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2017年5月 9日 (火)

リフレ派の雇用改善詐欺

世に蔓延る“雇用改善詐欺”は、識者やマスコミの喧伝も手伝って、なかなか根強いものがある。

例えば、新卒求職市場は、いまやバブル期を凌ぐ空前の売り手市場だと言われているが、地方の学生が上京する際の交通費が自腹だと聞いてひっくり返りそうになった。
筆者が就職した頃は、上京費用なんて人材を求める企業側の負担が当然で、一回の上京で数社まとめて面接を受け小遣い稼ぎをしていた猛者もザラにいた。

企業側が交通費も出さぬような今の求職市場の何処が“売り手市場”なのか?

さて、Yahooニュースなんかで求職市場のことが話題になると、そのコメント欄に否定的な意見が多く書き込まれるのが常だが、これに反発する識者もいる。

『「失業率改善は人口減少だから当然」は誤解だ~「アベノミクス」への評価をねじ曲げるな』
(東洋経済 5/8 村上尚己/マーケット・ストラテジスト)

リフレ派の一員で、生粋の安倍応援団でもある村上氏の主張は次のとおりだ。

①3%を下回るまでの失業率低下の主たる要因が、人口・働き手の減少であるというのは、まったくの誤解である

②失業率が4%を下回る水準まで低下した主たる要因は、アベノミクスが発動された2013年からの景気回復で新規雇用が生まれたことによる。

③アベノミクス発動後の4年間で就業者数は185万人増えている。民主党政権下で減少し続けた就業者数が、アベノミクス発動による景気刺激政策で一転して増えたことは明確だ。

④デフレと総需要の不足下において、景気刺激的な金融緩和、財政政策が適切かつ十分行われたとすれば経済成長率は高まり雇用が増えるのは当然だ。かつて雇用創出効果が十分でなかった原因は、金融緩和が不十分だったせいだ。

要は、「昨今の失業率低下は、金融緩和政策を発動したアベノミクスのおかげだ」と言いたいらしい。

まず、新規雇用が増えた云々と大騒ぎしているが、常用雇用者(除パート)のH29/3有効求人倍率は1.21倍と前々同月比(1.07倍)より上昇している。
しかし、全体の30%を占め、最も求職数の多い「一般事務職」の求人倍率は、たったの0.31倍でしかない。
しかも、給与条件も、30歳代で年収450万円くらいのものばかりで、たまに600万円を超えるようなものがあるかと思えば、「未経験者歓迎」、「みんなで達成感を味わう」といったブラック臭が漂ってくる。

地方のパート求人に目を転じると、これだけ人手不足が連呼される状況にも関わらず、肝心の時給は800円を切るものばかりで、時給1,500円はおろか、1,000円すら遥か彼方という状態だ。

リフレ派のような安倍信者は、働く者の実状を一顧だにせず、『雇用』のひとことですべての問題が片付いたかのように主張するが、雇用の質に言及しないのは、あまりにも乱暴な議論だろう。

また、村上氏は、“雇用指標の改善は、アベノミクス下で金融緩和と財政政策が適切かつ十分行われた結果だ”と主張するが、勘違いも甚だしい。

アベノミクスで実行されたのは「金融緩和政策」のみで、財政政策なんて、2012年度に行った13.1兆円の補正予算以降、ほとんど手つかずだ。

安倍政権発足から5年になるが、スタートダッシュの2012年度以降の当初予算は、過去最大規模と言われつつも、国債費を除く経常経費と政策経費ベースではほぼ横ばいだし、補正予算についても、水増し分の「事業規模ベース」を除くと、2012年度を一度も上回ったことがない。

つまり、当初予算(経常経費+政策経費ベース)と補正予算の合計ベースでは、十分どころか、緊縮ペースで推移してきたのが実情であり、“アベノミクスが財政政策に積極的だった”かのような大嘘は止めてもらいたい。

ここから、「雇用改善は大規模な金融緩和政策のおかげだ」と続くのがリフレ派の常套句だが、これほど関連性が薄く、いい加減な話はない。

企業が雇用増に踏み切るには、雇用する人件費を賄えるだけの収益確保が前提となり、国内市場か海外市場での売上や利益率の改善が絶対条件になるが、こうした決算状況の改善と金融緩和政策との関連性を合理的かつ実証的に説明できる文献なんて見たことがない。

金融緩和政策は、財政政策の効果を加速させる効果こそあるが、財出抜きの状態で、家計や企業の消費・投資行動を単独で刺激し続ける力はほぼゼロに近い。

金融緩和による円安効果も、輸入品の価格高騰を考慮すれば、マクロ単位での効果はほぼ相殺される。
同じく、低金利効果についても、大した効果を生んでいない。
法人融資の鈍化に苦しむ金融機関がアパートローン貸出競争に興じて日銀から注意を受けたり、商工中金が企業ぐるみで制度融資の不正事件を起こしたりしたのも、融資が伸び悩む実状なればこその話だ。

村上氏は、企業業績の改善と金融緩和政策との関連性を主張したがっているが、両者間の明確な関連性を実証的に証言できる経営者を連れて来てみろ、と言っておきたい。

また、昨今の新卒売り手市場も金融緩和政策のおかげだと主張する連中にも、
・雇用の活性化と金融緩和との明確な関連性を説明しろ
・雇用の口があるという低レベルな話ではなく、雇用条件そのものが、10~20年前と比較して、相当程度改善したのか、きちんと説明しろ
と言っておく。

売り手市場のはずの我が国の初任給は、だいたい20万円くらいだが、アメリカやオーストラリアは40万円を軽く超え、韓国ですら30万円、ブラジルでも22万円と日本を凌駕している。
因みに、スイスの新入社員の年収は1,100万円を超え、イギリスは500万円近くにもなるらしい。

日本人がアベノミクス程度の経済政策に高い評価を与え、“小さな幸せ”の上に胡坐をかいている隙に、他国はぐんぐん成長して日本を引き離しに掛かっている。

昨今、欧米からのインバウンドが増えているのも、日本文化に触れる云々よりも、彼らにとって、単純に日本の物価が安いからに過ぎない。
かつて、日本人が海外に買い物旅行に出かけた感覚で我が国を訪れる外国人の目には、“日本は物価の安い後進国”としか映っていない。

村上氏の“茹で蛙論法”に引っ掛かる国民も多いと思うが、自身の生活実感を信用して、中途半端なアベノミクスに厳しい目を向けるべきだ。

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