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2017年2月19日 (日)

フリートレード信者の幻覚

『小中で「鎖国」消える…聖徳太子は「厩戸王」に』(読売新聞 2/14)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170214-00050142-yom-soci
「「鎖国」が消える――。
文部科学省が14日に公表した次期学習指導要領の改定案では、小中学校の社会科で「鎖国」の表記をやめ、「幕府の対外政策」に改める。(中略)
 文科省によると、江戸幕府は長崎でオランダや中国との交易を許し、薩摩(鹿児島県)、対馬(長崎県)、松前(北海道)でも外交と貿易が行われていた。完全に国を閉ざしていたわけではないため、当時の実態に即して表記する。(後略)」

江戸時代の対外貿易体制を「鎖国=完全なる海外貿易の途絶」を呼ぶべきでないとの指摘は、ずいぶん以前から歴史学者により上がっていたが、文科省もようやく重い腰を上げ、教科書から記述を削除するようだ。

「鎖国」は「士農工商」と並び、江戸時代を暗黒時代だと決めつけたがる識者が好んで用いる蔑称であり、彼らは、「江戸時代→鎖国→世界の孤児」というイメージを植え付け、自由貿易こそ絶対善という価値観を押し付けようとする。

だが、読売新聞の記事にあるとおり、江戸時代は長崎をはじめ4つの対外貿易窓口を通じて、オランダ・中国・朝鮮・琉球や、それらを窓口とする西欧や東南アジア諸国との間接貿易がなされていたというのが史実である。

主要な輸入品は、繊維類、砂糖、各種香料、薬、羅紗、ビロード、更紗、などの毛織物、木綿,麻の織物、鹿皮,鮫皮など、麝香、沈香、白檀、檀喬木、染剤原料、胡椒、丁子、肉桂、甘草、大黄、サフラン、水牛角、象牙、犀角、珊瑚樹、ガラス製品、書籍(医学・科学・兵学)、ガラス類、学術用具(天球儀・地球儀・天体望遠鏡)など非常に多岐に亘っている。

一方、輸出品は、銀、金、銅・銅製品、樟脳、陶磁器,漆製品、煙草、木材、醤油、屏風、煎海鼠、干鮑、ふかひれ、寒天、昆布、鰹節、鯣など、こちらも非常に多品目だ。

また、江戸自体の経済成長に応じて、貿易量自体も年々増加傾向にあったようで、輸入超過傾向にあった対外貿易による金銀流出を懸念した幕府から、たびたび貿易制限令が発令されている。

つまり、江戸時代は海外からの物品や情報の流入が途絶された特殊な時代だという旧来の歴史観は完全なる誤りで、鎖国という言いがかりに近い蔑称が教科書から削除されるのは、当然の成り行きだろう。

年間の輸出入額がいずれも70兆円を超えるような現代においてもなお、「日本は自由貿易に消極的な前近代国家」だと揶揄し、暴力的なフリートレードこそ絶対善だという価値観を押し付けようとする風潮が強い。

この手のフリートレード幻想論者は、自由貿易に一定の制限を掛けるべきと主張する論者に対して、「鎖国する気か」、「自給自足でもするつもりか」と幼稚な批判をしたがるが、こうした「ゼロか、100か」という低レベルの暴論には、まともに答える必要もないだろう。

そもそも、貿易とは、輸出入を行う国家同士のメリットの最大公約数を満たすレベルで行えばよく、過度な規制緩和や関税撤廃により、国内産業育成や雇用の維持などに悪影響を及ぼす懸念を生じさせるべきではない。

自由貿易自体を否定する意見なんて皆無に等しいのだから、国内産業の育成や雇用維持が確保できる範囲内で、存分に貿易をすればよいだけのことだ。

貿易は、国益増進や国民生活向上のためにやるべきものであり、それに反するレベルの暴力的な自由貿易は有害でしかない。

製造コストダウンにしか興味のない一企業家の思い込みにつられて、度を越したフリートレードが易々と容認されるような社会であってはならない。

また、TPP交渉における自動車産業と農業との関係のように、特定の産業に肩入れし、その便益向上のために、別の産業を軽々しく犠牲にするような考え方は絶対に容認すべきではない。

多国間交渉であれ、二国間交渉であれ、異なる産業同士を取引材料の駒に使って安値で切り売りするような勝手な真似を許してしまうと、過去の畜産業や果樹農業、繊維産業のような禍根を残すことになる。
時間や手間をかけてでも、産業別・品目別の個別交渉を基本とし、こちらの国益確保を何より優先する強い姿勢が求められる。

「ヒト・モノ・カネ」の三要素の完全なる自由化を求めるフリートレード中毒患者には、何を言っても聞く耳を持つまいが、昨今のSONYやSHARP、東芝をはじめとする電機業界や、自動車業界や製鉄業界、造船業界など、これまで日本の強みとされていた産業の衰退化を招いた主因は、暴力的なフリートレードによる競合激化&技術流出と、緊縮財政による内需停滞に他ならない。

周回遅れのフリートレード信者どもは、穴の開いたバケツで水を掛けるような行為のバカバカしさに、そろそろ気付くべきだろう。

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