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2017年5月23日 (火)

経産省若手官僚の着想力が中二病レベルだという現実

経産省若手官僚による省内プロジェクト「次官・若手プロジェクト」が作成した提言ペーパーが、最近、ネットでちょっとした話題になっている。

資料は『不安な個人、立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~』と銘打たれ、ネットで公開されている。
【参照先】http://www.meti.go.jp/committee/summary/eic0009/pdf/020_02_00.pdf

資料の冒頭には、
・昨年8月、本プロジェクトに参画する者を省内公募。20代、30代の若手30人で構成。
メンバーは担当業務を行いつつ、本プロジェクトに参画。
・国内外の社会構造の変化を把握するとともに、中長期的な政策の軸となる考え方を検討し、世の中に広く問いかけることを目指すプロジェクト。
・国内外の有識者ヒア、文献調査に加え、2つの定期的な意見交換の場を設定。
と、プロジェクトの趣旨が明記されている。

ペーパーに目を通したうえで、筆者の結論を先に言わせてもらうと、“いかにも、経産省若手官僚が作りそうな、旧来型の新自由主義者的発想に染まった幼稚かつ発展性ゼロの学級壁新聞レベル”でしかない。

「改革・規制緩和・民尊官卑・グローバル化・緊縮主義」が大好物の経産省若手官僚のことだから、資料の中身を読まずとも、その結論の行く先はおおよそ見当がつくが、“若手”というハンディを考慮しても、彼らの問題意識と解決策に関する着想の低レベルさに改めてがっかりさせられた。

だが、ネット上では、この程度のペーパーがおおむね好意的に受け止められており、
「ざっと読んだが問題意識の高さに驚く。これを具体的に解決していく方策を迅速に取れば日本は今よりも良くなると感じた。」
「いつまでも既得権益にしがみつく老害ジジィ達に負けないで欲しい。じゃないとホントにこの国の未来はないです。」
等々、手放しで褒める意見も散見されることに、さらに憂鬱な気分になる。

件の資料の問題点をいくつか列記してみる。

【ヒアリング対象の偏り】
資料の冒頭に明記されているとおり、作成に当たり国内外の有識者へのヒアリングや意見交換会を行ったとある。

だが、その対象は大学教授や起業家といった功成り名を遂げた“名士”ばかりで、この手の人種は、日本が抱える問題点に対する感度が得てして鈍い。

【問題意識のスケールの小ささ】
彼らが資料の中で焦点を当てているのは、『高齢者の医療と雇用、母子家庭の貧困、教育格差、若者の社会貢献、ネット情報の取り扱い、教育投資、公的サービス民営化』に偏っており、そうした諸問題の根幹を支える『経済政策や国民所得の向上、適切な貿易体制、国内産業の保護育成、通貨政策、外交防衛、公共インフラの維持更新、雇用の質の改善、食糧エネルギー政策』といった重要なイシューを見事にスルーしている。

そして、「一律に年齢で「高齢者=弱者」とみなす社会保障をやめ、働ける限り貢献する社会へ」と尤もらしいセリフを吐き、社会保障の梯子を外し、年金や医療費の削減を正当化しようとしている。

正直言って、高齢者層が過度に保護されているという思い込みや妬みからくる“高齢者へのルサンチマン”に基づく、性質の悪い憂さ晴らしとしか思えない。

厚労省の資料によると、高齢者世帯の年間平均所得(平成25年)は300.5万円、世帯人員一人当たりで192.8万円と、全世帯平均(205.3万円)との間に大きな差はみられず、高齢者層が特段贅沢をしているわけじゃない。
また、高齢者世帯の貯蓄は全世帯平均の1.4倍とされているが、病気や介護への備えもあろうし、長年働いて得た所得が積みあがったものと考えれば、この程度は当然だろう。

また、資料の中で、「シルバー民主主義の下で高齢者に関する予算は当然のように増額される一方」なんて聞き捨てならぬ記述があったが、少なくとも平成12年年以降、高齢者一人当たりの社会保障費(年金・医療・介護)は、これっぽっちも増えていない。
社会保障費総額こそ増えているが、これは高齢者人口増加に伴う自然増によるものであり、世界に冠たる先進国たる我が国の国民として、当然享受して然るべき最低限の保障だろう。

また、1981~2008年までの一人当たりの実質GDPと生活満足度のデータを持ち出して、「約30年で一人あたりGDPは2倍近く伸びたにもかかわらず、生活満足度は横ばい」だから「一人当たりGDPが伸びても、かつてのように個人は幸せにならない」はずだと勝手に結論付けているが、事実誤認も甚だしい。

だいたい、時間軸を30年も取るのは長すぎるし、生活実態に近い名目GDPの成長率で比較すると、1995~2015年の20年間で僅か1.02倍、2005~2015年の10年間で1.01倍とほとんど増えていない。

10~20年もかけて所得が伸びないのだから、人々の生活満足度が上がらないのも当然であり、個々人の幸福度が上がらない最大の原因は、『GDP(所得)が増えないこと』に他ならない。

【結論の幼稚さ&安易さ】
資料の末尾に、彼らの結論が3点にまとめられている。

①一律に年齢で「高齢者=弱者」とみなす社会保障をやめ、働ける限り貢献する社会へ
⇒年金支給開始年齢を引き上げられるよう、働ける高齢者をもっと働かせろ!

②子どもや教育への投資を財政における最優先課題に
~もはや特定の成功モデルは作れない。今ある大企業も、いつ無くなるか判らないから、変化に対応できる人材(=自由放任主義のシード権社会に文句を言わない奴隷)が育つよう教育(=洗脳)しろ!

③「公」の課題を全て官が担うのではなく、意欲と能力ある個人が担い手に
~財源不足の中、旧来型の財政政策をやっても官業の肥大化を招くだけ。“民活”の美名を利用して、公的サービスや公共事業の負担を民間に押し付けろ!

彼らの主張をまとめると、
・高齢者みたいなカネ喰い虫のお荷物を養うのは面倒だから、もっと働かせろよ。
・グローバル人材の教育には興味あるけど、国内に雇用の場を創る気なんてないから、卒業後はテキトーに海外にでも行ってもらおうか。そっちの方がカッコイイじゃん。
・官主導で国家を引っ張る気概なんてないから、面倒な仕事は民間に丸投げしろ。その方が、国民受けも良さそうだし。
といったところか。

要するに、「国家は、もう国民の生活の面倒を見る気なんてないから、各々勝手にやろうよ。そのためには、既存のセーフティネットを壊して、国民の甘えの根を断つべきだよね。いっそのこと、シンガポールみたいにグローバル人材だらけの国にしちゃえばいいじゃね?」くらいの軽いノリなのだ。

若手官僚の連中は、「(日本は)人類がこれまで経験したことのない変化に直面し、 個人の生き方や価値観も 急速に変化しつつあるにもかかわらず、 日本の社会システムはちっとも変化できていない。 (略)なぜ日本は、大きな発想の転換や思い切った選択が できないままなのだろうか。」と偉そうに嘆いているが、変化を頑なに拒み、大胆な発想の転換や選択が出来ていないのは、当の官僚たち自身であろう。

彼らの問題意識や課題の捉え方は極めて表面的であり、まったく深掘りがなされていない。

さらに、その提言内容は、2000年代以降に蔓延した旧来型の新自由主義的価値観、端的に言えば、『結果を出せないポンコツ経典』に隷属し、そこから一歩も抜け出せていない。

経産省若手官僚による低レベルな“学級壁新聞”の最大の欠陥は、発想のスケールが、我が国の人口1億2千万人分を定員とする仕様になっていない点にある。

国民を誰一人置き去りにせず、国際情勢や経済環境の変化がもたらす荒波を緩和できる大型タンカーを造ろうとするのではなく、船の揺れに耐えられる人材だけが生き残ればよい。

つまり、国民全員を収容できる大型船ではなく、ごく一握りの高度人材や富裕層が快適に過ごせる高級クルーザーこそ必要だという発想なのだ。

国家の経済政策や産業政策の根幹を握る経産省若手官僚の着想力が中学生レベルであること、それを手放しで褒める識者や国民が多数存在することに暗澹たる思いがする。

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