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2017年1月18日 (水)

緊縮病に治療薬なし

『安倍政権を賑わす「物価水準の財政理論」とは~他の理論との整合性欠き、誤用のリスクも』(東洋経済オンライン 1/9 土居丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授)
http://toyokeizai.net/articles/

(旧石器時代並みに周回遅れ気味の)緊縮原理主義派の御大とも言える土居教授のコラムだから、その内容もお察しと言えるが、案の定、強引な理論を展開して、「緊縮=善」、「国債発行=悪」と叫んでいる。

コラムの内容をごく一部抜粋すると、次のようなものだ。
「日本はデフレ脱却の道筋が見通せないまま、2017年が開けた。2016年末以来、財政金融政策に関して、金利がほぼゼロの状態で量的緩和政策をいくら講じてもデフレは止められず、むしろ財政を拡大する方がデフレ脱却につながるのではないか、との見方が安倍政権周辺から出ている。そのアイディアは、2016年8月にアメリカ・ワイオミング州のジャクソンホール会議での、プリンストン大学のクリストファー・シムズ教授の講演に端を発しているという。
(中略)
物価は、通貨価値とコインの表裏の関係にある。だから、通貨価値が下がることと物価が上がることは同じことである。デフレに悩まされ、そこから脱却したければ、人々が去年より通貨価値が下がったと思うような政策、つまり通貨を増発する政策を採ればよい。これが、経済学の教科書、さらには高校の政治経済や中学の公民の教科書に書いてあることである。現に、これまでの日銀の量的質的緩和政策は、こうした理解に根ざして通貨供給を増やしてきた。
でも、デフレはなかなか止まらない。そこで、ふと疑問が沸く。一般物価水準は、金融政策では操作できないのではないか。では、何が物価を決めているのか。そこで出てきたのが、「物価水準の財政理論」である。
(中略)
シムズ教授の講演にヒントを得て、財政拡大を唱えていながら、財政健全化に不熱心で国債の返済先送りをしているようでは、物価は上がらない。これが、「物価水準の財政理論」からの示唆である。
逆説的にいえば、今年返済が必要な国債を、借り換えせず熱心に返済を進めれば、デフレから脱却する、という帰結となる。(後略)」

コラムの導入部では、緊縮原理主義者が忌み嫌う財政政策支持の拡大を警戒し、中間部では、量的金融緩和の効果に疑問を呈し(→リフレ派発狂必至)、最後に、財政健全化こそデフレ脱却の特効薬だと結んでいる。

先ず、「財政を拡大する方がデフレ脱却につながるのではないか」という(我々にとっては大歓迎かつ当然すぎる)議論が安倍政管周辺で沸き起こっている、なんていうのは単なる思い込みだろ?、と土居氏に突っ込みを入れておきたい。

例のシムズ論文に感激して言説をコロコロ変え、大恥をかいているのは浜田内閣参与くらいのもので、官邸周辺や内閣府、経済財政諮問会議、日銀辺りから、財政拡大を積極的に唱える声など、一言も聞こえてこないが、「財政政策」と聞くだけで虫唾が走る土居氏のことだから、浜田参与の動揺という蟻の一穴すら看過できないのだろう。

土居氏のコラムの内容詳細は、上記URLを参照いただきたいが、どうも気にかかるのは、彼が、デフレ脱却を図る手段として物価水準動向からアプローチしようとしている点だ。

氏は、「何が物価を決めるのか、金融政策なのか?、財政理論(財政支出による基礎的財政収支の悪化)なのか?」と論じた挙句、
・一般物価水準は金融政策では操作できない
・国債の返済を先送りし、新発国債を増やすと、今年返済が必要な国債を減らすことになり、物価はむしろ下がる
・今年返済が必要な国債を借り換えせず熱心に返済を進めればデフレから脱却できる
と結論付けている。

正直言って、土居氏のコラムは、基礎的財政収支(PB)を持ち出して物価との関係を論じ始めた辺りから、何を言いたいのかまったく理解できない。
リフレ派の詭弁にもたいがい閉口させられるが、土居氏の救いようのない妄言に比べれば可愛いもんだ。

彼は、
【今年返済が必要な国債残高=今年の物価×実質基礎的財政収支】

【今年の物価=今年返済が必要な国債残高÷実質基礎的財政収支】
なる奇妙な物価方程式を持ち出して、PBバランスの改善こそ物価上昇の特効薬だと言い張るが、そもそも、上記数式の正当性がまったく担保されておらず、論として成り立たない。

PBバランスとインフレ率に関する過去のデータを検証しても、一部相関が感じられる年もあるが、概して連動しているとは言い難い。
特に、80~90年代のPB改善期には物価は長期低下傾向にあり、真逆の動きをしている。
(参考URL)
http://ecodb.net/exec/trans_country.php?type=WEO&d=GGXONLB&c1=JP
http://ecodb.net/country/JP/imf_inflation.html

国債返済増額=物価上昇なる論が紛い物であることくらい、一般常識としてすぐに理解できる。

財政支出を絞り込み、国債返済を優先させれば、公的投資や消費は激減し、それにぶら下がる民間事業者のビジネスは間違いなく消滅する。
そして、事業縮小に怯える民間事業者による給料削減、従業員解雇、仕入れの買い叩き、発注削減という動きに出ることは確実で、そうした負の連鎖が実体経済をシュリンクさせる。

この程度のことは、小学生にも十分見通せる動きであり、国債返済を喜んで買い物に勤しむ変わり者は、財政嫌悪主義者の権化である土居氏くらいのものだろう。

また、土居氏は金融緩和政策を小馬鹿にしているが、デフレ脱却論を語るに際して、物価水準面からのアプローチに固執するあたりは、リフレ派と同じ間違いを犯している。

緊縮原理主義者も金融政策万能論者も、馬鹿正直に「デフレ脱却=物価上昇・インフレ」と思い込んでいるから、“いかにインフレにするか=通貨価値を下落させるか”という小手先論を弄び、とにかく円安にしさえすればよい、と誤解してしまう。

円安は、輸出産業や関連産業にある程度の恩恵をもたらすが、永遠に円安を維持できるわけじゃないから、あくまで一時的なカンフル剤に過ぎないし、輸入物価の高騰や他国との原料買い負けによるコストアップというデメリットも大きく、景気に与える影響は中立に近い。

彼らは、デフレ脱却の真の目的を理解していない。
持論の正当性を立証するために、ただ、物価上昇という形式的な結果を欲しているだけだ。

過度な円安や増税、輸入物価高騰などの好ましからざる要因によるコストプッシュ型インフレで、物価だけが上がっても、国民は何の受益もないばかりか、フローやストックを棄損するだけに終わる。

なぜデフレを脱却すべきなのか。

それは、デフレが家計や企業のフローとストックを破壊し、消費や投資に対する意欲が削がれ、経済がシュリンクすることにより国富である供給力に余剰が生じ、それが棄損されるからに他ならない。

国富を失って、日本人は、この先、どうやって生きていけるというのか。

デフレを退治するには、何よりも先ず、家計や企業のフローとストックを立て直し、消費や投資意欲を高め、供給力をフル活用できる経済環境を創り上げる必要がある。

PBを改善しても、財務省のバカ者たちが喜ぶだけで何の役にも立たない。
カネを使わぬ景気回復なんてあり得ないのだから…

家計や企業が自信を持って消費や投資に勤しめるようになるには、彼らの財布に『所得』という実弾を込めてやる必要がある。

一億歩譲って、敢えて「土居流国債返済万能論」に乗っかるとすれば、政府紙幣を大量に発行して特別会計で国債整理基金を立上げ、税収ではなく、この基金を原資に国債の早期償還を進めてはどうか。
彼の理論が正しいのなら、これで一気に物価が上がり、デフレから脱却できるはずだが?

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