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2017年5月17日 (水)

既得権益者に変革を期待する愚

先のフランス大統領選で勝利したマクロン氏が、今月14日、正式に大統領に就任し、新自由主義者が大好きな新聞各紙から大きな賛辞が送られている。
(仮にルペン氏が勝利していたなら、トランプ氏の時と同様、誹謗中傷記事で埋め尽くされていたに違いない)

とある新聞を眺めていると、マクロン氏が齢39歳という異例の若さであること、大統領職に就任する以前にビジネスで輝かしい成功を収めていることなどを意識して、各界で活躍する若きリーダー(自称)による同氏に対する共感の声を紹介する記事があった。

〈医療法人理事長/39歳〉
「政治経験がなければ、大統領になれないという既成概念を壊した」
〈メガバンク支店長/36歳〉
「(30代という年齢は)自分たちの将来に責任を持てる世代。課題を先送りせずに取り組むはず」
〈大学教授/42歳〉
「既成政治への不満から議員経験がないマクロン氏が支持された」
等々、若さ(だけ)が売り物の新大統領に期待の声を寄せている。

この手のリーダー気取りの人種は、えてして、経歴の華やかさの割に小学生並みの対人観察力しか持っていない。

まず、マクロン氏に政治経験が無いというのは初歩的な認識ミスで、彼は、議員経験こそないが、オランド政権時に経済相という重責を担っており、人並み以上に立派な政治経験を有している。

本当の意味で“政治経験が無い大統領”という表現は、トランプ米大統領のような人物に用いるべきだろう。

また、マクロン氏に「課題を先送りしないこと」を期待するのは、泥棒に警察官役を期待するようなものだ。
“課題”を撒き散らしてきた張本人に、その解決を期待するほどアテにならぬことはない。

フランス社会は次のような課題を抱えている。
①高い失業率…EUの平均(8%)を上回る約10%の失業率。特に、24歳以下の若者の失業率は23.6%と、ほぼ4人に1人が無職の状態
②高い税負担…社会保障費捻出のための付加価値税率は19.5%(品目により税率に差異あり)
③移民や難民問題…人口の10%を超える700万人近い移民(中東系・アフリカ系・東欧系など) が惹き起こす犯罪や失業の増加、福祉の圧迫
④EU・ユーロの呪縛…マーストリヒト条約による財政政策の縛り、ユーロによる金融政策の縛り

こうした諸問題を世に蔓延させたのは、他でもない新自由主義者の連中であり、マクロン氏もその先導役の一端を担ってきた。

新自由主義者の連中にとって、これらは“問題や課題”ですらなく、強い者がより勝ち残りやすくなる“シード権社会”という理想郷を実現するための重要なファクターでしかないから、彼らに課題解決を期待すること自体がナンセンスなのだ。

フランス社会に山積する諸問題こそ、新自由主義者の既得権益を強固にガードするための参入障壁であり、だからこそ、こうした諸問題の解決に正面から取り組もうとするルペン氏のような人材は、「過激な排外主義者」のレッテルを貼られて徹底的に排除しようとするのだろう。

彼らは、硬直的な労働規制や企業の社会保障費負担の重さこそ問題の原因だと主張し、移民流入制限やEU・ユーロからの離脱はヨーロッパの平和と協調を阻害するという大義を持ち出して反対するのが常だ。

だが、労働規制云々だけでなく移民受入れにつても、労働コストの圧縮にしか興味が無い企業サイドの我儘に過ぎないし、EUやユーロの問題は、自国民の所得や雇用を蔑ろにし、生活安寧を犠牲にして、腹の足しにもならぬ大義を貪ろうとする雲上人のエゴとしか言えない。

先に紹介したマクロン氏への賛辞にも、「既成政治への不満から議員経験がないマクロン氏が支持された」なる妄言があったが、フランス国民が不満を募らせた“既成政治”に巣食う既得権益者こそ、マクロン氏をはじめとする新自由主義者の連中なのだ。

このように、世間的に“若きリーダー”とか“識者”と呼ばれる連中の観察眼や洞察力など知れたもので、大したことはない。
そこいらにいるオバちゃん連中とほとんどレベルの差はない。

新聞やマスコミの評価につられて、政治家や著名人を評価し、その背景を深く探ろうとする意思も力もない。

識者層がこんな体たらくだから、マクロン氏みたいに、自らがやらかした失敗を他人のせいにし、その失敗を解決するフリをして失敗から甘い蜜を吸い続ける“マッチポンプ型の政治家”が跋扈することになるのだ。

新自由主義という既得権益に巣食う旧来型の政治家を革新的なリーダーだと持ち上げて迎い入れたフランスは、間違いなく周回遅れの国家運営を余儀なくされるだろう。

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コメント

移民を出鱈目に入れていたら、社会保障費負担は膨大なものになって当然です。移民1世はともかく、2世以降は低所得労働を嫌がりますから、それで企業は出鱈目でも移民を入れ続けたいのです。

企業は自分の不始末を労働者に押し付けず、自分で始末すれば良いことです。それを多文化共生により、国全体に恩恵あるとかいって、誤魔化すことは許されません。

≫千手観音さん

仰るとおりで、労働者をコスト換算することしかできぬ経営者なんて、海外に放逐すべきです。

社員の給料の高さを誇りに思うような経営者、平均年収の高さ=経営者としての評価という発想に変わって欲しいものです。

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