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2016年7月25日 (月)

成長の余地なら、くさるほどある

機能的財政論と唱える論者と金融政策版労論に固執するリフレ派との間には、長らく、『デフレの要因は「需要不足」か「貨幣現象」か』という論争があることは、当ブログの読者の皆様もご存知だろう。

実体経済の荒波に揉まれている社会人や生活者なら、所得が税や社会保険料負担の増加にまったく追いつけない苦しい経済環境を鑑みて、所得の伸び悩みや減退こそが消費(=需要)を冷え込ませ、デフレを長引かせていることを直感的に理解できるはずだ。

ましてや、リフレ派の総本山たる日銀が繰り出す異次元緩和政策やマイナス金利という“切り札”がまったく効かず、2%の物価上昇という「公約」の達成時期を既に四回も先送りしており、「デフレの原因は貨幣現象だ」と強がったところで失笑を買うだけだ。。
(もっとも、“デフレ脱却=2%の物価上昇”という目標設定自体が、端から見当違いなのだが…)


識者や論者の中には、“デフレの原因は需要不足にある”という文字を枕詞代わりに使う者もいるが、その後の論理展開が、筆者とは全く別方向にずれてしまう例もある。

例えば、今月20日に開催された経済財政諮問会議の政策コメンテーター委員会総会に意見を提出した日本大学経済学部 川出教授は、「デフレは少子高齢化などによる需要不足が原因であろう。ただ、円安や財政支出で需要不足を補っても、それが切れると再び需要不足に戻ってしまう。この繰り返しを終えるべきで、 (中略) 高付加価値を生むことの多い潜在消費は人々が持つ無意識の需要を刺激する必要があり、無意識である以上、企業家が試行錯誤して見つけるほかない。 (中略) 消費マインドは、中低所得者に配慮した社会保障強化で将来所得不安を払拭し、働き方を問わず、長時間労働で消費する暇がない状況を改善すべきではないか。単純に非正規労働女性を増やしても、低賃金労働のさらなる低賃金化や世帯あたりの総労働時間の増加で、消費機会を奪っている可能性がある。結局はデフレも、潜在需要、女性の社会進出・少子化対策もその背後にある問題で繋がっているのではないかと思う」と述べ、財政政策はカンフル剤に過ぎず、潜在需要を喚起するには企業家のアニマルスピリッツ(=消費低迷は魅力的な商品・サービスの不在が原因)と女性の活用(=低賃金労働の蔓延容認)が不可欠だと論じている。

また、ニッセイ基礎研究所専務理事 櫨浩一氏は、東洋経済オンラインのコラム(「金融政策や財政政策は根本問題を解決しない~対症療法でむやみに薬を飲むべきではない~」)で、「財政支出の増加や減税による需要創出を行えば、需要不足という問題は緩和して経済活動は活発化する。経済の悪化が、何かのショックが引き起こした一時的な需要不足によるものであるならば、経済は元の経路に戻り大幅な財政赤字は短期間で終了させることができる。しかし、バブル崩壊後の日本経済は慢性的な需要不足になっており、財政赤字による景気刺激を縮小しようとすると景気が悪化してしまい、財政赤字を縮小することができないでいる。 (中略)  財政政策と金融政策を駆使して大規模な景気刺激を行えば、日本経済を安定成長経路に戻すことができるという保証はない。景気刺激のために政府債務を大幅に積み増すというのは、財政危機に陥る時期を早めてしまうリスクが大きい。 (中略) 
病気の本体を治療せずに対症療法だけを繰り返していても患者の体力が低下していくだけだ。 (中略) むやみに薬を飲まずに、病気の原因を見極めるべきだ」と論じ、財政政策の効果を認めながらも、それは需要不足が一時的な場合にのみ通用するもので長期的な対策には成り得ないと財政政策限界説を強調している。

このように、貨幣現象説が敗北し需要不足説が主導権を握ったと考えるのは早計というもので、需要不足がデフレの原因だという言葉は踊っても、それは、構造改革や働き方改革、生産性革命などの断行を訴えるための時候の挨拶程度のものに過ぎない。

「デフレの原因は確かに需要不足だが、一時的な需要刺激策に意味はないし、却って麻薬のように日本経済の体質改善を阻害する。中長期的に必要なのは構造改革とそれによる生産性向上であり、痛みから目を反らすことなく改革を断行すべき」というのが彼らの本音だ。


確かに“一時的な需要刺激策は無効だ”という彼らの主張は正しい。
財政政策は“一時的”に打っても効き目は薄く(無論、打たぬより打つ方が100倍はマシなのだが…)、その効果を最大限に発揮するためには“永続的”に打たねばならない。

こういうことを言うと、カンフル剤を永久に打ち続けられるわけがないとレベルの低い批判が飛んでくるが、そもそも、財政政策=カンフル剤という認識が間違っている。

一国の経済活動の主役となるのは、個人消費を柱とする民間経済主体であることに異論はないが、彼らは意外と臆病で、莫大な資産ストックを有しているくせに、常に政府の支出態度を気にしながら消費や投資態度を決めている。
政府が積極的な財政支出を行えば、我先に資産を買い漁ったり、くだらぬ投資に手を染めるくせに、緊縮方針を打ち出した途端に、長期的な収益の画が描けないとか、将来不安だと言って財布の紐をきつく縛ってしまう。

ゆえに、経済活動の主役を元気づけるためには、政府は積極的な財政政策を永続的に打ち続けねばならない。
財政政策はカンフル剤なんて言い草は、財政政策の恩恵を軽視した恩知らずのバカ息子の吐くセリフであり、「財政政策は生存に欠かせぬ三度の飯だ」というのが真実なのだ。


だが、より大きな視点から見れば、“デフレは需要不足か貨幣現象か”という論争もコップの中の小さな諍いに過ぎないことに気付かされる。

デフレ不況の要因に関しては、需要不足説や貨幣現象説の他にも様々な意見がある。

例えば、経済構造の変化に対応できない構造改革不足説や世界的な為替変動説を唱える者もいるし、最近ではゾンビ企業が温存されたことによる生産性低下説もよく目にする。
しかし、最大の多数派は、需要不足派でも貨幣現象派でもなく、「デフレ宿命説に立脚した縮小社会受容論」だと思う。

これは、先進国を中心に世界経済が成熟を迎える中で、少子高齢化や生産年齢人口の縮小により需要力は衰え、生産力も制約を受けるため、かつてのような高度成長は望むべくもないという成長否定論や放棄論とも言える。

こうした成長否定派の論者は、エコノミストや評論家、マスコミ関係者、経営者層などの識者のみならず、市井の人々にも数多く存在している。

マスコミの連中から連日のように、“日本は少子高齢化で立ち行かなくなる”、“生産年齢人口が減り外国人労働者の受入れやロボット化が不可避だ”と脅しつけられて洗脳された庶民も多いだろうし、20年近くも不況が常態化する現代で、成長を信じ続けろと言う方が酷なのかもしれない。

だが、選挙の際の世論調査では、「景気を何とかしてほしい」、「社会保障制度を建て直してほしい」という回答が相変わらず上位を占めており、多くの国民が現状の改善を望んでいることは間違いない。

彼らがこんな矛盾した回答をする背景には、通貨の本質や景気・経済の意味、経済政策が景気に及ぼす役割りなど経済の根幹に係る事項への決定的な無理解ぶりがある。

「景気回復を望みながら、国の借金が増えるからと経済対策には反対する」、「国債や円が暴落すると慄きながら、円を手放そうとしない」、「日本の潜在成長率はたったの0.5%未満だから成長は無理だと言いながら、今期の売上目標は前年比プラス5%だと檄を飛ばす」
こんないい加減かつ矛盾だらけの思考回路で財政政策に反対する国民が圧倒的多数を占めていることに暗澹たる思いを禁じ得ない。

日本の潜在成長率を必要以上に低く見積もりたがる愚か者は、潜在成長率の算出に当たって「資本」「生産性」「労働力」という生産要素のみからアプローチしがちだが、それらを裏付けるのは、すべて『需要力』であり、需要に担保される限り、それらの生産要素の天井に限界はない。

少子高齢化を言い訳に労働力不足を主張する者もいるが、国内に数百万人もいる労働予備軍(失業者)の存在を無視して語るべきではないし、規模の大小を問わず、日本の企業内で罷り通っている社内政治や部門間調整作業等といった身内間の調整に掛かっている膨大な業務量の効率化を図ることができれば、相当な事務の効率化と生産性向上が実現されるだろう。
そうした努力を足蹴にして、一足飛びに移民受入論やロボット化を語るなどもってのほかだ。

我が国では20年近くも不況が続いてきたが、その間に間断ない技術革新や情報化投資が行われ、生産能力や物流能力は飛躍的に向上している。
よって、潜在成長率は頭打ちになるどころか、成長の余地(バッファー)は相当拡大しているはずで、それが実現されないのは、需要不足ゆえに設備や生産力の稼働状況が収益分岐レベルに達していないからに過ぎない。

日本が成長できないはずがない。
日本を成長させたくない連中が、成長と分配に効き目のある財政政策をさせたくないと願っているだけのことだ。

デフレ宿命説に立脚した縮小社会受容論を唱えるのは、単なるナマケモノか、日本の社会構造弱体化に興味を持つ売国奴だろう。

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コメント

いつもキレキレの論評に胸がすく思いで拝見しております。
確かに「デフレ宿命説に立脚した縮小社会受容論」が世の中蔓延していることを実感しています。

数年前ですがでわが町の町長殿の年初挨拶にて「少子高齢化の進む人口減少社会の日本は以前のような成長は望めない。それを受け入れていかに落ちていく社会をうまくソフトランディングさせるかが大切だ・・・」との自説を聴かされ、深ーいため息をついた思い出があります(笑)

おそらくこんな夢もへったくれもない話に大半の聴衆はなんの違和感も感じなかったと思います。
それほど、20年以上続いたデフレの影響は深刻なんですね。

多くの先進諸国でも少子高齢化が常態化しています。
にも関わらずこの20年で日本のようにGDPが全く伸びていない国を探すほうが難しいんですがね・・・

≫かきすけさん

件の町長殿のように、衰退宿命論を誇らしげに語る連中って、いますよね。

いい大人が、「今日より幸せになれる明日」を語れぬとは、情けない限りです。

これこそが、次世代への債務のツケ回しなんだと思います。

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