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2017年10月23日 (月)

消費税率引き上げ凍結より先の話をこそすべき

先の衆院選は報道各社の事前予想どおり与党の勝利に終わったが、その間、識者による言論空間では、国民ニーズに唾を吐きかけるような実にくだらぬ座談会が行われていた。

【言論NPO座談会】『アベノミクス実績と、今回の衆院選で政治は何を説明すべきか』(10/14 特定非営利法人言論NPO)
http://www.genron-npo.net/studio/2017/10/npo_8.html
〈出演者〉
湯元健治(日本総研副理事長)
早川英男(富士通総研エグゼクティブ・フェロー)
加藤出(東短リサーチ社長、チーフエコノミスト)
工藤泰志(言論NPO代表/司会)

出演者の顔触れを見た瞬間に、内容を読まずとも、座談会が「財政再建・構造改革・規制緩和」の大合唱に終わるであろうことは想像に難くない。

実際に、各人の発言をピックアップすると、
早川:「財政サイドは日銀の金融緩和が続くことを前提にして、財政の健全化を少しも進めていない」(※一部、筆者による編集あり。以下、同じ)
加藤:「金利が低いということで痛みがないがゆえに財政再建へのモチベーションが出てこず、結局は問題先送りというか時間の浪費になってしまっている」
湯元:「三本の矢のうち金融・財政政策はもう限界まで来ていますし、これ以上の効果は望めない状況ですから、もう手じまいに向かうべき。実際は最初の二本しかやっていなくて、三本目の矢はほとんど打たれていない状況ですから、成長戦略の「一本の矢」に切り替えていくべき」
と、財政・金融政策批判に終始している。

そのうえで、
早川:「私は、物価安定目標2%の早期達成は非常に難しい。日本経済の実力は、潜在成長率で見てせいぜい1%くらい」
加藤:「GDP600兆円はかなり無理筋。2%という目標がある限り日銀がしゃにむに緩和すると、政府にとってはかえってラッキーということで、政治家に財政再建の危機意識も出てこない」
と、日本の成長力を蔑み、できもしない成長に目を奪われるよりも目先の財政再建に全力投球しろとハッパを掛ける。

彼らの論旨は、「真に必要なのは成長戦略を実現するための改革であって、財金政策による経済成長なんて無駄を生むだけの空想論に過ぎない。財政危機は喫緊の課題だから、成長よりも財政再建に取り組め」という点で気味が悪いほど一致している。

出演者の早川氏は、「消費税は10%で終わりではない、もっと上げなければいけないのだ、ということです。だからこそ、国民に「増税することによって良いことがある」と分かってもらう必要があります。今回、安倍さんが言っていることは結構なのですが、そう言うのであれば10%よりも先の話を始めなければいけない」と言い放ち、人づくり革命や教育無償化といった施策をやりたいなら、消費税率が10%で済むと思うなよ、と国民を恫喝するありさまだ。

しかも、徹頭徹尾“改革支持者”の彼らの提言は、と言えば、
「正規・非正規に分断された労働市場の構造問題解決には同一労働同一賃金制度が必要」(=正規雇用者の所得カット)
「働き方改革の目的は、従業員の健康管理や福利厚生の向上ではなく、長時間労働で生み出していたのと同額以上の付加価値をキープすること」(=労働者に対するシバキ上げ強化)
「単なる無償化で本当にいいのか、ましてや大学無償化などというのは定員割れ大学の救済策にしかならない」(=授業料無償化による家計負担軽減効果の否定)
といった具合に、国民の実質所得を削り需要力や購買力を削ぐものばかりで、何の役にも立たぬだろう。

彼らみたいな改革バカに限って、「日本の潜在成長率は、せいぜい1%」、「他の先進国の実績を見ても1~2%の成長率なら合格点だ」といった間抜けな発言が目立つ。
だが、欧米諸国のようにある程度角度のついた右肩上がりの経済成長を遂げた国が言うならまだしも、1997年以降、経済成長のグラフが横這いでベタ張り状態の日本が、こんなレベルの低い目標設定でいいのか?

2016年の我が国の名目GDPは約537兆円(※統計基準変更後)と、1997年実績の534兆円からほとんど成長できていない。
裏を返せば、20年近くも怠け呆けていた分だけ、成長の伸びしろが十二分に残されているはずで、我が国の供給力をフル回転させるだけの需要力が投じられれば、1~2%どころか、8~10%近い成長を遂げても何ら不思議ではない。

潜在成長率を低く見積もりたがる連中は、議論の矛先が、「大規模な財政金融政策」という高成長率を叩きだせる最高の燃料に向けられることを嫌い、日本経済という世界最高級のパワフルなエンジンのポテンシャルを引き出そうとするのではなく、エンジンは故障して使い物にならぬと言い張っているバカ者に過ぎぬ。

挙句の果てに、消費税率10%の先の話をすべきなどと、出過ぎた強弁をするに至っては、国民経済に重い足枷を課し、その成長を望まぬ“壊国魔”の誹りを免れまい。

消費税率が0%→3%→5%→8%へと上がるたびに、消費そのものに対する罰則を科せられた国民や企業は、長引く不況も相俟ってか、消費や投資に対し、もはや慎重を通り越して、「冷徹」とも言えるほど冷え切ったマインドしか持っていない。

経済政策を論じる識者ならば、カネを使うことに罪悪感を覚えるどころか、端から興味すら持たぬ人種が、現に増えつつあることに十分留意せねばならず、経済成長(=消費や投資といった需要力の量的拡大)を実現させるには、想像以上に強烈な勢いで財金政策のアクセルを強く踏み込む必要がある。

そんな厳しい経済環境を冷静に分析せずに、“とにかく改革だ。財政再建から目を背けるな。消費税率をもっと引き上げろ”なんて、質の悪いバカ発言をする連中は、「経済」の基本的な意味と仕組みを、無償化されたFラン大学にでも通い直して勉強すべきだろう。

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コメント

 うずら様、はじめまして。


いつもブログを通じて深く頷きながら楽しく勉強させて頂いてます。ありがとうございます。


ウチの地方紙(群馬県)の社説には度々、「国の借金ガァ~」とか、「今は痛みに耐え┉」とか、もう頭に血が上るほどのバカげた話が掲載されます。


また、地銀経済研究所(ハッキリと武蔵銀行)に勤務する友人は「日本のデフレは海外企業との競争激化と少子化労働人口減少が原因だ。これからはロボット産業が日本を救う」と話しています。


全くマクロ経済を理解しているとは思えません。


うずら様の経済に対するスタンスが日本で当たり前になる日が早く来ればいいなと思ってます。

≫タカユキさん

拙ブログをご覧いただき誠にありがとうございます。

これからはAIだ、ロボット産業だという話は本当によく耳にしますよね。

このレベルで発想が止まってる人は、そうした未来型産業に誰が対価(=カネ)を払うのかという需要サイドからの視点が完全に抜け落ちています。

要するに、何か革新的なものを造れば、きっと需要があるはずという非常にぼんやりした確度でものを語っている訳です。

マーケットインではなく、プロダクトアウトの罠にどっぷりハマっているだけなのです。

御見解ありがとうございます。

全くご指摘通りで、デフレ不況下で「作ったモノを一体誰が買うのか?」という疑問の先がないわけです。


つまり、「需要不足」がデフレの原因とは見ておらず、「供給」側の論理でしか考えていないようです(過去20年も規制緩和だ、構造改革だ、均衡財政だ、と失敗を繰り返してきたのに┉)。


民間側がカネを使わないなら、政府がカネを使って回さないと景気はよくならい、そこから需要が回復し消費や投資が活発化する(そこからロボット産業などの需要も発生する)と説いていますが┉。(間違ってたらごめんなさい)。

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