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2017年1月 6日 (金)

雇用と収入の安定こそが消費者の利益

『トランプ氏、トヨタにメキシコ工場計画の撤回要求』
(AFP=時事 1/6(金))http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170106-00000000-jij_afp-int

「(前略)トランプ氏はツイッターへの投稿で、「トヨタ自動車は米国向けカローラを製造する新工場をメキシコのバハに建設すると言っている。絶対にだめだ! 米国に工場を建設しなければ、重い国境税を課す」と宣言した。
トヨタのメキシコ新工場は、米国と国境を接するバハカリフォルニア州ではなく、中部グアナフアト州で建設が進めれらている。
昨年11月に起工式が行われ、投資額は10億ドル(約1160億円)とも伝えられている。
トランプ氏はこれまでにも米国外に投資する自動車メーカーへの批判を続けている。
今週には、トランプ氏からの批判を受けていた米フォード・モーターが、16億ドル(約1850億円)を投じてメキシコに工場を新設する計画を撤回した」

これに対して、ネットユーザーから、「最後に困るのは、コストの高い車を買わされるアメリカ人のユーザーだ」と強い非難が沸き起こっている。

こうした不満を漏らす「デフレは消費者の利益」論の信奉者たちは、安物買いにしか興味がなく、「生産者=消費者」という立場を完全に忘れている。
“モノやサービスを安く買える”と、お年玉を貰った子供みたいにはしゃぐのは勝手だが、消費の原資となる「所得」や、それを生み出す「雇用」に対する考察や関心のレベルが、あまりにも低過ぎないか?

トランプ氏がフォードやトヨタを恫喝する背景には、メーカー各社が、アメリカは高コスト、メキシコは低コストという発想に基づき、製造拠点を続々とメキシコに移し、アメリカ国内から雇用が流出し続けている事実がある。

無論、メーカーが製造拠点を海外に移す理由は、人件費の高さだけではなく、原材料調達や単純労働者の確保、各種規制の回避など様々ある。

しかし、アメリカ・メキシコ両国の生産コストの差は、THE BOSTON CONSULTING GROUPの料(http://www.bcg.co.jp/documents/file172753.pdf)によると、アメリカを100とした場合のメキシコの指数は91(ちなみに日本111、ドイツ121、中国96)で、輸送コストなどを加算すれば、コスト差は想像以上に小さい。

また、一般的に、製造原価に占める人件費の割合は大手企業で10%程度とされ、「法人企業統計年報」のデータでも、2014年度の売上高人件費比率は全産業・製造業ともに13%程度でしかない。

雇用の海外流出に鈍感な“デフレは消費者の利益論者”は、日本人の人件費が高いから製造拠点の海外流出も止むを得ないと逃げ回るが、製造コストに占める人件費割合の低さや、途上国の労務コスト上昇や理不尽な法改正、犯罪や労務管理、暴動・賄賂の横行などの目に見えぬコスト、為替相場の動向などを勘案すれば、国内の労働者を使おうと、海外の労働者を使おうと、製品価格に大きな差は出ないはずだ。

「海外=低コスト」という時代は終わり、経営者の意識変革が必要なのだが、彼らは、いまだに「海外進出=経営者としての勲章」という下らぬ自負心に縛られたままだ。

さらに、海外生産で安いモノが手に入るという戯言も説得力を失いつつある。

90年代には100万円以下で手に入った軽自動車が150~200万円近くし、150万円くらいで買えたカローラも、いまや180~200万円し、庶民の足であるはずの自動車が高嶺の花になりつつある。

自動車価格が高額化する背景には、原材料価格の高騰や安全装備の充実、日本以外の自動車使用国の経済成長等という理由があるが、日本人の収入が増えない中で上がり続ける自動車価格に、家計が追い付いていけない、つまり、「消費者の利益(そもそも、こんなものが存在するのかさえ不明だが…)」とやらを享受できていないのだ。

『若者が車を購入しない理由1位「買わなくても生活できる」――「買い物でローンや借金はしたくない」という傾向も』(http://blogos.com/article/171831/)というコラムによると、
「日本自動車工業会が4月に発表した「2015年度 乗用車市場動向調査」の中に、興味深い一節があった。
現在車を保有していない20代以下の社会人にアンケートをしたところ、そもそも車を購入する意向がないという回答が59%と、6割近い数字になったというのだ。
理由としては「買わなくても生活できる」(40%)といったもののほか、「駐車場代など今まで以上にお金がかかる」(28%)、「自分のお金はクルマ以外に使いたい」(23%)といった経済的なものが目立った」
とのことで、雇用不安や低収入に悩む若者層は、安く手に入れることができる(実際には安くなっていないが…)はずの車すら買えないほどの経済的苦境に苦しめられている。

その苦境をもたらしたのは、安物買い志向につられて製造拠点の海外流出を見過ごし、雇用と所得を海外にプレゼントしてきた「デフレは消費者の利益論者」の重大な責任である。

日本人はえてして勤勉で生真面目な人が多いから、フリーランチ論を忌み嫌い、果実や利益に対してアンバランスな対価を求めがちだ。
バカバカしいほど低収入なのに過酷な長時間労働に甘んじる労働慣行など、その最たるものだろう。

だが、一方で、「自分だけはモノを安く買いたい」、「自分の雇用や収入だけは安定させたい」などと考え、あわよくばフリーランチにタダ乗りしようとする。

モノやサービスが安く手に入るということは、それを提供する事業者の人件費が圧迫されているということであり、それが実体経済に連鎖し、巡り巡って自分の雇用や収入を不安定化させることになる。

マクロ経済は連関している以上、“メーカーの労働者が途上国との競合で雇用を失っても、自分には関係ない”、“他人の収入が減っても、自分だけが安物買いできれば良い”とはならない。

これほど子供じみたフリーランチ論が通用せぬことくらい、まともな大人であれば理解できるはずだ。

「デフレは消費者の利益論者」の連中は、そろそろ、自らの生活の安定が他人の幸福に立脚していることに気付かねばなるまい。

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