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2017年4月 7日 (金)

金融緩和一本足打法の徒花

『アパートローン「プチバブル?」マイナス金利追い風で急増 増える空室…日銀など対策へ』(産経新聞 4/3)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170403-00000047-san-bus_all
「金融機関が貸家業向けに個人に融資するアパートローンが過熱気味で、「プチバブル」の様相を呈している。相続税対策とマイナス金利が背景にある。ただ、物件の供給が過剰になって空室が増え、賃料が下がる地域も出始めた。返済が滞ればローンは不良債権になりかねないことから、金融庁と日銀は対応に乗り出した。(中略)
投資用物件の増加を後押ししているのがアパートローンだ。日銀によると、平成28年12月末の国内銀行のアパートローン残高は前年比4・9%増の22兆1668億円に拡大している。27年の税制改正で、相続税の基礎控除額が引き下げられ、課税対象者が広がった。アパートを建てれば更地などより課税時の土地の評価額が2割下がることから、節税目的で借り入れる人が増えた。
 金融機関も、日銀のマイナス金利政策が収益の下押し圧力となる中、特に地方銀行が収益源として着目するようになった。アパートローンは競争が激しい住宅ローンに比べて高めの金利が見込めるためだ。(後略)」

金融緩和政策で行き場を失ったマネーが、アパートローン市場に大量に流れ込んでいる。
筆者も、知り合いの金融機関担当者に聞いたところ、特に、優良な法人融資先に乏しい地方の信金や信組が、ここ数年にわたりアパートローンの開拓に熱を入れているらしい。

公共事業の枯渇や水産資源の不良などの影響により、土木事業者や水産加工業者など地方の基幹産業が衰退する中で、信金や信組は有力な法人融資先がなく、融資先の開拓や融資残高の維持に苦慮している。

なにせ、うかうかしていると、約定弁済により毎月の融資残高は減る一方だから、各行とも融資残高の維持向上に必死にならざるを得ないが、まともに貸せる先がほとんど見当たらないのが実情だ。

地方の信金・信組の中には、預貸率が20~30%しかない機関もザラにあり、止むを得ず国債などの債券運用で糊口を凌いできたが、昨年のマイナス金利政策により運用利率がガクンと落ち込み、もはや、アパートローンくらいしか収益の柱が見当たらない。

このため、営業エリアを飛び越え、近隣の政令指定都市や中核都市に進出し、アパートローンの掘り起こしのための営業部隊に人を割いているようだ。

産経新聞の記事にあるように、金融機関のアパートローンはここ7年ほどでおよそ2.5兆円も増えている。

しかも、“当初固定10年型の貸出金利で1%を切る融資は当たり前”、“土地持ちの富裕層の資産を背景とした安易な融資判断が横行”といった状態ゆえに、「このままでは80年代の不動産バブルやリーマンショック前のプチバブルの二の舞いになる。泥沼に陥る前に手を打つべき」と、金融庁も警戒するコメントを発している。

また、民間借家の一坪当たりの家賃は2016年で8,633円と、9,000円を超えていた2004年辺りをピークに漸減傾向にあり、単身者の増加に伴い増え続けてきた賃貸物件も、地域によっては明らかに過剰感が出始めている。

こうした矛盾が顕在化したのが、次のニュースだろう。

『家賃減収、大家が提訴へ レオパレス21「10年不変」』(朝日新聞デジタル 2/22)
http://www.asahi.com/articles/ASK2P5HZ6K2PUTIL04V.html
「(前略)訴状などによると、男性は愛知県知多市に2階建てアパート(20戸)を建て、2005年1月に同社と月額77万7800円のサブリース契約を結んだ。同社は「30年間、賃料は減額しない」と説明。契約書では「賃料は当初10年間は不変」と明記されたが、経営難を理由に11年10月に約10万円の減額を求め、男性はやむなく受け入れた。だが業績の回復後も家賃は戻らないことから、男性は家賃の増額と、交渉を始めた16年7月からの差額約81万円の支払いを求めている。
一部オーナーで作るレオパレス・オーナー会(名古屋市)によると、同様に減額された会員100人以上も訴訟を検討。前田和彦代表は「倒産すると言われ、やむなく減額を受け入れた人がほとんど」と話す。(後略)」

大量のTVCMを打ちまくっているレオパレスのような大手事業者ですら、入居者集めに苦心するありさまだから、賃貸物件の供給過剰感は相当に高まってきているとみてよい。
このままでは、競合の激しい都心部や周辺地域を中心に、アパートローンの不良化によるプチバブル崩壊が懸念される。

量的緩和政策による異常なまでの低金利と、緊縮政策の継続による実体経済の需資不足により、金融機関は収益の確保に苦労している。

そんな中で、アパートローンは、一般の事業性融資と比べて事業性や担保性の面で与信リスクが低く、爆発的に増えたマネタリーベースの出口戦略として金融機関が縋りつきたくなる気持ちはよく解る。

しかし、みずほコーポレート銀行のレポートでは、
① 我が国の賃貸住宅市場は、今後 2030 年に向けて大きく縮小することが予想される
(2010 年 12.6 兆円→2030 年 8.8 兆円、▲30%)
② 特にファミリー向け(40 ㎡以上)賃貸住宅市場の縮小が著しい
(2010 年 8.8 兆円→2030 年 5.6 兆円、▲37%)
と、非常に厳しい見方をしている。
(https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/bizinfo/industry/sangyou/pdf/mif_121.pdf)

こうした指摘を踏まえると、最近のアパートローン戦争は明らかに常軌を逸しており、産経記事の指摘どおり、早晩行き詰まる可能性が高い。

これも“金融緩和一本足打法の徒花”と言えよう。

政府による積極的な財政拡大政策が打たれずに、せっかくの量的金融緩和政策が既発債の両替だけに終わってしまうようでは、この先も法人関連の資金需要が盛り上がるとは思えず、アパートローンバブルの崩壊は避けられまい。

「金融機関融資のアパートローンへの偏り→法人取引先の需資不足→成長期待不足→ビジネス機会不足→実体経済下の所得となるマネー不足→消極的&緊縮的な財政政策」といった具合に、結果から発生要因へと流れを遡及すれば、やるべき政策は必ず見えてくるはずだ。

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