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2017年12月25日 (月)

安値競争と便乗値上げだけの経営なんてつまらない

『てんや、天丼を値上げ 食材費など上昇で』(12/11 日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO2449267011122017000000/

「ロイヤルホールディングス傘下のテンコーポレーションは11日、2018年1月11日から天丼店「てんや」で天丼を値上げすると発表した。看板メニューの500円の天丼は540円に引き上げる。コメやエビの価格が高騰しているほか、人手不足で人件費も上昇しているため、価格に転嫁する。(略)」

すき家、鳥貴族に続き、天丼チェーンの「てんや」も看板メニューの値上げに踏み切るらしい。
近頃の外食チェーンは何処も値上げ続きで、所得が上がらぬサラリーマンや若者にとっては痛いニュースだ。

値上げの理由は、お約束の「原材料費・人件費の高騰」なのだが、確かに、水道光熱費や食材費、材料等の運送費という外食産業にとっての主要コストは少々上がり気味だ。

企業物価指数の動きを見ても、今年9月の確報ベースで「電力・都市ガス・水道」前年同月比+10.9%、「農林水産物」同+4.8%と大きく上昇したほか、ビールなどアルコール類も値上げが相次ぎ、また、ヤマト運輸や佐川急便など運送大手も配送価格を大幅に引き上げるなど、外食産業の運営もさぞや大変だろうと同情を禁じ得ない。

筆者の取引先の飲食店の決算書や試算表を見ても、食材等の原材料費が30%台に収まるケースが極端に減り、40%半ばから50%を超えるのも珍しくない。
売上高の半分も原価に喰われてしまっては、まともな利益なんて出せるはずがないのに、水道光熱費や包材を中心にコストアップが続き、経営者の話を聞いても、出てくるのは愚痴と溜め息ばかりだ。

一方の人件費だが、「an平均時給レポート」によると、10月の全国平均時給は1,035円で前月比+14円(前月比+1.4%)、前年同月比+32円(前年同月比+3.2%)となり、9月の全国の有効求人倍率も1.52倍に達し右肩上がりとのこと。

しかし、地域別では九州エリア916円、北海道エリア887円と、いまだに1,000円にすら届かぬ地域もある。
時給1,000円といっても、6時間/日×月25日勤務でも月収が15万円にしかならず、生活保護費より遥かに安い。

現在1,000円を超えている関東・東海・関西も、2014年以降の推移を見ると、ここ5~6か月でやや急激な伸びを示しているものの、それ以前はほぼ横ばいのベタ凪状態が続いており、 “アベノミクス効果で景気はいざなぎ越え”という法螺話に浮かれるバカ者の神経が疑われる。

コストカットに頼り切りのエセ経営者ならバイト時給UPなんて悪夢でしかないだろう。
だが、働く側にしてみれば、時給1,000円でまともに暮らせるはずもなく、この程度の時給UPで経営者に根を上げられては堪らない。

鉄鉱石や石炭を掘るしか能がない豪州でさえ、時給が1,500~2,000円くらいになるというのに、世界トップクラスの経済大国たる我が国の首都圏ですら、いまだに時給1,500円にも届かぬようでは、あまりにも情けない。

外食産業を取り巻く経営環境は非常に厳しいが、問題の根源は、バイトの時給がたかが数十円上がったくらいで収益率が大きくダウンすること、つまり、企業にコスト吸収力が乏しく、ちょっとした人件費や材料費の高騰に耐え切れないほどのマクロ経済環境の脆弱化にある。

そして、マクロ経済から購買力(=需要力)が失われた主因は、何といっても家計所得の低迷だろう。

全世帯平均の所得金額は1994年のピーク時(664万円)から下がり続け、2015年には545万円と18%も低下している。
本来なら、20年かけて、664万円の所得が900~1,000万円に漸増してしかるべきところを、逆に2割近くも減らされたのだから、家計は堪ったものではない。

経済無策に起因する所得減少がマクロ的な需要力低下をもたらし、外食産業は、“消費力減退による需要の限界”という壁と、“円安や諸外国との物資争奪競争によるコストアップ”という別の壁に挟まれ、他律的要因による値下げと値上げを繰り返すしかなく、それが消費者の不信を買うという負のスパイラルに陥ったのが現在の姿なのだ。

牛丼チェーン大手の吉野家は、すき家や松屋などライバル企業との競合もあり、恒常的な値下げを余儀なくされ、一時、1杯300円を切る安値競争に巻き込まれたが、先ごろ人件費などの高騰を理由に「牛丼並盛」を380円に値上げした。

これとて、1990年の同商品価格が400円だったことを考慮すると、30年近くも値段を上げられなかった(※逆に値下げを余儀なくされ続けた)ことになり、異常というしかない。

我が国がまともな経済政策を採り、他国並みの経済成長を遂げていたならば、いまごろサラリーマンの平均年収が900~1,000万円くらいに達し、牛丼チェーンの競争も、コストカットや安売り合戦ではなく、材料やサービスの質の上質化や高度化を競い合い、我々は財布の中身を気にすることなく、一杯800円くらいの美味しい牛丼を気軽に食えるような世の中になっていただろう。

企業にとって、コストカット主体の価格競争に巻き込まれるほど生産性のない仕事はない。
昨日まで400円の値が付いた商品の価値を350円→280円へ貶めるための努力をひたすら強いられるほど無意味なものはなかろう。
下請け業者を泣かせ、従業員から恨まれ、コストアップに耐え切れず値上げした途端に消費者から総スカンを喰らうなんて、もはや自律的なビジネスとは呼べない。

世界的視野で各国の経済状況を見渡すと、成長のスピードこそ鈍化しているものの、諸外国は、経済停滞に甘んじる我が国を遥かに凌駕する速度で成長を続けており、食糧やエネルギー、各種原材料などの資源獲得にかかるコストは長期的に上昇し続けるだろう。

このままでは、相対的経済力に劣り、円安のぬるま湯に浸りきった我が国は、資源調達競争で連戦連敗の買い負けを喫し、輸入材のコストアップが避けられそうにない。

こうした国難に対処するにあたり、これまでのように家計や下請け業者に負担を押し付けるやり方は下策中の下策であり、もはや通用しない。
グローバルレベルのコスト高騰に対処するには、コストや無駄の削減など何の役にも立たず、そんな愚策でわずかに浮かせたコストなど一瞬で吹っ飛ばされるだけだ。

外的環境の厳しさに耐え得るよう身体を鍛えるにもおのずと限度があり、その限界値は思いのほか低いものだ。
そんな下らぬ鍛錬に無駄な時間を費やすよりも、誰もが厳しい環境を乗り切れるような居住環境や設備を整えてやる方が遥かに効果的だろう。

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