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2016年7月 5日 (火)

信仰や思い込みが招く経済的誤診

『日銀、物価予想下げ検討=賃上げ低迷と円高影響―7月会合(時事通信 7月4日)』

「日銀は28、29日に開く金融政策決定会合で、最新の経済予測である「経済・物価情勢の展望」をまとめ、公表する。春闘での賃上げが勢いを欠いたことや英国のEU離脱決定後の円高を受けて物価上昇の勢いは弱まっている。2016年度の消費者物価(除く生鮮食品)上昇率の見通しを前年度比0.5%から0%台前半に引き下げる方向で検討する」

“物価予想のオオカミ少年”と化した日銀が、またしても物価見通しの下方修正を迫られることになりそうだ。

時事通信のニュースでは、「次回会合では、17年度見通し(4月予想1.7%)に関しても下方修正が必要かどうかを議論。「17年度中」としている2%の物価上昇目標の実現時期について、先送りの是非を判断する」とあるが、間違いなく2017年度の見通しも下方修正されるだろう。

黒田日銀総裁は、年間80兆円にも達する異次元金融緩和を継続させる姿勢を崩さないが、消費者物価上昇率だけでなく、企業DIや設備投資見通し、家計消費支出、日銀短観など、あらゆる経済指標が、停滞もしくは悪化の様相を呈しており、もはや、黒田バズーカの奇跡を信じる者はリフレ派のようなおめでたい連中以外に誰もいない。

そもそも、史上類を見ない規模の異次元緩和と言っても、その中身は、既発債を巡る日銀と金融機関との間の両替行為に過ぎないから、実体経済に強いメッセージを送れるような代物ではない


こうした情勢を受けて、日銀の足を引っ張る者も出始めた。

『インタビュー:物価上昇時、国債減額・マイナス金利拡大セットで=白井・前日銀委員(ロイター 7月4日)』

「今年3月まで日銀審議委員を務めた白井さゆり・慶應義塾大特別招聘教授は4日、ロイターのインタビューに応じ、日銀が掲げる物価2%目標の実現には時間がかかるとし、まず1%の物価安定を実現したうえで、2%を目指す2段階方式にすべきと提言した。同時に金融政策の持続性確保のため、現行の国債買い入れを減額し、合わせてマイナス金利幅を拡大するパッケージが有効と語った。これらの見直しは、物価が再び上昇傾向に入る局面で実施すべきとし、7月28、29日の次回の金融政策決定会合での追加緩和は、必要ないとの見解を示した」

白井氏は、元々、緊縮・改革色が強く財政政策を毛嫌いする“内需シバキ上げ派”の論客であり、最近のマイナス金利導入や追加緩和には消極的な立場を取ってきたため、日銀の追加緩和を牽制する趣旨の発言をすることに違和感はない。

筆者も、これ以上の追加緩和なんて、やっても大した効果はないだろうと思うが、それを頭ごなしに否定する気もない。
ただ、毒にも薬にもならぬ追加緩和を以って、日銀幹部やその取り巻きの連中が、あたかも大きな仕事を成し遂げたかのように自慢顔することに強い不快感を覚えるだけだ。


白井氏は、ロイターのインタビューに対して、「内需が悪化していたわけではないことは日銀も認めている」、「人手不足は深刻な状況にあり、日本経済が悪くなっているとは思わない。実力より少し強めの成長が続いている中で、需給ギャップは解消されている方向にある」、「少なくとも需要不足によるデフレ的な状況ではなくなっている」、「本質的な問題は潜在成長率の低さ」などとピントのズレた発言を繰り返している。

このように、現状認識に誤りがあると、それに対する解決策も自ずと誤ったものになる。

白井氏は日銀の金融政策に関して、「まず1%の物価安定を実現したうえで、2%を目指す2段階方式にすべき」、「金融政策の持続性確保のため、現行の国債買い入れを減額し、合わせてマイナス金利幅を拡大するパッケージが有効」と提言している。

しかし、2段階目標の設定に何の意味があるのか甚だ疑問だし、国債買い入れ減額とマイナス金利幅の拡大のパッケージとやらは、量的緩和政策の限界点が見えた日銀に、マイナス金利政策の深堀りという逃げ道を与えるための口実にしか見えない。

金融政策の持続性を確保したいのなら、日銀が買いたがっている国債の量をもっと爆発的に増やしてやればよい。
弾が切れかかっている既発債頼みの方針を転換し、国債が在庫切れを起こさぬよう、積極的な財政政策を通じて新発債をドンドン市場へ投入しろと政府に強く求めればよかろう。

白井氏は、マイナス金利の可能性を信じているようだが、マイナス金利にはとかく批判が多く、その効果は限定的だ。
企業向けの貸出金利や住宅ローン金利の低下による貸出増や住宅着工件数アップというメリットが見込める一方、預金金利や国債などの債権金利の低下による家計や機関投資家、健保組合などの資金運用難という大きな弊害もあり、贔屓目に見ても功罪相半ばするとしか言えない。
しかも、貸出金利はマイナス水準には成り得ないから、その効果には自ずと限界があり、これ以上マイナス金利幅を拡大しても、機関投資家や基金運用を行う機関が深刻な資金運用難に見舞われるというデメリットばかりが目立つことになろう。

彼女のように、『日本経済の悪化・内需の悪化・需要不足』という病根をトリプルで見落とす(というより、敢えて見ないフリをする)という致命的なミスを犯してしまうと、その後の分析や提言に重大な齟齬や錯誤が生じてしまう。

需要と投資の間断なき連鎖こそが経済活動の根本を成す、という原理原則を押さえておれば、需要や内需の重要性を理解できるはずだが、サプライサイドを磨けばすべて上手く行くと盲信する前近代的発想の持ち主は、えてして消費のパワーを軽視あるいは蔑視しがちなため、永遠に抜け出すことのできない迷路の中を彷徨い続けることになるだろう。

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