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2017年3月28日 (火)

泥臭い期待

『インフレ2%の達成は程遠い ヤマトの値上げが話題のお国柄』(ダイヤモンドオンライン 3/23 加藤 出/東短リサーチ取締役)
http://diamond.jp/articles/-/121807
「宅配便最大手のヤマト運輸が、宅配便の運賃引き上げを検討しているというニュースが大きな話題となっている。1面トップで報じた全国紙もあった。
 しかし、米国人がこの話を聞いたとしたら、「なぜそんな話題が新聞の1面に載るのか」と驚くと思われる。なぜなら、米国では荷物の配送料の値上げは日常茶飯事だからだ。
(中略)
値上げしづらい空気、またはそれを招いている人々の行動規範を「ゼロ・インフレ・ノルム」と呼ぶ。それを打ち壊すまで、日銀は超低金利政策を粘り強く続けようとしている。
 しかし、日本経済は先行き伸びていくという予想(成長期待)が人々の間に存在しなければ、たとえ融資の金利が低かったとしても資金需要は湧いてこない。人口問題を含む構造改革に着手しなければ、日銀が実施している超低金利政策の景気刺激効果は限られてしまう。
 また、最近気になるのは、「人手不足→賃上げ→消費拡大→値上げ」という循環の拡大は緩やかな一方で、人件費の増加をサービス価格に転嫁しないで済むように、営業時間の短縮やIT化推進を含めた工夫によって、価格上昇を抑える動きが各所で広がりつつある点である。
 現在の人手不足は労働年齢人口の減少が主因であり、消費の過熱に起因するものではない。それだけに、「ゼロ・インフレ・ノルム」を克服することは容易ではないといえそうだ。」

黒田日銀総裁の任期はあと一年残っているが、日銀の金融政策があまりにもパッとしないせいか、市場関係者の関心は、黒田バズーカ第●弾から、早くも“ポスト黒田”人事へと移っている。

上記コラム執筆者の加藤氏は、量的緩和政策やインフレターゲット政策に否定的な論者であり、リフレ派から目の敵にされている。
彼は、構造改革や緊縮政策を是とする立場から、過度な金融政策に反対する主張を繰り返してきた人物で、コラム文中の“人口問題を含む構造改革に着手しなければ”云々という表現にも、そうした思想が見え隠れする。

しかし、加藤氏の次の指摘には同意する。
●日本経済は先行き伸びていくという予想(成長期待)が人々の間に存在しなければ、たとえ融資の金利が低かったとしても資金需要は湧いてこない
●「人手不足→賃上げ→消費拡大→値上げ」という循環の拡大は緩やかな一方で、人件費の増加をサービス価格に転嫁しないで済むように、営業時間の短縮やIT化推進を含めた工夫によって、価格上昇を抑える動きが各所で広がりつつある
●現在の人手不足は労働年齢人口の減少が主因であり、消費の過熱に起因するものではない

問題は、こうした課題やボトルネックに対して、どのような処方箋を示すのか、という点にある。

筆者も、巷間囁かれる「人手不足問題」は、単なる人口動態の変化によるもので、景気拡大に起因する前向きなものではないと思っている。

また、求人倍率の高まりが、給与水準改善にストレートには反映されない事態にかなりイライラしている。

売上が増えず、個別商取引の収益も上がらぬビジネス環境では、人件費上昇分のコストを消費者や顧客へ転嫁できず、労働時間圧縮や他の経費縮減で対応せざるを得なくなる。
そして、そうした個別企業の経費圧縮努力が、長期デフレからの脱出に対する高い壁になる。

一企業の経営選択としては致し方ないとしても、全産業でこれをやられた日には、まさに合成の誤謬が発生し、いつまで経っても経済成長などできないし、デフレ脱却も永遠に不可能だ。

企業が直面する課題は、次のようなものだろう。
①売上が伸ばせない(=需要不足)、個別取引でも利益を取れない(=価格競争)
②高齢層の退職時期到来、氷河期世代前後の採用不足、絶対数が少ない新人層の採用難など複合要因による人手不足
③人件費UPに廻せる財源不足(※中小企業のみ)
ただし、③に関して、大企業の経常利益は過去最高水準に達するなど十分に拡大しており、財源不足を言い訳にするのは許されない。

こうした課題のうち、①の実体経済のビジネス環境改善こそが避けて通れぬ最重要課題であり、量的金融緩和政策やインフレターゲット政策を巡る議論でも、ここに焦点を当て突破せぬ限り、解決の糸口を掴むことはできない。

「いかにして2%の物価上昇目標を達成すべきか」、「金融機関の尻を叩いて、マネーストックを増やすにはどうすべきか」という本末転倒かつ枝葉末節な議論に収斂するだけでは、何の進歩もない。

物価上昇目標やマネーストックなんて指標は、経済成長や適切な分配が行われた後に顕在化する多くの数値の一つでしかない。

加藤氏の云う「日本経済は先行き伸びていくという予想(成長期待)」とは、商機と所得の拡大という“泥臭い”期待のことに他ならない。

この泥臭い期待を確信に近づける経済政策無くして諸問題の解決は不可能であることを自覚せぬと、いつまで経っても「金融政策一本足打法の継続か、緊縮・構造改革路線への転換か」という妄想と空想との禅問答を繰り返すことになる。

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