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2017年12月 6日 (水)

教科書に甘えるだけの書正論

実社会の仕組みを知らぬまま教科書論を振り回すバカ者に限って、「紙幣を増刷すると必ずインフレになる。インフレで給与が倍増すると名目GDPも倍になるが、市場にあるカップ麺の価格も倍に値上がりするから、実質的にはまったく豊かになれない(=実質GDPは不変)」と知ったかぶりで騙り周囲から失笑を買うものだが、20年もの長きに亘ってデフレ慣れしたせいか、ちょっとでも景気が良くなった途端に、世の中のありとあらゆるモノの値段が急騰すると本気で怯える国民も多い。

インフレに負の感情しか抱けぬ“インフレ恐怖症患者”は、ディマンド・プル型とコスト・プッシュ型の区別もつかぬまま、「インフレ→所得の目減り→生活困窮」と即断し、「インフレは悪、インフレなんて絶対にダメ、景気なんて良くならなくていいからモノが安く買えさえすればよい」とトンデモナイことを言い始めるから困ったものだ。

とにかく物価目標さえ達成すればOK、というお目出度いリフレ派の連中ならともかく、まともな経済論を訴える論者であれば、「適切な財政金融政策→収益・所得向上→需要力UP→マイルドインフレ発生→金利水準UP→投融資の活性化→供給力向上」という波及経路を目指すはずなのだが、インフレ恐怖症を発症し、成長を絶望視する国民を説得するには非常に手間がかかる。

成長の恩恵や果実を受け取るのは当の国民なのだから、絶望したい奴は勝手に絶望して家で寝ていろと突き放したい気分だが、インフレ恐怖症患者はカネの使い方を忘れがちで、成長の燃料となる消費や投資の足手まといになるから、面倒だが放っても置けない。

インフレ恐怖症の治療には時間が掛かりそうだが、まずは、件の“給与・GDP・カップ麺のトリプル倍増論”みたいな虚偽妄想の類を取り払うのが先決だろう。

需要が力強く拡大し、ディマンド・プル型のマイルドインフレが発生した経済成長下では、カップ麺の値上がりよりも所得上昇のスピードが勝り、実質所得が増えるものだ。

例えば、キャラメルを例にとると、森永キャラメル値段は昭和25年の一箱20円から平成27年には114円に、ビール大瓶の値段も125円から320円に上がったが、上昇幅はキャラメルで5.7倍、ビールで2.5倍程度でしかない。
一方、その間の大卒初任給は、3,000円から211,000円と70倍以上に膨らんでおり、“給与・GDP・カップ麺のトリプル倍増論”なんて単なる大嘘であることが判る。

景気が良くなり、モノがよく売れるようになれば、ビジネス拡大のチャンスでもあり、原材料価格も高騰しがちだから、メーカー側も値上げに踏み切り、より多くの収益を得ようと企む。

しかし、景気の過熱は、新たな参入他社や競合商品の出現を促すから、需要家サイドの選択肢も増えて自然と競合が発生し、市場価格の均衡点はメーカーの目論見より低い価格で頭打ちになってしまう。

(田舎高校で教鞭をとっていただけの世間知らずには理解できぬかもしれないが…)民間企業は、絶えず商品開発や生産性向上に努めているから、需要先行型の経済成長下で、サラリーマンの給料が増えた分だけあらゆるモノの値段が上がるなんてことは常識ではありえない。

Aという食品が便乗値上げでもしようものなら、すかさずBやCという競合品がもっと安い価格で投入され値崩れを起こしてしまうし、Dという飲料が爆発的にヒットすれば、たちまち消費者の関心はABCから離れてしまうのが実情だ。

競合は同じカテゴリーの商品同士のみではなく、まったく別のカテゴリーのモノやサービスとの競争を強いられるのも日常茶飯事だ。
吉野家のライバルは、すき屋だけでなく、日高屋やいきなり!ステーキ、格安スマホ、アイドルの握手券、ハンドスピナーなど、ありとあらゆるモノとの競合に晒されており、値上げのフリーハンドを与えられているわけじゃない。

それでも、景気過熱期にはアイテムにより利幅も大きく取れ、数も捌けるため、供給側と需要側がWin-Winの関係を保つことができた。
今では国内企業のうち70%近くが赤字だが、逆に高度成長期には黒字企業が70%近くに達するほどうじゃうじゃ溢れていたのが何よりの証拠だ。

インフレという言葉に脊髄反射で恐怖感を抱き、その本質を見誤ったままでは、いつまで経っても経済成長できないし、我々が豊かな生活を手に入れることも叶わない。

昭和30年頃に僅か5,000~6,000円に過ぎなかった初任給が20万円を超えるまでに膨れ上がったのは、その間のGDPが8兆円から500兆円超にまで拡大したおかげに他ならない。(※本来なら初任給は50~60万円くらいに、GDPは850~900兆円くらいにまで増えてしかるべきだったが…)

根がナマケモノの緊縮主義者や成長否定主義者は、「インフレ=コスト・プッシュ型」というイメージをばら撒き、財出や経済が毒であるかのような大嘘を吐くが、そんなものに騙されるようでは日本も終わりだろう。

ディマンド・プル型の正当な経済成長下であれば、成長の果実がもたらす恩恵は物価高騰のスピードを凌駕し、国民の実質所得を増やことができる。

インフレが怖いから成長に背を向けるなんて、経済の基本原理を見落とした児戯にも等しい暴論だと言えよう。

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