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2015年12月25日 (金)

結局は、バラマキが最も効率的かつ効果的

12月18日に各省庁の平成27年度補正予算案が閣議決定された。
今回の補正予算の総額は約3.5兆円と、疲弊したマクロ経済を下支えするにはあまりにも少額(少なくとも15兆円くらいは必要だろう)で、政策の内容も1億層活躍社会とかTPP対策という表看板とは裏腹に、既存予算の付け替えでしかないものが目立つ。

特に、国内での議論や批准手続きをすっ飛ばして、TPP対策を先行させ既成事実化しようとする政府・与党の動きには強い批判を浴びせたい。

国策として本気で「強い農業」や「中小企業の海外展開」を志向するなら、TPPという踏み絵をわざわざ踏ませずとも、お得意の成長戦略の一環として、きちんと予算措置すればよいだけの話だ。
本来なら、農業の強化や中小企業の育成は、「対策」ではなく「政策」として位置付けられるべきものだろう。

先日、「政府が国内総生産(GDP)を実質で約14兆円(約3%)押し上げるとの試算を取りまとめる方針」だと報じられた(たぶん10年換算での試算だろう)が、2013年3月に行った試算では(10年換算で)3.2兆円に過ぎなかったことを考えると、異様な数字のマジックとしか映らない。

前回試算から3年も経たないうちに、日本の産業構造が大きく変化したわけではなかろう。
なのに、TPPのような内需にとって毒性の強い政策の効果が4倍以上に膨らむなどありえない。
先に改竄された7~9月期のGDP改訂値と同様に、政府が意のままに数値を弄るようでは、中国のような独裁国家と何ら変わりがない。

さて、今回の補正予算の中でも、農水省の「産地パワーアップ事業」が、緊縮主義者や構造改革主義者の連中から強い非難を浴びせられている。

「産地パワーアップ事業(予算額505億円)」の概要は、『地域一丸となって収益力強化に計画的に取り組む産地に対し、計画策定経費、計画の実現に必要な農業機械のリース導入や、集出荷施設の整備に係る経費等をすべての農作物を対象として総合的に支援』するというもので、基金を造成し複数年度にわたる事業を可能にする点が特徴だ。(助成率は1/2、助成額の上限は未定)

週刊ダイヤモンドは11月30日付の記事で、「TPP農業対策で選挙向けバラマキ予算投入の矛盾」という記事を掲載し、それを受けて、幾人かのブロガーが批判記事を書いている。

ダイヤモンドの記事によると、彼らの主張の概要は次のとおりだ。

・これまで、生産施設の整備で補助金をもらうには、施設を使う農家5戸以上がグループ化する必要があった。産地パワーアップ事業の特徴は、“個人の施設整備への補助”という禁断の領域に踏み込んでいる。

・補助金のバラマキにより、本来は離農するはずだった農家まで田植え機などを購入してしまい、その結果、コメをはじめとした非効率な農業の構造が温存される。

・政府は全農地の8割を担い手農家に集めるため、2年間で1000億円以上の予算を投じている。その一方で、農業の大規模化を妨げる産地パワーアップ事業を立ち上げるのはまさにマッチポンプだ。

・農協最大の関心事であるコメの生産に使える産地パワーアップ事業では、農協が積極的に旗を振ることは間違いない。(中略)補助金で施設整備する農家に農機などを売り込み、利益を上げてきた経緯もある。

要するに、“ゾンビ農家を生き残らせてしまう選挙対策のバラマキをやめろ”と言いたいのだろう。

だが、筆者の考えは彼らの主張とは180度異なる。

およそ、補助事業なんてものは、チャレンジする者が多くいないと意味がない。

従来の農業者向け施設整備補助事業は、3~5戸の連携が義務付けられてきたが、農業者の実態とは全くマッチしていない愚策と言えよう。

“大規模化”の美名の下に、抱えている事情も資力も異なる農業者を無理やり寄せ集めても、事業が上手く行くはずがなかろう。
農業者なんて、元々、一匹狼で独立心が旺盛な人種ばかりだから、連携を無理強いしても、事業費の分担や出荷する農産品や商品などのブランド化の方向性を巡り仲違いするのがオチだ。

国が推進する6次産業化の総合化事業計画の認定を受けた農業グループの事例でも、連携の美しい仕組み図は描けても、その後の運営がクラッシュしてしまった事例がかなり多くあると聞く。

せっかく予算を付けたのだから、門前であれこれと無茶な要件を課すのではなく、広く門戸を開放し、提案の質を競わせればよいではないか。

単なるバラマキになるのを避けようと補助事業にいろいろな要件をくっつけるのは、役所の悪い癖だ。

補助金にチャレンジする農業者や事業者が、要件に合わせて自らの事業計画を捻じ曲げねばならないとしたら、それこそ本末転倒だろう。

今回採り上げた産地パワーアップ事業には、要件が緩すぎるという批判があるようだが、裏を返すと、多くの農業者にチャンスが与えられている、ということだろう。
チャレンジする者の数が多いほど、そこに提案される事業計画の質のレベルも向上し、結果として、事業実施後の成果が上がる確率の向上にもつながるものだ。

厳しい補助要件に守られた純粋培養案件よりも、バラマキだと非難されるくらい緩い要件の中で激烈な競争を勝ち抜いた案件の方が、事業化の確率は間違いなく上がるだろう。

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