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2017年2月 5日 (日)

経済政策は「人々の財布にはカネが入っていない」ことを前提とすべき

『日本に必要なのは財政拡大、基礎的収支の目標年限撤廃を=シムズ教授』(ロイター 2/1)
http://jp.reuters.com/article/japan-economy-profsims-idJPKBN15G3KM?feedType=RSS&feedName=topNews&google_editors_picks=true

「ノーベル経済学賞を受賞したプリンストン大学のクリストファー・シムズ教授は1日、日本経済研究センターで講演し、プラスの物価上昇を実現するには現在の財政赤字を拡大することが役立つとの「物価水準の財政理論」を前提に、将来不安により支出が萎縮している日本で必要なのは継続的な財政拡大とインフレ実現への政治的コミットだと指摘した。基礎的財政収支(プライマリーバランス:PB)黒字化に固執するとデフレから脱却できないとした。
(中略)
日本では「短期的な景気対策としての財政拡大は次の増税で穴埋めされると人々が感じて支出が抑制されているほか、高齢化による将来不安も重なっている」と指摘する。PB赤字の拡大をインフレ実現とリンクさせれば、将来にわたって財政赤字が拡大するとわかり、国債価値が下落。それによって国債保有から実物消費へのシフトが起こり、物価が上がるとの理論を展開した。(後略)」

米プリンストン大教授のシムズ氏は、“変節名人”の浜田宏一内閣参与に財政政策の重要さを気付かせたことにより、経済論壇界隈でちょっとした話題になっている人物だ。

そのシムズ氏が来日し、日本経済研究センターで行った講演で、金融緩和+歳出改革(=緊縮政策)に偏っていた日本政府の経済政策を批判し、2%の物価目標達成に向けて、財政政策の活用を強調するとともに、消費税増税やPB黒字化を後回しにすべきだと主張した。

海の向こうでは、トランプ大統領が大規模な社会インフラ整備のための財政政策実行を訴え、イギリスが2020年までの財政頃直目標を取り下げるなど、緊縮政策の弊害が見直されつつあり、緊縮財政&金融緩和を主軸とする経済政策もレジーム・チェンジする時期を迎えている。

今回のシムズ教授の講演が、我が国における経済政策のレジーム・チェンジのきっかけになるかどうかは不明だが、これまでも、スティグリッツやクルーグマン、ピケティなどノーベル賞受賞者や世界的に著名な識者からの、財政政策の拡大が必要との指摘を完全に無視し続けてきたことを考えると、シムズ提言も糠喜びに終わる可能性が高い。

しかも、シムズ氏のインタビューを精査してみると、
・米国ではインフレ宣言を行うことにより、人々のインフレ期待の上昇に効果があった
・2%の物価目標達成までは、消費増税を先送りすることが望ましい
・PB赤字の拡大をインフレ実現とリンクさせるべき
・国債価値の下落によって国債保有から実物消費へのシフトが起こり、物価が上がる
という趣旨の発言が目立ち、いかにも主流派経済学者の巣窟であるプリンストン大学臭がプンプンと漂ってくる。

氏の主張について、
・消費税増税に賛成しない点(※あくまで、物価目標達成までという時限付きだけど…)
・PB黒字化目標を否定的に論じる点(同)
・財政政策の活用を訴える点(同)
などは評価すべきだ。

一方、最終的な目標を「2%の物価上昇達成」に置き、その手段として、合理的期待形成による消費や投資の活性化に期待している辺りは、リフレ派の範疇を大きく逸脱する人物ではない、と思われる。

シムズ氏の提言について、筆者と同じ『進撃の庶民』でコラムを投稿しておられる有閑爺い様が、ご自身のブログ(『経済学のダメなところ』http://ameblo.jp/kumuka99/entry-12243906186.html)で、「人は、金利の変化で支出行動を決めたりはしません。(中略)「国債保有から実物消費へのシフト」は自動的に起こるのではなく人が決めることです」とご指摘なさっておられるとおり、

①財政赤字拡大

②国債価値の下落(金利上昇)

③国債保有から実物消費へシフト

④消費や投資の活性化による物価上昇

という合理的期待形成や実質金利頼みの「期待発生ルート」は、途中で遮断される可能性が極めて高い。

この手の「期待形成に期待する」手法は、リフレ理論に近似した考え方だが、たいがい、③で躓き④に至らない。

それは、リフレ理論では、実体経済を刺激する手法として、金融面からのアプローチや資産効果、為替効果に重点を置きたがり、財政政策を蔑視するあまりに、①の実行に十分な物量を投じることを躊躇し、その使いみちに厳しい制限を掛けたがる(=公共投資への嫌悪など)からだ。

また、②→③ルートへの拘りも大きな障害となる。

人々を実物消費へと向かわせたいのなら、国債価格や通貨の下落、金融資産の取り崩しという北風政策を以って追い立てる必要はない。

シムズ氏は、別のインタビューに応えた際に、「ゼロ金利制約下では金融政策が機能しないため、財政政策と金融政策が連携するのが望ましい」と述べているのだから、国債価格下落→金融資産売却→実物消費や投資へのシフトという実現性が極めて低いルートを選択するよりも、金融緩和を維持して金利を抑えたまま、財政政策にブーストを利かせて、もっとストレートに家計や企業のフローとストックを膨らませる手法を説明すべきだ。

金融政策に固執し、効き目が薄く、回りくどいアプローチをするよりも、大規模かつ長期間の財政政策断行を宣言し、

・積極財政(財政赤字拡大)

・ビジネスチャンス、雇用創出、所得増加

・経済成長期待の具現化

・消費や投資の活性化

という好循環ルートを、よりダイレクトに実現できるよう、ショートカットを狙えばよい。

人々が積極的にカネを使ってモノやサービスを買うようになるためには、金利効果や資産効果だけでは、ほとんど役に立たない。
デフレ下で不況慣れした人々の財布の紐の固さを舐めてかかると、構造改革派やリフレ派の連中のように痛い目に遭う。

家計にしろ、企業にしろ、傷み切ったフローとストックが十二分に修復され、今後も増え続けるに違いないという確信を持てぬ限り、消費や投資が積極化することはない。
肝心なのは、何を以ってその“確信”を担保できるか、ということだ。

シムズ氏の話を聞くにつけ、財金両面のアプローチを推奨してはいるが、財政政策と金融政策のどちらを主軸とすべきなのか、解りにくい。

どうも、彼の話は、金融政策の効果に未練を感じつつ、その効き目が弱いがゆえに、仕方なく、一時だけ、財政政策の手を借りようというニュアンスが強すぎる。

それはそれで良いのだが、彼が提言する経済政策の最終目標は、あくまで、「2%の物価目標達成」に置かれているのが気にかかる。

本来なら、国民の所得水準や増加率こそターゲットとすべきだが、なぜか話がインフレ率に収斂してしまうのは、主流派経済学者の限界か…

主流派経済学やリフレ理論の最大の欠点は、
①インフレ期待という、確率の低い期待形成への期待に重きを置くこと
②実質金利低下や資産効果、為替効果云々に家計や企業が反応すると信じ込んでいること
③家計や企業が、マーケットの変化に即応して、実物消費に投じられるフローやストックを潤沢に保有していることを前提にして論じていること
にあり、特に、③の勘違いが、彼らの理論を実戦力無きものに貶めている。

20年以上も続く不況のせいで、家計も中小企業も、直ぐに使える金なんて持っていないし、少々景気が良くなっても、派手に使える確信が持てないことを、まず理解すべきだ。
そうでないと、インフレ期待だの、合理的期待形成だのといった空理空論から、いつまで経っても抜け出せない。

シムズ氏も、せっかく財政政策の重要性を説くつもりなら、家計所得の増加を最終的なターゲットとすべきだし、消費税増税の一時的な凍結というケチくさい提言ではなく、廃止にまで踏み込んだ発言をし、ついでに、社会保険料の国庫負担率引上げや大規模なインフラ整備等々、年間数十兆円レベルの財政刺激策を提言すべきだろう。

そのくらい言わないと、緊縮派の巣窟と化した日本の経済論壇を一ミリたりとも動かすことはできない。

まあ、財政政策の重要性にスポットが当たることに違いないから、これでも、半歩前進したと評価すべきなのだろうが、財政政策を擁護したり、支持したりする声が、いつも海外発の輸入物であるのは、本当に情けない。

日本の学者やエコノミストの連中は、いつまで呆け続ければ気が済むのか?

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