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2017年9月13日 (水)

デフレの怖さを知らぬバカ

人間の心はまことに不思議なもので、20年以上もデフレ不況が続くと、『不況』という好ましからぬ環境に不満を抱くどころか、それを積極的に受け容れようとする者が現れる。

今回ご紹介する記事にも、そんな“不況容認論や成長否定論”が溢れ返っており、こんな暴論が易々と受け容れられるようなら、我が国の経済成長や国民所得の増進は、まさに“いばらの道”であろう。


『インフレは歴史的に革命や暴動を招いてきた~井沢元彦と予測する「日本の未来」<後編>』
(9/11 東洋経済オンライン 中原圭介/経営コンサルタント,経済アナリスト)
http://toyokeizai.net/articles/-/187239

以下、井沢氏と中原氏の対談内容を一部抜粋してみる。
【中原】
歴史的に見ると、革命や動乱というのは、デフレのときにはまったく起きていません。すべてインフレのときに起こっているんです。18世紀のフランス革命もそう、20世紀の天安門事件もそう、21世紀の「アラブの春」もそうです。

【井沢】
庶民というのは、基本的に相当イヤなことがあっても、たいてい我慢します。下手に政府に逆らったら、殺されるかもしれないから。その人たちが最後の最後で立ち上がるのは、やっぱり飢えなんです。 (略)

【中原】
逆に、デフレが経済に悪いとは一概には言えません。たとえば2015年のイギリスは、ポンド高や原油安によってデフレが進行しましたが、GDP成長率は実質で2.2%でした。(略)つまりポンド高や原油安によって国民の実質的な所得が上がり、消費が増えたことを表しているんです。
あくまでインフレやデフレは好況や不況という経済現象の結果であって、好況や不況の原因にはならないんです。経済学の世界では、原因と結果の転倒した見方をそろそろ改めるべきではないでしょうか。(略)
これまでデフレが続いてきた日本は、ほかの先進国と比べて圧倒的にモノが安いんです。アメリカだけではありません。たとえば今、フランスで軽い朝食を食べたとしても、場所にもよりますが日本円で1500~2000円は取られてしまいますよ。(略)
そういった視点をまったく考慮せずに、経済学者も日本政府も欧米の価値基準にならって「デフレは悪だ」と決め付けてきたわけです。(略)「インフレ=善」とはとても言えませんね。だから私は、国民生活がよい方向にいくのであれば、インフレでもデフレでもどっちでもいいんです。(略)


先ず、指摘しておくべきは、中原氏の「歴史的に見ると、革命や動乱というのは、デフレのときにはまったく起きていません。すべてインフレのときに起こっている」という大嘘だ。

中原氏は、ロシア革命は1900~03年の恐慌が発端と言われ、世界大恐慌がナチスの台頭を許し、後の第二次世界大戦を惹き起こす引金となった史実を知らぬらしい。

我が国でも、江戸時代の無謀な緊縮政策下でデフレに見舞われた享保や天保期に大規模な打ちこわしが起きているし、有名な大塩平八郎の乱が起きたのも、庶民に質素倹約を強いた水野忠邦による天保の改革の施政下であった。

因みに、江戸時代にはインフレ期やデフレ期の区別なく、武士やキリシタンの反乱、農民の一揆や打ちこわしが万遍なく発生しており、その原因をインフレだけに求めるのは認識違いも甚だしいと言わざるを得ない。

特に大規模なのが、江戸三大飢饉と言われる天明・享保・天保の飢饉に伴い起きた打ちこわしや騒乱だが、これらはいずれも異常気象や天災に端を発する飢饉が原因だ。

とは言え、中原氏のようなインフレ敵視論者から、「飢饉=食糧不足=インフレ」じゃないか、との反論があるかもしれない。
だが、この手の幼稚な反論は、物事の表層だけを切り取った中途半端な理解によって起きるものだ。

天災や飢饉のような外的要因が全国的な供給不足を惹き起こし、極度のインフレにまで直結してしまうのは、ひとえに、生産や流通という供給網がズタズタに寸断されてしまうからだ。
そして、供給網を機能不全に陥れる癌細胞は、たいがい、デフレに端を発する長期的不況により生成される。

需要不足と供給過剰によるデフレ不況は、資本家や企業から投資意欲を、政府や国民から消費意欲を失わせ、高度化の意義を失くした生産力や流通網は陳腐化するしかない。
逆に、需要主導型の好景気下なら、多少のインフレは、生産効率アップ(=生産・保管・流通コストダウン)のための投資意欲を刺激し、結果として供給能力を飛躍的に引き上げることにつながる。

突然の大飢饉に見舞われてコメの生産が大打撃を受けたとしても、経済成長下のインフレを経て強固に発達した供給網を有していれば、他の代替食糧で凌ぐこともできるし、飢饉の被災地に他の地方から必要な食糧を送ることも容易だ。

米がダメなら麦や根菜、肉や魚という代替食糧を確保するためにも、国家全体の供給力を常に向上させ、幾重にもわたるセーフティネットを張り巡らしておく必要がある。

しかし、デフレ不況下で供給力が脆弱化してしまえば、国全体の供給機能が低下し、飢饉に困窮する国民を救いたくともその手立てすらなくなる。


また、対談の中で中原氏は、
●デフレが経済に悪いとは一概には言えない。
●インフレやデフレは、好況や不況という経済現象の結果であって、その原因ではない。
とも発言している。

しかし、こうした意見は、「安いモノやサービスこそ消費者の利益」という安っぽい妄想に捉われた不況容認論者の詭弁でしかない。

“インフレやデフレは好況や不況という経済現象の結果”という彼の言葉を借りると、デフレは間違いなく「不況の結果」であり、“デフレが経済に悪いとは一概には言えない”どころか、「経済不況の落とし子たるデフレは、国民経済にとって間違いなく害悪」である。

デフレの何が最悪かと言うと、人々から「成長や幸福への期待や渇望を奪い去る」ことだ。

巷には、“格安SIMでスマホができ、買い物は百均で済ませ、牛丼屋で飯が食えれば満足”、“叶うはずがない経済成長の夢を追うよりも、このまままったりと暮らせれば十分だ”という者も多いだろう。
だが、気軽に安物買いできる生活が永遠に続くと思うのは、ほんのひと時の甘い幻想に過ぎない。

たしかに、今は百均であらゆるモノが買え、300円くらいでランチを済ますことも可能だが、この先も未来永劫、同じようなサービスが続くと思っているなら大間違いだ。

昨今、日本近海で獲れる漁獲量が減り、サンマやサケ、イカといった魚種の価格が高騰しており、100円寿司が食べられなくなる日も迫っている。

成長から取り残された我が国と成長を続ける海外諸国との経済格差は広がる一方で、経済力に劣る我が国の買い負けが目立っており、今後も魚の輸入価格高騰について行けず、スシローやくら寿司の100円皿が150円や200円に値上げされる日も近い。

不況容認論者やデフレ賛成派の連中は呑気に構えているが、世界中で起きている経済競争に勝てぬ限り、目の前にある安価なモノやサービスなんて瞬く間に遠い過去になってしまうことを忘れてはならない。

デフレという甘い夢に安住できる期間は、ほんの一瞬に過ぎず、その後には、経済力や供給力の劣化がもたらすコストプッシュインフレに苦しむことになる。

中原氏や井沢氏は、デフレ不況こそが経済力や供給力を棄損させ、受け容れ難いインフレを招来し、国体を揺るがす暴動や革命といった重大なリスクにつながることを肝に銘ずるべきだ。

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コメント

なんでTV露出の多そうな連中の目指す先が土人の王様なんでしょうね。
私は未来社会の一般人で一週間の月旅行とか手軽に出来た方が良いです。

≫774さん

日本は、もう成長できない、成長すべきではないという妄言をバラまくバカ者のせいで、幸福を求める人々まで不幸の道づれにされるのは、本当に許し難いですね。

>今後も魚の輸入価格高騰について行けず、スシローやくら寿司の100円皿が150円や200円に値上げされる日も近い。

値上げよりも、ハンバーグ寿司とかの割合が増えてゆくんでしょうなw
消費者へできるだけ実感させないように貧乏ビジネスが進んでゆくんだと思います。

≫ななしさん

そうですね。
一皿ニ貫が一貫に減らせるかもしれません。
デフレの恩恵に浸っていられるのもあっという間です。

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