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2017年1月15日 (日)

妄想と事実誤認

「平成28年の倒産件数、8年連続減少、26年ぶりの低水準 負債総額も2年ぶり減」
(産経新聞 1/13)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170113-00000556-san-bus_all

「東京商工リサーチが13日発表した平成28年の全国企業倒産集計(負債額1千万円以上)は、件数が前年比4.15%減の8446件と8年連続で減少、2年(6468件)以来の低水準だった。
景気が緩やかな回復を続けていることや、金融機関が中小企業の返済計画見直し要請に柔軟に応じていることが寄与した。
 (中略)
 業種別では、食品業や広告関連業などは減少、人手不足による人件費増に悩む老人福祉・介護事業や飲食業は増加した。
 松永伸也情報部部長は「トランプ次期米政権や欧州の政治リスクなど先行き不透明感もあり、中小・零細企業の業績回復には時間が必要だ」と分析した」


上記の記事には、突っ込みどころが3点ある。

まず1点目は、企業倒産件数減少要因の一つとして「景気が緩やかな回復を続けていること」を挙げている点だ。

中小企業庁の資料「平成27年度(2015年度)の中小企業の動向」(http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H28/h28/html/b1_2_1_2.html)によると、企業倒産件数は2009年辺りから減少しているが、休廃業件数は2008年から増加しており、「倒産+休廃業」を合わせた件数は、2015年で3.5万件と、2006年の3.3万件から2千件も増えている。

休廃業が大幅に増えているのは、業績不振による後継者不足のためであり、「景気が緩やかな回復を続けている」のが本当なら、こんな事態になるはずがなかろう。

巷間噂されているとおり、倒産件数が減ったのは、長過ぎる不況のせいで体力の弱い企業があらかた淘汰され尽くしたのと、手形取引の縮小による不渡り件数の減少、それに、金融円滑化法の残滓による金融機関のリスケ対応の拡大によるものだ。


次に2点目は、老人福祉・介護事業者や飲食業者の倒産増加を人件費高騰のせいにしている点だ。

福祉介護事業や飲食事業の従業員の給料は、いったい、いつ“高騰”したというのか??

両業界とも、給料の低さと労働条件の悪さでは群を抜き、離職率が高いことはよく知られている。

厚労省の資料によると、介護職員の就業形態について、介護職員の非正規比率は41.4%、訪問介護員は78.4%にも上り、他の業種と比べて著しく高い。
また、常勤労働者の初任給は16万円、平均月収も23万円と他より大きく見劣りする。

しかも、土日も昼夜もないきついシフトを強いられるから離職率も高く、介護職員の常勤労働者の離職率は16.8%と、産業平均値(12.4%)を大きく上回っている。

飲食業界も、福祉・介護事業と同様に、「低賃金・長時間労働・パワハラの横行・クレーム対応の多さ」という悪条件を高いレベルで兼ね備えており、過労死や暴力が横行する、いわゆる3K職場として敬遠される業種だ。
しかも、特に首都圏辺りでは、外国人労働者の流入も多く、賃金上昇を抑制するアンカーになってしまっている。

現代の奴隷労働に近い無理な働きを強いてもなお、「人件費高騰のせいで倒産」する企業があるとしたら、それは、人件費のせいではなく(現に、たいして高くなっていない)、経営者自身の能力不足と、業界特有の過当競争のせいだろう。

実際に、帝国データバンクの資料(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000062879.pdf)を見ても、ここ数年は売上高や利用客数の増減率を店舗数の増加率が上回っており、折からの価格競争も相まって競合が激化しており、倒産や淘汰の引き金になっている。


最後の3点目は、「トランプ次期米政権や欧州の政治リスクなど先行き不透明感もあり、中小・零細企業の業績回復には時間が必要だ」という東京商工リサーチ 松本氏のいい加減な分析だ。

この手の経済レポートものを見ると、執筆者が格好をつけて、結論部分に国際経済の動きとリンクさせて文を〆ようとするパターンが多いが、正直言って、国内の中小零細企業の業績と欧米経済やその政治リスク云々はほとんど関係ない。

リーマンショックの折にも、筆者の取引先企業の決算概要には、冒頭部分に「当社の業績はリーマンショックの煽りを受けて…」云々と、減収減益を誤魔化そうとする言い訳がましいセリフがこぞって並んでいる様をよく目にしたが、「おたくの販売先は、100%県内向けの内需だろっ?」と突っ込みを入れたものだ。

日本にある中小零細企業の98%近くは、トランプがどんな暴言を吐こうが、欧米各国のEU離脱問題が勃発しようが、自社の業績に何の影響も受けない、吹けば飛ぶような企業ばかりだ。

トヨタやホンダがトランプに恫喝されて右往左往しても、まったく業績への影響もなく、近所のオバちゃんに納豆を売ったり、隣の町工場にネジを売ったりしている企業が大半を占めており、欧米の政治リスクなど考慮する必要はない。

むしろ、彼らが最大限に憂慮すべきは、内需の停滞であり、その動向如何で自社の命運が大きく翻弄される。
欧米の政治リスクなんて、所詮は外国で起こった事故みたいなものに過ぎないが、国内の経済失政は、ダイレクトかつ即座に自分たちに悪影響をもたらすから恐ろしい。

東京商工リサーチは、結論部分を、「緊縮気味の財政運営に固執し続ける安倍政権の政治・経済リスクなど、日本経済の先行きは不透明感に溢れており、中小・零細企業の業績回復は望めない」と分析すべきだろう。

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コメント

暴力的ですが、現政府トップは自分に子がない、または上級市民の意識であるため巷の経済活動に興味がない関係がない経済的判断に必要がないと思考カットしているのでしょうか? 財務大臣もしかり。20年間、若者の初任給がほぼ同じな先進国は異常です。

実体経済に関心を持てぬバカ者が、政治家になっちゃいけませんね。

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