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2017年12月28日 (木)

銀行のリストラは何の切り札にもならない

『銀行のリストラがアベノミクス経済改革の切り札になる理由』(DIAMOND Online宿輪純一 経済学博士)
http://diamond.jp/articles/-/151578

みずほ・三菱・三井住友のメガバンク3社が揃って大規模な店舗の統廃合や人員・業務のスリム化に本腰を入れ、みずほFG1万9000人、三菱UFJFG9500人、三井住友FG4000人、合計3万2500人もの大リストラを進めると発表されたのは記憶に新しい。

いずれも大学生就職先人気ランキングの1・2・5位を占める超人気企業を取り巻く大リストラ計画ゆえに、ここ数年、陽気が戻りつつあった就職市場に冷や水を浴びせることになるだろう。

上記コラムを書いた宿輪氏は、
「金融行政方針において、特に銀行に対する大きな行政方針は以下の2点である。
 (1)統合の推進や事務の改革等による銀行のリストラ
 (2)銀行員の企業への参加による企業支援・育成(新産業育成)
 とくに(2)は、銀行の人材を他の企業に供給し、彼らを中心に企業を成長させ、また起業や産業育成を推進させようとするものだ。」
と、メガバンクを人減らしに追い込んだのは金融庁によるシバキ上げのお陰だと褒め上げる。

そのうえで、
「事務の軽減で浮いたマンパワーで、人材(銀行員)を企業に参加させ、経営改革の他、企画・営業を担当させる。(略)
これが、日本銀行金融機構局金融高度化センターが中心となって推進している「金融高度化」である。(略)
銀行からの出向者に企業の育成、産業の支援をさせて、日本、特に地方の経済を活性化させようとする。(略)
メガバンクをはじめ何万人もの事務量削減は、この大規模な出向のためなのではないか。」
と妄想を膨らませている。

要は、金融庁の北風政策が金融業界から一般産業界への人材流動を促し、企業育成や産業支援が促進され、地域経済活性化の切り札になるはずというストーリーなのだろうが、はっきり言って銀行員のスキルを買い被り過ぎだろう。

銀行員は各地を転勤し、産業分類表に記されたほとんどすべての業種との融資取引があるから、自然に地域特有の商慣行や様々な業種の業界事情に詳しくなる。
また、行政機関や商工団体、農林漁業団体、研究機関、教育機関、医療機関、その他各種団体との交流も盛んで、上下左右あらゆる業界や階層との人材交流の機会も確かに多い。

こうした背景から、金融業界の人間は、他業界よりも見かけ上の知識量や情報量が豊富な人材が多いことは事実だ。

そのうえ、駆け出しの融資担当者であっても、日ごろから経営者とダイレクトに会い折衝する機会も多いせいか、自分が偉くなったと勘違いして、己の実力を過大評価しがちだ。

だが、いくらモノを知っていても、実際に資材を発注したこともなければ、洗濯バサミ一つ造ったこともないし、取引先に出す見積書1枚すら書いた経験もないのが銀行員なのだ。

様々な業界の慣行や情報、成功・失敗事例を知ってはいるものの、実際に手足を動かした経験がない、理論先行型の頭でっかちでしかない。
その程度の人材を数多ある中小企業、とりわけ田舎の中小企業に送り込んでも、社長や現場の社員と衝突して社の空気を汚すだけに終わるだろう。

筆者も数多くの企業経営者と話をしてきたが、中小企業の社長という人種は、心底他人の話を聞く気がない。
小なりとはいえ、企業のトップとして強い矜持を持つがゆえに、どうしても自身の経営力に自信過剰気味になりがちだ。

彼らが金融機関に相談に来る動機は、外部の人間のアドバイスを聞くためではない。
自分の考えや自負心に対する外部の承認を得るためなのだ。

要は、最後まで悩みを聞いて、「本当に大変ですね。社長のお気持ちはよく解りますよ」と頷き、共感して欲しいだけで、女性の悩みや愚痴を一方的に聞かされるのと同じようなものだ。

こんなありさまだから、アクの強い中小企業の社長連中が、小賢しい銀行員に経営再建を託すなんてのは、実情を知らぬ評論家の夢物語に過ぎまい。

第一、地方の中小企業の厳しい財務状況を鑑みると、人件費の高い銀行員なんて到底雇えるはずがない。
現在の景況を“いざなぎ景気越え”の好景気だと騒ぐバカ者もいるが、実際に中小零細企業の決算書を見ると、人件費ほか諸費用を差し引いた営業利益ベースで1,000万円を超える先なんてごく稀だから、そもそも銀行員を雇うだけの資金的余裕など皆無といってよい。

メガバンクのリストラは金融業界から一般産業界への人材大移動を促す革命だ、と鼻息の荒い宿輪氏には申し訳ないが、メガバンクの動きは、やはり単なるコストカットを目的とする人減らしでしかないのだ。

宿輪氏が誇大な空想を巡らす原因は、冒頭にご紹介したコラムの文中にある。

彼は、銀行の人材を他の企業に供給することで、日本経済や社会が抱える下記のような問題への対策になるはずだと力説する。
・社会的成長産業(企業)が不足
・特に起業が不足
・地方経済が沈滞
・当局主導の育成は今一歩
・大企業・衰退産業が人材を抱え込み
・企業の人手不足

つまり、宿輪氏は、供給サイドの経営資源不足こそが、日本を取り巻く諸問題の病根だと言いたいのだろう。

だが、“アニマル・スピリッツを持つ人材がいない”、“革新的ビジネスの芽を育てる素地がない”と嘆き、素人銀行員に産業育成の重職を担わせるようでは、事態が解決することはない。

上記に挙げられた諸問題の病根が、供給サイドではなく、需要サイドの窮乏にあることに気付かぬうちは、メガバンクのリストラが止むことはないだろう。

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