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2018年4月 9日 (月)

貨幣はゴールドを必要としない

『なぜ1万円札は「原価24円」なのにモノが買えるか説明できますか?』(3/15 現代ジャーナル 佐藤優/作家)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54721

「資本主義社会では、誰もが無意識に信じている拝金教という宗教がある。資本主義社会では、生活に必要な財やサービスを商品として購入しなくてはならないからだ。(略)
冷静に考えてみよう。1万円札を刷るのにかかる費用は、年によって若干異なるが、22~24円であるという。原価が22~24円しかかかっていない1枚の札で、1万円分の商品やサービスを購入することができる背景には、貨幣に対する信用があるからだ。これを貨幣教と言い換えることもできると思う。(略)
世界貨幣は、必ず金に収斂するというのが、経験的事実だ。(略)ちなみに19世紀後半に、貨幣は金に収斂した。その後、金と紙幣の交換が停止され、管理通貨制度が導入されたが、それでも各国の中央銀行は、貨幣発行の根拠となる金を備蓄している。究極的に貨幣は金によって裏付けられるという構造は変化していない。仮想通貨は、この基本構造を崩そうとするものだ。(略)」

コラムの中で佐藤氏は、

①貨幣は支払い手段として流通機能が必要だが、仮想通貨は現実世界でその機能を失い、流通が担保されず、もはや貨幣としての機能はない。よって、価値が上がり、富が増えるという仮想通貨に対する共同主観性が揺らいだ途端に暴落し、最終的には無価値化するリスクを抱えている。

②貴金属的価値を持たず人為的に作り出された貨幣の存在は脆弱。金(ゴールド)のように論理では説明しきれない歴史的に形成された絶大なるパワーを持つモノによって担保されないと貨幣は成り立たない。

という趣旨のことを述べている。

①の仮想通貨が無価値化するリスクを抱えているとの指摘には同意する。

「(仮想通貨は)通貨史上の大きな革命であるばかりでなく、まったく新しい形の社会を形成する可能性を示した」(野口悠紀雄/早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問)といった具合に、過大な期待を掛け、空前絶後の新技術であるかのように騙る論者も多いが、こんなものは、17世紀のチューリップバブルや明治時代の日本で起きたウサギバブルのような投機や博打の類に過ぎない。

仮想通貨の一種であるビットコインの保有者は40~60%が日本人だと言われており、こんなものは貨幣でも何でもなく、ババ抜きに使うトランプでしかない。

そんなことは、仮想通貨を保有し取引に熱中する本人に聞いてみればたちどころに解る。

「あなたは何のために仮想通貨を持っているの?」、「ビットコインは世の中を劇的に変えますか?」と聞いてみればよい。
「仮想通貨を買ったのは、一儲けしたいからだよ。そんなの当然だろ?」、「ビットコインが変えるのは、俺の生活だよ」というゲスな答えが返ってくるはずだから…

仮想通貨に対する佐藤氏の見方には頷けるが、もう一方の金本位制への憧憬はいただけない。

佐藤氏のように観念論を好む人種は、どうしても金(ゴールド)みたいに有限性のある貴金属を信奉したがり、一国の生産力という限度こそあるものの、国家がほとんど無限に創造できる貨幣(管理通貨)への疑念をどうしても捨て切れない。(金なんて、光っているだけの金属に過ぎないのだが…)

貨幣が、現実世界のあらゆるモノ・サービスの価値基準となる絶対唯一の存在である以上、それは極めて神聖なものでなければならないと思い込んでいるようだ。

佐藤氏は、世界中の中央銀行が貨幣発行の根拠とするため金を備蓄していると主張する。

だが、世界の通貨供給量は2016年時点でおよそ1京円とこの10年間で7割増だそうだが、金の保有量は33,673t(2018年1月)とこの1年間でほとんど増えておらず、1960年代の37,000tより減ってしまっているではないか?

爆発的に増殖する貨幣(通貨)の価値を担保するはずの金の保有量が減っているという現実を見れば、佐藤氏の主張はまったく成り立たず、もはや貨幣価値と金と担保関連性は無いと認めるべきだ。

世界の金保有ランキングを確認しても、1位アメリカ 2位ドイツ 3位IMF 4位イタリア 5位フランスといった具合で、GDPランキングともずれており、経済規模や貨幣発行量が大きく貨幣価値の維持に努めるべき国のランキングとも噛み合わない。(ちなみに日本の金保有量は9位765tとアメリカの9.4%ほど)

だいたい、アメリカの金保有量を時価換算すると約40兆円と一見巨額に見えるが、アメリカの通貨供給量は昨年9月時点で約1,550兆円にもなるから、金の保有量は通貨供給量の2.5%しかなく、こんなもので担保云々を語ること自体がおこがましい。

要は、金に支えられずとも貨幣は立派に流通するのだ。
管理通貨制度が確立して50年近くが経過し、もはや貨幣そのもの存在が実物的な担保を必要とせぬ特別な存在であると、世界中の人々から認められるフェーズに入ったのだ。

佐藤氏とて、講演料や著作料を金(ゴールド)で払うと言われれば困るだろう。
受け取った金が本物かどうか、いちいち鑑定する手間がかかるし、そのままコンビニに持ち込んでもアイス一つ買えないのだから。

“なぜ1万円札は「原価24円」なのにモノが買えるか説明できますか?”との問いには、「類いまれな生産力と法規順守性の高さを誇り、世界トップレベルの信用力を有する日本という国が発行する国定貨幣だから」と答えるよりほかないが、佐藤氏みたいに金本位制への未練を断ち切れない人種には、もうひとつ、「あなたが気にする「原価24円」という価値を体現するのも貨幣そのものですよ」と付け加えておきたい。

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コメント

問いへの答えは「その通貨で借金している人が存在するから」。円は日銀が銀行へ貸し付けるという形で発行される。銀行はそれを企業に貸し付ける。だから借金している人は必ず存在する。しかも、日銀が貸し付ける際、「利息天引き」で貸すために、全ての人が返済することは出来ない仕組みになっており、「椅子取りゲーム」の要領で、本来無価値な円に価値が発生する。

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