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2018年3月27日 (火)

規制緩和好きほど経済を知らない

世に知識人を称する者は多いが、知識や見識を自慢気に騙る人間に限って「経済の理」には無知か無関心なものだ。

『財政施策よりも金融政策よりも、遥かに効果的な経済政策とは!』(アゴラ 弁護士 荘司 雅彦)
http://agora-web.jp/archives/2030599.html
「(略) 日銀がいくら金融緩和をしても、市中銀行が融資をせず、また企業側も積極的に融資を求めないので、市中に出回るマネーは増えません。トリクルダウンが生じないのは当たり前です。財政政策や金融政策といった伝統的な景気刺激策が功を奏しない今、最も効果的な政策は「規制緩和」だと私は考えています。(略)
海外では、ライドシェアや民泊、自動運転、その他さまざまな分野で新しい技術や産業が実用化されつつあります。
国内の多くの無用な規制は、新しい産業や企業の成長を阻害しています。解雇規制もその一つです。厳格な解雇規制があるからこそ、雇う側は慎重になるのです。「試しに雇ってみるか」という環境になれば、人材流動化が進んで成長産業に有為な人材が集まるでしょう。受け皿がたくさんあるので、失敗しても大きな不安はありません。(略)」

このコラムを書いた荘司氏は弁護士だそうだが、その経済無知ぶりには呆れ返る。

彼は、財政政策も金融政策も無駄、建築物の容積率緩和さえしておけばバブル発生や崩壊はなかったと主張し、規制緩和こそ最高の経済政策だと断言する。

だが、コラムには、金融緩和に期待された効果が融資資金への需要不足により根詰まりを起こしている点を指摘してはいるものの、財政政策が効かないことを立証できる具体的な記述は一切見当たらない。

本来なら、金融緩和効果を相殺する病原である需資の減退を是正すべく、企業投資を誘発させるために積極的な財政支出を支持すべきなのに、そうした王道的解決経路から逃げ出し、大した効果もない規制緩和を声高に叫ぶありさまだ。

荘司氏は、海外発のライドシェア・民泊・自動運転を引き合いに出して規制緩和を美化しようとするが、実に幼稚な発想としか思えない。

我が国では、既にカーシェアリングやタクシー事業、シェアサイクルなどの類似事業が、あまりの需要不足により瀕死の状態にあり、民泊や自動運転なんて法整備や住民感情の問題など課題が多すぎ、短期的には全国規模の事業化はとても見込めない。

彼のような感情優先型の規制緩和論者は、常に供給サイド(事業者側)の視点や都合ばかりでモノを騙りたがる。

しかし、国内でも一部事業化しているライドシェアや民泊がいまひとつパッとしない原因は規制云々のせいではなく、単にサービス自体の魅力度が低過ぎたのと、期待した需要家(潜在的消費者)の財布の中身が窮乏していただけに過ぎない。

国民の懐具合が豊かなら、もっとタクシーを使うだろが、現実に収入が大して上がっていないから、中途半端な相乗りにカネを払う気も起きず、無理して歩かせざるをえないのだ。

荘司氏の論で最も唾棄すべきなのは、あまりにも無遠慮に解雇規制緩和を主張している点だろう。

“厳格な解雇規制があると雇う側は慎重になる。もっと気軽に解雇できれば雇用しやすくなり、人材流動化も進み成長産業に有為な人材が集まりやすくなる”といった類の醜悪なフレーズは聞き飽きた。

しかし、人材流動化の極致とも言える外食業界では、特に厳格な解雇規制を設けていないが、経営サイドが解雇する前にパートやバイトが勝手に流動化し、有為な人材が集まるどころか、いつも人手不足でヒィーヒィーぼやいているではないか?

また、彼は「(解雇され会社を放り出されても)受け皿がたくさんあるので、失敗しても大きな不安はありません」なんてほざいているが、そこにある“受け皿”なるものは、フルタイムで時給900円(交通費込み)貧乏バイトくらいが関の山だ。

当然、ボーナス制度も無くなるだろうから、年収の大幅減少→個人ローン制度の崩壊→不動産・自動車など高額商品の販売量激減→大手企業の凋落→失業者大量発生→低賃金労働の蔓延→後進国化という負のスパイラルに陥ってしまう。。

人材流動化の実態は、社会経験の未熟な荘司氏が夢想するほど甘いものじゃない。
・技術・営業・企画・開発・購買・管理・物流・総務・法務等々、経営や事業に係るあらゆるノウハウの継承の途絶
・自己利益優先の足の引っ張り合いや手柄の横取り合戦の横行
・脆弱な雇用条件と引き換えに、社員の無責任体質や責任回避思考の蔓延
・営業データや秘匿技術の持ち逃げ
など、会社を食い物にする連中を増やすだけに終わるだろう。

規制緩和程度で景気が回復するなら、とうの昔に日本は力強く成長し、国民所得も増えているはずだが、現実は見てのとおりだ。

荘司氏のような人種は、「経済とは、国民生活向上のために、モノやサービスの生産と貨幣による消費との交換行為を永続的に拡大させ続けること」という基本を知らぬから、貨幣の活用・循環・分配を嫌い、カネを使わずに経済を騙ろうとするから、何千年経っても答えを出せないのだ。

彼の所属する弁護士業界が、法曹養成制度改革という名の規制緩和の影響で弁護士過剰問題に直面し、年収300万円にも満たぬ貧乏弁護士を激増させたことを忘れたのか?

規制緩和を絶対視していきり立つ連中は、内閣府の「国民生活に関する世論調査」結果をよく見ることだ。
【参照先】http://www.garbagenews.net/archives/2380918.html

昨年7月の調査結果から、政府に対する要望項目をチェックすると、「規制緩和・新規産業の育成」という回答はたったの9.2%(複数回答可)に止まり、全33項目のうち30位というまことに寂しい結果だった。

マスコミや識者の手前では規制緩和に頷く国民も多いかもしれないが、その本音を探ってみると、規制緩和への期待や要望なんてゴミ程度の扱いでしかないことが判る。

ちなみに、同調査の上位は、
①医療・年金等の社会保障の整備65.1%
②景気対策51.1%
②高齢社会対策51.1%
④雇用・労働問題への対応37.3%
という結果で、規制緩和万能主義者の思惑とは裏腹に、いずれも財政金融政策の手助けが必要なものばかりではないか??

まぁ、実際に訊いてみると、「医療・年金等の社会保障の整備=無駄な公共事業を削って予算を確保しろっ‼」といった類のトンチンカンなコメントが返ってくるかもしれないが…

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コメント

久しぶりにコメントさせていただきます。

いつも読みなから首肯する内容で感服いたします。

この20年余り、デフレ対策とは反対の規制緩和というインフレ対策をやり続けてきた結果が、今の経済の状況だと思います。

この弁護士さんのように、印象や感覚で経済を語る人に限って需要側でなく、供給側の視点でしか見ない傾向が強いように思います。

≫たかゆきさん

ありがとうございます。

たしかに、肌感覚で経済を語る論者って、99%くらい供給サイドのことしか考えていませんよね。

作ったモノや提供したサービスを、いったい誰が買ってくれるのか、まさに商売のイロハすら知らぬど素人です。

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