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2015年1月

2015年1月26日 (月)

外需を尊び内需を蔑む田舎者

イスラム国の日本人人質事件の陰に隠れてしまったが、先週、欧州中央銀行(ECB)が量的緩和に踏み切ったというニュースが大きく報じられた。

今回の量的緩和策の骨子は次のとおり。
・国債を中心とするユーロ建て債券を月額600億ユーロ購入(約8兆円)
・買入期間は今年3月から来年9月末まで
・物価上昇率の中期目標を2%弱に設定
・政策金利は過去最低の年0.05%に据え置く
・ECBの国債買入額は各国の国債発行残高の三分の一まで
・損失が出た場合は各国の中央銀行が購入分の8割を負担する

デフレ不況の瀬戸際に立たされた欧州経済立て直しのための窮余の一策とも言えるが、ユーロ圏が19ヵ国からなる寄合所帯でギリシャやドイツを例に挙げるまでもなく各国の経済情勢に大きな差もあること、国債買取額の制限によりギリシャやイタリアなど肝心の南欧諸国に対する資金供給が期待できないこと、日本で先行して実施された異次元金融緩和政策の経済効果がいま一つ不透明であったことなどから、今回のECBによる量的緩和策に対して懐疑的な見方も多く見受けられる。
それは当事者も覚悟の上らしく、日経新聞の取材でも理事間のメンバーの一人が「効果が薄いのはわかっている。だが何もしないわけにはいかない」と苦しい胸の内を語ったそうで、時代遅れの財政規律万能主義に染まったドイツの顔色を窺いながら出来上がった妥協の産物なのだろう。

今回の量的緩和は、ユーロ安の進行による輸出型企業の競争力養成といわゆる“インフレ期待”の醸成による投資の活発化を狙ったものだろうが、わずか1年半ほどの期限付き緩和策では、長期スパンでのユーロ安トレンドを演出できるかどうか不安がつきまとう。
また、アメリカ並みの移民国家と化したユーロ圏では、高失業率や低賃金労働が横行しており各国内の所得向上に対する下方圧力が日本とは比較にならないほど強く、インフレ期待に呼応して内需拡大を起こせるほどの購買力が圏域内に残っているかという点について大きな疑問を持たざるを得ない。
しかも、経済効果自体はさておき政府債務を実質的に無効化できる我が国とは違い、ECBにはそういった副次的効果もない。
恐らく、金融マーケットに巣食う卑しい連中を喜ばすだけで、日本の量的緩和政策以上に期待外れの結果に終わるだろう。

いまのところ、ECBの量的緩和政策を手放しで評価する報道は見かけず、冷静に分析されているようだが、相変わらず結論部分があらぬ方向に向かう報道もある。
筆者の地元紙の社説でも「肝心なのは産業競争力を高め内需を喚起する実効策であり、そのための構造改革こそ急がねばならない」と頓珍漢な解説が付けられている。
こういった典型的なサプライサイダー文学をサラリと挿入してくるのが罪深いところだが、そもそも、何のエサもなしに産業競争力が高まることなどない。
世間知らずの構造改革主義者は“産業競争力の向上”などと簡単に口にするが、それには十分な売上と収益の確保が欠かせないが、彼らは、企業が飲まず食わずでカイゼンに取組めば競争力が上がると勘違いしていないか。
“産業競争力の向上”と“内需を喚起する実効策”との順序を逆にすべきで、その後段にある“構造改革”みたいな毒薬は服用すべきではない。(構造改革すべきは周回遅れのサプライサイダーの頭の中だろう)

日本やユーロ圏のみならず先進国全般に言えることだが、経済政策を検討する際に、「供給は自国、購買は他国」という外需偏重型の図式を前提に論じられるケースが多い。
「先進国経済は既に成熟し成長の余地は少ない。よって、成長が見込まれる発展途上国を中心とする外需を獲得せねばならない」という固定観念に捉われていないか。
外需信仰に心酔する田舎者は、国内産業の構造改革(労働者のリストラとゾンビ企業退治)と外需の取り込みこそが競争力を向上させると信じ込んでいるようだが、それが単なる迷信であったことは失われた20年という経済失政ですでに実証済みだ。
こういった外需開拓史観に縛られて、最も重要な“内需を喚起する実効策(長期的且つ大規模な財政金融政策)”を疎かにするなど愚の骨頂である。
自国の経済政策ではどうあがいてもコントロールできない外需に依存するなど、羅針盤も舵も持たずに荒れた海に乗り出すようなものだ。

金融緩和政策は財政政策のサポーターとして欠かせない重要な経済政策であり、それ自体に罪はない。
しかし、経済とは常に成長し続けるべきものであること、経済成長のエンジンはあくまで内需を核とすべきであること、内需を喚起する実効的な政策とは構造改革とか規制緩和のような空念仏ではなく財政金融政策を指すものであることという根本思想を理解しない限り、せっかくの金融緩和政策に魂が宿ることはなく、一時的な通貨安による歪な物価高を招き、金融マーケットに跋扈する博徒を喜ばすだけで、いたずらにその評価を貶めることになるだろう。

2015年1月11日 (日)

「貨幣錯覚」という錯覚

広い世の中には変わった人もいるもので、大雨のせいでズブ濡れになりながら、「雨なんて降っていない」とか「こんな雨なんて大したことない、もう晴れ間が見えているぞっ!」と現実とは別の世界を語ろうとする人が少なからず存在する。

 

安倍政権の経済運営に対して極めて好意的で、アベノミクスの成果を過大評価しがちな一部の経済学派(+その取り巻きの有象無象の連中)の人々にも、そうした変わり者がいる。

 

金融緩和政策が大好物の彼らは、「安倍政権になってから名目賃金が2%上昇した(??)」、「国民の間に貨幣錯覚が起こっているから、実質賃金が低下しても問題ない」と強弁している。

名目賃金が2%上昇したなんていう偽データ(自分の給料は上がっているのかもしれませんが…)をどこから引っ張り出してきたのかは置いておくとして、「貨幣錯覚」まで持ち出してきた涙ぐましい努力には失笑を禁じ得ない。

 

「貨幣錯覚(money illusion)」とは、“物価の変動によってもたらされる消費の増減のこと。貨幣錯覚があるときは、名目所得が増加すると、実質的な所得が増加したかのような消費者の錯覚により、実質消費が増加することになる”(exbuzzwordsより)という用語であり、給料も物価もかなり上がっている状態下で、名目給与額が上がったことに気を良くした人々が、物価上昇により実質的な購買力が落ちていることに気付かず買い物に精を出す状況のことを指すものだ。

 

彼らは、アベノミクス下でこの貨幣錯覚が起きていると主張するとともに、実際に起こっている実質賃金の低下を批判する論者に対して、せっかくの貨幣錯覚の効果を打ち消し日本の景気を悪化させようとする国賊だと非難する始末だ。

「信ずる者は救われる」、「景気の“気”は気分の“気”」レベルの民間信仰を盾に、真っ当な警告を発する者に対する魔女狩りに没頭する様は滑稽としか表現できない。

 

いまの日本に貨幣錯覚を起こせるほど給料が上がった幸せな人は、一体どのくらいいるのだろうか。

 

日本銀行が全国満20歳以上の個人4,000人を対象に行っている「生活意識に関するアンケート調査」(第60回) 201412月調査 の結果では、1年前と比べて収入が「増えた」という回答は9.2%しかいないのに、「減った」という回答は40.8%に上る。

また、1年後の収入が「増える」という回答は6.6%に対して「減る」は41.5%と6倍以上にもなる。

 

こんな惨憺たる状況で、錯覚を起こしてまで浪費しようとする人間が、マクロ経済全体を成長させるほど存在するとは到底思えない。

事実、1年後の支出について「増やす」との回答は4.8%しかいないが、「減らす」は52.3%と11倍近くになる。

 

貨幣錯覚のようなラッキーな現象は、高度成長期のように名目賃金が2桁近いペースで増えるような環境でしか起きえない。

たかが、12%、あるいは、コンマ以下のレベルで給料が増えたところで、消費税増税分で簡単に打ち消されるだけだ。

 

しかも、失われた20年の間、雇用環境は破壊され、名目賃金もマイナスか、極めて低率での伸びに抑えられており、国民の雇用や所得に対するマインドは氷点下に冷え込んでいると言ってよい。

つまり、国民は所得の見通しに強い猜疑心を抱いており、少々の賃金上昇があったところで財布の紐を緩めようとはしないだろう。

 

貨幣錯覚とかインフレ予想、タイムラグみたいな言葉遊びに興じている間に、現実の実体経済はどんどん劣化し、国民生活は疲弊の一途を辿っている。

ぜひ本物の貨幣錯覚を体験してみたいという人々も多いことだろう。

 

そのためには、国民の所得を直接刺激できる長期的かつ大規模な財政政策が欠かせない。

異次元の金融緩和政策により、財政バズーカ砲が効き目を発揮できる素地は整っている。

公共事業だ、いや、給付金だ、減税だと陣地争いをするのではなく、国民所得を向上させるものは全て実行することを何より優先すべきだ。

2015年1月10日 (土)

供給力と需要力との大競争時代の到来

今月7日付の日経新聞のコラム(時事解析)に、欧米で財政ファイナンス限定容認論が出ているという記事が掲載された。(膨張する中央銀行「③財政赤字の穴埋め」)

 

記事で紹介された元英国金融サービス機構長官のアデア・ターナー氏は、「財政が悪化し、金利がゼロ近傍では財政ファイナンスは悪ではなく、必要な手段だ。日本は財政が持続不能な水準に達する前に、小規模で済むうちに実施すべきだ」とまで述べている。

 

日本では、いまだに貨幣を神聖視・絶対視する風潮が強く、学者ばかりか市場関係者を含めて“財政ファイナンスなんてとんでもない”という意見が大半だが、やはり、欧米人はリアリスティックな思考をするものだ。

 

黒田体制下の日銀は銀行券ルールという悪弊を廃し、年間の国債購入量は総発行量の9割、純発行量の2.5倍になるそうで、昨年9月末には日銀の国債保有高が230兆円近くに達し、2018年頃までに日銀が国債の半分を保有するとの推計もある。(財政破綻論者が卒倒しそう)

 

日銀の積極的な国債購入に対して、“事実上の財政ファイナンス”とか“広義の財政ファイナンス”といった批判も根強くあり、上記の日経のコラムでも、担当の編集委員は、ワイマール共和国やジンバブエのハイパーインフレの例を持ち出して、「(危機時の財政ファイナンスを)全面否定する必要はないが、節度ある範囲にとどめる工夫が欠かせない」とぐずぐず文句を言っている。

 

財政ファイナンスに対する典型的な批判は、

①国債の信認が低下して

②ある日を境に金利が急騰し

③悪性インフレを招く

④財政再建が遠のく

⑤ついでに、国債を大量に保有する金融機関の経営が悪化する(あくまで評価損がでるという話)

というパターンだろう。(これ以外のパターンを聞いたことがないが…)

 

しかし、財政破綻論者が唱えるXデー(金利が急騰する“ある日”のこと)は、一体いつになるのか、まともな回答は帰ってきたためしがない。

彼らは、「確率は低いが起きた場合の損失は甚大だ。テール・リスクを甘く見るな」と危機を煽るが、そんなものは、いつの日か地球を直撃する巨大隕石と同様に妄想やファンタジーの類に過ぎない。

「日本は借金大国」という歪んだレッテルは、何十年も前から貼られているのだから、とっくの昔にXデーは到来しているはずだが、いつまで経っても国債金利は高騰しない。

 

破綻論者はご丁寧に、国債暴落による金融機関の経営悪化を心配してくれているようだが、国債価格が暴落するほどの金利上昇は、主要な収益源である貸出収益の大幅な増加(融資先にとっては迷惑な話だが…)を意味しており、金融機関の経営にたいした影響はない。

おまけに、固定金利主体の国債とは違い、企業融資は変動金利が主体のため金利上昇のメリットをいち早く享受できる。(国債も満期まで保有すれば特段の問題はない)

 

貨幣や財政に対して過剰な倫理観を抱く前近代的思考の持ち主は、いまだに名目貨幣の本質や役割を理解できていない。

不思議なことに、ほとんどの国民は、貨幣の意味を理解せぬまま毎日のように貨幣を使って生活を営んでいる。

自分の財布に入っている貨幣は、誰が創り、どういう経路を辿って自分の懐に入ったのか、自分が使った貨幣は一体どこへ行くのか、何の疑問も持とうとしない。

 

人類は、太古の昔から、生産活動の対価や交換手段として貨幣制度を確立させ、石や貝殻を使って生産活動の向上に努めてきた。

それが、金銀などの金属に代わり、ついには紙幣へと変遷してきたが、何の不都合も生じていない。

日本は財政危機だと年柄年中騒がれているが、日本円で給料や釣銭の受け取りを拒否する変わり者は一人もいない。

つまり、貨幣なんてものは、国が創って流通させてしまえば、国民は何の疑問も差し挟むことなく使おうとするものだ。

 

元禄時代の財政危機を救った名勘定奉行の荻原重秀は、世界に先駆けて名目貨幣の本質を喝破し、「貨幣は国家が造る所、瓦礫を以ってこれに代えるといえども、まさに行うべし。今、鋳するところの銅銭、悪薄といえどもなお、紙鈔に勝る。これ遂行すべし」という名言を後世に残した。

いまから300年以上も昔の、しかも、現在とは比較にならないほど低レベルの生産力しか持てなかった時代に、貨幣改鋳による大規模な財政ファイナンスに果敢に挑んだ賢人から発せられた言葉をもう一度噛み締めるべきだろう。

 

もはや、貨幣は戸棚の奥に飾っておく神仏への貢物ではない。貨幣は貴金属とは違うのだ。

 

相次ぐ技術革新やデリバリー及び通信網の発達により、世界中でモノやサービスの供給力は飛躍的に向上し続けている。

いまや、世界は、膨張し続ける生産力とそれらを消費する需要力との間で繰り広げられる熾烈な大競争時代に突入していることを認識すべきだ。

モノのない時代やインフレに怯える時代は、とうの昔に過ぎ去ったのだ。

現代においては、湧水のように絶えず生み出されるモノやサービスをいかにスピーディー且つ高い価格で消費できるかが、経済成長の大きなカギとなる。

 

最近では欧州経済も不調を来し、日本と並んでデフレ不況に突入する懸念があるが、デフレとは需要力が生産力に競り負けている現象にほかならない。

 

21世紀の生産力や供給力は強大である。

妙な倫理観を振りかざして構造改革や財政再建に固執していると、たちまち生産力に置いて行かれてしまう。

税金や国債発行のみに頼ってチマチマ資金供給するだけでは到底追いつけない。

財政ファイナンスの是非を云々と論じる時間などないことに早く気付くべきだ。





(※)
「進撃の庶民」というブログで隔週日曜日にコラムを掲載しています。次回の掲載予定は明日111()です。
様々な執筆者の方から、非常に示唆に富んだ記事が投稿されていますので、ぜひご覧ください。http://ameblo.jp/shingekinosyomin/

2015年1月 7日 (水)

教科書に逃げ込まず、現実を直視せよ!

今月に入ってから、ギリシャの政情不安や原油安による世界的な株安が起こり、株式市場から逃避した資金が安全資産の国債になだれ込んでいる。

この影響で、世界最強の安全資産である日本国債も新発10年物の流通利回りが初めて0.3%台を割り込んでしまった。(この原稿を書いている16日時点での利回りは0.285)

 

日本国債は、スイス国債と並ぶ「超安全資産」として地位をまたもや高めたわけだが、国内の民需低迷や日銀による異次元金融緩和の影響を勘案すると、当面は低水位の金利水準が続くだろう。

 

このように異次元金融緩和政策は、低金利誘導という重要な役割を見事に果たしているが、その本分である「インフレターゲット政策」の効果はどうなっているのか。

 

インフレターゲット政策の理論的支柱であるP.クルーグマン教授は、かつて自身の論文で、「中央銀行が無責任になる(ある程度の将来までは高いインフレ率を許容する)という約束が、民間部門から信用される」ことが、期待インフレを生み出す条件だと述べていた。

そもそも、一国の金融政策のみでインフレを創出できるか否かという点に疑問があるが、百歩譲って金融政策がインフレをもたらすとして、人々がそれを歓迎する(期待感を抱く)のか、嫌悪する(不安感や恐怖感を抱く)のかは、財布の中身や将来の収入見通しなど、各人の置かれた経済環境により異なるだろう。

 

現在の日本は、アメリカの金融緩和縮小による円安や増税などの影響を受け、コストプッシュ型の物価上昇に見舞われている。

所得がたいして伸びない(減っている人も多い)中での諸物価高騰という最悪の事態に直面した国民は、現状をどのように捉えているのだろうか。

 

以下、前々回のエントリーでも採り上げた日銀の「生活意識に関するアンケート調査(20149月調査)」の結果を下記のとおり示し、その内容について論じてみたい。

(3ヶ月ごとに実施,全国の満20歳以上の個人,標本数4,000/有効回答者数2,135,郵送調査 ※一部筆者が加工)

 

[景況感]

〇現在を1年前と比べて(3月調査→6月調査→今回調査,以下同じ)

 ・景況感D.I(良くなったー悪くなった) ▲6.4→▲10.0→▲20.4

1年後を現在と比べると

 ・景況感D.I(良くなるー悪くなる) ▲16.5→▲15.3→▲20.8

 

[現在の暮らし向きについて]

 ・暮らし向きD.I(ゆとりが出てきたーゆとりがなくなってきた) ▲33.5→▲39.8→▲44.1

 

[収入]

〇現在を1年前と比べると

 ・収入D.I(増えた-減った) ▲29.8→▲30.0→▲32.5

1年後を現在と比べると

・収入D.I(増えるー減る) ▲29.4→▲27.5→▲32.3

 

[支出]

〇現在を1年前と比べると

 ・支出D.I(増えた-減った) 18.125.123.7

1年後を現在と比べると

・支出D.I(増やすー減らす) ▲43.3→▲43.7→▲44.0

 

[物価に対する実感]

〇現在の物価を1年前と比べて

・かなり上がった+少し上がった 69.3%71.3%80.4%

1年後を現在と比べると

・かなり上がる+少し上がる 79.9%80.6%82.5%

 

[物価上昇についての感想]

・物価上昇D.I(好ましいー困った) ▲74.5→▲74.4→▲74.8

 

[物価に対する実感の根拠]

〇現在の物価に対する実感(複数回答)

 ①頻繁に購入する品目の価格動向から 73.4%

 ②ガソリン価格の動向をみて 68.1%

 ③定期的な支出項目(家賃,光熱費等)の価格の動向から 39.7%

 (最下位)日本銀行の金融政策から 3.8%(前年同月比▲1.8ポイント)

5年後の物価に対する実感(複数回答)

 ①頻繁に購入する品目の価格動向から 60.0%

 ②ガソリン価格の動向をみて 50.0%

 ③定期的な支出項目(家賃,光熱費等)の価格の動向から 35.9%

 (最下位)日本銀行の金融政策から 11.1%(前年同月比▲3.7ポイント)

 

[日本経済の成長力についての見方]

 ・成長力D.I(高いー低い) ▲35.2→▲42.8→▲46.2

 

[日本銀行の金融政策に関する認知度]

〇消費者物価の前年比上昇率2%の物価安定の目標について(インフレ目標)

 ・知っている 28.3%26.2%26.7%(前年同月比▲10.2ポイント)

〇量的・質的金融緩和について(異次元金融緩和)

 ・知っている 23.2%28.3%24.8%(前年同月比▲4.6ポイント)

 

上記の調査結果から言えることは、

①アベノミクスの効果は限定的で、収入が減ったと感じる人が増えている

②一方で、増税や物価高によって強制的な支出増を強いられている

③その結果、景況感が悪化し、暮らしぶりが苦しいと感じる人が増えている

④日本の成長力に対する見方は極めてネガティブである

⑤日銀のインフレ目標や金融緩和政策を知っている人は少なく、その意義や内容も理解されていない

⑥普通の人は身近な品目や支出項目によって物価見通しを立てるもので、日銀の金融政策なんて誰も関心を持っていない(=金融政策が直接的にインフレ予想を醸成できるという考え方は単なる幻想)

⑦リフレ派が夢想するような御大尽様(インフレ予想に基づき散財しようとする変わり者)は現実にはほとんどいない

⑧金融緩和政策は、一部の学者や市場関係者のオモチャになっているだけで、実体経済を改善する存在になり得ていない

ということだろう。

 

日銀は年間80兆円もの既発債を買い取り、国債保有高は200兆円を超えて公債残高の1/4近くに上る。国債の無効化(実質無借金化)の観点から、筆者はこの量的緩和政策を是とするが、財政再建にしか興味を持てない家計簿論者の視点からは、既に、クルーグマンが評する無責任な中央銀行の姿に変貌していると言ってもよいだろう。

しかも、金融政策単独では力不足であったものの、アメリカの金融政策見直しによる円安や消費税増税という援軍を得て、日銀の思惑どおり物価上昇に向けた舞台装置は揃いつつある。

 

だが、現実には、リフレ派が自信満々に唱えるような「(プラスの意味での)インフレ期待」は出現していない。

上記の調査結果のとおり、物価上昇を見通す人々が取ろうとする行動は、「期待に基づく支出の拡大」ではなく「不安に基づく支出の縮小」なのだ。

実際に収入が増えたと感じられる人は極めて少数(調査では1割未満)であるうえに、コストプッシュインフレにより予期せぬ支出を強いられているのだから、支出を減らそうとする割合が増えるのは当然だろう。

 

インフレを見込んでモノが高くなる前に買っておこうと言えたのは、名実ともに賃金が上昇していた昭和期ならではの旧き良き慣習であり、20年近くも収入減に悩まされた平成の世にはもはや通用しない。

いまだにインフレ期待による民需の盛り上がりを確実視するのは、思考が昭和の価値観に染まったまま夢の世界に安住する周回遅れの連中だけだ。

 

知識人ぶって経済学を語ったり、経済学の教科書云々と講釈をタレたりする前に、実体経済の仕組みや消費行動の基本を学び直した方が良いだろう。

2015年1月 5日 (月)

目的と手段、原因と結果をすり替える愚者たち

『11月の銀行・信金貸出は5年半ぶり高い伸び、円安の影響も』 http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0JM02920141208 「[東京8日ロイター]日銀が(昨年12月)8日に発表した11月の貸出・預金動向によると、銀行・信金計の貸出平残は481兆6974億円となり前年に比べて2.7%増加した。増加は37カ月連続で、2009年5月(3.1%増)以来、5年半ぶりの高い伸び。円安の進行に伴って都銀を中心に外貨建て貸出が円換算で増加したことも寄与した。11月の貸出は、10月の前年比2.3%増から伸び率が拡大した。日銀によると、引き続きM&A(合併・買収)やREIT(不動産投資信託)、電力向けなど大口の貸出が見られているほか、住宅・アパートローンを含む不動産向け融資も増加している。中堅・中小企業への広がりも見られている。」

この金融機関の貸出増加の報を受けてリフレ派の連中が小躍りして喜んでいる。
彼らにとって、昨年の株価上昇以来、久しぶりのプラス材料に気持ちが昂ったのか、「異次元の量的緩和政策(黒田バズーカ)のおかげで貸出が増えたぞっ!」、「マネーストックの金額の割に金融緩和政策の効果がショボイなんて言ったのは誰だ!」と鼻息を荒くしている。

日銀の資料(貸出先別貸出金(業種別,設備資金新規貸出))によると、確かに国内行の貸出残高は増加している。
特に、設備資金の新規貸出額(2014年7-9期中)は、10兆3,123億円と前年同期比で3,000億円以上伸びており、中でも化学・輸送機械を中心とする製造業や原発停止の後始末に追われる電気業で高い伸びを示した。 一方、設備資金の2大巨頭である個人住宅と不動産業はそれぞれ▲4.7%、▲1.5%と減少に転じており、今後の動向が懸念される。

世間知らずのリフレ派は、インフレ率と景気動向の関係と同様に目的と手段あるいは原因と結果を混同しがちだ。
彼らは、景気動向や国民所得のことなど完全に無視して、フィリップス曲線なんかを持ち出してインフレ率を死守することに躍起になり、しばしば、周囲から失笑を買っている。
インフレ・ターゲットを金科玉条とするあまり、経済成長や国民所得の向上という大目標を見失い、インフレ目標を達成することが目標にすり替わってしまっている。

そこでは、いつの間にかインフレ=好景気という図式が大手を振って闊歩しており、「適正水準のインフレを許容できるだけの経済環境を創出する」という所期の目標はすっかり忘れ去られている。
黒田日銀総裁や岩田副総裁の口から出てくるのは、就任当初に定めた年限までにインフレ目標を達成できるかどうかという話ばかりで、増税と円安のダブルパンチで景気回復からすっかり置き去りにされた国民や中小企業の行く末を慮る言葉を聞くことはできない。

今回の貸出増加の件も、インフレ目標の話と同様に目的と手段がすり替えられていないか。

彼らは、貸出増加=景気回復と決めつけて論を進めているが、話はそれほど単純ではない。
現実の数字は冷酷なほど厳しいものだ。
・現金給与総額(一人平均)11月1.5%減(9ヵ月ぶりにマイナス)、実質ベースでは4.3%減(17ヵ月連続マイナス) ・消費支出(二人以上の世帯)10月0.7%減(4ヵ月連続マイナス)
・小売業販売額11月0.4%増(消費税増税分を除くと実質マイナス)
・乗用車8社の国内生産11月13%減(5ヵ月連続マイナス)、増税後初の2桁減少
・国内パソコン出荷台数11月41%減(6ヵ月連続マイナス)、出荷金額36%減少
・新設住宅着工戸数11月14.3%減(9ヵ月連続マイナス)、11月としては2011年以来3年ぶりの低水準
・住宅ローン新規貸出額4-6月期17.6%減 ・国内民生用電気機器出荷額11月17%減(2ヵ月連続マイナス)
・国内企業物価指数11月0.2%減(消費税を除く)

国内行の貸出は2011年以降、増加傾向にあり、一昨年から昨年にかけて2%台後半の伸びを見せているが、景気回復や経済成長の証拠足り得るわけではない。
実際、2005年~2008年にかけても今回と同程度に貸出が増加していたが、対米輸出が伸びたこと以外は経済指標は低迷しており、名目GDPも横這いに過ぎなかった。
本来なら、政府による正当な経済対策により実体経済に資金が投下され、そこを起点として民間主導の経済成長が実現し、その結果として資金需要が増して貸出が増える、という景気回復ルートが踏襲されるべきだろう。
そういった結果としての貸出増加なら、筆者も諸手を挙げて賛意を表したい。

だが、残念ながら実体経済の体温は低下の一途を辿っている。食欲はあるのに体調が悪化し続けているようなものだろう。
貸出増加=景気回復だ、あるいは、将来的な景気回復を示す先行指標だと都合の良い言い訳を続けていると、終いには痛い目を見ることになる。

“食欲が出始めたんだから大丈夫だ、もう薬は要らないね、さっそく運動でも始めようか”とばかりに病人に鞭を打てば、二度と病床から立ち上がれなくなるだろう。
いまこそ、きちんとした薬を処方すべきで、病室の温度を上げ下げしても日本経済と云う病人の症状は回復しない。

(※)読者の皆様、本年もよろしくお願いします。
年が明けても厳しい寒気に見舞われていますね。
最近、空気が乾燥しているせいか、リフレ菌が活発なようです。

本ブログの他に、「進撃の庶民」というブログで隔週日曜日にコラムを掲載しています。 次回の掲載予定は1月11日(日)です。
様々な執筆者の方から、非常に示唆に富んだ記事が投稿されていますので、ぜひご覧ください。http://ameblo.jp/shingekinosyomin/

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