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2016年10月15日 (土)

嫉みがもたらす行政の停滞


『公務員給与、3年連続増=人勧の完全実施決定―政府』
(時事通信 10月14日(金))
「政府は14日の給与関係閣僚会議と閣議で、2016年度の国家公務員の月給とボーナス(期末・勤勉手当)について3年連続で引き上げることなどを求めた人事院勧告の完全実施を決めた。勧告内容を盛り込んだ給与法改正案を今国会に提出する。
16年度の給与改定は、月給を平均0.17%(708円)増額し、ボーナスを0.1カ月引き上げて年間4.3カ月とする。職員の年間給与は平均で5万1000円増の672万6000円となる見通し」

上記ニュースのとおり、国家公務員の給与引き上げが決まったが、引上げと言っても、年収ベースでたったの5万円、月収では僅か700円余りという惨めさだ。

しかも、この数値は、総支給額ベースだから、税・社会保険料などを除いた手取りベースの増額は実質3~4万円にしかならず、消費税増税分を考慮すれば、給与が上がったという実感なんてないだろう。

だが、公務員に対する僻み根性に満ち溢れた市井の人々からは、「増税しても増税しても、公務員の給料が上がるだけ」、「ボーナス4.3か月とか景気良すぎ」などと、ルサンチマン塗れの低レベルな批判を浴びせられており、同情を禁じ得ない。

月収が700円上がった(手取りだと500円くらいか?)ところで、せいぜい、ラーメン一杯分にも満たず、こんなもので世間様から冷たい目を向けられるのでは割に合うまい。

この672万円という国家公務員の平均給与額は、東証一部上場企業の平均給与額とほぼ同水準(筆者は、上場企業の給与水準が低過ぎるという立場)なため、僻みややっかみを受けることも多い。
しかし、年収700万円を切る給与水準は、1億人を超える人口規模と世界第3位の経済規模を誇る巨大な国家の舵取りという極めて難解かつ重要な任務担うエリート層が受け取る報酬として、決して満足のいく額ではない。

実際に公務員の声をネットから拾ってみると、
「当方、30歳、独身、2年民間経験あり。某都道府県庁、行政職で、上級職です。
今月の収入。 基本給:約23万円、通勤手当:約1万円、残業代:約1万円、以上の約25万円が総額で、もろもろ引かれて手取りは約20万円です。ちなみに、昨年の年収は約370万円(税引き前で)でした。
残業手当については、100%出ることはまずありえません。」

「3月給料 俸給支給額210,800、広域異動手当6,324、通勤手当2,000 支給総額219,124、
手取りは16万7598円になってしまいました。
超過勤務もほとんど予算がないので、さらに組合費などを引くと16万ちょうどくらいです。33歳でこれより少ない中小企業は珍しいかと思います。」
などと、結構いじましい実態が透けて見える。

筆者も、知り合いの公務員が多くいるが、三位一体改革以前に退職した公務員は別として、近年の公務員の待遇は、世間一般が夢見たり、羨んだりするような水準ではない。
田舎の公務員で、親と同居しているのならともかく、子供がいて、世間並みに住宅ローンや教育費が圧し掛かってくれば、700万円にも満たぬ年収で楽な暮らしなんてできまい。

おまけに、業務の実態も、国会議員や地方(痴呆)議員に小突かれ、住民からのクレームに振り回され、業界団体との調整に忙殺され、財務当局の緊縮バカから無理な資料を要求され、と傍から見るよりかなりハードで、強烈なストレスに晒されることも多いようだ。
議会が始まるたびに、彼らの顔から生気が薄れていく姿を、筆者もたびたび目にしている。

地方公務員安全衛生推進協会が毎年実施している「地方公務員健康状況等調査」によると、全国の地方公共団体342団体の平成26年度における長期病欠者数は17,730人(10万人率で2,381人)に達している。
疾病分類別で最も多いのが「精神および行動の障害」であり、その値は10万人率で1,239人と、構成比の52%を占め、10年前の1.8倍、15年前の3.8倍にも急増している。
また、職員の自殺率も10万人率で18.1人(H26)と民間企業とさして変わらない。

「公務員」という仕事が、気楽でのんびりした職業であったのは一昔前の話で、いまや、口さがない市民から、公僕ならぬ下僕扱いをされるありさまだ。

無知で無責任な市民が公務員イジメに精を出すのは簡単だが、彼らに鞭を振るっても、社会基盤の根幹を司る行政機構という巨船を動かす貴重な人材を痛めつけることにしかならない。

小泉改悪以降、行政運営に投じられる予算や人員は大幅に削減され、行政の現場は疲弊している。
新規採用が極端に減り、業務兼任体制が横行し、実際に知恵を絞り、現場を動かす人材も枯渇しつつある。

彼らは、来る日も来る日も、財務当局から押し付けられるコストカット要求や結果の出ない膨大な資料作成作業、頭の悪い議員対策などのネガティブな業務に忙殺され、公僕たる者の使命を確認する時間や余裕さえ完全に失っており、このままでは、近い将来に、行政のかじ取りを担う人材が居なくなってしまうのではと危惧している。

“公務員”という言葉に条件反射的に拒絶反応を見せるバカ者には、我々の生活インフラを支える貴重な行政組織を傷つける愚を犯すべからず、と強く警告しておきたい。

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