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2016年9月21日 (水)

大概の日本人は"高度人材"である

『人口が減るのに街は失業者であふれる!?「雇用貧乏国」ニッポンの厳しすぎる未来』
(ダイヤモンドオンライン 西川敦子/フリーライター http://diamond.jp/articles/)

当該コラムは、いまから4年ほど前に書かれたものだが、そこに内包された問題や矛盾は、現在に至っても改善されておらず、多くの国民が勘違いしたままだ。

執筆者の西川氏は、
・国立社会保障人口問題研究所によると、2025年の日本の人口は6.2%減り1億1927万人となると予測され、生産年齢人口の減少が懸念される。
・2010~2025年の生産年齢人口の減少率は年率0.9%と予測される一方、工場の機械化やロボット化により労働生産は1.19%程度上昇し、生産年齢人口の減少率を上回るため、このままでは労働力不足は起きず、働きたいのに働けない人が溢れてしまう。
・国内メーカーの工場海外移転に伴う雇用の場の喪失、家電製品や衣類などを中心とする安価な海外輸入品との競争激化により、国内製造業の雇用は破壊され、失業者はサービス業に殺到せざるを得なくなるが、サービス業は労働集約型産業で給与水準も低いため、日本人の賃金水準はますます低下する。
と問題提起し、ここまでの分析はよいのだが、この先の提言がいただけない。

西川氏の提言(と妄想)は次のとおりだ。
①労働人口そのものは不足しないものの、いまの日本に不足していて、将来も必要になるのは「高度人材」だ。
②高度人材とは、自分で考えて行動し「イノベーション」を起こすことができる人材であり、パン職人がランチにぴったりのヒット商品を生み出したり、農家がお米の品種改良をしたり、営業マンがお客様のニーズに合う機能を持った商品やサービスを見つけたりする人材を指す。
③消費が落ち込み、国内市場が小さくなっていくこれからの時代は、新しいモノやサービスを生み出し、「あ。これ、ほしい!」って思ってくれる人を増やさねばならない。それも、世界と競争して勝てるようなものでなければダメだ。
④基礎力あるスペシャリストを育てられない今の教育、女性や外国人などに門戸を開かない人事制度の問題もあり、日本人の高度人材育成は難しい。
⑤若者には、製造業でも、サービス産業でも何でもいいから、その道でプロと言われる人材、必要とされる人材になってもらいたい。

ここで、西川氏の提言のおかしな点や矛盾点をいくつか指摘しておく。

先ず、彼女は、人気のランチメニューを創るパン職人や米の品種改良に取り組む農家を「高度人材」だと持ち上げており、彼女流の「高度人材」のハードルはかなり低い。
この程度の人材なら、その辺にゴロゴロ転がっていそうなもので、筆者の相談先や知り合いだけでも十指に余るほど名を挙げられる。

不思議なことに、彼女は、日本の教育システムの遅れや企業の人事システムの問題点を指摘し、日本人労働者には高度人材が不足しており、新しいモノやサービスを産み出す能力がないと嘆いているが、単に、自身が世間知らずなだけで、身の回りにいる高度人材のポテンシャルを見落としている、あるいは、意図的に無視しているだけのことではないか?

また、彼女は、日本経済縮小論を妄信し、国内市場の衰退を不可避なものと決めつけ、イノベーションでしか現状を打破できないと思い込んでいるようだ。
「新しいモノやサービスを生み出し、「あ。これ、ほしい!」って思ってくれる人を増やさねばならない。それも、世界と競争して勝てるようなものでなければダメだ」という、いかにも底の浅い発言を堂々とするさまには、失笑を禁じ得ない。

幼稚なサプライサイダーは、“革新的なモノやサービス”とやらに過度な期待を掛けるが、現実の消費の現場では、そんなものは脇役に過ぎない。

総務省家計調査報告による今年7月の二人以上世帯の消費支出は278千円に止まり、対前年同月比実質▲0.5%、名目▲0.9%(5カ月連続減少)と相変わらず冴えない動きだ。
中でも、西川氏のようなイノベーション万能論者が注意すべきは支出の内訳であり、革新的な商品やサービスが入り込めそうな支出項目(教養娯楽・被服・通信など)は、最大限見積もっても支出全体の1/4ほどでしかないし、実際には、そのうちのごく僅かなシェアを占めるに過ぎない。

日常生活で、家計が消費するモノやサービスは、その大半が、革新性や競争力に乏しいものばかりであることに、いい加減に気付くべきだ。

あなたが朝食に食べたパン、朝食後に使った歯磨き粉、通勤に使った電車、昼食に食べた牛丼、打ち合わせで使った手帳やボールペン、夕食で食べたカレー、家庭で使った電気や水道などなど、一般家庭で消費されるモノやサービスのほとんどは、革新的でも何でもないごく当たり前のモノやサービスにカテゴライズされており、革新的でないと外国製品に勝てず、アンテナの高い消費者に受け入れられない、なんていうのは単なる妄想だろう。

実際に、日本の小売現場に並んでいるモノやサービスの水準は、技術的にも機能的にも他国のそれを凌駕しており、近年、世界中から、日本の商品・サービスを購入するため、あるいは、日本のカルチャーや観光地を巡るための訪日観光客が激増していることが、それを証明している。

世間知らずで自分の妄想でしかものを書けない連中には、日本人労働者の持つポテンシャルや高度技術、あるいは、高い機能性や革新性を有するモノやサービスが理解できないのだろう。

まさに、“知らぬは、開国前夜のサプライサイダーばかりなり”といったところか。

日本人労働者には高度人材が掃いて捨てるほど存在しており、わざわざモラルの低い外国人を輸入する必要などない。

また、日本製のモノやサービスが低迷しているのは、生産財や関連技術の野放図な海外移転を取り締まらず放置していること、緊縮政策により家計の所得や消費が抑制され需要の伸び代がないことによるものであり、サプライサイドの革新に原因を求めても答えは出ない。

マクロ視点から俯瞰すれば、モノやサービスが売れぬ原因は、大抵の場合、供給サイドではなく需要サイドにあるものだ。
問題は、常に消費者の財布の中に潜んでいる。

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コメント

間欠ですが失礼します。

>“革新的なモノやサービス”とやらに過度な期待を掛けるが、現実の消費の現場では、そんなものは脇役に過ぎない。

 そんなモノ、デフレ状況で一般大衆がどれだけ消費できるのかよっ!ってなもんです。

インフレーション状況下で言ったらんかいっ!ってなもんです。

デフレ状況がノーマルな世界としか考えられない輩の戯言ばかりが罷り通っていくばかりです。
まさに政治マスメディア総ハクチ化です。

 そう言えば、悪夢(夢の中だと意識はできているときがありますよね)から覚めようと必死にもがいているときはなかなか覚められなくて、諦めてそのままの状況を覚悟して夢中のままでいると、ふっ と悪夢から覚められることが(結構)あります。

ってなわけには、今の安倍(駑が過ぎる)政局は覚めさせてくれそうには在りません。
日常的現実にも増して夢中政局的にもダブルで次第に発狂しそうです。

既に市場に溢れている魅力的な商品を、普通の日本人が気軽に消費できないことこそが、問題の本質だと思っています。

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