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2017年4月26日 (水)

ICタグによる省力化を活かせる経済環境を

『全コンビニに無人レジ 大手5社 流通業を効率化 ICタグ一斉導入』(日経新聞 4/18)
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO15427060Y7A410C1MM8000/
「セブン―イレブン・ジャパンやファミリーマートなど大手コンビニエンスストア5社は消費者が自分で会計するセルフレジを2025年までに国内全店舗に導入する。カゴに入れた商品の情報を一括して読み取るICタグを使い、販売状況をメーカーや物流事業者と共有する。深刻化する人手不足の解消を狙うとともに、流通業界の生産性向上につなげる。
経済産業省と共同で発表する「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」に、25年までにセブンイレブン、ファミマ、ローソン、ミニストップ、ニューデイズで取り扱う全ての商品(計1000億個)にICタグを貼り付けると明記する。
 コンビニで買い物をする消費者は商品をカゴや袋に入れたまま専用機械を組み込んだ台に置くだけで会計できる。スーパーではバーコードを一つ一つ読み取るセルフレジが広がりつつあるが、日用品を扱う大手がカゴごとに瞬時に会計できる仕組みを全面導入するのは世界でも例がないという。(略)」

流通業界へのICタグ導入は、いまから10年以上前にも本格的に議論されたことがあったが、当時は一枚数百円にもなる導入コストが障壁となりほとんど普及しなかった。
その後の技術革新を経て、現在の生産コストは一枚あたり10~20円程度まで引き下げられ(米国では5~6円程度のものまであるらしい)、折からの人手不足問題(=安値で働いてくれるバイト不足)も相まって、普及論が再燃している。

ICタグ導入に期待されるのは、主に次の点だろう。
①レジ処理の高速化(盗難防止タグの代わりにもなる)
②レジ人員の削減効果
③在庫管理の高速化&省力化
④物流の効率化

今回は経産省が旗振り役となり、大手コンビニ各社と組んで普及を図るものだが、小売り現場への本格的な導入までには克服すべき課題も多い。

生産コストが10円に下がったとしても、川下の導入価格はこの倍以上になり、個々の商品価格に跳ね返るから、チロルチョコや十円菓子のような低価格品にまで貼り付けるのは難しい。

また、レジ処理の高速化についても、購入された商品をレジで正確に読み取るためには、タグに組み込まれたRFIDリーダー側アンテナの電波出力の微妙な調整が必要になる。
これが適切でないと、隣りのレジに並んだ客が購入した商品を誤って読み取ってしまうリスクもあるそうだから、店舗のレジ周りのレイアウト設計を抜本的に見直す必要もある。

さらに、レジ処理を高速化するのは良いが、後工程の袋詰めコーナーで顧客が大渋滞を起こしてしまう懸念もあり、事は単純ではない。

だが、イチャモンをつけるばかりでなく、利点もきちんと評価する必要がある。

ICタグ導入のメリットは、レジ周りよりも、むしろ、在庫管理や物流管理といったバックヤード作業の省力化にある。

人手に頼みの在庫管理、熟練者のノウハウ任せのピッキング作業、営業時間短縮や残業がつきものだった棚卸作業、いちいち伝票との照合が必要だった入出庫の検品作業等々、煩雑さの象徴でもあった倉庫作業が省力化され、余剰作業時間を前向きな商品管理や経営戦略などの立案・実行に充てることもできる。

また、小売店の現場でも、在庫がリアルタイムで可視化されることにより、店員は自店や他店舗の在庫状況を迅速に把握でき、売れ筋商品の積極投入や販売機会ロス防止、在庫削減によるコストダウンといった効果も期待できる。

ICタグ導入に関する個々の企業の取り組みは、かつてJANコード(バーコード)がセブンイレブンでの導入をきっかけに一気に普及したのと同様に、大手流通業者の本気度如何で普及する可能性は大いにある。

問題は、ICタグ導入が生み出す余剰作業時間と人材を、社会がどのように活かせるかという点に尽きる。

コンビニや大手スーパー各社が、単にレジ打ちのバイトやパートを減らして知らぬ顔をするだけなら、社会全体の効用はプラスにはならない。
人手不足だ、省力化だと大騒ぎした挙句に、結果として、立場の弱いバイトやパート人材を追い出すだけなら、安値バイトを他社にツケ回しすることにしかなるまい。

ICタグの導入費用は、規模に応じて数千万円~数十億円にもなると言われており、流通各社がこれを本気で検討するからには、“人材”の存在価値が、そうした多額の投資に見合うだけのレベルに向上したことに他ならない。

ならば、そうした貴重な人材を適正な水準の雇用条件で遇するよう、雇用する側(企業)も努力すべきだ。

特に、大手企業は、ここ数年の決算で史上最高レベルの収益を上げているのだから、自社の社員や下請け業者に対して、その果実をきちんと分配すべきだ。
そうした取り組みこそが、真のCSR(企業の社会的責任)の在り方であろう。
とかく、CSRというと、社員を動員した地域のゴミ拾いや東南アジアでの植林活動みたいな下らぬゴッコ遊びをして自己満足する企業が多いが、給与の引き上げ・雇用の安定・下請けへの適正な支払いこそが、CSR活動の一丁目一番地だと言える。

また、行政府や立法府においても、働き方改革だ、下請け相談だと、機運盛り上げのための旗振りをするのは良いが、“口先介入”だけでカネを出さぬようではまったく無意味だ。

企業活動の現場、特に、中小企業の経営者の多くは、原材料価格や労働コストの上昇(といっても、時給を数十円上げる程度なのだが…)を商品価格に反映できず、収益縮小に悩んでいる。

こうした社会の末端にいる経済主体の苦悩をマクロレベルで払拭できるのは、政府による積極的な財政金融政策と適切な分配を実現させるための監視や規制の強化しかない

為政者の連中は、ICタグ普及の取り組みを、経産省やコンビニ各社に放り投げ、黙って眺めているだけじゃなく、普及後の影響を上手く社会が咀嚼できるよう、マクロ経済環境の整備に一刻も早く着手すべきだ。

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