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2017年1月12日 (木)

いま、必要なのは「モノを買う人」

昨年暮れに、内閣府から高齢者の定義を70歳以上に引き上げる提言があった。

どうみても、年金支給開始年齢の引き上げを狙ったものにしか見えないが、年寄扱いを嫌う高齢者層のプライドを擽ったのか、意外なほど反発は少ない。

団塊世代みたいに呑気な連中は、「まだまだお若いですね」という煽ての代償として、年金がお召し上げになることに半ば気付きながらも、ニヤニヤ笑ってそれを見過ごそうとしている。

当の高齢者の甘ちゃんぶりが世間に伝播するのか、それに便乗する妄言も目立つ。


『「高齢者は働かないほうがトク」という制度は見直すべきだ』
(ダイヤモンドオンライン 野口悠紀雄/早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問)
http://diamond.jp/articles/-/113884

「高齢者の定義を75歳以上とする提言が公表された。
 高齢者が元気になっていることを踏まえれば、適切な考えだ。
 必要なのは、高齢者が働く社会を実現することだ。しかし、現在の日本の制度では、高齢者は働かないほうがトクになる。
これを見直し、働くことが正当に報われる社会をつくることがまず第一歩だ(後略)」

野口氏みたいな単純な新自由主義者の眼には、サプライサイドしか映らぬようだ。

彼らは、「日本は労働人口減少に見舞われる」→「誰でもいいから働かせろ」→「老人、女性、外国人(≒中国人)をもっと働かせろ」という論理を押し付け、最後には同一賃金同一労働を盾に、正社員のイスを減らし、雇用条件の引き下げという結論に収束させようとする。

筆者は、「働くのは、長くても、せいぜい65歳まで。残りの人生は、孫に小遣いでもあげ、趣味に興じながら、消費者の立場で経済循環に貢献すればよいのでは?」と考えているが、世の中には、どうしても働きたがる奇特な人間もいるから、それはそれで構わない。

まあ、働きたいと思うのは勝手だが、野口氏みたいに、この厳しいご時世に“働きたい=速攻でまともな職が見つかる”と信じ込んでいるのが不思議でならない。


野口氏は、「高齢者は働かないほうがトク」になる論拠として、在職老齢年金制度と高齢者医療制度を挙げている。

「在職老齢年金制度」は、60歳以降給料と年金の合計額が一定額を超えると年金が全部または一部カットされる制度で、例えば、60歳~64歳で月収の基準額が28万円とすると、給料30万円、年金月額15万円の場合、(30万+10万-28万)×1/2=6万円分が年金額からカットされることになる。

また、「高齢者医療制度」は、自己負担割合が原則1割(現役並み所得者は3割)で、高額療養費および高額介護合算療養費の自己負担限度額についても軽減されるものだ。

野口氏の論法は、配偶者控除103万円の壁の件と同じで、制度改正の議論を端から避け、働き方や生き方の方を制度に合わせて、その損得を語る愚を繰り返しているだけだ。

在職老齢年金制度の、労働収入に応じた年金カットに不備があるのなら、働いた分だけ収入が増えるよう現行制度自体を改めればよいだけのことだ。
それをせずに、「働かぬ方がトク」と決めつけるのは、相当に質の悪い議論としか言えない。

現在の平均年金支給額は、平成26年度で国民年金が5万4414円、厚生年金が14万4886円でしかなく、到底、働かぬ方が有利だなんて言えるレベルではなかろう。


気持ちだけ若者気取りの高齢者が、まだまだ働けると意気込むのは勝手だが、高齢者や女性、外国人が労働市場にドカドカ入り込めば、それだけ雇用のイスは減り、質の悪化も避けられない。

第一、口だけ達者で手足の動かぬロートルが、いつまでも職場にのさばっていては、ポストが減る一方で、中堅若手社員の社内調整負担が増し、却って業務の不効率化を招くのではないか。

ここ20年というもの、日本国民が苦しめられているのは、極度の需要不足によるデフレ不況であり、社会が求めているのは、サプライサイドの膨張ではなく、ディマンドサイドの強化であるはずだ。

一部に労働力不足を懸念する声もあるが、実態は、低賃金&長時間労働に耐えられる人材の不足であり、雇用側の努力不足でしかない。

喉から手が出るほど欲しいのは、「需要=消費者=モノやサービスを買ってくれる人」の存在であり、現に、日本に来て爆買いする卑しい中国人相手にペコペコしているではないか?

野口氏はコラムを、「社会保障制度には、高齢者になって働くことに対して重い税を掛けているのと同じ結果をもたらしているものが多いのである。それが、高齢者の就業意欲を低下させている可能性が高い。こうした要因を取り除くことが必要だ」とまとめている。

だが、そう思うのなら、働いた分だけ収入が増えるよう具体的な制度改正を提言すべきであり、制度が悪いから高齢者が働けないという結論に持って行くのは、まったく的外れだ。

また、労働市場の需給バランスを歪め、低賃金労働の固定化を助長しかねない高齢者の就業促進を安易に進めるべきではない。
貯蓄ばかりに精を出す働き蜂をこれ以上増やしても仕方あるまい。

いまの日本に必要なのは「買い物する人」であり、高齢者を労働市場に追い立てるよりも、彼らが年金を国内で使いのうのうと暮らせるよう、社会保障費の国庫負担を増やし、年金や医療制度の充実を図る方が遥かに得策だ。

一旦、就業人生のゴールテープを切った者の心配をするよりも、そのトラックにすら入れない憐れな若者の心配こそすべきだろう。

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