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2017年12月 8日 (金)

自称改革派官僚の浅知恵

『国交省、若手34人がタブーなき直言 政策立案「スピード感遅い」』(10/26 日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22741160W7A021C1EE8000/

「国土交通省は26日、「政策ベンチャー2030」プロジェクトの発足式を開いた。2030年に幹部となる若手官僚34人を選び、人口減少で先行きが不透明な中で公共投資や都市政策などについて大胆な視点で課題を話しあう。(略)
 「日本は世界の動きから10~40年遅れている」。観光庁で働く入省13年目の福島教郷・課長補佐(35)はこう言い放った。
 過去の職務経験を踏まえ、「空港に民間経営のノウハウをいかすコンセッションはイギリスが日本の29年前に始めた。格安航空会社(LCC)の本格参入も米国は41年前」と指摘。そのうえで「後追い型から先取り型の組織にするには、前例のない仕事やリスクに国交省の資源を投入できるかがポイント」と述べた。
 「今やっていることで捨てることもある」との意見も出た。国交省がまとめた18年度予算の公共事業の概算要求は、前の年度に比べ16%増の6兆238億円。人口減で使わない道路や家屋が増えているにもかかわらず、予算は従来通りに膨張するいっぽうだ。(略)」

若手社員たるもの、一般企業だけでなく官僚の世界であっても、「うちの組織は遅れている」、「大胆な改革が必要だ」と言いたがるものだ。
しかし、“では君の改革案を言ってみて”と訊くと、役立ちそうな増収増益策は皆無で、「あそこの経費を削れ」、「あの工程は無駄だ」と既存システムに文句をつけるくらいしか能がない。

今回の国交省若手官僚(35歳のオジサン官僚を若手呼ばわりするのもどうかと思うが…)による政策提言なるものは、今年5月に経済産業省の(自称)若手官僚が発表した『不安な個人、立ちすくむ国家』なる幼稚で粗悪な政策提言ポエムの猿真似に過ぎない。

しかも、公的社会資本整備を推進し、国土の維持発展を主導すべき立場の官僚が、端から公共投資予算削減やインフラ放棄を口にするようでは、あまりにも情けない。
国土開発にやる気がないのなら、公務員の地位に安住せず、早々に民間コンサルにでも転職して、「公共事業は無駄の象徴。要らぬ予算をどんどん削れ」と気勢を上げていればよかろう。

記事にある観光庁の課長補佐は、空港民営化やLCCへの門戸開放が遅れたのを問題視したいようだが、他に先駆けて民営化した関空や伊丹、成田のサービス・利便性が目に見えて向上したとの評価も聞かぬし、中部(セントレア)みたいに端から民間主導でスタートしたのに、利用客や貨物取り扱いがジリ貧に陥っている例もある。

海外の例を見ても、豪州のゴールドコースト空港みたいに乗降客数を伸ばしているところもあれば、英国のバーミンガム空港のように下降傾向の空港もあり、利用者数の推移を民営化の効果だと決めつける根拠は乏しい。

LCCも国際線の利用は順調に伸びているが、国内線は2015年をピークに翌年は12万人も利用客を減らしており、国民の強い支持を得るには至っていないし、近年の機長不足も相まって今後の安定運航に強い不安が残る。
【参照先】http://www.mlit.go.jp/common/001198780.pdf

つまり、空港民営化やLCC促進は功罪相半ばする政策であり、我が国の国土交通行政に大きなメリットをもたらすほどの“大胆な改革”呼ばわりするには、あまりにもインパクトに欠ける。

国家の運輸行政を司る官僚たるもの、そんな小手先の改革に目を奪われるのではなく、世界全体の航空旅客数が2006年→2015年の10年間に21億人から35億人へと大幅に増加している一方、国内の航空旅客数は96百万人のまま(しかも、2007年からダウントレンドに陥り、2011年には一旦79百万人まで減少)、だらだらと足踏みしている原因を分析し、これを増加させる知恵を捻り出すことこそが高級官僚の仕事だろう。
【参照先】http://www.jadc.jp/files/topics/38_ext_01_0.pdf

国内の旅客数は、国内線を利用する騒がしいインバウンド客の大幅増加分を足して、ようやく10年前のピークに届くかどうかという惨状なのだが、こうした大惨敗の原因が、果たして空港民営化やLCCの遅れによるものなのか、じっくり考えてみればよい。

また、若手官僚の連中は、18年度予算の公共事業概算要求額が6兆238億円と昨年度対比で16%も増え膨張し続けていると嘆いて見せるが、勘違いも甚だしい。

ちなみに2009年度の公共事業費は当初予算8.7兆円+補正予算1.9兆円の合計10.6兆円もあったのが、2017年度には当初予算ベースで5.9兆円にまで減らされており、膨張どころか縮小するばかりだ。

緊縮論者や成長否定論者は、「人口減で使わない道路や家屋が増えているのに公共事業予算が減らない」とバカげたことを言いたがるが、人口減、とりわけ過疎地域の労働人口減が見込まれるからこそ、過疎地域と中核都市、あるいは、地域同士を結ぶ物流網や道路管理体制を一層強化する必要があり、公共予算は減らすどころか積極的に増やさぬと物流・交通ネットワークを維持できない。

また、少子高齢化に伴う空き家は年々増加しており、2033年の空き家数・空き家率の予測数字は2150万戸/30.2%と、2013年の実績値(約820万戸、13.5%)の2倍以上に上るとされており、とても民間だけでは捌き切れない。

こうした不良資産を大規模な財政支出を通じて国が一気に買取り、国有資産として他の民有地との等価・減価交換などで集約化したうえで新たに活用する手もある。

減少・衰退宿命論に囚われ、安易な予算削減論ばかり騙るのは、官僚として無責任だし、職務放棄と断じられても仕方なかろう。

国交省の若手官僚たちは、せっかく、国交大臣に対して大胆な視点でタブーなき直言をする機会を得たのだから、経産省のエセ官僚みたいに、予算カットや国民負担押し付け論に終始することなく、国民が顔を上げて力強く前進できるよう活気に満ち溢れた提言をしてほしい。

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