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2017年1月 8日 (日)

胃袋経済論のウソ

『キユーピー45年ぶり、山崎製パン26年ぶり。食品工場、国内新設のなぜ』
(ニュースイッチ 日刊工業新聞 1/6)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170106-00010003-newswitch-ind&p

「キユーピーは2017年4月から、神戸市東灘区にあるマヨネーズの主力工場を全面稼働させる。山崎製パンも神戸市西区にパン工場を同年1月、着工する。日清食品(東京都新宿区)は滋賀県栗東市に、即席めん新工場の建設を決めた。テーブルマークやケンコーマヨネーズも、冷凍食品と総菜で新工場建設に動いている。
(中略)
ケンコーマヨネーズは「ホテルや旅館の調理人不足で、厚焼き卵の需要が伸びている」と話す。テーブルマークは冷凍うどんの最近5年間の平均伸び率が、1ケタ台後半だと明かす。日清食品は、高齢者や女性を狙った即席カップめんが、売り上げを伸ばした。
 冷凍食品業界では16年、チャーハンやギョーザなどが売り上げを伸ばした。味の素冷凍食品が15年に戦略新商品の「ザ☆チャーハン」を発売。ニチレイフーズも主力工場に、30億円強を投資した。(後略)」

記事では、肝心の“国内新設のなぜ”の核心部分が抜けており、大手食品工場が国内工場新設を急ぐ理由とメリットに関して、いまひとつ詳細な説明が不足しているが、「和食ブームや安全安心意識の高まりを背景とした国産志向、為替の円安による輸入品高といった追い風(記事より抜粋)」を大きな要因としている。

日刊工業新聞の記者は、国内製造拠点新設と、和食ブームや安全安心志向とを結び付けたいようだが、実際に食品メーカーが増産を図るのは、「調理パン、パックごはん、即席カップめん、カップサラダ、総菜、冷凍めん、冷凍チャーハン、冷凍ギョーザ、ドリンクヨーグルト」など、レトルトものばかりで、「和食」とか「安心安全」といった高尚なキーワードにリンクさせるのは、かなり無理がある。

記事でも触れているように、少子高齢化や働く女性の増加に伴う中食ブームに起因する、1人世帯の増加や簡単調理食品の需要が増したことによるものだろう。

要するに、「少量高単価(=高付加価値)商品」の需要が増えたことで、生産量を抑えつつ付加価値の高い商品を造る商機が生まれ、主な供給先であるコンビニチェーンへの短納期化が可能な国内工場でも十分に勝負できる環境になったという流れだ。

国内工場の新増設は、雇用増ばかりでなく、流通や機械メンテナンスなど地域に多大な経済波及効果を及ぼすため、大いに歓迎したい動きである。


我が国では、「少子高齢化=需要縮小」という幼稚な胃袋経済論が罷り通っているが、それは、需要を総量(=嵩)でしか理解できぬ片手落ちの議論だ。
およそビジネスや事業というものは、量ではなく額(=販売対価としてのお金)を稼ぐために行うものであり、当然、需要の強弱は、総量ではなく総額で判断すべきだろう。

こうした発想に基づき、筆者は、以前から、「胃袋経済論には意味がない。少子高齢化社会の下であっても、298円の弁当ではなく750円の高額弁当が売れるようになれば、需要の漸増が十分に期待できる」と主張してきた。

今回の食品メーカーの国内坑儒新設の動きは、高付加価値品を受け容れる経済的土壌があれば、人口に関係なく需要を伸ばせること(=胃袋経済論のいい加減さ)を裏付ける証左と言ってよい。


こうした工場の国内回帰の動きを見て、「ニーズはある。企業がそれを深堀できていなかっただけ」という意見もあろう。

だが、その「ニーズ」が、別のニーズを諦めた結果生まれたもの(=代替消費)であっては、まったく意味がない
総額が一定のパイをメーカーが喰い合うだけでは、経済は成長しないし、国民所得が増えることもない。

「企業の創意工夫次第で隠れた需要を掘り起こせる」というセイの法則に囚われた時代遅れの発想は、限定されたミクロ経済下で、一企業のちっぽけな武勇伝を残すことはできるかもしれぬが、マクロ経済を隆盛させることは到底叶わない。

お一人さま向けの高付加価値商品を買う代わりに、缶ジュースの購入を諦めねばならぬようではいけない。

「高温熱風を米飯にまとわせてパラパラ感を向上させた冷凍チャーハン」を買い、ついでにビールと雑誌も気兼ねなく買えるような経済環境。
750円の弁当を誰もが気軽に変えるような所得環境。

こうした“付加価値という果実”がたわわに実ったマクロ経済環境をきちんと整えてこそ、それを狙う各社の創意工夫も十二分に活かせるというものだ。

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