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2017年1月20日 (金)

リフレ未満の緊縮バカ

今回は、緊縮・構造改革派とリフレ派とのバトルをご紹介したい。

『日銀の国債購入に全くリスクはないのか? 高橋洋一教授にいま一度問う』
(ダイヤモンドオンライン 1/13 田中秀明/明治大学公共政策大学院教授)
http://diamond.jp/articles/-/114027

このコラムは、田中教授とリフレ派の論客たる嘉悦大学高橋洋一教授との間で繰り広げられている日本の債務問題や日銀当座預金の債務性に関するバトルの最新稿である。

高橋氏の「政府と日銀のバランスシートを統合すれば、問題は解決する、財政再建の必要などない」という反論には、筆者も賛意を表したい。
ゆえに、今回はちょっとだけ高橋氏の肩を持ちつつ、田中氏の妄言に批判を加えてみよう。。

各論に入る前に、田中氏から高橋氏に宛てた9つの質問には、有名なバーナンキの背理法(中央銀行の国債大量買入により、無税国家が生まれる前にインフレを引き起こせる)の是非を問うものが含まれているが、これについては、次のとおり回答する。

【回答】
日銀の国債保有額はすでに400兆円を超えているが、インフレどころか、いまだにデフレ脱却すら果たせていない。
政府が積極財政に舵を切り、長期間に亘る大量の新発債発行を宣言し、それをすべて日銀が引き受けると明確なアコードを宣言するなら別だが、現実には、量的緩和政策の効果を打ち消すように緊縮政策が取られている。
つまり、日銀の国債保有額増加ペースと比べて、政府の新発債発行ペースが鈍すぎ、両者間に大きなアンバランスが生じている。
いわば、緊縮政策の継続による金融政策の不胎化が行われているようなもの。
多分このままのペースなら、日銀が発行国債をすべて買い切っても、実質的には国債とMBとの両替に過ぎないから、実体経済が迷惑を被るような高水位のインフレは起きない。


さて、以下、田中氏の妄言を上げ(※一部、筆者が要点を編集)、それに対する反論を上げていく。

(田中氏)
中央銀行が国債を買えば問題ないといううまい話であれば、世界中ですでに行われているはずであるが、先進国で行っている国はない。それはなぜか。

A.先進国広しといえども、莫大な需要に対応できるだけの供給力を完備している国は数か国に限られ、幸いにも、我が国はその一角を占めている。
各国が中央銀行の国債直受けや政府紙幣の発行に及び腰なのは、近代化以前のインフレ幻想に囚われているほか、供給体制に自信がないことの現れだろう。

(田中氏)
高橋教授は政府には徴税権があるから、それを含めれば債務超過ではなく、心配いらないと言っているが、それを主張するためには将来の歳出面も考慮する必要がある。

A.徴税権は財政再建を担保する材料足り得ない。しかも、不況期においては尚更だ。財政再建を大義名分に徴税を強化すれば、家計や企業は即座に支出を減らす防衛策を講じ、消費も投資も大幅なシュリンクを避けられず、実体経済が低迷する。
結果として、経済活動から得られる所得が減り、所得を源泉とする税収も減る。つまり、財政再建は永遠に成し遂げられない。

(田中氏)
バランスシートは、財務状況を分析し、リスクをコントロールするために有益なツールと考えるが、日本財政についてもリスクを分析し、国民に説明するべきではないか。

A.バランスシートなんて企業と家計の分だけ作成すればよい。バランスシートとは、企業価値=資産価値を表すものであり、それは「円」という通貨で評価される。
「円=通貨=国家」なのだから、政府や日銀という通貨そのものの(=通貨を体現する主体)を、バランスシートに落とし込むこと自体が無意味だ。

(田中氏)
通貨発行益(シニョリッジ)の定義にはいろいろあるが、わかりやすく言えば、中央銀行による銀行券発行の対価として買い入れた手形や国債などから得られる利息のことだ。

A.通貨発行益の定義は、紙幣や貨幣の製造コストと額面金額との差異から生じる収益のことを指し、日銀保有の国債金利のことを指すものではなく、田中氏の説明は定義の誤用に過ぎない。

(田中氏)
インフレ目標を宣言するだけでインフレ率をコントロールできるとは考えにくい。もしそれを主張するのであれば、その根拠は何か、宣言すれば自動的にインフレ率は2%付近で止まるのか。

A.インフレ目標を宣言するだけで済むなんて誰も言っていない。金融引き締め期こそ、インフレターゲット政策が真の効果を発揮できる。量的緩和の縮小や政策金利の引上げ、金融庁による金融ガイドラインの指導強化など取り得る手段はいくつもあり、過去にも十分な実績を上げている。
デフレ脱却には大して役に立たない金融政策だが、インフレ退治には心強い存在になる。

(田中氏)
仮に、物価上昇率が2%になれば、通常、期待インフレ率が高まり、長期金利が上昇する。仮に2%でも、日銀の保有国債の損失は巨額なものになる。

A.満期保有目的の国債には損失は生じない。そもそも、通貨の発行元である政府や日銀が、保有する内国債の価値に一喜一憂する必要なんてない。

(田中氏)
誤解のないように言うが、自分は日銀の異次元金融緩和という政策を全く否定しているわけではない。

A.リフレ派の十八番である「我々は、財政政策を否定しているわけではない」というセリフを同じ詭弁だ。氏の論には、金融政策の効果に触れた個所がまったく無く、随所に、金融政策も財政政策もやるべきではないというニュアンスが滲みまくっている。
 否定しないと言うなら、金融政策に期待する役割や効果を具体的に列記すべきだ。

(田中氏)
日本経済の低迷は、ほぼゼロ近辺にある潜在成長率、硬直的な労働市場、将来に対する国民の不安などにある。金融緩和では、そうした問題は解決できない。
政府は、政策について、国民に対してわかりやすく説明するとともに、副作用やリスクについても明らかにしなければならない。「タダのランチ」などない。

A.国民の勤労や企業の努力にタダ乗りしているのは、国民や企業を生み出す『国富』に支払われるべき対価(=通貨)の供給を渋る政府の方だ。
金融政策や財政政策の副作用やリスクを強調するのは間違いで、適切な政策が実行されないがゆえに国民や企業に莫大な逸失所得や逸失利益が生じることこそが副作用であり、それが伝播して、供給力が弱体化することが最大のリスクである。

(田中氏)
政府部門は、家計や企業と異なり、歳入と歳出を一致させるメカニズムが働きにくい。

A.政府が歳入と歳出を一致させてしまうと、あらゆる経済主体が「消費=損」というベクトルに舵を切るため、経済活動はクラッシュする。
歳入と歳出を一致させない(=常に歳出が歳入を上回る)のが正常な経済メカニズムだ。
歳出>歳入でなければ経済成長に必要な原資が実体経済に供給されない。

(田中氏)
高橋教授は、「日銀は法的に政府の子会社統合政府で考えるべき」と述べ、「統合政府」を強調する。そうした「べき論」は否定しないが、それはいわば頭の体操である。現実は、政府と日銀は別の主体である。

A.政府と日銀は間違いなく統合政府であり、そうでなければ意味がない。統合政府なればこそ通貨発行主体と成り得るのであり、相互に発行する貨幣と紙幣とを等価で一体的に流通させることができるのだ。
また、日銀の債務超過云々という与太話は聞くに値しない。そもそも、日銀が返済に窮するような債務って何のことだ?

(田中氏)
アメリカは、双子の赤字を抱えていても、危機にはなっていない。ただし、アメリカはドルの基軸国であり、日本とは前提が異なる。

A.軸通貨と経常収支赤字の話はまったく関係がない。基軸通貨の地位に法的効力はないし、アメリカがドルを無制限に刷ってバラ蒔けるわけでもなく、円やユーロと同じくハードカレンシーの一種でしかない。
基軸通貨だから何でも許されるのなら、そもそも、アメリカには財政問題も、貿易摩擦問題も生じないことになる。

(田中氏)
たとえば、日本が人口増で高い潜在成長力を持ち、将来の経済成長のために海外から借金するのでれば、それは問題とは言えない。

A.国内銀行の預貸差は250兆円を超え、我が国には巨額の余剰資金が眠っている。わざわざ高い金利を払って海外から資金調達する必要やメリットがどこにあるのか、田中氏は明確に説明すべきだ。

(田中氏)
経済成長の源泉は民間の経済活動にあると考えるが、政府が国民の貯蓄をほぼ吸い上げ、非効率な支出を行うのは健全ではない。
外国人からしばしば「日本財政はなぜ破綻しないのか」と聞かれるが、筆者は「日本財政は糖尿病などのように症状がすぐには出ない病気だ」と答えている。
金融緩和で全て解決できる、高い経済成長率で財政再建は達成できるといった、楽観論や幻想論を振りまくのではなく、痛みは伴うが、社会保障制度の改革、労働市場の改革、生産性を高めるための施策などを地道に進めていくことが必要だ。

A.「経済成長の源泉は民間の経済活動にある」という記述と、「高い経済成長率で財政再建は達成できるといった、楽観論や幻想論を振りまくのではなく」の部分は明らかに矛盾している。高い経済成長がなければ、民間の経済活動は活性化できるはずがない。

具体的に何を指すのか全く不明だが、“生産性を高めるための施策”を地道に進めていったところで、需要も無いマーケットで生産性だけを上げることなんて不可能だ。

痛みを伴う「社会保障制度改革(=年金カットと医療費負担UP)や労働市場改革(=雇用の不安定化と賃金カット)」なんて悪手を繰り出した日には、間違いなく財政再建は遠のき、蜃気楼と化す。

外国人から「日本財政はなぜ破綻しないのか」と聞かれたら、「自国通貨建ての内国債で、ほとんどを日本人や国内の機関が所有しているのだから、破たんするはずがないだろ。貴国は、そんなことも知らないのか?」と答えてやればよい。

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