無料ブログはココログ

リンク集

« 実戦力を失った比較優位説 | トップページ | 売上無視して成長なし »

2017年3月21日 (火)

暴力的なフリートレードを"保護"したい輩

『G20声明、「反保護主義」を削除-ムニューシン米長官との対立鮮明に』(ブルームバーグ 3/19)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-18/ON0OKU6K50XS01
「ドイツで開かれたG20は18日に閉幕し、共同声明では「経済に対する貿易の貢献の強化に取り組んでいる」と表現。米国が求めていた公正な貿易を確実にするといった具体的な約束は盛り込まれなかったものの、昨年の共同声明にあった「あらゆる形態の保護主義に対抗する」との文言は削除された。(後略)」

暴力的なフリートレード(=行き過ぎた資本・人・技術の移動の自由、必要な規制の聖域なき撤廃)は、先進諸国の雇用や所得だけでなく治安までも不安定化させるとともに、莫大な資金と人材を継ぎ込んで開発した高度技術をも簡単に流出させてしまった。

こうした野放図な貿易体制は、隣家との境界を定める塀の撤廃やドアロックの禁止を強要されるようなもので、国民生活をリスクに晒し、国家の存立すら危うくするとても無謀かつ危険な行為である。

だが、これまでは、狂気に満ちたフリートレード論を是正すべしとまともな指摘をしただけで、「時代遅れの保護主義者」だと周囲から一斉に口汚く罵られるのがオチだった。

G20の共同声明に、「あらゆる形態の保護主義に対抗する」といった過剰反応としか思えぬ“ヒステリックな妄言”が盛り込まれてきたのも、世界中が暴力的なフリートレードに心酔し切ってきた証左とも言える。

今回のG20の動きを見たアップルのティム・クックCEOは、「グローバル化に問題があるからといって、国が内向きとなれば経済発展のスピードは遅くなる」とコメントし、途上国の安価な労働力に甘え切ってきたフリートレード論者(=自分たち)の欺瞞を糺すような動きを牽制したそうだ。

クック氏の「国が内向きとなれば経済発展のスピードは遅くなる」との発言は、まったく現実を説明できていない。
日米ともに、国が内向きというか、節度のある自由貿易体制下にあった時代の方が、遥かに経済発展のスピードは速く、国民所得も十分な伸びを示していた。

経済活動のエネルギーは、生産→流通→消費→生産…という間断なき連鎖により増幅されるのに、一企業や一介の経営者の都合で生産工程を安易に海外へ移されてしまうと、経済の連鎖が断ち切られ雇用や所得がたちまち不安定化する。

国を適度に内向きに保たないと、経済活動が生み出す付加価値が海外へ漏出するばかりで、国内で循環すべき富が流出してしまう。

付加価値や富は経済発展のエネルギーそのものだから、国内市場にそれらが不足すれば、経済発展のスピードが上がるはずがない。

クック氏が言う“スピード”とは、国家単位の経済ではなく、自社の業績や自身の所得のことを指しているだけだ。
他人を安くこき使いだけの下衆な根性を隠そうと、あれこれ格好良く修飾するために、“グローバル化”なる言葉で誤魔化すのは止めてもらいたい。

また、フリートレード論者は、自由貿易こそが人々の生活を便利にした、スマホもAmazonも自由貿易のおかげだ‼といきり立つが、そんなものは何の根拠もない思い込みでしかない。

別に、中国人をこき使わないとスマホは世に出ていなかったという確証など何処にも無い。
仮に、節度ある自由貿易体制が維持され、付加価値や富が国内循環していたならば、安定した所得を保障された世界中の人々は、より早くスマホを手に入れられた(アップルよりも数年早く日本人がスマホ以上の商品を世に出していたかもしれない…)ろうし、格安スマホみたいなケチくさい商品ではなく、もっと便利で高付加価値な商品を求めたことだろう。

新しい家電商品や便利なサービスが世に出ると、人々はそれらに驚嘆し、頭に乗ったフリートレード論者から、「あなたが、便利な●●を手に入れられたのも、自由貿易のおかげですよ」と唆され、すっかり騙される。

だが、暴力的なフリートレードが世界レベルで蔓延する以前から、人々は常に便利な商品やサービスを手にしており、毎年のように「いやぁ、世の中便利になったもんだ」という言葉を繰り返してきたはずだ。

フリートレードの有無に関わらず、必要なものは海外から調達できたし、それらを活用して生活スタイルをガラリと変えるような画期的な商品が数多生み出されてきたではないか。

むしろ、フリートレードが横行する時代(平成中盤以降)になってから、イノベーションやレボリューションのレベルが明らかに低下し、10年前、20年前との生活レベルの違いが不鮮明化している。

昭和から平成初期にかけては、5~10年も経てば、街の景色は一変し、住環境から衣服、食料、交通網、情報、娯楽に至るまで、大きく変化を遂げるのが当たり前だったが、平成期突入以降の変化の無さにはウンザリさせられる。

“パソコンやネットが普及しただろ”、“スマホもあるじゃないか”との意見もあるが、適切な経済政策や節度ある貿易体制下でぐんぐん成長を続けていたとすれば、そんなものはとうの昔に普及しており、現世を生きる我々は、より高度なレベルの便利なアイテムを満喫できていたはずだ。

そもそも、いくら便利な商品やサービスが存在しても、それを消費できる所得がなければ、まったく意味がない。

一部のグローバル企業の都合で、生産拠点や雇用・所得を途上国へ持ち逃げされては、本来、先進国の国民が享受すべき所得がダダ漏れし、革新的な商品が世に出たとしても、あたかもと需国の貧困層のように、黙って指を咥えているしかなくなってしまう。

フリートレードがもたらす低コスト生産により莫大な利益を手にする守銭奴には、自国の社会インフラにタダ乗りさせてもらっているという感覚が欠如している。
あたかも、親の庇護を忘れて、独力で生きて行けると勘違いした青臭い中学生みたいなものだ。

そんな彼らの我欲が創り出した貿易体制の下でしか、人々が便利な生活を手に入れられなかったなんて詭弁が罷り通るはずがなかろう。

想像力に乏しい連中に限って、「フリートレードか、鎖国か」という小学生みたいな二者択一を迫るが、その中間にある『節度ある自由貿易体制』を探る気はないのか?
「鎖国」という誰もが選択し得ない極論を盾にして、鎖国が嫌なら「暴力的なフリートレード」しかないだろと迫るのは、あまりに稚拙だ。

人件費の安い国での生産に固執するのは、自国から雇用や所得、技術集積の機会を奪い流出させても構わないという意思表示としか受け取れぬから、そんな企業には“会社ごと生産国へ移転してしまえ”と言っておく。

また、“海外生産によるコストダウンが売価ダウンにつながり消費者の利益になる”との間抜けな意見には、「お前は、100円のプライスダウンと引き換えに、10,000円の給与削減に応じるのか?」と突っ込んでおく。

今回、G20が「あらゆる形態の保護主義に対抗する」という妄言を取り下げたのは当然のことで、むしろ遅すぎたくらいだが、意固地な欧州勢の反対を振り切って、フリートレード礼賛の旗を降ろさせた意味は大きいと評価できる。

« 実戦力を失った比較優位説 | トップページ | 売上無視して成長なし »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1436015/69983772

この記事へのトラックバック一覧です: 暴力的なフリートレードを"保護"したい輩:

« 実戦力を失った比較優位説 | トップページ | 売上無視して成長なし »

最近のトラックバック

2017年10月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31