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2017年9月30日 (土)

「景気刺激策はカンフル剤」という旧石器時代的妄想

『「景気刺激で消費拡大」は線香花火にすぎない~これまでの20年で家計の姿はどう変わったか』(9/29 東洋経済ONLINE 櫨 浩一/ニッセイ基礎研究所専務理事)
http://toyokeizai.net/articles/-/190322

「日本にとって望ましい経済政策を考える際の対立の一つは、とりあえず経済を活性化することを重要と考えるか、その先の持続性を重視するかという違いによるのではないだろうか。
2014年度に消費税率が5%から8%に引き上げられた後、家計消費は大きく落ち込み、なかなか元に戻らなかった。この間、消費の低迷が続いたため、家計の消費意欲の弱さが問題点として指摘されることも多い。しかし、長期的に見ると日本の家計消費は所得の動向と比べてむしろ堅調だといえる。(略)
恒常的に家計の消費意欲を高めれば消費を活発にすることができる、と期待するのは楽観的すぎる。(略)」

櫨氏は、「日本の家計部門全体の収支を、最新の統計で比較可能な1994年度と2015年度で比べてみると、可処分所得は301.6兆円から295.6兆円へわずかに減少しているが、消費は27.4兆円も伸びた」ことを根拠に、我が国の家計消費は所得減にもかかわらず堅調に伸びてきたとの認識を基に、
①仮に金融緩和政策により物価上昇率が高まったとしても、短期的な景気刺激策の成果が長期的なものにつながるような日本経済の構造変化が実現するとは考えにくい
②現在の経済構造のままでは、財政赤字や対外収支黒字の拡大なしに日本経済が安定的に成長することはない
③日本の潜在的な生産能力をさらに高めても、需要が増えなければ生産能力を発揮することはできない
④景気刺激策を次々と繰り出しても、経済構造自体が変わらぬ限り、線香花火のように短期間で元に戻ってしまうだけだ
と主張している。

櫨氏の主張のうち、需要なき潜在成長率UPは無意味だという指摘や、(彼は否定的に捉えているようだが…)積極的な財政赤字の拡大なしに日本経済は成長できないとの見方には、筆者も同意する。

だが、櫨氏の主張には、経済構造や経済政策に対する理解の根本的な部分で、大きな過誤や誤解があるように思える。

まず、「1994年→2015年間に国内の最終消費支出は265兆円→292.4兆円と27.4兆円も増えており我が国の個人消費は比較的堅調だ」というのが櫨氏の主張だ。

だが、筆者が考えるに、上記20年余りの消費支出増は、日本経済の好調さがもたらしたものではなく、単に“核家族化による世帯数の大幅な増加(4,206万世帯/1994年→5,036世帯/2015年へ19.7%増)に伴う食費や光熱費などの強制的な支出増加”によるものだろう。

また、27兆円と言えば一見大きな数値に見えるが、21年という時間軸で見れば、年率換算の増加率は僅か0.5%でしかなく、“堅調”と呼ぶにはあまりにもショボすぎないか?

櫨氏のコラムでもう一つ気に掛かるのは、「景気刺激策」という言葉の使い方だ。

彼に限らず、経済論議の場、あるいは、様々な経済コラムを見るにつけ、景気刺激策に触れる者は、決まって「景気刺激策=短期的なカンフル剤」という前提で話を進めたがるが、そもそも、「景気刺激策=短期的施策」という陳腐な発想自体が間違っている。

今回ご紹介したコラムでも、日本の消費支出は長期的にも堅調だったと櫨氏が主張しているように、我が国の経済論壇は、“バブル崩壊後の長期不況下においても日本経済は成長を続け、個人消費は持続的に拡大している”という「空想」を土台とした議論が蔓延っていたため、実効力のある政策提言がまったくなされていなかった。

経済論壇の主流派は、重症化した患部を診ても、「投薬の効果を確認できた」、「治癒・回復に向かいつつある」と放置し、「高い薬を投与するのはもったいない。一時的に体力を回復させるカンフル剤だけで十分だよ」と、いいかげんな診察を続けてきたわけだ。
まぁ、患者の命よりも投薬代を気にしたがる守銭奴に、まともな診療を期待する方が無理なのかもしれない。

「景気刺激策=短期的なカンフル剤」なんて妄言は、生産能力が貧弱で、過度なインフレを招かぬよう需要の抑制が求められた高度成長期以前にしか通用しない極めて前時代的発想だろう。

製品やサービスの供給能力が飛躍的に発展した現代の経済構造は、以前とは逆に、旺盛な生産能力を満たすだけの絶え間なき需要刺激策が不可欠な構造へと変貌を遂げており、インフレにビビッて需要抑制を気にするような時代ではない。

そこで必要なのは、短期的ではなく「恒常的な」景気刺激策であり、景気過熱による弊害が出たときのみ一時的にアクセルを緩める程度でよいのだ。

現代の経済構造は、「過度なインフレなき成長実現力を有し、その潜在成長率は需要の多寡に大きく左右される」という事実を十分に認識しておけば、必要な経済政策を誤ることはない。

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