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2017年6月13日 (火)

金融機関を脅しても、問題は解決しない

『金融庁、地銀の債券保有に新規制 金利変動に備え』(日経新聞電子版 6/8)
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO17441650Y7A600C1MM8000/
「金融庁は地方銀行などに債券の金利変動に備える新規制を2019年3月期から導入する。保有する国債や外債の金利変動リスクを厳しく見積もり、損失を吸収できる自己資本の20%以内に収めさせる。債券による運用への依存度を下げ、地元の融資企業の開拓やベンチャー企業の育成といった事業に注力するよう促す。(略)」

今回の規制の動きを受けて、「地銀やメガバンクによる国債買い増しにストップがかかり、国債がリスク資産化する。このままでは財政破綻が現実化してしまう‼」と怯える臆病者のバカもいるが、為替リスクを内包する外債ならともかく、本来ならリスクゼロの国債を、わざわざリスク化させようという愚かな規制を止めればよいだけの話だ。

金融緩和政策の邪魔にしかならないバーゼル規制を唯々諾々と受け容れること自体が間違っており、自らの手足を縛り、金融政策に足枷を嵌めようとする愚かな行為に手を出してはいけない。

上記記事にある金融庁の新規制には、2018年度から始まるバーゼル規制(銀行が過度な金利変動リスクを抱えるのを防ぐ目的で、6パターンの金利変動ごとに円建てなら上下1%、米ドル建てなら同2%の変動を想定し、最大のリスク量を中核的自己資本の15%以内に収めるよう求めるもの)を先取りするというお題目がある。

だが、規制の狙いは、金融機関による企業向け融資の増加にあり、4年にもわたる量的金融緩和やマイナス金利政策の成果が一向に出ないことに業を煮やした政官サイドによる金融機関への八つ当たりでしかない。

経済シロウトだらけの政権首脳部や経済財政系官僚の連中に限って、企業融資が伸びない原因を金融機関の貸し渋りのせいにしたがるが、現実がまったく見えていない。

経産省の「中小企業景況調査」や日本政策金融公の「全国中小企業動向調査」によると、企業にとっての借入難易度を示す借入DIは、いずれも、ボトムの2008年~2017年にかけて一貫して改善しており、いまだマイナス値を示しながらも、右肩上がりの曲線を描いている。
(経産省データ▲15→▲1.7、日本公庫データ▲28.1→▲5.6)

さらに、金融機関からみた貸出態度DIも、リーマンショック期に▲20程度であった値が、2011年頃からプラス値を超え、ここ数年は、中小企業でも+10を超えており、金融機関が貸し渋りしているなんていう政府や官僚のやっかみは、まったくの大嘘だ。

業績が極度に悪化した企業や、業態のいかがわしい企業は別として、金融機関が融資に消極的になる理由なんてない。
融資が伸びない真因は、業績の先行きが読めない企業サイドが借入に消極的になっているからにほかならない。

金融機関の現場では、いずこも支店レベルに厳しい融資先開拓のノルマを課され、担当者はノイローゼ気味になっているのが実情だ。
営業担当者がいくら企業回りに精を出しても、取引先がカネを借りてくれないから、仕方なくアパートローンの開拓に活路を見出さざるを得ず、それを証拠に、2016年の銀行・信用金庫による不動産融資は対前年比15・2%増とバブル期並みとなり、金融庁が規制を検討しているほどに膨れ上がっているではないか。

企業が借入に慎重になっている姿勢は、データにもはっきり表れている。

中小企業庁の資料から、中小企業の借入金依存度(金融機関借入÷総資産)の推移を見ると、1993年の46.2%から2014年には29.8%にまでかなりの勢いで低下している。
よく“日本の企業は直接金融(資本金)よりも間接金融(借入)頼みだ”なんて言われてきたが、そうした常識が覆されつつある。

企業の借入依存度低下と並行して無借金経営企業の割合も増えており、中小企業のうち無借金の企業割合は1983年頃に17.2%に過ぎなかったのが、2014年には35.4%にまで倍増している。

この数値は筆者の実感を遥かに凌駕するもので、これほど多くの企業が無借金経営を続けているのかと驚いている。

さらに、中小企業の設備投資の推移(1993年=100とした指数)を見ると、製造業・非製造業ともに、1995年、1999年、2002年辺りに三度のボトム期があり60程度まで低下し、その後2007年頃に一旦110まで上昇したものの、以後は長期間の低迷期を迎え、2015年には80程度に止まっている。

これだけ企業サイドが借金恐怖症や借金忌避症に陥っている以上、いくら金融機関が血眼になっても、融資が簡単に増える訳がない。
バブル期には100%を軽く超えていた預貸率(融資残高÷預金残高)も、現在では、地銀で70%、信金で50%ほどでしかなく、メガバンクですら60%を切るほどの惨状なのだ。

金融機関が融資に積極的になっているにもかかわらず企業が借入を増やさぬ理由は非常に簡単かつシンプルで、「業績が思わしくなく、将来の見通しも立てづらいから」に過ぎない。
そして、企業の業績見通しに暗雲をもたらす真犯人は、20年以上にも及ぶ緊縮財政主義に基づく経済失政がもたらした内需の不振である。

だが、経済政策の舵を握る政権首脳部や与党幹部、官僚、日銀の連中だけでなく、野党やマスコミ、財界等々、周囲を固める階層も、新自由主義者や緊縮主義者の亡者の集団と化しており、経済失政や需要不足を決して認めようとはしない。

彼らが、つまらぬ規制を振りかざして金融機関を追い立てても、肝心の需要サイド(=貸出を望む企業)が融資を望まぬ以上、事態が改善するはずがない。
国債や外債規制のプレッシャーは、金融機関を無理な追い貸しに走らせ、不良債権の悪夢が再来することになりかねない。

政府や関係官庁は、自らの経済失政を金融機関にツケ回しするような悪足掻きを止め、企業サイドの資金需要を自然に刺激する健全な政策(=積極的な財政金融政策)をきちんと打つべきだ。

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