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2017年6月 9日 (金)

シングルタスク固執症

世の中にはマルチタスクで政策を走らせるのを嫌う人種が意外と多く、何かと“Aか、Bか”の二項対立論に持って行きたがる。

この手の“シングルタスク固執症患者”は、何事につけ「権利・義務」、「資産・負債」、「債権・債務」のような相殺関係に置きたがり、“何かを成すには、別の何かを諦めるしかない”と頑なに信じ込んでいる。

“損と得”が行儀よく交互に訪れてくれるならよいが、長すぎる不況に苦しめられてきた家計の感覚は、『損→損→損→損→得→損→損→損』くらいの印象だろう。
『損→得→損→得』ならまだしも、これだけ損が続いたのだから、せめてもの穴埋めに“得の三連発”くらい期待しても罪にはなるまい。

だが、世の知識人と言われる階層の人間ほど、「得の連続=フリーランチ論」といったレッテルを貼り、積もり積もった損失解消の邪魔をしようとする。

『ブレグマン×パックン「“ベーシックインカム”は人を幸せにするか?」 福祉はいらない? お金を直接与えればよい?』(BLOGOS 文春オンライン 6/7)
http://blogos.com/article/227359/
「〈パックン〉『隷属なき道』、熟読しました。分かりやすく、面白くてあっという間に最後まで読んでしまいました。その中であなたは、私たちが直面している最大の問題は、人間がAIとロボットとの競争に負けつつあること、その結果として貧富の格差は有史上、もっとも広がることだと指摘していますね。またそれに対する処方箋は人々に「ただでお金を配ること」、ユニバーサル・ベーシックインカムだ、と。

〈ブレグマン〉ユニバーサル・ベーシックインカムは生活保護や母子家庭手当、就学援助、など幾多ある福祉プログラムをすべてやめて、政府がすべての国民に最低限の生活を送るのに必要とされている額の現金を無条件で定期的に支給する、というアイデアです。トマス・モアが1516年刊行の『ユートピア』で似たような考えを提唱するなど、何百年も前から多くの思想家らに支持されてきています。フリーマネーはすべての人に好意としてではなく、生きている限り、権利として与えられるもので、その使い方は自由です。(略)」

ルトガー・ブレグマン氏は、“ピケティにつぐ欧州の新たな知性”と称される気鋭のオランダ人ジャーナリストで、著書『隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働』では、「人間がAIとロボットとの競争に負けつつあること」こそ人類が直面する最大の問題だと訴え、「ベーシックインカム」「週15時間労働」「国境の開放」といった解決策を提案しているらしい。

彼は、対談の中で、
「貧困は個人の生活態度や性格の問題だと捉えられがちですが、そうではありません。貧困の問題はずばり、「お金が無いこと」、「現金の欠如」なのです」、
「ベーシックインカムは社会にとってコストではなく、投資」、
「社会において最も貴重な財産は「人」です。にも関わらず、これほど恵まれた社会で、大勢のホームレスや生活困窮者が存在していることは異様です」、
「「空飛ぶ車」「火星に行く」、そんな面白いことが“ベーシックインカム”導入で実現するかもしれない」
といった趣旨の発言をしており、この点に関しては筆者も同意する。

だが、ブレグマン氏の発言の中で、
・人間がAIやロボットとの競争に負けたことが、貧富の差拡大の原因だと勘違いしてる点
・ベーシックインカム導入と引き換えに、生活保護や母子家庭手当、就学援助などの社会福祉プログラムをすべてやめるべきと主張する点
は、正直言って気に喰わない。

先ず、貧富の差の拡大(=先進国における低中間層の没落)が起きたのは、AIやロボットとの競合によるものではなく、暴力的な規制緩和により資本・資金・人の移動を自由化させたことによる奴隷(=異常に労働コストの安い途上国の労働者)との勝ち目にない競争を強いられたことが原因だ。

また、ベーシックインカムの目的は社会保障や福祉制度の簡素化やフラット化ではないのだから、社会保障制度の廃止をベーシックインカム導入の条件にしてはならない。

こうした悪手が、ベーシックインカムは国民から社会福祉を取り上げる冷酷な制度だという誤解と反発を生み、低中間層の生活力底上げという制度の目的や根幹を歪め、その有意性をスポイルしてしまう。

ベーシックインカムという発想は、
❶財源の確保
❷勤労意欲の喪失
❸国からの支給金を当てにした所得減らしの横行
❹社会保障の消滅やフラット化に対する懸念
といった側面から、とかく強い批判を浴びがちな制度であり、我が国における実現可能性は、無税国家と同様に、極めてゼロに近い。
それどころか、マイナス100%と断言できるくらいあり得ない制度だろう。

筆者は、
・ベーシックインカムの財源は国債の日銀直受けと政府紙幣の活用により捻出し、増税や社保料増額といった国民負担を求めぬこと。
・既存の社会保障制度や福祉プログラムとの併存を前提とし、それらを排除しないこと。
を前提条件に、ベーシックインカムに賛成するもので、すでに何度か自ブログや進撃の庶民のコラムで論じている。

筆者なりのベーシックインカム活用法は、家計にとって重い住宅費用軽減のために一人当たり月額3~4万円を支給し、さらに、社会保険料の家計や企業負担割合を現行の半分以下に抑えて実収入増額と企業の雇用コスト削減を図るというものだ。

これは、「重労働&安月給」のブラック労働に苦しめられる家計を、収入面から支援するとともに、家計が消費に廻せる原資の拡大を図り、内需振興を通じてゾンビ企業を含めた国内産業の振興を目指すことを目的とするもので、とかく供給サイドや生産性に心を奪われがちな日本人の思考や深層心理に進路変更を促し、消費や需要サイドにも関心を向けさせたいと考えている。

我が国の国富たる供給力を永続的に維持増強して行くためには、その養分となる需要サイドの強化が絶対条件になるという事実を、多くの国民に実感させておく必要がある。

最後に、先に例示したベーシックインカムに対する諸々の批判については、次のように答えておく。
①高度な供給力を有し、過度なデフレに悩む我が国において財源の心配は無用。法改正による日銀直受けと政府紙幣発行で事足りる。過度なインフレにでもなれば、支給額を調整すればよい。
②世界有数のワーカホリック大国である我が国で、勤労意欲の喪失など心配ご無用。働く必要もない年金暮らしの老害が、若者を押しのけてでも働きたがる現実を見ればよい。日本やアメリカで行った「高額賞金の宝くじに当選したら、あなたは仕事を辞めますか?」との調査で、大半が「仕事を続ける」と回答している。筆者には理解しがたいが、仕事を通じて社会とのつながりを維持し、社会的地位を確認したがる人種は意外と多いものだ。
③ベーシックインカム分の給料を削減することを固く禁じる法律をつくり、厳重に取り締まればよい。社会に必要な法をつくるのが立法府の仕事で、それをきちんと運用するのが行政府の仕事である。
④ベーシックインカムと既存の社会保障制度をトレード・オフの関係に置くこと自体がナンセンスで、両制度は当然併存させるべき。ベーシックインカムを社会保障制度をフラット化させる道具としか見ていない連中は、ただのジャンクか、ニセ論者である。

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