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2017年2月 9日 (木)

会社がなくなる!

昨年12月に中小企業庁から『事業承継ガイドライン』が公表された。
http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2016/161205shoukei1.pdf
このガイドラインは、“円滑な事業承継の促進を通じた中小企業の事業活性化を図るため、事業承継に向けた早期・計画的な準備の重要性や課題への対応策、事業承継支援体制の強化の方向性等について取りまとめた(中企庁HPより)”もので、中小企業・小規模事業者の円滑な事業承継のための取組みや活用すべきツール、注意すべきポイントなどが紹介されている。

行政サイドが事業承継の促進に躍起になる理由は、経営者の高齢化と企業数の減少という憂慮すべき事実を目の当たりにしているからだ。

中小企業庁の資料によると、
・中小企業経営者の年齢のピークは2015年時点で66歳と、20年前(47歳)に比べて19歳も高齢化
・経営者の平均引退年齢は、中規模企業で67.7歳、小規模事業者では70.5歳となり、3年後には数十万人の団塊世代経営者が引退時期に差し掛かる見通し
・2014年の国内企業数は382万者と、15年間で100万者以上減少(中でも、小規模事業者は98万者減少)
といった惨状である。

政府は、一億総活躍社会とか外国移民の活用なんて寝ぼけたことを抜かしているが、肝心の雇用の受け皿が存亡の危機に晒されているのだ。

中小企業白書のデータによると、事業承継が進まない理由として、「将来の業績低迷が予測され、事業承継に消極的」との回答が55.9%と最も多く、「後継者に適当な人が見つからなかった」22.5%、「個人保証や個人財産の担保提供が障害となった」3.6%などの回答が目立つ。

筆者が相談を受ける企業からも、
・業績が思わしくなく承継云々を考える余裕すらない
・自社の将来性を危ぶみ、自分の代で会社を畳むしかないと諦めている
・会社が赤字続きで、会社勤めする息子から事業を継ぐ気はないと断られた
・社員に会社を譲ろうとしたが、個人保証がネックとなり社員の家族に反対された
などといった悩みを聞いている。

社長に成りたがる人材がいないという事実は、日本企業の大半を占める中小企業の将来にとって非常に由々しき問題だ。

筆者の個人的意見に加えて、企業経営者や官庁、専門家などの意見を聴いた限りでは、
①企業業績の低迷
②金融機関に対する個人保証や担保提供
の2点が大きな障害だと感じている。

①については、マクロ経済環境の改善や大企業による下請けいじめ禁止の徹底などで対応するしかないが、どうしても中長期的な時間軸の話になってしまうだろう。

一方、②の個人保証の問題は、喫緊に改善すべき課題でもあり、金融機関サイドの理解さえ得られれば比較的短期間に解決可能な問題だと思う。

経営者の個人保証免除に関しては、平成25年に「経営者保証に関するガイドライン」が制定され、経営者個人と法人との関係が明確に区分・分離されている場合などに、経営者の個人保証を求めないことが明示されているが、ほとんど普及が進んでいないと言ってよい。

銀行業界におけるガイドラインの普及度合いを示すデータは見当たらないが、日本政策金融公庫(旧国民生活金融公庫)のデータによると、2014年の新規融資41万件のうち、ガイドライン適用件数は8600件と約2%に過ぎない。(累計で10000件ほど)

しかも、これは「新規貸付」に限った話であり、既存の貸付(約208万件)を含めた数字で見ると、無保証融資の割合は0.4~0.5%程度でしかなく、あくまで例外的な取扱いに止まっている。

過去のエントリーでも何度か触れたが、筆者は、経営者の個人保証は事業承継の妨げになり、金融機関の債権保全面からも大して役に立たない中途半端な存在だと考えており、金融機関は、中金利による無保証融資への切り替えを積極的に進めるべきだと提言してきた。

国内企業の7割近くが赤字企業とされ、資本金1億円未満の法人の役員平均年収は613万円というデータもあり、思ったより低額であることに驚かされる。
確かに、昔は、家族を含めて2000~3000万円も取る社長も珍しくなかったが、20年以上も続く不況により、「名ばかり社長」が増えたのだろう。

はっきり言えるのは、この程度の年収で借入の個人保証をしても、資力が保証額に見合わずに、ほとんど実体を伴わぬものになるだろう、ということだ。
金銭消費貸借契約書の連帯保証人の欄にハンコを押しても、実体的な保証力が無ければ、何の意味も成さない。

そんな無駄なことをするよりも、事業計画の詳細説明を義務付けたうえで無保証融資に切り替え、保証料代わりに融資金利を2~3%でも上乗せする方が、金融機関にとっても収益改善につながるし、不良債権管理の手間が大幅に省ける。

また、経営者サイドも、個人保証絡みの悩みから解放され、事業承継も多少はスムーズになるだろう。

小泉バカ政権以降、歴代の政権がくだらぬ改革ゴッコや緊縮ゴッコに興じた結果がこの体たらくである。
バカ者どもが残した負の遺産やツケの後始末には、膨大な作業と大胆な発想の転換が必要になるが、雇用の受け皿を確保していくためには、避けて通れぬ道なのだ。

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コメント

名ばかり正社員、名ばかり管理職は聞いたことがありますが、いつのまにか名ばかり社長と称されるような時代になっていましたか。経営者や社長と聞くと経団連加盟企業のような高給取りを想像してしまいますが、中小企業は社長であっても苦しいのですね。

中小零細企業の経営者は、「社長のなり手がいないこと」に悩んでいます。

このままだと、企業組合のような共同経営システムに移行することになるかもしれませんね。

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