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2018年4月12日 (木)

猫とライオン

アベノミクスに対して甘い採点をする論者は多い。

悪夢の民主党政権時代に比べれば、“雇用もGDPも格段に改善しているぞ”というのが安倍信者の言い分だが、筆者はそう思わない。

麻生政権→民主党政権→安倍政権という流れの中で、雇用や所得に改善が見受けられるのは確かだが、雇用指標の改善は、団塊世代の引退と若年層の人口層の薄さによる人口動態の変化による“自然現象”によるものだし、所得については、その増加幅があまりにも小さすぎて物足りない。

所得の持続的下落という“最悪の事態”だけは何とか回避したが、これまでの逸失分を取り戻すような改善や増進への積極的かつ力強い胎動はまったく感じられない。
つまり、失点を防いだだけで、見方を勝利に導くための得点を奪おうとする気概が伝わってこない消極的な貧打線でしかないと評価すべきなのだ。

地方や田舎から見れば、莫大なインフラ投資が行われ、眩しいばかりの発展を続ける東京都ですら、その平均年収を見ると2016年で605万円しかなく、2015年比で18万円も減り、政権交代のあった2012年の582万円との比較でも、年平均の伸び率はたったの1.1%程度でしかない。

正直言って、アベノミクスの恩恵なんてこんな微々たるものなのかと嘆息せざるを得ない。

この原稿を書いている3/26時点では、森友事件の余波が安倍政権の行方にどんな影響を及ぼすのか想像できないが、このまま安倍政権が続こうが、ポスト安倍の緊縮カルテット(岸田・石破・野田・河野)に交替しようが、『政・官・財・学・報・民』のいずれもが緊縮・改革志向に染まり財政支出を毛嫌いしている以上、大きな政策転換は期待しようがない。

だが、世の中には、安倍政権が終われば経済的混乱が避けられないと本気で心配する論者もいる。

『アベノミクスはこのまま終わってしまうのか~昭和恐慌を救った高橋是清が残した「教訓」』(3/26 東洋経済ONLINE村上尚己/マーケット・ストラテジスト)
http://toyokeizai.net/articles/-/213833

「3月19日に日本銀行を退任した岩田規久男前副総裁が編集者となっている『昭和恐慌の研究』(東洋経済新報社)は、戦前の昭和恐慌の教訓を基に2013年から黒田東彦総裁が率いる日銀執行部が実施しているリフレーション政策を論じた名著だ。(略)
1929年に米国株市場の暴落で世界恐慌が始まると、当時の井上準之助大蔵大臣は清算主義に基づき旧平価での金本位制復帰を目指したことから、緊縮政策が実現した。このため日本経済は大収縮に陥り、10%を超える物価下落が生じるなど、1930年にはいわゆる昭和恐慌となった。
経済が大混乱となり政治情勢が緊迫する中で、1931年12月に誕生した犬養毅内閣で大蔵大臣に就任した高橋是清は、就任直後に金輸出再禁止によって金本位制度から離脱することで金融政策を機能させた。その後、1932年11月には、日銀による国債引き受けにより金融緩和政策を強化させたことで、貨幣供給量は5.6%に増えた。(略)
『昭和恐慌の研究』では、高橋財政による①金本位制からの離脱(通貨高政策の放棄)、②日銀の大規模な国債引き受けという、金融政策を中心とした経済政策のレジーム転換によって、デフレ克服と経済正常化を実現したと結論づけている。(略)」

村上氏は、大胆な財政金融政策を発動させ、世界恐慌からいち早く日本経済を脱出させた高橋是清と安倍首相を重ね合わせているようだが、「世界史上初のケインズ主義的財政政策」と評され、ケインズすら凌駕した高橋蔵相の偉業と、アベノミクスのように、まともな財政政策すら打てない “おママごと”を同列に論じるのは、高橋是清に対してあまりにも失礼だろう。

だいたい、リフレ派の連中は、金本位制からの離脱(円安誘導)や日銀による国債の直受けといった是清の政策を丸ごと「金融政策」の枠に嵌めたがるが、それは事実とは違う。

“高橋財政”と呼ばれる是清の経済政策の肝は、「金輸出再禁止,対米為替相場放置により為替は低落し,金本位制度時代の1ドル=2円弱から 1932年末には約3円強の水準で安定,金利も公定歩合引下げにより 31年末の 6.57%から 33年7月には 3.65%に低下し,企業利益の回復,輸出の増大,株価の騰貴をもたらした。また財政は,32,33年度予算において 15億円弱から 20億円台に急激に膨張したのち,36年まで 22億円台が続いた。この財源が増税によらず日本銀行引受けの公債発行に求められたところに特徴がある。財政支出増加は経済全体を刺激し,輸出・国内資本形成において大幅な生産誘発効果をもった(ブリタニカ国際大百科事典より)」とあるように、積極的な財政支出を断行したことにある。

いくら、日銀が国債直受けで財源を創っても、それが実体経済に売上や所得という形(インフラ投資や給付金など)で投じられなければ、大恐慌により収縮した消費を回復させることなどできない。

高橋財政が後世に名を残す業績を治めたのは、まさに「財政政策」により実体経済を直接的かつ積極的に刺激したからに他ならない。

よって、高橋是清の政策を金融政策のみの視点から語ろうとするのは悪質な偽証であり、その最大の功績は、財政・金融の両輪を大規模かつスピーディーにフル回転させたことによるものだと正確に論じるべきだ。

アベノミクスと高橋財政とを同列に論じるのは、同じネコ科というだけで、野良猫とライオンの力量を同一視するような愚行でしかなかろう。

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