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2017年11月13日 (月)

賃金が増えないのは、技術革新ではなく守銭奴のせい

『好景気でも増えぬ賃金 先進国、広がる停滞~賃金迷路(1) 』(10/30日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22878370Q7A031C1SHA000/?n_cid=NMAIL005

「安倍晋三首相が「3%の賃上げ」への期待を表明した。しかし今、世界の先進国は好景気でも伸びない賃金に悩んでいる。賃金の低い新興国との競争があるだけではない。シェアビジネスや人工知能(AI)などの技術革新が古いビジネスモデルの賃金を抑え、人口の高齢化が賃金の伸びにくい労働者を生む。世界の構造変化で迷路に入り込んだかのような賃金の姿を追う。(略)
大和総研によると、70~74年生まれの人が40歳代前半に稼いだ所定内給与は年329万円と、60~64年生まれの人が同年代で稼いだ額より23万円少ない。内閣府は「総人件費を増やしたくない企業が団塊ジュニアの賃金を抑えることが、消費が伸び悩む一因」と見る。
 雇用の環境が良くなると、企業は人材を集めるために賃金を上げる。この構図が今は崩れている。16年は完全失業率が3.1%と22年ぶりの低水準になったが、1人あたりの賃金は1%の上昇どまり。(略)」

最初に、日経の意図的かつ悪質な誘導記事の誤りを指摘しておきたい。
一つ目は、日本を含む先進諸国が「好景気」だと断定している点。
二つ目は、先進国の賃金停滞、特に低中間層の賃金が伸び悩む要因を、AI化などの技術革新やビジネスモデルの変化のせいにしている点だ。

先ず、先進国が好景気に見舞われているという“妄想”に関して、経済政策がらみでは日経とほぼ同じベクトル内閣府も、
「世界の実質所得は、新興国などの中所得階級やトップ1%の先進国の富裕層で大きく伸びているが、先進国の中・低所得者層では伸びが低い。」
(「2030年展望と改革タスクフォース報告書」より)
「先進国においては、世界金融危機から7年を経てもいまだにマイナスのGDPギャップが残るなど、回復のペースは緩やかなものとなっており、いわゆる「長期停滞論」を含め、低成長の要因や対応策に関する議論が行われている。(略) 2000年代に入ると中国以外の新興国・途上国の成長が加速し、成長率が低下した先進国との差が拡大した。」
(「世界経済の潮流2016年」より)
と、先進国の成長が深刻なほど鈍化していることを認めている。

世界の実質経済成長率に占める先進国の割合も、ピークだった2000年前後と比べて1/3くらいにまで落ち込み、中国の後塵を拝するありさまだ。

我が国においても、日経やへっぽこエコノミストの連中が、盛んにアベノミクス効果とやらを喧伝するが、9月の家計消費支出は、実質で前年同期比▲0.3%とまったく振るわない。

しかも、内閣府の地域経済動向調査(H29/8調査)では、日本で最も景気が良いはずの南関東や東海地域の景気判断が、いずれも「緩やかな回復基調が続いている」という控えめで自信無さげな表現に止まっており、日本経済は好景気どころか、いまだ不況の波に翻弄されているというべきだ。

第一、本物の好景気が訪れたなら、個人消費の対前年同期比がマイナスになる月など出るはずがないし、各種のDI調査が「▲マーク」だらけになるはずもない。

「首都圏ではバイトの時給が爆上げ(※上がった時給はたったの20~30円)」とか、「介護や運送業界は人手不足でてんてこ舞い(※求人票の月給は15~25万円で見なし残業代込み)」といった卑近でショボすぎる例を盾に取り、「もはや日本は完全雇用時代だ」、「アベノミクス万歳」と叫ぶ大バカ者は、『好景気』の定義条件を引き下げ過ぎなのだ。
これでは、打率220、本塁打8本、打点35程度の三流打者を一流呼ばわりするようなものではないか?

次に、技術革新やビジネスモデルの変遷が先進国の低中間層の所得抑制の原因であり、AI化やロボット化が進む未来において、こうした傾向は不可逆的だ(=所得増は諦めろ‼)というホラ話の誤りも指摘しておきたい。

先に紹介した内閣府の資料(世界経済の潮流2016年)にも、「世界金融危機により08年、09年の成長は世界的に大幅に鈍化したものの、4兆元の景気対策の効果もあり、中国はいち早く成長を回復し、危機後の世界経済を下支えした」と記されているとおり、中国が世界の経済成長パフォーマンスの牽引役たる地位を占めるようになった最大の要因は、技術革新でも構造改革でも、はたまたワイズスペンディングのおかげでもなく、単に、大規模かつ積極的な財政支出により実体経済を大いに刺激したことによるものだ。

中国の大規模な財政投資は、一定レベルの生産力が備わった社会において、経済成長の燃料やエンジンたり得るのは、“消費や投資の原資に直結する貨幣の供給”だけ、という極めてシンプルな経済原理を体現したと言える。

冒頭の日経の記事では、雇用環境の良化が賃上げに直結しない昨今の事象を記しているが、同年代における所定内給与が10年も昔の先輩方より低いなんて、本来あってはならぬことだ。
これは、技術革新やビジネスモデル云々のせいではない。
なぜなら、AI化やロボット化は、現時点では実証段階の入り口にすら立てておらず、実際の労働現場では、いまだ空想レベルの存在でしかない。

むしろ、長年続いた政府レベルの緊縮政策が民間の需要力や投資期待を抑制させ労働分配率が下がり続けたこと、非正規雇用の蔓延や、野放図な資本移動の自由化、移民労働者の受入緩和による後進国の奴隷労働者との競合が生じたことといった複数の要因が重なり、我が国の労働賃金に重いアンカーが課されたことが大きい。

要は、「他者や他業界へ流れる財出はすべてムダ」、「他人の労働にカネを支払いたくない」という資本主義や経済の根本すら否定するケチで下賤な発想が官民問わず蔓延しているからこそ、先進諸国の労働賃金が何時まで経っても上昇しないのだ。

先進諸国が罹患した「財出&労働分配嫌悪症」が重篤化すると、世界中にコストカット万能菌がバラ撒かれ、各国で人件費カットや所得の停滞・下落が一般化し、やがて内需の担い手が消滅する憂き目に遭うだろう。
そうなってから慌てて外需開拓に熱を上げようとしても無駄だ。
外需など、所詮は「他国の内需」でしかないからだ。

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