会」と呼ばれ、商工会議所と同様に、都道府県ごとに地方組織がある。ただし、会への加盟は企業単位ではなく、あくまで経営者単位(個人)で行う点が、商工会議所等の経済団体と異なっている。
全国の会員は約43,000者、平均的な企業規模は、従業員30名、資本金1,500万円とされている。

中同協のHPによると、「同友会は、(中略)政治にたいする同友会の姿勢は、会の目的を達成するために、どの政党ともわけへだてなく接触しますが、会としては特定の政党と特別な関係をもたないようにします。会員個人の思想・信条の自由は当然のこととして保障されています」と明記され、不偏不党の姿勢を打ち出している。
(実際は自民党寄りの会員が多いが…)

同友会は、商工会議所や商工会みたいな団体とは一線を画す、いわば、“経済界の党内野党”的な立場で活動することが多く、行政機関とも一定の距離を置く一風変わった団体なのだ。
筆者も、会員の経営者を幾人も知っているが、よく言えば、行政に依存しない自主独立の気風を持ち会員同士の切磋琢磨に熱心だと言えるが、総じて、ヤル気が空回りしがちで周囲の意見を聴かない独りよがりな経営者が多いという見方をしている。

彼らは、新商品開発や研修、人材育成に熱心だが、いつも、誰も買わないようなつまらぬ商品ばかり作り、失敗を繰り返している。
自主独立を旗印に掲げるだけに、金融政策や公共事業のような政府主導の経済政策には批判的な意見を持っている。
例えるなら、青年会議所の青臭い連中から少々政治臭を除いた程度の集まりと言ったら理解しやすいだろうか。

この同友会の会長が、今回の衆院選に当たって次のようなコメントを発している。

「当会の景況調査結果でも、前年同期比の業況判断DI値は、7~9月期にさらに悪化し、次期、次々期の見込みもマイナス予測で、今後も回復の兆しは見られません。円安等による仕入れ価格の増大や採用難は経営上の大きな問題となってきています。また、同調査では、この1年半「借入を増やした」企業は3割にも満たず、「異次元金融緩和」の効果は6割が「感じない」という結果です。 (中略) 総選挙に当たって、各党および各候補者のマニフェストや公約には以下の内容が盛り込まれることを期待します。

1.法人減税の代替財源としての外形標準課税適用拡大や中小企業税制の縮減などは中小企業の事業意欲をそぐものであるので、将来にわたって中小企業への課税強化を行わないこと。

2.消費税率引き上げの条件である「経済状況の好転」(景気条項)を遵守し、家計や中小企業の指標など社会全体に好況感が行きわたるまでは、消費税の10%への引き上げを行わず、引き上げ時期および実施すべきかどうかについては再検討すること。

3.円安等による仕入れ価格の増大について価格転嫁できるよう政策的に配慮すること。

4.大企業からのトリクルダウン効果にのみ依存するのでなく、直接中小企業振興につながる経済政策をすすめ、全国津々浦々に景気効果が出るようにし、地域の活性化を図ること」

彼らの主張のうち、異次元緩和や円安の政策効果がほとんど役立っていないこと、政府が導入を進めようとしている外形標準課税の拡大が中小企業の経営を圧迫すること、消費税10%への再引上げに強い抵抗感を持っていること、トリクルダウン依存の考え方を採らないこと等といった点は首肯できる。

むしろ、消費税再増税を控えた政府の景気点検会合で、「社会保障の安定的な執行を考えて税率10%は必要」と述べた日本商工会議所の会頭や「3党合意に基づく法律に沿って、粛々と進めるべきだ。足元で景気回復の実感はないが、社会保障の安定は待ったなしの状況だ」と述べた連合会長に比べて、はるかにマシな現状分析力を有していると言えよう。
だが、そんな彼らも、現状の苦境を打破するための解決策となると、急に凡人化してしまう。 (この辺りは、分析一流・対策五流の共産党によく似ている)

同友会が発表した「同友会景況調査報告」には“円安・物価高、不況がらみの二重苦、中小企業を直撃”と主題が振られ、今年4月の消費税率8%への引上げが7~9月期の経済低迷を招き、中小企業が苦境に立たされていると指摘し、現状はアベノミクス発の物価高と不況の共存= スタグフレーションの現出であると断罪している。

レポートには、アベノミクスの効果は一部の大企業に限定され、ほとんどの中小企業は回復基調に乗れず企業間格差は開く一方になっていると分析している。
そして、レポートでは、こうした不況への対応策として、「長期停滞覚悟で強靭な経営体質づくり」と「全社員の創造力発揮型経営への挑戦」が鍵になると結んでいる。
要は、人件費を中心とする更なるコスト削減と新規受注獲得に注力せよという、すでに何千万回も聞かされた空念仏を繰り返しているだけなのだ。

これとは別に、とある県の同友会会長が、外形標準課税拡大を批判するコラムを地元新聞に寄稿しているのを見たことがある。
そこには、外形標準課税拡大の弊害を指摘する文章が並び、その部分は良いとして、「さらなる税負担を強いるという安易な策ではなく、成長戦略によって黒字法人を増やすことこそ、経済政策の腕の見せどころではないか」という結論部分を読み、力が抜ける思いがした。
外形標準課税や消費増税の弊害をデータに基づき具体的に指摘できる分析力を持ちながら、なぜ、成長戦略(第三の矢)が黒字企業を増やすと妄信するのか。

「第三の矢が飛ばなかったことが経済失速の原因」だと寝惚けたことを言っている維新の党と同じく、経済の本質を理解しようとしない夢想家は後を絶たない。

結局、彼らも経営と経済を混同する無間地獄に陥っているのだろう。

前述のレポートに謳われた「全社員の創造力発揮型経営」を担保する新規受注(=売上)を、一体どこから取ってくるつもりなのか。
この点を理解せぬまま、いくら妄想を膨らませても、現実の売上は上がらない。
自社の商品やサービスが売上に転化するには、それを購買する相手と購買に用いられる資金が必要になる。
いくら意気込んでも、それを買おうとする者と買うためのおカネがない限り、売上が立つことはない。
自己満足に塗れた不良在庫が倉庫に積み上がるだけだ。

この同友会みたいに時代遅れのサプライサイダー神話に囚われた田舎者は数知れないが、不況が始まって20年近くになろうというのに、いい加減に目を覚ませと言いたい。

黙って、第一の矢と第二の矢を撃ちつづければ良い。
いま議論すべきなのは、この二本の矢の量と中味のみである。

2014年11月23日 (日)

頼りにならない雨乞い経済学

先週、沖縄県竹富町小浜島で25年ぶりとなる雨乞いの儀式が行われ、神司7人が雨乞いの唄を歌い始めると小雨が降り出したというニュースがあった。

日本の東端に近い小さな村のイベントがニュースになったのも、雨乞いをして本当に雨が降ることが極めて珍しい出来事だからだろう。

 

政界では、安倍首相が事前の報道通り衆院解散を宣言し、面倒くさい時期に選挙が行われることになった。

思い返せば、昨秋に消費税を8%に上げるか否かの判断をするに当たり、テレビ朝日のインタビューに対して安倍首相は、(消費税を8%に引き上げた後の10%への引き上げについて)「経済は生き物だ。(8%)上げた場合、その後の推移を見ながら判断しないといけない。世界経済のさまざまなリスクが顕在化するかどうかも重要なポイントだ。そういうものもよく見て判断していかないといけない」と語っていた。

 

その後、紆余曲折を経て、一旦は10%への再増税の先送りを決めたものの、1年半後の再延期はないと啖呵を切ってしまい、“その後の(経済状況の)推移を見て判断する”とか“世界経済のリスクを見定める”というセリフが何の意味もないものであったことを認めてしまった。

 

安倍首相の口から出た『経済は生き物』というセリフは、マーケット関係者とか経営者が偉そうに経済を語るときに自分に箔を付けようとしてよく使う言葉だが、この言葉を用いる理由は、おおよそ次の3パターンに分類される。

①経済と経営を混同している(半径3m以内で起こった出来事とマクロ経済を混同するバカ)

②自分の経済予測に自信がない、あるいは、予測が外れた時の言い訳として

③経済のダイナミズムを大げさに表現することで、マーケットに通暁している風を装うため

 

えてして、“経済は生き物説”の信者はミクロ経済(自分の身の回りで起こった事)にしか興味を持たないから、「日本のような成熟社会はもう成長しない」とか「これからは成長戦略が重要」、「規制緩和や構造改革をやり抜き生産性を向上させないと日本は滅ぶ」といった妄言を吐く。

 

この手の視野狭窄に陥った田舎者は、生産性UP=コスト削減だと信じて疑わないから、売上向上という経営の根幹を無視して、ひたすらコスト削減に血まなこになる。

無から有を生み出すよりも、既に有るものを削る作業の方が、遥かに容易だからだ。

そして、その標的になるのが、国内労働者の賃金抑制と仕入れ先や下請けに対する苛烈なコストカットなのだ。

経団連や経済同友会の頭のおかしな連中が、様々な政府の諮問会議の場を利用して、自分勝手に工場を海外に移転させておきながら、国際競争力の向上という美名の下に国内労働者の賃金や待遇を奴隷紛いの水準にまで貶めようとしてきたのも記憶に新しい。

 

さて、今回の衆院選挙の争点は、消費税再増税先送りの判断そのものではなく、安倍首相自身が解散後の記者会見で“アベノミクス解散”だと表明したように、アベノミクスの成否ということになる。

 

10兆円規模の補正予算と黒田バズーカ第一弾を打ち出したアベノミクス初期段階の評価はさておき、その後は、小泉バカ政権の構造改革継承路線丸出しの新自由主義的政権運営に傾倒し、規制緩和や構造改革臭の強い政策ばかりを推し進めてきた。

さらに、自信満々に消費税増税という悪手を放ち、未曽有の経済停滞を招こうとしている。

 

ここに至っては、アベノミクスの真髄は三本の矢にあると信じるオメデタイ者も(周回遅れのリフレ派の連中以外に)そう多くはいないだろう。

アベノミクスの原点は、構造改革や規制緩和を軸とする第の矢であり、第の矢と第の矢は、その露払いをするための撒き餌に過ぎない。

 

安倍氏は、同じ会見で、「国民の皆さまの信頼と協力を得て、賛否両論、抵抗も大きいこの成長戦略をしっかりと前に進め、国民生活を豊かにしていく。その決意であります。」と本音を吐露している。

後段の国民生活云々みたいなリップサービス用の定型文はどうでもよく、前段にある抵抗の強い成長戦略をしっかり前に進めることこそが、アベノミクスの真髄だと言ってよい。

 

安倍氏だけではなく、最近の新自由主義的嗜好の強い政治家は、国民の抵抗が強い政策を敢えて行うことに快感を覚える悪い癖がある。

こうしたバカげた行為が罷り通っているのは、彼らの頭が根本的にオカシイこともあるが、不勉強な国民が成長に対する自信を失った挙句に、現実逃避のために自虐的な政策を受け容れやすいことを、その卑しい嗅覚で嗅ぎ取っているからだろう。

 

また、安倍氏は、「本当にあと3年で景気が良くなるのか。それをやり抜くのが、私たちの使命であり、私たちの経済政策であります。」とも述べているが、真に経済成長を実現させる意志などない。

彼らの言う経済政策とは、あくまで、再増税に文句を付けられない程度の最低限の経済環境を整えるための前提条件のことを指しているのであって、国民生活を豊かにしようなどという発想はない。

 

その経済対策の中身を問えば、せいぜい2-3兆円程度の子供の小遣い程度のもので、地域商品券発行などが俎上に上がっている。

しかし、こんなものは、すでに経済産業省の平成27年度概算要求に計上している「ふるさと名物応援券」の焼き直しであり、到底、真面目に検討された内容とは思えない。

再増税への批判をかわすために慌てて言い繕ったのだろうが、それにしても、追加予算を出そうというのではなく、既存予算の付け替えで対応しようというみみっちい発想に呆れるばかりだ。

 

一事が万事こんな調子だから、選挙後も、政権や与党の繰り出す経済政策は全く当てにできないだろう。

早くも永田町界隈では、消費再増税先送りによる財源不足で公共事業費の削減論も出ているそうだから、アベノミクスや今後の経済政策は、第の矢のアクセルを如何に強く踏めるか、という点に力点が置かれるだろう。

 

すでに、円安による行き過ぎた輸入コスト高が問題になっていること、再増税先送りにより黒田バズーカ第二弾が肩透かしにあったこともあり、これ以上の金融緩和政策には抵抗感が強い。

このため、選挙後は、くだらぬ構造改革論議や規制緩和、法人税引下げ論議が横行することになる。

「国内の労働規制を取り払い、安く使える外国人を引き入れ、好きな場所で好きなだけ商売ができ、税金や資金調達コストも下げたんだから、ちゃんと国際競争力をつけろよなっ!」という政府の汚い鼻息がここまで聞こえてきそうだ。

 

だが、世間知らずの政府や与党の連中の思惑とは別に、国内の中小企業や労働者は、増えない、というより、減り続けるパイを巡って毛な競争を強いられ、ますます疲弊していくだろう。

 

経済が生き物であるなら、当然、生命を維持成長させるだけのエネルギーが必要になるはずだ。熾烈な競争に報いるだけのマネー(借りるカネではなく、所得になるカネ)を実体経済に投入しない限り、生産性など上がるはずもない。

 

経済が持つダイナミズムは、空虚な言葉や見返りのない競争からは生まれない。

改革や緩和みたいな実体のない神頼みをいくら続けても、天からは何も降ってこない。

「雨乞い経済学」が通用するほど実体経済はお人好しではない。



(※)

コメントをいただいている皆様、ご愛読いただいている皆様、ありがとうございます。

いよいよ衆院選が始まりますね。

なんとも締まりのない選挙になりそうですが、その過程や結果をバカマスコミがどう報じるのか興味もあります。

2014年11月16日 (日)

増税圧力を跳ね返すには国民の強い自覚が必要

先月下旬あたりから、急遽、衆院解散説が沸き起こり、当初は選挙好きのマスコミによる単なる焚き付けだろうと高を括っていた。


しかし、12月2日公示~14日投開票という具体的な日程もほぼ決まり、自民党幹部も選挙に向けた公約づくりや候補者選びに着手しており、もはや衆院解散→総選挙という流れは確定事項のようだ。

安倍首相は、消費税率10%への再増税先送りの是非を解散の大義にすると報じられ、多くの国民が首を傾げている。(そして、増税先送りの判断をした時点で筆者のこれまでの予想は大ハズレとなる)
大方の予想通り増税決行の是非を問うというのなら理解できるが、いまや国民の7割以上が増税に否定的な情勢下で、敢えて解散総選挙をする意味があるとは思えないからだ。

国民の大半が賛意を示す政策判断(しかも、常識的に見ても当然の判断)を下すのに、わざわざ民意を問う必要性はないだろう。
実際に、自民党の岐阜県連が、安倍首相が衆院解散総選挙に踏み切ることに反対する決議をするなど、身内からの反発も強い。


一部には、三党合意の破棄につながる増税先送りを断行するには選挙での信認が必要との声もある。
だが、そもそも、国民の声を無視して勝手に決めた三党合意など、単なる政治家同士の“内輪のお約束”に過ぎず、そんなものを破棄するのにわざわざ国民に信を問う必要はない。
合意内容が現状の経済状況に即していないのなら、現状にマッチするように変更すればよいだけだ。
三党合意の破棄と選挙をリンクさせるのは、自分たちの愚かな行為を糊塗して、それに箔付けするようなもので、到底認められるものではない。


また、バカマスコミの連中は、集団的自衛権や原発再稼働、TPPなど難題を抱える中で、民意を問い勝利を手にすることで党勢や党内基盤を強化する狙いがあると報じている。
だが、現有で290以上も議席を有しながら解決できない問題を、再選挙して恐らく多少の議席を減らした状態で解決できるというのだろうか。

今回の解散を称して、高村副総裁が、アベノミクスでデフレ脱却を目指す道でいいのかを再確認する「念のため解散」だと口を滑らせ党内外から非難されているが、それだけ党内も混乱しているのだろう。


前回の政権復帰から2年余りしか経っておらず、対抗馬となるべき野党の連中は分裂を繰り返すばかりで選挙の準備も整っていない。
こういった情勢を踏まえてか、自民党幹部の中には野党に不意打ちを喰らわすチャンスとばかりに、勝利に強い自信を示す者もいる。
だが、自民党の議員、特に、前回復帰当選した議員や新人議員の懐事情は大丈夫なのか、と要らぬ心配もしたくなる。
現閣僚の政治とカネの問題が取りざたされるのも、各人の収支状況が相当厳しいからであり、十分な利権にありつける前にまた選挙かと、内心穏やかならぬ議員も多いのではないか。


それにしても、大半が増税賛成派の自民党議員の連中は、どの面下げて増税先送り選挙を闘うのか、と訝しんでいたが、政府が消費税増税の景気条項削除を検討しているとの報道もある。
巷間囁かれているように、あくまで増税時期を1年半先送りするだけに止め、その後は景気状態に関わらず増税を決行するという条件で、党内の増税派を妥協させるというつもりだろう。


こんな子供騙しの詭弁に引っかかるバカがいるのかと呆れていたが、ネットニュースを見ると、そのバカがウヨウヨいることに気付かされる。


例えば、朝日新聞の景気アンケートでは、国内大手100社の経営者に消費税率を10%に引き上げるのに望ましい時期を尋ねたところ、60社が「法律どおり来年10月に引き上げるべきだ」と回答し、引き上げるべきではないとの回答はたったの1社しかなかった。

引上げの理由を問うと、43社が「財政再建」、9社が「社会保障費などの確保」を選んだそうで、おまけに、「10年、20年の計でやるべきだ。今しなければ消費増税はさらに難しくなる」、「景気動向に左右される問題ではない」、「日本経済には10%への増税を乗り越える力がある。延期は『当面、景気は悪い』というメッセージになる」という頓珍漢なコメントもくっついている。


一介の経営者風情が、財政再建とか社会保障の問題にまで口出しするなどおこがましい限りだ。
マクロ経済のイロハも理解できない輩が、一国の経済政策にコメントするなど100年早い。
どうせ、経営と経済との区別もつかず、コップの中のミクロの池で泳ぎ回ることしかできないのだから、大人しく下請けや従業員に正当な代金や賃金を支払っておればよい。


このバカ者どもは、“日本経済には10%への増税を乗り越える力がある”と妄想を膨らませているようだが、世に出回る経済指標を確認するまでもなく、自分たちが雇っている社員にちょっと尋ねてみれば、いまの日本にそんな力が残っていないことなどすぐに解る。
増税を跳ね返すくらい実質賃金が上がっているなら、世のサラリーマンが昼飯を300円で済まそうとする訳がない。
10%どころか、8%すら乗り越えられないからこそ家計の実質消費支出が何か月も連続で減少しているのだが、「消費税増税は国是」と頑なに信じ込む狂信者は、そうした事実から目を背けようとする。


いまでこそ、多くの国民が10%への増税に反意を示しているが、バカマスコミは絶えず、「増税先送りは国債の信認低下を招く」だの「増税しないと社会保障費を手当てできない」だのと大嘘をばら撒き続けており、それを信じ込む者も多い。


今回の意味不明な解散騒ぎを経て、増税の弊害が真剣に討議されればよいが、恐らくそうはなるまい。
自分たちの生活向上よりも、無駄の削減とか身を切る改革の方に興味が行きがちな国民ゆえ、国の借金問題や社会保障財源の捻出という切り札を切られると、最後は押し黙ってしまうに違いない。


レベルの低い政治家に淡い期待を抱いても始まらない。 何よりも、国民自身が自らの勉強不足を恥じ、常識的かつ理性的に判断する努力を続けるべきだ。

そうした努力を放棄してしまえば、政治家連中の改革ごっこやくだらぬ政争に巻き込まれ、一生不安定な生活を押し付けられることになるだろう。

(※)今週から「進撃の庶民」(http://ameblo.jp/shingekinosyomin/)というブログで、隔週日曜日にコラムを書くことになりました。こちらも併せてご愛読ください。
よろしくお願いいたします。

2014年11月 8日 (土)

金融政策が主役になる日

経済を語る際に、『期待』という言葉ほど都合よく使われる言葉は他にない。

世界大百科事典は、経済学における期待の意味を、“個別の経済主体が将来時点の経済環境条件に対して抱く推定”と解説している。
特に、リフレ派と呼ばれる一派は、この『期待』がもたらす経済的な効果に過剰な期待を抱いており、中央銀行たる日銀が金融政策に対してアグレッシブな態度を示せば、マクロ経済全体に明確なインフレ期待や成長期待が醸成され、それが着火点となり経済成長が実現されると妄信している。

この手の迷信は、財政再建派だけでなく一部の積極財政派からも失笑を買っていた。
それだけに、いわゆる黒田バズーカ砲と呼ばれる二発の大規模な金融緩和政策が見事に炸裂して急激な株高と円安を演出したことは、単なる妄想と揶揄されてきたリフレ派にとって面目躍如たるものがあっただろう。

だが、黒田バズーカの一発目が発射された途端、発射を命じた安倍首相は、第三の矢の仕込みに気を取られた挙句に、消費税増税や財政支出の縮小を行ったため、バズーカ砲の威力は尻すぼみに終わってしまった。

畑に鍬を入れても、種や肥料を撒かずに除草剤を撒けば作物が育つはずがない。
余計なこと(第三の矢、増税、TPP)をせずに、すべきこと(第二の矢、財政政策、国土強靭化)をしておけば、空前の異次元緩和も空砲に終わることはなかっただろうし、最近発射した追加緩和も後世に名を残す賢策との評価を受けるだろう。

そもそも、経済学が示唆する「期待」の力は、のんきなリフレ派の学者が描くシナリオ通りに発揮されるわけではない。
マネタリーベースが増えて通貨が希薄化しインフレ予想が起きたとして、一般の国民や企業はどのような行動をとるだろうか。 GDPが力強く伸長し景気が過熱しつつあるような環境下であれば、人々はインフレ予想を見越して、いち早くモノやサービスを購入しようとするだろう。
しかし、デフレ不況に散々苦しめられて手持ち資金に困窮している状態なら、人々が抱くのは「期待」ではなく、「不安」や「失望」であり、結果として、「消費」や「購買」ではなく「節約」や「貯蓄」あるいは「我慢」を選択せざるを得ない。

インフレ予想一つをとっても、“消費のきっかけ”になるケースもあれば、“財布の中身を奪い取ろうとする強盗”だと警戒されるケースもある。

インフレに関する予想や期待は、リフレ派が無邪気に考えているような万能薬ではないが、経済成長にとって不可欠なものであることに異論はない。

せっかくの異次元緩和が演出したインフレ期待に魂を入れるには、政府が大規模かつ長期的な財政政策を実行する必要がある。

財政政策により実体経済に使える資金が大量に供給され、家計や企業の懐が十分に潤い、「さて、何にカネを使おうか」という気分が醸成されれば、インフレ期待の力もフルに発揮され、そこから先は金融政策が主役として活躍できるだろう。

何も難しい理屈を捏ね繰り回す必要はない。
経済のメインプレーヤーである家計や企業の懐さえ暖めてやれば、「期待」は真の効力を発揮するはずだ。

2014年11月 4日 (火)

「増税延期論」は条件付き賛成と同じ

先月31日に行われた日銀金融政策決定会合では、珍しく、事前の予想を大きく裏切る形で大型の追加金融緩和策が飛び出した。

エコノミストの間でも、今回の追加緩和を予想する意見は極めて少数だったと言われるが、政策決定の過程で政策委員9名中4名が反対票を投じたようで、今回の追加金融緩和策がかなり唐突な提案であり、金融政策決定会合の現場も少なからず混乱したのではないかと推測される。

 

追加金融緩和の内容は、

・マネタリーベースが、年間約80兆円(約1020兆円追加)に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う。

・長期国債について保有残高が年間約80兆円(約30兆円追加)に相当するペースで増加するよう買入れを行う。(買入れの平均残存期間を7年~10年程度に延長)

等を柱とするものだが、GPIFの株式運用比率見直しを支える内容であることが好感され株式市場は高騰し、円安も一気に加速した。(この記事を書いている時点の日経平均は17,000円を突破し、円ドル相場は1ドル=114円台になっている)

 

1029日にFRBが量的緩和政策の手仕舞いを発表したのとは対照的な内容であっただけに、FRBに代わる新たな資金供給源の出現に安堵した海外市場の連中も、「スーパーアグレッシブな動きだ。ミスター・クロダに酒をおごらなきゃ」と卑しくヨダレを垂らしている。

 

今回のサプライズ緩和は、消費税率10%引上げを目論む安倍首相への援護射撃であり、再増税への布石だというのが大方の見方だが、筆者もこれに同意する。

再増税を押し切るだけの好材料に乏しいうえに、閣僚のスキャンダルでダメージを受けた政権サイドへの強力なアシストであると受け取るのが自然だろう。

金融緩和と聞けば無条件で狂喜するリフレ派の連中も、それが再増税へのトリガーになりかねないと警戒しているのか、いまのところは大人しくしている。

 

4月の8%への税率引上げ以降、家計や企業統計に関わる景気指標はことごとく悪化しているうえに、昨今の円安や原材料コスト高騰に起因する食糧やエネルギー価格の高騰もあり、前回の税率引上げの際には政権の太鼓持ちに徹していたバカマスコミの連中も、さすがに、再引き上げを一方的にヨイショする元気はないようで、税率引上げに慎重な論陣を張るマスコミも増えている。

おまけに、第二次安倍内閣の閣僚の辞任や不祥事の問題もあり、首相も再増税に関して強気一辺倒を押し通すのはマズイを感じたのか、一時期、再増税を慎重に判断するニュアンスの発言をしていた。

 

だが、首相の口から出てくるのは、熟慮するとか慎重に判断するとかいう曖昧な逃げ口上ばかりで、再増税を見送る際に生じるであろう増税賛成派(経済を理解できない頭の悪い連中)に対する具体的なアクションについては、全く言及してこなかった。

安倍首相は、再増税に対して慎重なポーズを取りながら、大型の追加金融緩和というサプライズが出現するまでの時間稼ぎをしていたのだろう。

 

消費税再増税に向けた地均しは、既に始まっている。

今日から、税率10%への引上げの是非を巡り、有識者45名からなる景気点検会合が開かれている。(初日は8名のうち5名が増税に賛成した)

当初は42名で開催予定だったが、有識者の構成が増税賛成派ばかりだという指摘を受けて、急遽慎重派が3名追加された。

昨年にも同じ趣旨で会合が開かれたが、世間知らずの雲上人による消費税率引上げへの決起大会と化してしまった。

有識者の顔ぶれを眺めても、一部に増税反対派や慎重派がおり、身を切る改革の実行や生活弱者への配慮を促す程度の意見は出るかもしれないが、総じて、増税止むなしとの結論は変わらないだろう。

 

また、今回の黒田バズーカ第二弾の陰に隠れて、消費税引上げ後の景気失速をケアするために、政府内では3兆円規模の補正予算(経済対策)を検討しているようだ。

予算規模に“0”が一つ足りないという突っ込みもさることながら、経済対策の内容は、低所得者への給付金支給(漁船の燃料や寒冷地での灯油購入費用の助成等)が中心で、公共事業は必要最低限の防災対策のみに止めるとの見方が強い。

まるで都道府県や市町村レベルかと見紛うようなしょぼい内容を、わざわざ経済対策だなどと銘打って恥ずかしくないのだろうか。

8%への増税による経済不調は家計や企業の大多数に及んでいるが、政府が重い腰を上げて打とうとしている対策は、低所得者に対する灯油購入費の一部助成みたいな極めてチンケなもので、スズメの涙にもなり得ない。真冬にマッチを擦って暖をとろうとするようなものだ。

政府や与党は、現状の経済状態に対する危機感を全く持っていないようだ。

 

麻生財務大臣は、「お金だけ来ても企業は設備投資を増やさない。政府支出とリンクしないとうまくいかない」と言っているようだが、まず、金融緩和をしたところで、誰かの懐に“お金が来る”訳ではないことを理解していないのではないか。

肝心のお金は、日銀当座預金という揺り籠の中で眠りこけているだけで、誰かの所得になって実体経済を飛び回るようになるには、黒田バズーカに負けないような大規模な財政支出が欠かせない。

だが、実際に、政府内で検討されている経済対策に至っては、子供の小遣いにもならないほど貧相なものだ。

 

安倍首相は、121日頃に消費税率の再引上げを判断するようだが、現状の情勢から判断すると、規定どおり再引上げを強行するだろう。

今回のサプライズ緩和、景気点検会合、補正予算…これらは全て、再引上げに向けた地均しやパフォーマンスだと判断する。(パフォーマンスだけに、円安の悪影響が出てくれば、あっさりと金融緩和を取り止めるだろう)

仮に、首相や与党が再引上げを覆す可能性を選択肢に加えるつもりなら、少なくとも23ヶ月前から増税凍結法案や家計や中小企業向けの経済対策の策定作業といった具体的なアクションを起こしてしかるべきだが、首相の口から出てくるのは、一部の支持者兼増税慎重派(リフレ派の連中)を手なずけるためのリップサービスばかりだ。

奇しくも、政府やバカマスコミの連中から、12月の衆院解散説が流布されているが、これも閣僚のスキャンダル拡大や増税反対の動きに対する脅し文句と理解している。

 

広い世間は別として、永田町や本石町、霞が関界隈では予定通り増税すべしという声が圧倒的で、情けないことに、与党内で反対しているのは一部の中堅・若手議員しかいない。あとは、マスコミさえ黙らせてしまえば一丁上がりだろう。

来春の地方選を心配する声もあるが、3党合意の経緯もあって公明党や民主党も増税に前向きであり、大きな争点になりそうにない。むしろ、原発再稼働問題の方が争点化しやすいだろう。

 

政府は着々と再増税に向けた布石を打ち、足場固めを進めている。

方や増税反対の動きは、先送りや延期を唱える慎重派と凍結や減税・廃止を求める反対派との間に、大きな温度差があり、いまひとつ歩調が揃っていない。

増税反対の意見としてマスコミが取り上げるのは、1年半くらい増税を延期すべき(本田参与を始めとするリフレ派の連中)という「条件付き賛成派」の声ばかりで迫力に欠ける。

 

日本における消費税という税制は、一旦税率を引上げると元に戻せない事実上の“ラチェット税制”であり、将来に亘り経済成長を抑制し続けるアンカーとなってしまう。

少々延期したところで、中長期的にGDPの伸びを阻害する毒薬になることに変わりはない。

ましてや、15年デフレに苦しみ抜いてきた日本経済の惨状を鑑みれば、増税という選択肢など端からあり得ず、減税か廃止かという議論こそすべきである。

 

そもそも、恒久的な影響を及ぼす税制論議を四半期の経済状況で判断すること自体が大間違いなのだが、バカマスコミや多くの国民は、こうした政府の愚行をあっさり見過ごしてきた。

だが、4月の増税以降、あらゆる経済指標は悪化の一途を辿り、国民は再び厳しい現実を突きつけられている。

首相や与党を支持しながら増税問題という局地戦で条件闘争しても効果は薄い。ちまちました条件闘争ではなく、あくまで減税や廃止にまで踏み込んだ主張をすべきだ。

 

頭のおかしな増税賛成派はいつもワンパターンで、「増税見送りは国債の信認に悪影響を及ぼす」、「増税を見送れば諸外国からはアベノミクスの敗北宣言と取られかねない」、「増税しないと社会保障財源を確保できない」等々、幼稚なテンプレート型の言い訳を棒読みするばかりだ。

今日行われた景気点検会合では、賛成派の政策研究大学院大 伊藤教授(元リフレ派)が「増税を延期すれば、法案を出し直す政治的コストが大きくなる」と述べ、一方では、慎重派の内閣官房参与 浜田氏は、10%への増税を171月か4月に先延ばしすべきだと主張し、「無理して増税し、(首相の経済政策である)アベノミクスへの世界の信頼がなくなる方が怖い」と語ったそうだ。

 

両者の主張は違えど、国民生活や国民経済に立脚する視点が全く感じられない点はほとんど一致している。

彼らの口から出てくるのは、“政治的コスト”とか“アベノミクスへの信頼”みたいな薄っぺらい言葉ばかりで、増税が国民生活や企業経営に与える影響について一切語ろうとしない。

この程度の連中が識者として招集されているようでは、まともな政策判断などできるわけがない。

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