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2015年7月

2015年7月23日 (木)

内需に立脚した経済基盤を!!

とあるネットサイトで、『「日本は世界で人気」なのに、外国人観光客数ランキングが「26位」の理由』という記事を眼にした。

記事は、『新・観光立国論』の著者であり、日本在留歴25年になるデービッド・アトキンソン氏によるもので、外国人観光客の誘致に取り組む日本の観光業や「おもてなし戦略」の問題点を浮き彫りにするという内容だった。

日本の観光業に対して、今回の記事や関連記事を含めて、アトキンソン氏が指摘した問題点は、次のようなものだ。

・世界では、文化財は自国の観光客のみならず、他国からの観光客を呼べる大切な“観光資源”という位置付けだ。一方、日本では、あくまで「保存」がメインで、観光客を呼ぶことに重きを置いていない。ガイドや通訳、イベントをどんどん活用してカネを生む仕組みを創るべき。

・レストランの食事でも、客の要望に応じてセットメニューの一部を取り換えるなど柔軟に対応すべき。

・ゴールデンウィークは廃止すべき。日本にはゴールデンウィークがあるゆえに閑散期との差異が大きくなり、観光業者が大規模な設備投資に二の足を踏まざるを得ない。

・ゴールデンウィークほど「ユーザー目線」が欠如した制度はない。観光客は大渋滞を強いられるし、飛行機やホテルは「特別料金」をとられるなどデメリットは山ほどあるが、供給者側からすると良いことづくしだ。

・日本の祝日は世界で4番目に多いので、有休を取得する必要がない。逆に、欧州の人たちは日本に比べて祝日が少ないので有休の取得率が高い。

・先進国では観光業はGDPの9%を占めているのが普通だが、日本は2%程度。つまり日本にはGDP7%分の“伸びしろ”がある。

確かに、文化財の観光資源としての活用やガイドの育成などは、観光先進国に後れを取っているかもしれない。

特に、国内の観光地にいるガイドの多くは、リタイアした高齢者やボランティア頼みで、まともな所得を得ている方はほとんどいないだろうから、観光業界の付加価値向上を図るとともに、まともな雇用の場を創出するという面からも、プロの観光ガイドを育成する(きちんとした収入を得られる職業にするという前提で)ことはとても重要な課題だろう。

だが、アトキンソン氏の十八番でもある『ゴールデンウィーク廃止論』には、首を傾げざるを得ない。

彼は、観光業界における閑散期と繁忙期の大きな落差を全てGWのせいにしているが、毎年GW期間の国内旅行者数は2,300万程度に過ぎず、一方で、年間の国内旅行者数はおよそ63,000万人にもなるので、GW中の旅行者数なんて、年間に均すと僅か3.6%程度に過ぎない。

日本の観光業界には、GWの他にも、春休み、夏休み、お盆、シルバーウィーク、年末年始等々、たくさんの繁忙期があり、その都度各地で渋滞や混雑が発生しているので、なにもGWだけを特別視する必然性は乏しいだろう。

また、閑散期と繁忙期の落差ゆえに観光業者が大規模な設備投資に二の足を踏んでいるという決めつけにも異論がある。

だいたい、ちょっと想像するだけでも、国内の有名な温泉地(伊豆や箱根、熱海、鬼怒川、伊香保ほか)やテーマパーク(ディズニーランド、ハウステンボスほか)には、300~400室はありそうな大規模ホテルが林立しているだろう。
アトキンソン氏の言うことが真実なら、こうした大規模ホテル等存在していなかったはずだが…

それに、世界の大規模ホテル(客室2,000室以上)ランキングの上位50棟のうち、実に37棟がアメリカのホテルで、世界に冠たる観光大国のフランスやスペイン、中国、イタリアなどのホテルは1棟もランクインしていない。(因みに、日本の品川プリンスホテルが16位にランクインしている)
つまり、設備の大規模化と観光客数はイコールの関係ではないということだ。

むしろ、アトキンソン氏の主張通り、日本の観光業界が、閑散期を恐れて身の丈に合った規模に設備投資を抑えていれば、地方の温泉街がこれほど苦境に陥ることはなかっただろう。
国内の旅館やホテルは、設備にしろ、人員配置にしろ、閑散期に合わせるどころか、繁忙期を基準に目いっぱいの大型化や過剰投資にひた走ったため、バブル崩壊以降のデフレ不況の煽りをまともに受け、稼働率を維持できずに廃業を重ね、ここ数年は外国人観光客の流入という思わぬボーナスのおかげで何とか一息ついているのが実状だ。

また、日本は祝日が多いせいで有休の取得が少ないというのも、単なる妄言だろう。

祝日数は、日本の15日に対して、フランスやドイツは10日間と確かに日本の方が多くなっている。
だが、有給休暇はというと、実際の取得率を加味すると、日本が7日(取得率38%)しかないのに対して、ほぼ100%近く取得しているドイツやフランスは25~30日にもなり、両者を合わせると、ドイツやフランスの方が2~3週間分も多く休みを取得していることになる。

そもそも、日本人の有休取得率が低いのは、祝日が多いせいだというのは、祝日と有休とをトレード・オフの関係に置く「休暇取得日数キャップ論」に囚われた稚拙な議論だと思う。

日本の有休の取得率が低いのは、東芝の“チャレンジ強要事件”に見受けられるとおり、単に、ワーカホリックな日本人の行き過ぎた勤労意識が、有休の取得を抑えているだけだろう。
むしろ、『祝日』という公的な強制性を持たせることで、ようやく大手を振って休みを取れているというのが実状ではないでだろうか。(それでも休めない人がたくさんいる)

いまの日本で、祝日を減らせば有休の取得意識が向上するなんで、とんでもない妄言で、祝日という公的なセーフティーネットを外してしまえば、日本人の休暇日数は、いま以上に減るだけで、観光業界にも大きなマイナスのショックを与えるだろう。

経営者と労働者双方の意識を変えるだけで、有給取得率なんて直ぐにでも上げることはできる。
自身や部下の取得率の高さを人事評価に加味するように義務付ければよいだけだ。

最後に、アトキンソン氏の“先進国では観光業はGDPの9%を占めているが、日本は2%程度。つまり日本にはGDP7%分の“伸びしろ”がある“という意見については、ぜひとも、その伸びしろ分は、日本人の国内旅行者による内需で埋めるべきだと付け加えておきたい。

日本政府観光局が7月22日に発表した2015年1~6月の訪日外国人数(推計値)は、前年同期比46.0%増の913万人にも上り、年間で1,800万人に達する見込みだ。

しかし、この結果は、円安、訪日ビザ(査証)の緩和、消費税の免税対象拡大というドーピングによるところが大きく、今後も漸増を維持できるか否かは極めて不透明だ。

また、訪日外国人の増加に油断して、日本人による国内旅行者の落ち込みを放置し、無視しようとする機運があることにも強い懸念を抱いている。

“気前のよい中国人さえ来てくれれば、ケチな日本人客なんてどうでもいい”という風潮が一般化してしまえば、“なぜ、日本人は旅行をしなくなったのか(=できなくなったのか=所得が増えていない)”という点を掘り下げようとすることもなくなるだろう。

日本は膨大な内需が経済や所得を支える国であり、訪日外国人旅行者のもたらす果実は、あくまでプラスαのおまけだと認識すべきだ。
この基本を忘れてしまうと、いつの間にか、日本経済は、外需の変動に振り回される脆弱な体質に変貌し、ひいては国体を危うくする事態をも招きかねない。

2015年7月20日 (月)

評価できるのは結果だけ

週末に新聞各社が行った世論調査で安倍政権の支持率が急落した。

・毎日新聞:支持35%(▼7P,不支持51%(△8P

・共同通信:37.7%(▼9.7P,不支持51.6%(△8.6P

・時事通信:40.1%(▼5.7P,不支持39.5%(不明)


この結果は、言うまでもなく、安保関連法案と東京オリンピック開催に向けた新国立競技場の工事費高騰問題に端を発するマスコミ各社から総攻撃によるもので、
不支持が支持を大きく上回る結果となっているものもあり、つい最近まで盤石に見えた政権基盤に綻びが生じつつある。
 

支持・不支持が拮抗している時事通信の調査でさえ、“安保法案に関し、安倍政権が「十分説明している」と答えた人が12.8%なのに対し、「説明は不十分」は73.7%に上った。また、法案が「合憲」との回答は19.8%にとどまり、「違憲」は53.8%と過半数に達した”と報じている。

また、集団的自衛権の法制化を目指す安保関連法案に対して、「説明が不十分」という回答が
7割以上にもなっており、国民(あくまで世論調査の対象になった幸運な人たち)が強い拒否反応を起こしていることが判る。

ここらでタイミングよく重要閣僚のスキャンダルでも噴出すれば、政権が吹っ飛びかねないほどの緊迫感が漂ってきた。

  

筆者自身、この分野にたいした知見も持ち合わせておらず、偉そうに論説する資格はないが、一部の急進的な左翼っぽい連中(こういう人種が未だに生き残っているのが奇跡としか思えないが…)による「安保関連法案は戦争法案だ」とか「徴兵制につながる」といった絶叫は、取るに足らぬほどバカバカしい妄言だと思う。

ついでに、街頭インタビューされた老人や女性が、他人事みたいに、「若い人たち(男性)が徴兵される」と平然と答えているのにも強い違和感を覚えている。

なにせ、現代はジェンダーフリーの社会であり、いまや鉄砲を担いで参戦するだけが兵士たる者の仕事じゃないのだから、“徴兵=若い男性だけに課せられる義務”と決めつける身勝手な発想は、さっさと捨ててもらいたいものだ。

 

一方で、法案の内容が、あたかも、自衛隊がアメリカの小間使いよろしく、米軍マターの軍事戦略に付き従うだけのようなイメージで拡散されたことは、まさに政府や与党の説明不足、あるいは、故意に説明の本質から話を逸らしたことによるもの、と指摘されても仕方がないだろう。

 

政府や与党は、この法案を議論するに当たり、ホルムズ海峡や石油輸送ルートが寸断されかねないという懸念や危機感を盾に押し通そうとしていたが、これは完全に不発に終わった。

 

政府としては、ISによるテロや不安定な中東問題を梃にホルムズ海峡の危険性を訴える作戦だったのだろうが、当の国民は、年がら年中、戦火やテロの絶えない中東の状況に対する感度が低下している。

 

ホルムズ海峡を巡っては、中東地域の紛争やイランとアメリカ対立、海賊の頻発といった極めて危険な状況をかいくぐりながらも、これまで、日本の石油輸送ルートが重大な危険に晒されることはなく、謂わば、ホルムズ海峡の危機は“オオカミ少年状態”にあると言ってよく、国民も“ホルムズ海峡は何時も危ないって言われているけど、結局、何も起こらないじゃないか”と慢心し切っている。

 

国民の多くは、中東の危機なんて所詮は遠い国出来事だと割り切っており、いくらそこを突いても、安保関連法案に対するシンパシーを高めるには力不足だろう。

 

政府や与党は、今回の安保関連法案の核心が、中国の軍事的侵攻に対する重大な懸念にあることを、はっきり明言すべきだった。

遥か彼方のホルムズ海峡よりも、日本の目と鼻の先にある東シナ海や南シナ海における中国の無法な領土拡張行為を問題にした方が、国民に対して、中国の暴走による差し迫った軍事的な緊張感や切迫感をより具体的にイメージさせることができた筈だ。

 

無論、国内には先の大戦における日本加害者説や親中派が多数蔓延り、大都市だけでなく地方の観光地の消費が来日中国人の爆買いに支えられている現状を鑑みれば、正面から中国を仮想敵国視する政策は、間違いなくマスコミ各社の反発を呼び、政治的リスクも相当に高まるだろう。

 

だが、いやしくも、戦後最強の保守政治家を自任する安倍首相なら、この程度の議論から逃げ回ってはなるまい。

 

先週、とあるTV番組が今回の安保関連法案に対するアジア太平洋諸国の反応を公表したが、幸いなことに、北米や中南米だけでなく、ASEAN諸国やオセアニア、モンゴルなど12カ国から支持が表明されているのに対して、不快な反応を示したのは例の2カ国(中韓)だけだった。

 

政府や与党が大好きなTPP加盟国の大半が賛意を表明しているのだから、頭のおかしな中韓の反発など気に留める必要などない筈だ。

なにせ、安倍政権は、TPPに関する事前の国会決議を全て無視して、国益を損ねる自爆交渉を強行しているくらいだから、これほど心強い援軍はないだろう。

 

いまこそ生意気な中韓二国をギャフンと言わせ、真の保守政治家として男を上げる格好の機会だと思うが、所詮は“口先保守”に過ぎない安倍首相や自民党の諸先生方は、ギャーギャーと煩い中韓の連中と事を構えるような胆力を持ち合わせていないようで、最後まで中国問題をおくびにも出さぬまま法案を衆議院で可決してしまった。

 

今回、結果として政権支持率が急落し、与党の支持率も下落したことは、個人的にはとても喜ばしいことなのだが、これが経済問題に起因するものでないのが非常に残念だ。

 

本来なら、消費税増税やTPP、緊縮財政の断行を決めた骨太の方針等といった真の愚策に対してこそ、国民やマスコミは強い反意を示すべきだろう。
そうしておれば、安倍政権などとっくの昔にぶっ倒されており、そもそも安保関連法案の審議自体が行われることもなかっただろう。


国民は、起こりもしない戦争への懸念に猛烈な怒りをぶつけるエネルギーがあるのなら、現に生活を破壊している経済問題にこそ、その数倍もの怒りをぶつけるべきだ。
この点は、EUの緊縮押しつけ策に明確なNOを突き返したギリシャ国民の気概や迫力には到底及ぶべくもない。

我々は霞を食って生きている訳じゃないから、空想の世界の戦争や頭の悪い反原発活動に貴重な時間を割いている余裕なんてなく、目の前にある生活の向上や飯のタネの確保にこそ、もっと強い関心やエネルギーを注ぐべきだろう。


共産党に先導された安保法制反対デモで、「命を守りたい」とかいった気恥ずかしいプラカードを掲げて粋がる若者の姿を見るにつけ、命が云々と大上段に構える以前に、貧困化の危機に晒された自分の生活を守る方が先だろうと情けない思いがしたものだ。



一連の騒動を通じて、政権の勢いにブレーキが掛かったことは良しとすべきだが、肝心の経済問題をほったらかしにして、この先も安保関連法制や反原発問題にしか怒りの声を上げることができないようでは、まさに、日本国民は”平和ボケや不況ボケ”しているとしか言いようがない。

2015年7月10日 (金)

逆貨幣錯覚

地方創生の目玉政策であるはずのプレミアム商品券が、各地で売れ残っているらしい。

筆者の暮らす街でも、先月に販売され売り場はかなり混雑していたため、きれいに売り切れたのかと思いきや、今朝の新聞で、大量の売れ残りが生じたため、今月中に再度販売されると報じられた。

筆者の街の商品券は、プレミアムが25%も付き、市内の主だった大型店や小売店で利用できるため、よもや売切れなどあるまいと踏んでいたが、先月の販売時には45%ほどしか売れなかったそうだ。

一部では、アベノミクス効果で景気回復が叫ばれているにもかかわらず、25%ものプレミアムが付くお買い得感の強い商品券が、なぜこれほど売れ残ってしまったのだろうか。

他所の様子をいろいろと調べてみると、結構売れ残っている地域が多いようで、千葉県鎌ケ谷市(プレミアム率30%)、兵庫県豊岡市(同20%)、香川県坂出市(同20%)、千葉県八千代市(同20%)、大阪市(同15%)、山口県山口市(同10%)、千葉市(同10%)等々、あちこちで売れ残りが生じているらしい。

消費者は、玉子やサラダ油の安売りにはロシア人みたいに長い行列を作るくせに、場合によっては数千円ものプレミアムが付くお得な商品券をなぜ買おうとしないのだろうか。
しかも、財布が膨らむボーナス時期だというのに...

使える店が少ないとか、使用できる期限があるとかいった理由はあるだろうが、大概、どこの地域でも主だった商業施設では使用できるようで、プレミアム率も高いことから、通常なら、売れ残りが生じるなど想定しづらい。
発売後に、即、完売御礼の立札を用意していたはずの商工会議所や商工会も、さぞや慌てていることだろう。

一般的に消費者の購買行動は、極めて単純明快なものだ。
これだけお得感の高い商品券が各地で売れ残るのは、消費者の懐具合に余裕がないためである。

ネオファースト保険の調べ(調査対象:全国の 20 ~50 代のサラリーマン世帯の主婦500名)によると、
・夏のボーナス「増えた」は33.4%、「減った」は14.4%。平均手取額は66.5万円
•今回のボーナスに6割が「満足している」(59.6%)。”理想のボーナス額”の平均は「117.3万円」
•ボーナスの今後の見通しは「増えていくと思う」(31.6%)が「減っていく+なくなると思う」(19.2%)を上回る。
•ボーナスの使い道は「預貯金」が69.4%と群を抜いている(「生活費の補填」28.2%、「ローン支払い」20.4%という回答割合も多い)
という結果が出ており、ボーナス支給額が増え、今後の見通しも楽観的なようだ。
なのに、ボーナスの使い道として預貯金という回答が7割近くに及んでいる。

プレミアム商品券など目もくれず手に入れたボーナスを必死に貯め込もうとする主婦の姿から、消費税増税や日用品・食料品の価格が次々に値上げされる中で、給与収入が思ったほど増えていない現状に対する強い苛立ちが伝わってくるようだ。

売れ付きが芳しくないのは、安倍政権一押しのプレミアム商品券だけではない。

牛丼チェーン大手の吉野家は、今年3~5月期の連結決算を発表したが、営業利益が3億円と前年同期比58.9%減少、最終利益は2億円と同54.2%の大幅な減益となった。
昨年12月に牛丼を値上げ(300円→380円)したため、客数が大幅に減少したことが響いたそうだ。

アベノミクスの恩恵とやらで国民の所得がきちんと増えているなら、僅か80円ばかりの値上げで客足が大きく落ち込むはずがない。

また、異物混入問題や中国の期限切れ加工肉の使用問題で大きく業績を落としていたマクドナルドは、6月の月次レポートを発表したが、それによると、既存店売上は前年同月比23.4%減少、全店売上高は同23.5%減少と17カ月連続の減少となり、一向に回復の兆しがない。

マクドナルド側も、サラダなど新メニューを投下して業績改善を図っているが、客離れは深刻で、客単価も前年同月比14.5%減少と5月実績(▲9.3%)よりダウン幅が拡大し、12カ月連続のマイナスとなった。
こちらも、肝心の客単価の減少に歯止めが掛からず苦戦しており、消費者が財布の紐を緩めるどころか、一層きつく締め上げている様子が窺える。

名目賃金こそわずかに上昇しているものの、物価上昇のペースには到底追いつかず、5月の実質賃金の速報値は前年比0.1%減少となり、25カ月連続でマイナスとなっている。
恐らく、これまでと同様に、確報値段階ではさらにマイナス幅が拡がるだろう。

日本経済の病状を悪化させている原発巣に手を付けず、傷口に膏薬を塗り続けたところで何の効果も期待できない。

プレミアム商品券自体は悪い手ではないが、民需の自発的な盛り上がりを前提とする発想の政策であり、国民所得が十分に増え切っていない現段階では、経済の起爆剤としての効果を発揮しづらいだろう。
しかも、国民の間には、物価高に対する警戒感が名目賃金の増加効果を打ち消す「逆貨幣錯覚」が蔓延しており、せっかく発行された商品券の経済効果も、一回転して終わり(=乗数効果なし)という惨めな結果になりかねない。

20年近くに及んだデフレ不況が日本経済に残した傷跡は想像以上に深刻であり、国民所得を蝕み、その消費行動に今も大きなブレーキを掛け続けている。
政府や与党は、こうした経済認識を十分に理解し、いい加減に、国民や企業の自発的経済活動を前提とする経済政策から発想を転換すべきだ。

経済成長するためには、消費と投資が欠かせないのは誰にでも理解できるだろう。
問題なのは、消費と投資の主役となるべき「資金」が足りないことだ。

適切な経済政策を打とうとするならば、その「資金」をいかにして実体経済に供給するかを考えるだけでよい。
答えは、極めてシンプルだ。

2015年7月 2日 (木)

日本経済の病巣は需要不足にあり

6月29日に、中小企業庁から「第140回中小企業景況調査(2015年4-6月期)」が公表された。
調査概況では、「中小企業の業況は、持ち直しの動きを示しているものの、一部業種に足踏みが見られる。“ 全産業の業況判断DIは2期ぶりにマイナス幅がやや拡大した”、“ 産業別に見ると製造業はマイナス幅が拡大し、非製造業もややマイナス幅が拡大した”」とコメントされ、昨年の消費税増税以降に大きく落ち込んだ中小企業の業績が、いまだに回復していないことが窺える。

業況判断DIについて、2015年4-6月期(以下、「当期」)は全産業ベースで▲18.7(前期比▲0.9ポイント)とマイナス幅が拡大している。

製造業全体で▲15.6(同▲1.5ポイント)とマイナス幅が拡大している。
業種別では、パルプ・紙加工品(▲1.1/同+10.2ポイント)や家具・装備品(▲12.3/+5.8ポイント)、繊維工業(▲14.3/同+5.7ポイント)など7業種で改善の動きが確認できるが、機械器具(▲5.5/同▲5.7ポイント)や窯業・土石製品(▲25.4/同▲8.7ポイント)、鉄鋼・非鉄金属(▲14.4/同▲8.3ポイント)、木材・木製品(▲30.3/同▲6.3ポイント)など6業種で悪化している。

これらを見ると、自動車や電機、産業機械など大手輸出型企業の売上UPの恩恵が下請レベルにまでは波及していないこと、公共工事縮減の影響が表れていること、住宅・不動産業界の不振の影響をもろに被っていることが窺える。

一方、非製造業では、全体の業績判断DIが▲19.6(同▲0.3ポイント)と、こちらもマイナス幅がやや拡大している。
業種別では、情報通信・広告業(▲1.5/同+7.2ポイント)、対事業所サービス業(専門技術)(▲6.6/同+1.3ポイント)、対個人サービス業(▲19.3/同+0.6ポイント)などでマイナス幅が縮小したが、対事業所サービス業(運送・倉庫)(▲20.0/同▲6.3ポイント)、宿泊業(▲14.0/同▲5.6ポイント)などでマイナス幅が拡大している。

海外からの観光客の大幅な増加やネット販売の普及による通販事業の拡大が喧伝される割に、関連業種の業況判断が後退しているのが大きな特徴と言える。

このほか、売上額DIは、全産業ベースで▲17.3(同▲2.6ポイント)、うち製造業▲14.0(同▲3.6ポイント)、非製造業▲18.3(同▲1.6ポイント)といずれも悪化し、一方、採算(経常利益)DIは、全産業ベースで▲23.3(同+5.7ポイント)、うち製造業▲21.3(同+3.3ポイント)、非製造業▲23.9(同+6.5ポイント)と改善傾向にあるものの、いずれも▲20を下回る極めて低い水準に止まっている。

また、生産設備過不足DIについては、当期の値が▲2.8(過剰-不足)となり、7期連続で不足気味の傾向を示している。
確かに、設備投資実施企業の割合は、生産設備過不足DIが大きく落ち込んだ2009年頃に11%程度であったのが、当期は16%を超えているものの、依然として、全体の2割にも満たない低水準に止まっている。

しかも、業況DIや売上額DIの冴えない動きを見れば、成長や受注増加を見込んだ前向きの投資というよりも、我慢に我慢を重ねて使い込んできた設備が耐用年数を遥かに過ぎ、止むを得ず更新せざるを得なかったという色彩が強いのではないか。

事実、今回の調査の個別意見にも、「現在、調子が悪い設備があるため購入を検討しているが、今後の業況は不明であることから購入に対して慎重になっている」、「製品の動きが悪化、需要が見えない。設備の老朽化もあるが、投資は不安もあり、現行機械を何とか使っている。生産効率の低下や加工精度等、どうしてカバーしていくか、苦慮している」といった切実な声もあったが、中小企業の実態はこんなものだろう。

世間には“アベノミクスで日本経済は危機を脱した”、“成長に向けて力強く歩みを進めている”などと勘違いしている者が多くいるが、日本の産業の根幹たる中小企業の業況は依然として厳しいままで、延々と続く不調のトンネルから抜け出せないでいる。

今回の調査では、一部に回復している業種があるものの、全業種で業況判断DIがマイナス値を突破できておらず、アベノミクスの信奉者が唱える「景気回復の兆し」とやらが都合のよい作り話であることが判る。

また、彼らは、盛んに人手不足による供給制約を殊更問題視し、政府による景気刺激策(財政政策)を牽制する。
ところが、実際の現場では人手不足なんて大した問題にはなっていないようだ。
それは、今回の調査結果の中にある経営上の問題点を業種別に集計したデータを見れば解かる。

当該データは、製造業・建設業・卸売業・小売業・サービス業の5つの業種ごとに、直面している経営上の問題点を問うたものだが、人手不足という回答割合が上位5つに入ったのは、建設業9.6%(全体の4位)とサービス業9.2%(同4位)のみで、他の業種ではランク外だった。
しかも、今回ランクインした2業種いずれも、人手不足という回答は、前期・前々期ともにせいぜい7~10%くらいの回答割合に過ぎず、順位も不動の4位に停まっている。

一方、「需要不足」が問題だとする回答割合は、製造業24.1%(全体の1位)、建設業29.8%(同1位 ※官需民需不足の合計値)、卸売業32.7%(同1位)、小売業17.7%(同2位)、サービス業18.2%(同2位)という結果で、「人手不足」なんかよりはるかに高い割合になっている。
これに「他社との競争激化」や「購買力の流出」といった類似の回答を付加すれば、需要不足の問題こそが、経営上の重大なボトルネックとなっている事実を嫌でも認識せざるを得なくなる。

筆者も、取引先の中小企業の経営者から、“募集を掛けてもパートさんが集まらない”、“時給が上がり気味で困っている”といった声をよく聞いている。
だが、どのくらいの時給を呈示しているのかと聞くと、ほぼ最低賃金に近い金額でしかなく、交通費も出ず勤務時間も融通の利かないケースが多く、それじゃ、人なんて集まりませんよ、と言いたくなることが多々あるが、当の経営者たちは、今の人たちは我慢が足りない、若い人たちはわがままだ、中国人を雇いたいだのと愚痴ばかりこぼしている。

こうした経営者と地域の人材とのミスマッチが生じるのも、雇用条件が悪すぎる、要するに給料が安すぎるという問題に尽きる。
端的に言えば、マクロ経済全体の需要不足により、雇用主たる企業の売上や収益環境が全く改善されず、中小企業の多くは従業員にまともな給料すら払える状態にない、ということだろう。

中小企業は全企業の99%以上を占める一方、大企業の割合は0.3%ほどに過ぎず、人体でいえば重量ベースで心臓くらいの重さに相当する。
長引くデフレ不況に起因する需要不足により筋肉や臓器(中小企業)が軒並み不調を来している状況下で、一時の円安・株高・外需増により大企業(心臓)だけが強くなったとして、果たして、マクロ経済全体(人体そのもの)が活き活きと生活して行けるものだろうか。
病床に伏した患者の心臓だけが元気になったところで、ベッドから起き上がることも、まともな食事を摂ることもできはしない。

病を引き起こす病巣の診断を誤ると、後の治療や処置が上手く行かないことくらい誰でも理解できることだろう。
それは、マクロ経済の分析や対策においても同じことだ。

需要不足(所得不足)という病巣から目を逸らし続けて、改革ごっこや緩和ごっこに興じる限り、日本経済が真の成長軌道に乗ることはない。

(※)私も隔週でコラムを投稿している「進撃の庶民」のサイトで、明日7月3日金曜日午後10時より、フリー参加型の討論会を開催します。

詳しくはこちらをご覧ください。
http://s.ameblo.jp/shingekinosyomin/entry-12045562795.html

2015年7月 1日 (水)

経済成長の源泉は、国民の財布の中にあり

6月29日に、新生銀行から「2015年サラリーマンのお小遣い調査」というレポートが公表された。
(今年の4/15~17に全国の会社員やパート・アルバイトなど合計2,536名を対象としてネット調査を実施したもの)

日本全体の景況感について、報道では、アベノミクスにより今年の春闘による賃金引上げ率が0.67%と前年実績(0.49%)を上回ったことを受けて、景気の見通しを楽観視する見方が強い。

一方で、街の声や世間の意見を拾うと、「自分の給料は全く上がっていない」とか、「給料が上がっているのは輸出で儲かった大企業だけ」、「物価の値上がりに給与の伸びが追いつかない」といった不満の声が大勢を占める。

今回紹介するレポートは、混沌とする景気動向の見方に一定のヒントを与えてくれる。

まず、月平均の小遣い額は男女ともに減少している。
男性会社員は37,642円と前年比1,930円の減少(▲4.9%)、女性会社員は34,468円と前年比2,244円の減少(▲6.2%)となり、かなりのダウンを喫している。
ちなみに、男性会社員の小遣い水準は、2007年以降ダラダラと減る傾向にあり、1982年に次ぎ過去2番目の低さだそうで、バブル期(7.7万円)の半分以下にまで落ち込んでしまった。

続いて、小遣い額の変化を見ると、全体の8割以上が「変化なし」との回答だったが、「アップした」との回答は、男性会社員で6.6%、女性会社員で4.9%に過ぎず、逆に「ダウンした」との回答は、男性会社員で11.0%、女性会社員で17.6%とアップした割合を大きく上回っている。

しかも、「アップした」と回答した階層の個人年収の平均額は、男性会社員が572万円、女性会社員が296万円であるのに対して、「ダウンした」と回答した階層の個人年収の平均額は、男性会社員が425万円、女性会社員が251万円という結果が出ており、比較的年収の高い層の小遣いが増える一方で年収の低い層の小遣いが減り、年収による“小遣い格差”が上下方向に拡大する傾向にあると言えよう。

富める者(といっても、年収600万円にも満たないのだが…)がより豊かになり、貧しい者の懐具合がより苦しくなるという結果に、何ともやるせない気分になる。
こういうデータを見ると、「給料が上がっているのは輸出で儲かった大企業だけ」、「物価の値上がりに給与の伸びが追いつかない」という巷の声も、妙にリアリティが感じられるものだ。

また、レポートでは、サラリーマンの昼食事情にも触れており、1日の平均昼食代は、男性会社員が601円(前年比+60円)、女性会社員が666円(同+154円)とともに上がっているが、レポートでは、この上昇分の殆どが消費税増税や食材費の高騰に伴う外食の値上げによるものと分析している。

ここ数年来、小遣いが減り続ける中で、昼飯代が1割以上(女性は3割以上!)も上がっては、たまったものではないだろう。

昼食の内訳データを見ると、「持参弁当」の割合が、男性会社員で34.8%(前年比+2.3ポイント)、女性会社員で56.3%(同+7.4ポイント)と上昇する一方で、「外食・社食・弁当購入・出前」等の割合は、男性会社員が57.9%(同▲2.8%)、女性会社員が37.1%(同▲6.4%)と減少しており、外でランチを摂ること自体が“プチ贅沢化”しつつあるのかもしれない。

正直に言って、女性会社員のランチ代が意外に安いことに驚かされた(もっとオシャレな店に入っていると思っていたのに…)が、男性以上に小遣いが減る中で、これだけ外食の値段が上がると、弁当持参に切り替えざるを得なくなるのも仕方がない。

また、消費税増税による負担感については、男性会社員の78.2%が「大変」もしくは「少し」負担を感じていると回答し、昨年より5.2ポイント、消費税5%への引上げ後より17.3ポイントも増えている。(女性会社員は84.9%が「大変」もしくは「少し」負担を感じていると回答)
そして、経済的なゆとりに関して、男性会社員の58.6%、女性会社員の59.4%が「苦しい」と回答している。

このように、世のサラリーマンやOLたちの慎ましい小遣い事情を目の当たりにすると、中間層や低所得層を中心とした所得向上を図り、そこを起点とした経済成長を実現させることの大切さを痛感させられる。

20年近くも停滞を続けていると、国民の多くは、ノーマルな経済政策やありきたりの景気対策では、もはや経済成長など出来っこないと決めつけ、生活を一変させるような革新的技術の出現を期待してしまう。
そして、これまでに人々の生活を大きく変えた蒸気機関車や大型貨物船、自動車、飛行機、家電製品、パソコン、インターネットのような極めて新規性の高い技術開発なしに世の中を変化させることは叶わない、ドラスティックな変化を経ずして経済成長なし、という誤った思考のループに嵌まり込んでしまいがちだ。

こういったある種のヒーロー願望にも似た極端な思考が、人々の視野を歪めて経済政策の選択の幅を狭めてしまう。

いつ現れるともしれない革新的技術の出現を待ち続け、当たり前の経済対策を放棄してしまうと、その間に国民所得は停滞、あるいは、減少し、購買力や需要力は衰える一方となるだろう。
そんな状況が続けば、幸運にも高度技術が実用化されたときには、既に、それを買い支える需要力がなく、せっかくの技術が使われもせずにゴミ箱行き、というまことにバカげたことになってしまう。

何の対策もなしに、稀代のヒーローの出現に期待するような打率の低い手段をわざわざ選ばずとも、国民や企業から広範囲に望ましい経済対策メニューを公募し、それらを解決する手段として、長期かつ大規模な財政金融政策を打ちつづければ良い。

ちょっとつつけば、まともな所得を得ることができる職がない、保育所や保育人材が足りない、介護人材が足りない、教室にエアコンを付けたい、道路や橋が老朽化して危ない、頻発する自然災害に備えて観測体制を強化したい、東シナ海での中国の動きに備えて軍備を強化したい等々、国民生活向上のため、国益のためにやるべき事業はいくらでも出てくるものだ。

それらに十分な予算を付け、コツコツこなしていけば、成長を阻害する懸案事項が解決され、事業を通じた実体経済への資金供給により経済力も強化され、国民や企業の購買力や需要力も増し、それが新たな技術開発や高度人材を産み出すという好循環につながるだろう。

いいかげんに、「供給ありき」、「開発ありき」といった昭和の価値観から抜け出し、需要力低下による需要不足こそが、現在の経済苦境の病根であることを認めるべきだろう。

経済成長を実現するのに、画期的な新技術や革新的な新サービスのような華々しい英雄は、必ずしも必要ではない。
そこら辺に掃いて捨てるほどいるサラリーマンやOLたちの給料や小遣いが増え、彼らが1,500円くらいのランチを当たり前のように食べられる世の中にすることこそが、経済成長そのものなのだ。

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