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2017年7月31日 (月)

シロウト社説の戯言

『物価2%目標、好循環伴う実現目指せ』(7/21 日経社説)
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO19079590Q7A720C1EA1000/
「日銀が、消費者物価の上昇率が安定的に2%に達する時期を、従来の予想から1年先送りして「2019年度ごろ」とすることを決めた。収益が好調な企業が賃金を引き上げ、それが個人消費の拡大につながり、物価も上がるという好循環の実現に政府・日銀は粘り強く取り組む必要がある。
 黒田東彦日銀総裁が2013年4月にいわゆる異次元緩和を始めてから物価安定目標の達成時期を先送りするのはこれで6回目になる。(略)」

日銀首脳部やリフレ派の“物価目標やるやる詐欺”も6回目ともなると、もはや、失笑や侮蔑を通り越して同情を禁じ得ない。
経済成長や分配に興味のない安倍首相の威光に縋り、金融緩和政策やマイナス金利という片肺飛行に固執して「物価目標」という蜃気楼を追い続ける彼らの姿には憐憫の情さえ湧いてくる。

一方で、日銀のノルマ未達に業を煮やした論者やマスコミから、金融緩和政策の出口戦略を求める声が日に日に高まっている。
米連邦準備理事会に続き欧州中央銀行も量的緩和策の出口を探り始めたとの観測が強まるにつけ、財政政策はおろか金融緩和政策すら「経済構造の贅肉」呼ばわりしたがる緊縮脳な連中は、ここぞとばかりに金融政策の失敗を攻撃し、早期の出口戦略着手を求め始めた。

金融緩和政策の是非に関しては、過去のエントリーでも散々指摘してきたが、
・金融緩和政策は経済成長のサポート役として欠かせない
・意味不明だった日銀券ルールを破棄し、日銀が大量の国債保有を通じて政府債務を実質無効化した功績は大きい
・市場金利の低位安定化に一定の効果は認められる
・ただし、財政政策の本格的な実施がなされぬ限り、金融政策がその真価を発揮することはできない
というのが筆者の意見だ。

特に、経済停滞が長引き、アベノミクスとやらの果実を受け取れるものがほんの僅かしかいない状態で、景気回復へのサポート役を務める金融緩和政策をベンチに引っ込めるなんて、意図的な敗戦を目論む敗退行為としか言えない。

現時点での性急な出口戦略の方針転換は、予期せぬ為替や金利の変動を招くだけでなく、歳出改革の旗印を掲げて緊縮政策に前のめりになっている政府や財務省に、さらなる政策経費縮減の口実を与えかねない。

上記の日経社説では、“経済が成長し人手不足にもかかわらず、賃金・物価がなかなか上がらない”という事実を認めながらも、その要因を規制改革や労働市場改革を含めた構造改革不足のせいだと捏造した挙句、
・賃上げ原資の捻出には企業の生産性向上が不可欠
・生産性向上には既得権益者の抵抗を排する雇用市場改革が必要
といった具合に安っぽい詭弁を弄している

だが、日経流の“雇用改革→生産性向上→賃上げ”ルートは緒戦から敗色濃厚だ。
なにせ、雇用改革とは“雇用の不安定化と雇用報酬の低下”と同義語だから、こんなものが生産性向上につながるはずがないし、賃上げどころか賃下げにしかなるまい。

そもそも、雇用改革が進まないことを生産性低下の言い訳にすること自体がおかしい。

財務省の法人企業統計のデータを見ると、平成29年1-3月期の売上高(金融・保険業を除く)は350兆6,366億円と前年同期(332兆874億円)を18兆5,492億円も上回り、対前年同期比で+5.6%、また、経常利益も20兆1,314億円と前年同期(15兆8,997億円)を4兆2,317億円上回り、対年々同期比で+26.6%と大幅な増収増益を記録している。

しかも、この傾向はこの期に限ったものではなく、特に「経常利益」は平成20年辺りの5兆円程度をボトムに、それ以降一貫して増加しており、日経が固執する生産性とやらは十分に上がっており、賃上げや下請けへの利益還元に廻せる原資は腐るほどある。

これ以上企業サイドを甘やかして、雇用改革だの生産性だのと言いたいことを言わせておけば、賃上げなんて永遠に不可能だろう。

政府が積極的な財政金融政策を通じてマクロ経済へ資金と潤沢に投じるから、企業サイドは黙ってそれに従い、きちんと賃上げし、下請け業者への利益配分も忘れるな、と叱りつけておけばよい。

また、日経社説では、物価が上がらないことを前提にした家計や企業の購買行動が物価目標未達の要因だという趣旨の記述があるが、これも経済シロウトの勘違いだろう。

日銀の「生活意識に関するアンケート調査」(第70回)によると、1年後の物価見通しについて、「かなり上がる」7.7%、「少し上がる」67.7%(合計75.4%)と、物価が下がるどころか上がるとの見方が大半を占めている。
しかも、物価上昇を予想する回答割合は、同調査の昨年12月実績値(64.7%)と比べても大幅に増加しており、体感レベルの物価上昇率も、1年前に比べた現在の上昇率は4.3%、1年後のそれは3.9%と、家計の肌感覚では、政府公表値以上の物価高騰に怯えている。

いつまで経っても消費や投資が低迷し、物価目標未達がマンネリ化するのは、家計や企業の物価見通しがネガティブなせいではない。
事実は、まったくその逆で、所得や売上増加が見通せぬ厳しい状況下で、食料品や原材料の高騰に耐えかねた家計や企業が消費や投資を抑えざるを得ないためなのだ。

日経レベルのシロウト新聞みたいに、○○改革ありきで経済を語っても、何も解決できないどころか、現状をさらに悪化させるだけだ。

改革で飯が食えるほど現実は甘くない。

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