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2017年6月19日 (月)

経済の本質を知らぬ観念論者

『2018年以降、「世界同時不況」が始まる理由 バブル崩壊の「引き金」はどこが弾くのか』
(6/12東洋経済ONLINE 中原 圭介/経営コンサルタント・経済アナリスト)
http://toyokeizai.net/articles/-/175234

経済の本質を知りもせずに経済学者や経済アナリストを称する者(シロウト経済本を自費出版する“エセ教諭”も含めて)は数多いる。

貨幣という媒体を介して、経済主体間で行われる生産活動や消費活動を通じたモノやサービスの間断なき移動の永続的な拡大こそが「経済」であり、モノやサービスの受領により個々の経済主体は物質的あるいは精神的な満足を得ることになる。
そして、経済活動を円滑拡大させるために欠かせないのが、個々の経済主体に配分される所得としての貨幣の膨張である。

こうした本質や実態を踏まえずに、いくら、きれいごとや観念論を並べ立てて経済を論じても、永久に適切な回答に辿り着くことはできない。

上記コラムの中原氏は、観念論で経済を騙ろうとする軽輩者の典型で、その提言は、何の具体性も無い『努力・根性・我慢』だらけの精神論に終始している。

中原氏の主張を要約すると次のようになる。

①2008年のリーマンショック後の世界的な金融緩和の弊害で、先進国・新興国を問わず、世界中の国々で債務が膨張し過ぎており、2020年までに世界経済に激震が走る懸念がある。

②FRBの総資産規模はGDP比で20%超に、ECBは30%近くにまで膨張し、歴史的に見ても高水準だ。日銀のそれは90%を超えており、このまま出口戦略を迎えると、保有国債の評価損が顕在化する。量的緩和政策の副作用で市場に出回る国債が減少しており、2020年頃までに、日銀が市場から国債を買えなくなる恐れがある。「金融緩和はコストのかからない政策」というのはまったくの幻想だ。

③新興20カ国や地域企業の債務総額は、2008年末の9兆ドルから2016年3月末には25兆ドルへと3倍近い水準に増えているが、同じ期間にこれらの国・地域の名目GDPは1.5倍しか増えておらず、債務の増加率は異常で、非常に非効率な経済構造だ。このままでは、通貨危機やバブル崩壊の再来が懸念される。

④世界各国で金融緩和の限界が指摘される一方、政治の世界では財政出動を声高に唱える人が増えている。各国で債務増加が重荷となっているのに、景気浮揚のために財出を増やそうという発想は、目先のことしか考えていない愚策だ。国家も企業も債務は地道に返済するしかない。「国家の財政再建と景気拡大の両立」なんて、過去数百年の資本主義経済では起こり得なかった。

⑤日本で若い世代を中心に消費が増えないのは、国民が国の社会保障制度を信用せず、いずれ行き詰まるだろうと考えて、老後のために貯蓄を増やす傾向を強めているからだ。財政再建を実行しなければ、将来の景気回復はあり得ない。長い時間が掛かるかもしれないが、構造改革と成長戦略、歳出削減のみが景気回復に有効な政策だ。

先ず、①③の世界各国で債務が膨張している割にGDPの伸びが鈍いという中原氏の指摘に異論はない。

ここ20~30年というもの、先進諸国の政官界のリーダーは新自由主義者だらけとなってしまい、利権や政治的介入の余地が少ない金融政策が重宝され、緊縮財政の強行により実体経済に投じられる“所得に変換できる資金”の供給量が減らされ、消費や投資活動の動きにブレーキが掛かってしまった。

金融政策偏重気味の経済構造下で、すっかり低成長体質が染みついた先進国では、投融資向けの資金需要が冷え込み、運用先探しに困った余剰資金が新興国になだれ込んだが、そこでも満足に成長を実現できていないということだろう。

一般的に、投じられた負債(借入)や資本(出資)の量と、収益や所得(GDP)の増加率との間でアンバランスが起きるのは、負債と消費活動(売上や所得)との変換効率が悪すぎる所為である。
平たく言えば、多額の借金を調達して始めた事業が、期待をかなり下回る売上や収益しか得られなかったということだ。

そして、マクロ単位で見て、売上や収益が期待以下だったということは、その国の実体経済が低体温症を発症し、経済主体の消費意欲がネガティブになっていると言うほかない。
つまり、先進国のみならず、新興諸国でも緊縮政策や極端な富の偏在、過度な通貨安による低成長病に罹患しているのではないか。

続く②の日銀のバランスシート棄損や市場の国債枯渇問題は、経済シバキ上げ論に固執し、金融政策すら“甘えの構造”を生む愚策として排除しようとする中原氏の意図的な杞憂や誤解でしかない。

日銀の平成28年度末の総資産規模は490兆円と前年度比で85兆円、うち国債分で68兆円増えており、『円の源泉や化身』たる日銀のB/Sをやたらと気にしたがる緊縮病患者どもから、出口戦略(国債売却)時の金利高騰により多額の評価損が生じると強い非難を浴びている。

論壇には日銀保有国債は永久国債化すべきとの議論もあり、筆者もそれに賛同するが、そもそも、出口戦略の必要性自体がさっぱり理解できない。

不況の出口はまったく見通せず、市中の資金需要もほとんど盛り上がっていない現状で、日銀が保有国債を売却して金融引き締め策を講じなければならない理由も必要性もまったく無いし、評価損が気になる(そもそも、円の発行主体である日銀の財務を気にすること自体がどうかしてるのだが…)なら、満期保有すれば済む話だ。

また、国債枯渇問題も非常にバカげた話で、市場に国債が不足しているなら、政府が積極財政に舵を切り、新発債を市場に投じてやればよいだけだ。
現状行われている、既発債と日銀当座預金との両替業務で、「両替用の国債が足りません(´;ω;`)」ビビっている暇があるなら、政府から国債を引っ張り出して来い、と言っておく。

金融政策の出口論者たちは、出口戦略の必要性を論理的に説明できていない。
彼らは、財政規律を弛緩させかねない金融政策が邪魔になり、感情的かつ観念的に出口戦略を急いでいるだけなのだ。

最後の④⑤に、中原氏の本音がはっきりと表れている。

要は、改革ごっこや戦略ごっこをしたい観念主義者が、理想社会の邪魔になる財政金融政策を排除したいと言うだけの話なのだ。

氏は、「国家の財政再建と景気拡大の両立」なんて、過去数百年の資本主義経済では起こり得なかったと大嘘をついているが、高度成長期やバブル期の日本だけでなく、クリントン政権期のアメリカなど、景気拡大が自律的に国家財政を改善させた事例は豊富にある。

また、若者の消費不振を社会保障への不信感のせいにするインチキ論も聞き飽きた。

いったい何処の世界に、遠い将来の年金額を気にして、今日の昼飯をケチる若者がいると言うのか?

若者が消費に消極的にならざるを得ないのは、日用品や食料品が値上がりする中で、自分の収入が増えないからに過ぎない。
どうしても納得できない(したくない)なら、その辺に歩いている若者を捕まえて実際に話を聞いてみれば、たちどころに判るだろう。

中原氏おススメの「構造改革・成長戦略・歳出削減」の景気回復三点セットは、何れも病原性大腸菌入りの危険な政策で、景気回復どころか、“体調不良→即入院コース”必至の毒薬でしかない。

氏のように、“財政再建と改革の理想と信念を以ってすれば景気は必ず回復する”と思い込んでいる観念論者は、経済を動かすには何が必要か、景気が回復するとはどういった状況か、という定義が曖昧で、その提言には何の具体性も無い。
理想を掲げて祈れば物事が解決すると信じる幼稚なバカ者である。

重篤状態の日本経済に必要なのは、くだらぬ理想を掲げて国民に無駄な我慢を強いることではなく、実体経済を回転させるための実弾(所得となるおカネ)をふんだんに、かつ、遍く広く行き渡らせることだ。

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