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2017年2月22日 (水)

モノが買いづらくなる時代が、すぐそこに

先日、経営相談に乗っている焼き肉レストランのPOSデータを見たら、主力メニューの材料原価が47~48%にもなっていたので、驚いて店主に問い質したところ、昨今の牛肉価格高騰により仕入れコストが嵩んでいるが、かといって、値上げもできず、利益を出すのが相当厳しいと零していた。

確かに、JA全農のサイトで大阪市場の肉牛枝肉卸売価格推移を見ると、大阪和牛去勢A-4クラスの㎏当たりの卸単価は、2014年1,995円→2015年2,341円→2016年2,748円(いずれも4月)と、2年ほどで37.7%も上昇している。

また、農水省の資料でも、食料品の消費者物価指数(※卸価格ではないが、ほぼ同じ動き)が、ここ2年余り上昇していることが判る。
2012年の指数(95/2015年=100)に対して、2016年12月の食料品全体の指数は102.5と7.9%も上がっている。
【参考資料】http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/anpo/kouri/attach/pdf/index-15.pdf

これだけ仕入価格や市況が上がってしまうと、飲食店が利益を出すのも大変だろう。

知り合いの飲食関係のコンサルタントに聞くと、業種や業態により異なるが、数年前まで、一般的に原価率の目安は約25%〜30%と言われていたらしいが、昨今では食料品価格が万遍なく上昇傾向にあり、原価率も35~45%に上がっているそうだ。

「業種別審査事典」という資料を捲り、いくつかの業態のおおよその原価率(黒字企業平均値)を調べてみると、
〈レストラン〉45%、〈ラーメン店〉32.3%、〈焼肉店〉40.7%、〈大手牛丼チェーン〉33.9%~40.9%、〈そば・うどん店〉31.9%、〈寿司店〉46.9%、〈喫茶店〉31.5%、〈居酒屋〉34.9%、〈料亭〉36.1%
等々、思ったよりも原価率が高止まりしている。

焼肉店を例にとると、売上255,000千円、売上総利益151,000千円、営業利益9,200千円、経常利益10,000千円というのが黒字企業の平均値であり、ここから納税や借入金の返済、新たな設備投資の原資を捻出するのは容易ではなかろう。

10,000千円というと一見余裕があるように見えるが、材料仕入れコストだけでなく、水道光熱費や借入金利が少しでも上振れしたり、厨房機器を更新したりすれば、数百万円くらいは瞬く間に吹っ飛んでしまうものだ。

材料仕入れコストの漸増は、ただでさえ財務体質が脆弱な飲食業界の経営を直撃し、1996年に83万店を超えていた全国の飲食店舗数は、2012年には57万店へと3割以上も減り、歯止めが掛かる気配すらない。

食料価格は、天候不順や飼料価格高騰、円安、離農増加などの要因で簡単に上昇する。
よって、マーケットを健全な状態に保とうとするなら、最低でも、コスト上昇分をメニュー価格に転嫁できる環境が必要なのだが、本来なら、「仕入れコストUP→価格改定→客の不満爆発」という消極的なルートではなく、「適切な経済政策→家計所得UP→高付加価値ニーズの高まり→高付加価値&高利益率メニューの提案→仕入れコストUPを吸収」といった、飲食店と顧客がWin-Winの関係になるのが望ましい。

客は一円でも安い店を探すことに熱中し、出てきた生姜焼き定食のあまりのショボさにガッカリする、一方、店側も、キャベツも豚肉も米も値上がりしているのに、客の懐具合を察して価格を上げられず、場末の学食みたいに貧相な食事を出さざるを得ない、というのでは、互いがLose-Loseになり不満が増すだけで、何の生産性もない。

我が国の食料自給率は、生産額ベースで66%(H27)と、他国と比べて特段低いわけではないが、大豆(42%)、魚介類(53%)、小麦(9%)、畜産物(60%)、砂糖(49%)など、調理の基幹となる食材の輸入割合が高い。

よって、行き過ぎた円安は輸入コストUPに直結するし、経済成長を忘れた我が国と、成長し続ける他国との相対的な購買力の差は拡大する一方だ。

内需依存度が高い日本の産業構造を考慮すれば、マンデル・フレミング理論のような空論は当てはまらないし、円安への固執は、円を決済通貨に使う日本人の相対的な購買力低下にもつながり、却って問題がある。

これまでは「貿易立国たる我が国にとって円安はメリット」との考え方が一般的だったが、このまま停滞が続くと、近い将来、円高に頭を悩ませていたことを懐かしむ時代が来るかもしれない。

日本人は、「人口が減るから経済成長しなくても仕方ない」という愚論を容易く信じてしまうが、未成長による購買力の低下が、輸入物価高騰に起因するコストプッシュ型インフレへの対応力を棄損するリスクを招くことを、きちんと自覚すべきだ。

日本には成長の余地がないから身の丈に合った生活を維持すべきだという「黄昏経済論」に浸るのは、国民を飢餓に突き落としかねない非常に危険な現実逃避であることに気付いてほしい。

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