無料ブログはココログ

リンク集

« 規制緩和好きほど経済を知らない | トップページ | 普通の国民が幸せになれる国に »

2018年3月30日 (金)

負担付きのBIはニセモノ

『"全国民に月7万円"は日本を救う最善手だ~「AI失業」の危機に備えるために』(3/23 PRESIDENT Online 井上智洋/駒大経済学部准教授)
http://president.jp/articles/-/24700

コラムの中で、井上准教授はベーシックインカム(BI)導入に賛成していることを明言したうえで、その目的について、「将来的には人間と同じような知的振る舞いをする汎用人工知能が完成し、あらゆる労働が人工知能とロボットに代替される可能性があります。 (略) そのような未来が訪れたとき、ほとんどの労働者は仕事がなくなります。AIによる技術的失業、いわゆる「AI失業」です。(略) 労働者は賃金を得られないため困窮します。それを放っておくわけにはいかないので、新しい社会保障制度としてベーシックインカムを導入するしかなくなるのです」と述べている。

つまり、彼は、人間の労働が人口知能やロボットなどに取って代わられることで起きるAI失業という将来的なリスクに備えるために、BIを導入すべきと訴えているのだ。

井上氏のBI構想は、国民1人月7万円の給付で年間100兆円ほどの財源が必要になるとしたうえで、基礎年金の政府負担、児童手当、雇用保険、生活保護、所得控除などの撤廃や25%の所得税増税、相続税増税、資源税導入という国民や企業負担増加により財源を賄うものだ。

さらに、月7万円のBIを、税金を財源とした社会保障制度としてのベーシックインカム(固定BI)と、貨幣発行益を財源とした景気によって給付額が変動するベーシックインカム(変動BI)の2階建てにしようと提案している。

井上氏の貨幣発行益を財源とする消費刺激策としての「変動BI」の考え方は、筆者の主張と軌を一にするものであり積極的に賛同したい。

彼は、「いまのようなゼロ金利(マイナス金利)経済においては貨幣を発行し続けてもインフレは起きにくいと言えます。政策金利をゼロやマイナスにしても企業が銀行からお金を借りなくて、市中にお金が出ていかないからです」と述べ、緊縮主義者が好む「貨幣発行=ハイパーインフレ論」がまったくのデマであることを喝破している。

また、「長期的には貨幣成長率を技術進歩率(生産性の上昇率)と同程度にすれば、インフレ率はおよそゼロになります。技術進歩の分だけわたしたちは、インフレを起こさず、お金を増やし、配ることができるのです。つまり、貨幣発行益の持続的な源泉は技術進歩であるということができます。(略) 消費する人がいなければ、経済は成長できません。そこで供給の拡大分に応じた需要をつくるために変動BIでお金を配るのです。」とし、貨幣発行益が技術進歩を促すきっかけとなり、技術力向上による生産力や供給力の拡大が、高インフレを防ぎ、貨幣発行(貨幣価値)を担保するという消費と生産の好循環を作ることの大切さをきちんと理解している。

さらに、「「もう経済は成熟していて、消費は飽和している。お金を配ったところで、商品の購入は増えない」と言う人もいます。しかし、本当にそうでしょうか。その理屈は一部の富裕層にしか当てはまらないでしょう。中間層以下の消費はいまなお飽和していません。わたしの教え子の学生たちは、数万円をポンと渡されたら、洋服を買ったり、友人とごはんを食べに行ったりする回数を増やすでしょう。数万円なんて、という人でも数十万円だったらどうでしょう。すべて貯金にまわすという人はむしろ少ないのではないでしょうか。お金をじゅうぶんに持っていないために買いたいものが買えない消費者が存在する限り、市中に出回るお金を増やす政策は効果を失いません」と主張しており、“日本のような成熟社会で消費は増えない”、“給付金は貯蓄に回るからムダ”という愚論を否定している。

と、ここまでは良い。

だが、もう一方の増税や社会保障負担増を財源とする「固定BI」は、まったくの下策で、BIを既存の社会保障制度の切り下げとトレードオフの関係に置くことは、BIに対する国民の警戒心や反発を招くだけの誤った考え方でしかない。

彼自身がコラム中で、「ベーシックインカムは個人に対して給付されるため、子どもの多い世帯ほど給付額が多くなります。所得が多く、子どもが少ない(もしくはいない)世帯は純負担が発生します」と述べているとおり、子供の有無や所得の多寡でBIの恩恵や増税による負担感にバラツキが生じると、当然、世帯間や世代間・階層間の感情的な対立が煽られるから、BIに対する反発を買うだけで制度導入の大きな障害になるだろう。

井上氏の提案のうち、固定BIは全削除し、後段の変動BIのみ実行するだけでよい。

彼は、BI導入の目的をAI失業への備えとしているようだが、それは違う。

BI導入の肝は、
①誰の腹も傷めぬこと(既存の社会保障制度は温存したまま)
②家計の実質所得水準引き上げによる消費力強化(=需要拡大)を目的とすること
③現状の家計所得水準の低さは歴代政権の経済失政による人災であり、早急なる改善を要するという認識を国民が共有すること
の三点にあることを再認識すべきだ。

« 規制緩和好きほど経済を知らない | トップページ | 普通の国民が幸せになれる国に »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1436015/73178787

この記事へのトラックバック一覧です: 負担付きのBIはニセモノ:

« 規制緩和好きほど経済を知らない | トップページ | 普通の国民が幸せになれる国に »

最近のトラックバック

2018年4月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30