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2018年3月15日 (木)

リフレ派は財政政策への支持をきちんと明示しろ

先月、朝日新聞Web版(The AsahiShinbun GLOBE)に『FRBと日本銀行~中央銀行の力』という特集記事が組まれ、4月以降の再任が内定した黒田総裁が実行してきた異次元金融緩和政策(黒田バズーカ)の是非に関する7名の論者の評論が掲載された。
〈参照先〉http://globe.asahi.com/feature/2018013000014.html

7名の内訳は、金融政策に賛成の立場から若田部昌澄(次期日銀副総裁)、竹中平蔵、安達誠司の3名、反対の立場から翁邦雄、木内登英、河野龍太郎、池尾和人の4名という顔ぶれで、リフレ派の代表的論客たる若田部・安達+ポジショニング派の竹中が賛成派、反リフレ派としてお馴染みの翁・木内・河野・池尾が反対派という色分けだ。

各々の主張詳細は記事をご参照いただくとして、両派の主張で最も先鋭な対立が見られるのは、
①金融緩和政策の経済的効果について
②インフレ目標未達の原因について
③金融緩和政策が及ぼす財政規律への影響について
の三点であり、これに関してそれぞれの主張概略と項目ごとの筆者の意見を下記にまとめてみる。

【金融緩和政策の効果】
≪賛成派≫
・少なくとも、物価が持続的に下落するというデフレ状態を食い止めた(若田部)
・失業率は下がり雇用環境は非常に良い(若田部・安達)
・物価目標の2%には達していないが、14年4月に1%台に達するなど一定の成果あり(竹中)

≪反対派≫
・日銀が重視するコアコア指数の上昇率は0.3%でしかなく未達幅が大きすぎる(翁)
・株高や円安には多少貢献したが、インフレ予想を高めることには失敗した(河野)
・今後の金利上昇により日銀の財務悪化が懸念される(翁・木内)
・金融政策は政策金利をゼロまで引き下げたところが限界。量的緩和による追加効果は乏しい(池尾)

〔筆者のコメント〕
黒田バズーカ以前にも、政策金利や市中金利は既に十二分に低金利であったため、異次元金融緩和の成果は、
①日銀による国債保有割合を従来になく高め、「政府の借金」の実質無効化に成功したこと
②日銀券ルールという意味も根拠もない下らぬルールを撤廃したこと
の二点に尽きる。

リフレ派が強調する雇用改善は、人口動態の変化に伴う自然発生的要因によるものであり、金融緩和が経営層のインフレ期待を刺激して雇用改善につながったとする論拠は非常に疑わしい。

また、雇用の内容も非正規やパートの増加が大半で、時給や雇用者報酬、労働分配率など何れの指標も上昇率が低過ぎ、改善とは名ばかりの“エア改善”でしかない。

雇用に関しては、ワースト・オブ・ワーストへの転落を免れただけで、目に見える改善と呼ぶのは、あまりにも大袈裟すぎる。

一方、日銀の財務悪化を心配したがる反対派の意見は、まったくバカげている。
そもそも、内国債の価格変動くらいで、通貨発行元(=金銭的価値の根源)の中央銀行や政府の財務を心配する方がおかしい。


【インフレ目標未達の原因】
≪賛成派≫
・14年10月の消費税増税と原油価格の下落のせいだ(若田部・安達・竹中)

≪反対派≫
・リフレ派は、かつて、増税や原油価格などの外的要因に関係なく金融政策が十分なら物価目標は達成できると主張していたはず。いまさら、増税を言い訳にするのはおかしい(翁・池尾)

〔筆者のコメント〕
リフレ派による“インフレ目標未達消費増税主因論”はまことに見苦しい限り。
黒田総裁自身が増税積極派である以上、自ら招いた厄災をくどくど言い訳にするのはいかがなものか。

さらに、原油安を盾に言い逃れしようとする態度には、物価目標達成を最優先するあまり、国民生活を直撃するコストプッシュ型インフレさえ容認するという冷酷さが見え隠れする。

若田部氏は評論の中で、「デフレからの脱却を進めるべきだという目標がまずある。その目標に対する手段として、インフレ目標を伴う金融緩和は必要条件だ」と述べているが、彼らの描く“デフレ脱却”という絵姿が、果たして、“国民生活向上”とイコールの関係になっているのか?


【財政規律への影響】
≪賛成派≫
・有事の円買いが常態化するなど日本国債の需要は極めて根強く、財政危機とは程遠い(若田部)
・政策の原点はデフレ脱却。そのために日銀は金融緩和を続け、政府は積極財政に転じるべき(若田部)
・債券市場の国債が枯渇しそうなら、政府がそれを埋めるだけの財政拡張をすればよい。具体的には、建設国債など新発債を増発し、それを日銀が直受けすればよい(安達)

≪反対派≫
・財政支出はすでに十分。これ以上増やせば財政規律のタガが緩み財政再建が遅れる(竹中・河野)
・団塊世代が後期高齢者になる2025年以降、社会保障費負担が重くなり、財政赤字のさらなる拡大により国内の貯蓄で財政赤字を賄い切れなくなる(池尾)

〔筆者のコメント〕
反リフレ派による「金融緩和政策は財政規律を弛緩させる」との批判は、元々存在しない財政問題を論拠にしている時点でまったく的外れ。

池尾氏が懸念する社会保障財源の枯渇問題にしても、財政規律の弛緩度合いが小さすぎる(=積極的な財出不足による実体経済の停滞)ことが経済活動を鈍化させ、社会保障財源となる付加価値の低迷を招いたというのが真相であり、因果関係が逆だ。

経済成長・所得向上・デフレ脱却を実現させるには、聖域なき持続的な財出により、実体経済へ所得になる資金を投じ続けねばならず、財政再建などもってのほか。

安達氏が主張するとおり、日銀の国債直受けを解禁してでも大規模な国債増発に踏み切り、消費や投資を活性化させて、本物の成長期待を刺激すべき。(ついでに財政法も改正)

コストプッシュインフレによる強制的な支出増加が先行すると、国民や企業は、「インフレ期待」ではなく「コスト増加懸念」を抱くだけ。
先ず、売上増加・所得増加の果実が万遍なく行き渡るよう歳出をバラ撒き、家計や企業の懐を十二分に温めてやることが重要。


最後に、筆者なりに全体を総括すると、金融緩和の政策効果の是非とインフレ目標未達に関しては反リフレ派を、財政政策の重要性や財政規律への懸念の有無に関してはリフレ派の意見に軍配を上げたい。

ただし、反リフレ派による金融政策批判の根底には、「財政規律を弛緩させる」、「構造改革や財政再建の邪魔になる」という薄汚い思想があり動機が愚劣すぎる。

一方、若田部・安達両氏は、リフレ派にしては珍しく、以前から財政政策に一定の理解を示しており、若田部氏の日銀副総裁就任を控えたタイミングで財政政策の必要性に言及した事実は評価したい。

肝心なのは、彼らが財政政策への本気度を今後も維持し続けられるか、という点だ。

冒頭にご紹介した記事の中で、インタビュアーから“リフレ派って、財政政策を支持してたっけ?”という意地悪な質問があったが、両氏とも、
「リフレ派が財政再建をないがしろにしたことはない」(若田部氏)
「以前から財政政策が必要ないとは言ったことはない」(安達氏)
と口篭もった様子で、いまひとつ歯切れが悪い。

彼らの回答が、“教科書読めよ”のリフレ系Fラン教授と、その子分たちの「リフレ派は財政政策を(嫌っているけど)否定していない」という苦し紛れの言い逃れレベルだったのは少々がっかりだ。

また、若田部氏は、「財政政策への態度などは、(リフレ派の)核となる定義には含まれていない」とも述べているし、数年前の他誌コラムでも、
・公共事業支出を増やしても、せいぜい一時的な効果しかないし、産業振興策も経済安定化につながらない
・経済成長を維持することは、構造改革を推進して効率化すること
といった趣旨の発言をしており、我が国の財政問題を否定しつつも、金融政策万能主義や構造改革礼賛臭の強い本音が見え隠れする。
(『民主党よ、経済政策の基本に戻れ』http://www.yomiuri.co.jp/adv/wol/opinion/gover-eco_090928.html)

まぁ、これでも歳出削減しか言わぬ緊縮派に比べれば百倍マシだから、副総裁に就任した暁には、ぜひ財政政策の応援団に廻って貰いたい。
“財政政策を否定しない”と他人行儀な態度を取るではなく、「財政政策はデフレ脱却に不可欠だ」と明言すべきだ。

その前に、感度が鈍く呑み込みも悪いリフレ界隈の子分たちへの啓蒙が先かもしれないが…

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